事実の解明は科学者の発した素朴なツイートから始まった。あっという間に多数の協力者が協力を申し出てボランティアとクラウドファンディングの輪が広まり,それを学術論文4本で世に問うた。陰膳調査,BABYSCAN,D-シャトルが明らかにしたこととは何か。
本解説記事では,まず,海外の社会科学系の研究者から福島原発事故がどのように見えているのかについて,いくつかの国際会議で得た意見をもとに紹介する。次に,「福島原発事故は日本固有の災害か否か」という問いに対するいくつかの考え方を述べる。さらに,これらの考察をもとに,今後原子力技術に何が求められているかを欧州の科学技術政策(Horizon2020)にあるRRI(責任ある研究とイノベーション)を参考に考察する。
ドイツではこれまで,放射性廃棄物管理のための公的基金はなかったが,2017年6月に基金が設置され,7月には原子力発電事業者から拠出金の払込みが行われた。これに伴い,放射性廃棄物管理の実施責任・分担も変更され,中間貯蔵以降については連邦政府が資金確保及び実施に責任を有することとなった。2022年の原子力発電からの撤退を前に,原子力発電事業者から現時点で資金を拠出させておく目的がある。今後は放射性廃棄物管理費用が増大した場合も事業者に追加拠出を求めないことになっており,連邦政府のリスクとなる可能性もある。
筆者の専門は発生生物学であり,ここを読みに来る多くの方のそれとは大きく異なると思われる。核といわれて思うものは原子核ではなくDNAの存在する細胞核であり,スピンとくれば電子の回転ではなく遠心分離を意味する。マックスウェルの理論は電磁場ではなく,うどんのキレやコシの予測に使われる1)。陽子や光子となればそれは「生徒諸君!」や「放浪記」に結びつく。したがって,これからお話しする内容が読んでくださる方々にどれほど関連するのか予測がつかないが,逆にいえば同業者が読む可能性が極めて低いということにもなり,匿名のブログのノリで本能の赴くままに孔子70歳の境地には全く及ばない様々を書き連ねて見たい。ちょっと変わった車窓の風景となることを願って。
日本原子力学会「放射性廃棄物の分離変換」研究専門委員会は,国内外における分離変換技術や関連する技術の研究開発状況について調査・分析してきた。長寿命核種の分離変換技術の現状について,4回に分けて紹介する。第3回では,発電用高速炉を用いた核変換システムとして,高速炉の特徴,均質型と非均質型の長所と短所,わが国の実証炉開発とMA核変換の展望,MA核データとMA装荷炉心の試験・解析の動向および国際協力に加え,MA均質サイクル燃料とMA非均質サイクル燃料について解説する。
東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きて半年後に開催された2011年9月のIAEA総会において「原子力安全に関するIAEA行動計画」が承認された。これに基づいて実施されてきたIAEAの福島第一原子力発電所の事故に関する活動は2015年の最終報告書の完成をもって終了した。現在はフォローアップとして福島の経験を踏まえた安全確保,安全規制に関する考え方を取り入れるためのワークショップ等が適宜開催されている。
核データとは狭義には原子核と中性子の反応の確率であるが,一般的に言えば,原子核の物理的変化や反応の様子を表現するデータの事である。我が国が原子力開発に着手して以来,核データの開発は重要な技術開発のテーマであり,現在我が国の核データライブラリJENDLは世界で最も高い精度と完備性を兼ね備えた核データファイルの一つとして国際的に認知されている。本連載講座では,原子力開発に関係している方々を対象とし,シグマ特別専門委員会の監修を経て,核データ開発の意義,核データの開発の最新の状況,国際的な動向,そして今後の開発の方向性を解説する。
福島県内の除染活動で発生する除去土壌等は,最大2,200万m3と推計されており,中間貯蔵施設内保管後,福島県外で最終処分の計画であるが,その実現に向けて,処分量を低減することが鍵である。環境省は,除去土壌を適切に処理し放射能濃度の低い土壌とした再生資材を,適切な管理の下で活用する再生利用の方針を示した。本講座では,除去土壌等の減容・再生利用の意義と,再生利用の基本的考え方に関する追加被ばく線量の考え方等について説明する。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら