事故由来放射性物質によって汚染された廃棄物の多くは一般環境中の広範に存在しており,除去土壌を含めなくても数百万トン(複数年での合計)を処理しなければならない状況である。そのため,特別措置法という形で制度が作られ,ガイドラインも整備することで総合的,かつ体系的な管理体制が整えられている。ここでは,8,000 Bq/kg以下の特定一般廃棄物や特定産業廃棄物に着目し,溶出特性や,最終処分場への埋立処分における留意点等を整理した。
除染によって生じた膨大な除去土壌を如何に処分するか?これは,30年以内の最終処分に向けての大きな課題である。減容化に関する技術としては,これまで環境浄化などで用いられてきた処理法である分級,化学処理,熱処理などいくつかの方法論が考えられるが,それぞれに一長一短があり,放射性Csの処理という視点で方法論を再度見直し,最適化する必要があると考えられる。本稿では,特に対象となる粘土鉱物への吸着機構についての最新の知見について紹介すると共に,これらの情報を参考に開発を試みている除染および土壌の再生利用などについて解説する。
福島県内の除染等の措置に伴い生じた除去土壌等については,中間貯蔵開始後30年以内の県外最終処分の完了に向けて,環境省は,平成28年4月に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」を策定した。さらに,除去土壌の再生利用の実現に向けて,同年6月に「再生資材化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について」を取りまとめた。以下,これらの概要について解説する。
環境省は福島県内における除染等の措置に伴い生じた土壌(除去土壌)を再生資材化し,放射線影響に関する安全性を確保しつつ,適切な管理の下で利用する方針を示した。本評価では除去土壌の再生利用に係る指針等の策定に資するため,当該再生資材を4種類の土木構造物(道路・鉄道盛土,防潮堤,海岸防災林,最終処分場)に利用することを想定し,施工時,供用時,災害時における作業者および一般公衆に対する追加被ばく線量評価を行った。また,その結果から,当該線量を制限するための放射性セシウム濃度や施設の設計条件についての検討を行った。
福島県内の除染等の措置に伴い生じた除去土壌のうち,再利用できない土壌は最終処分されると想定される。その際には処分施設の設計検討を行うこととなるため,同施設の施設設計や最終処分を合理的に行ううえで参考できる事項を紹介する。日本原子力研究開発機構は,全国の研究機関,大学,民間企業で保管されている低レベル放射性廃棄物を浅地中へ埋設処分する事業の実施主体である。今後,処分施設の立地場所が確定しだい,施設設計,建設を行い,約12万m3の放射性廃棄物を50年間かけて埋設する計画である。同計画の立案に際して,一般的な立地条件での予備的な施設設計を行い,放射性廃棄物の処分に要する費用の積算を行った。その知見をもとに,処分費用の積算方法の概要,除去土壌の最終処分のための費用評価に関する事項を述べる。
ポスドクの任期満了を間近にひかえて研究拠点を日本からオーストリアに移した筆者が,当地にて職場の内外で経験してきたことを思いつくままに記す。前編ではアメリカにおける研究生活の様子が電車の車窓を映しだすがごとく描きだされたが,本編では時がゆったりと流れるウィーンの生活を,路面電車の車窓から眺めるがごとく描いてみたい。
IoTが次世代の産業・社会・経済のインフラとして急速に進展しつつある中,これを単なる技術革新に留まらないビジネス環境の変化として捉え,ものづくりの現場で新たな付加価値創出の枠組みを築き上げることが求められている。ドイツのIndustrie 4.0,アメリカのIndustrial InternetやManufacturing USAを追う形で,日本でも官民を巻き込んだ活動が進められている。そのような中で,ものづくり企業には,IoTを活用した新たなものづくりの展開を考えることが必要とされている。
シミュレーションを設計過程において活用するためには,それを使いこなす技術の他に,シミュレーションが紡ぎ出す膨大なデータの読解力が必要である。設計案に対するシミュレーション解の分析や評価過程に,人工物工学が提唱する「どの視点も取り入れた仮説・法則や行為を導出するためのアブダクション基盤」を取り入れ,想定外や見落としなどを最小化できるように人工知能などを活用したデータ解析技術の取り組みなどを概観する。
日本原子力学会「断層の活動性と工学的なリスク評価」調査専門委員会は,その検討成果を「断層変位に対するリスク評価と工学的な対応策」と題して報告書に取りまとめ,日本原子力学会ホームページで公開している。同報告書の解説シリーズである本稿では,断層変位のハザード評価について紹介する。
日本原子力学会「断層の活動性と工学的なリスク評価」調査専門員会報告書の解説シリーズである本稿では, 断層変位の原子力施設に対する影響評価のうち,建物・構築物及び土木構造物に対する影響評価について紹介する。
日本原子力学会「放射性廃棄物の分離変換」研究専門委員会は,国内外における分離変換技術や関連する技術の研究開発状況について調査・分析してきた。長寿命核種の分離変換技術の現状について,4回に分けて紹介する。第1回では,分離変換の意義は何であるのかを解説するとともに,分離変換を効果的・効率的に行うために研究開発が進められている分離変換のシステムについて解説する。
米国では東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所事故から得られた教訓を基に,国内の原子力発電所の安全対策を強化する一方,原子力を主要な基幹エネルギーとして将来にわたって維持していくことが重要だとの認識を再確認した。DOEとNRCの協力の下,2050年頃の次世代炉の導入を視野に,液体金属冷却高速炉,高温ガス炉,溶融塩炉等の幅広い開発が進められている。
本稿(第4回)では,1Fの事故後に伴う環境汚染に対して事故からの復興へ向けて取り組んだ減容化除染と再生利用に関連する研究への取り組みについて,日本原子力研究開発機構(JAEA)と国立環境研究所(NIES)が取り組んできた吸着機構の基礎から物理的除染および減容と熱処理に関する研究を紹介する。
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