日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
62 巻, 3 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
巻頭言
時論
特集
  • 鬼束 俊一
    2020 年 62 巻 3 号 p. 121-124
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     福島第一原子力発電所では,2011年3月11日の事故発生から8年以上が経過し,廃炉作業にも一定の進展が見られる。汚染水対策は,3つの基本方針に基づいた予防的・重層的対策の効果により,汚染水発生量は事故当初と比較すると大幅に減少している。使用済み燃料プールからの燃料取り出しは,2014年に取り出しを完了した4号機に引き続いて,2019年4月から3号機において取り出しが開始された。また,1~3号機では,燃料デブリ取り出しに向けた内部調査も進んでおり,原子炉格納容器内部の状況も少しずつではあるが明らかになってきた。本稿では,廃炉に向けた福島第一原子力発電所における取組の現状について紹介する。

  • 淺間 一
    2020 年 62 巻 3 号 p. 125-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     東京電力福島第一原子力発電所の事故後,高放射線環境下でのさまざまな作業において,ロボットや遠隔操作機器の活用が求められた。本稿では,その事故対応などにおいてこれまでに導入されたロボットや遠隔操作機器について紹介するとともに,これまでの取り組みを評価し,失敗した事例の分析を行う。さらにこれらの分析結果に基づき,その対策について述べるとともに,燃料デブリの取り出しをはじめとする今後の廃炉の工程を考え,今後必要となる遠隔技術・ロボット技術の対策などについて述べる。

  • 岡本 孝司
    2020 年 62 巻 3 号 p. 127-131
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故は,複数の原子炉で同時に事故が起こり,世界的にも類のない事故となっており,その廃炉は困難を極めると想定される。30年から40年かかる廃炉を着実に遂行するためには,新たな技術の開発と人材の育成が不可欠である。そのため,日本原子力研究開発機構(JAEA)では,文部科学省,原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)等と協力して,国内外の英知を結集し,長期的な廃炉に必要な基礎基盤研究に取組む体制を構築している。また,1Fの廃炉は世界各国から強い関心が寄せられている。このため,国際協力も展開しながら,廃炉の課題解決に取組むとともに,国際社会に向けた情報発信を行っている。

  • 宮野 廣
    2020 年 62 巻 3 号 p. 132-136
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     福島第一原子力発電所の廃炉は9年目に入った。いよいよ炉内の燃料・燃料デブリの取り出しに取り組むまでに進展した。しかし課題は多い。技術的に解決しなければならない課題も多く,学会の役割は重要である。リスク評価,構造健全性,ロボット技術,サイトの活用を踏まえた廃棄物の予測と対応などについて検討を進め報告する。難しい課題については他の分野,ロボット工学や宇宙工学の分野からの協力も得て解決策を議論した。社会に向けては,公開のシンポジウムを中心に課題の解説と取組の例示を紹介して日本機械学会(JSME)との協働での国際会議を開催し,世界の原子力発電所の安全への貢献と福島第一の廃炉技術への貢献を議論した。

  • 小原 徹
    2020 年 62 巻 3 号 p. 137-138
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     近年小型モジュラー炉(SMR)の開発が活発に行われている。小型炉の研究はすでに長い歴史があり,様々な炉型に対して研究が行われてきた。最近の開発の特徴は,十分確立された技術をもとにして早期に市場投入を図ろうとしている点などが挙げられる。様々な工学分野では新たな技術革新がもたらされており,また原子力利用を取り巻く環境も大きく変わってきている。新たな技術をうまく取り込み,社会のニーズに応えることがSMR実現の鍵となると思われる。

  • 浅野 和仁
    2020 年 62 巻 3 号 p. 139-140
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     当社では,燃料無交換型ナトリウム冷却小型高速炉「4S」(10MWe,50MWe)1)での経験や知見を活用・反映し,300MWeクラスの高温ガス炉と3MWe級の超小型炉(MoveluXTM:Mobile-Very-small reactor for Local Utility in X-mark)2)の開発を進めている。高温ガス炉は蓄熱システムを組み合わせることで,再生可能エネルギーの電力需給変動に対応可能なベースロード電源としての600MWt級の発電プラントを指向し,国内技術として確立した技術をベースとした開発を進めている。並行して原子力イノベーションを追求した新たな概念として10MWt級の超小型炉(MoveluXTM)の概念設計を進めている。本稿ではそれぞれの特徴について紹介し,今後の取組み方針ならびに課題について概観する。

  • 木藤 和明
    2020 年 62 巻 3 号 p. 141-142
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     安全でクリーンな原子力発電が市場競争力を高めるには,他電源より低い発電コストと,資本費および資本リスクの低減が必要である。このようなニーズに応えるため,米国GE Hitachi Nuclear Energy社と共同で,BWRの特長を生かし,安全性と経済性を両立した小型軽水炉BWRX-300を開発している。BWRX-300は小型原子炉のスケールデメリットを克服し,大型原子炉を大幅に下回る建設単価の実現を目指す。本報では,BWRX-300の特長や,実用化に向けた技術開発について記載した。

  • 木村 芳貴
    2020 年 62 巻 3 号 p. 143-144
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     近年,米国やカナダ,英国などにおいてSMR(Small Modular Reactor)の開発,導入に向けた動きが活発化している。また,国内では,第5次エネルギー基本計画(2018年7月閣議決定)において,「多様な社会的要請の高まりも見据えた原子力関連技術のイノベーションの促進」や,「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求に向けた技術開発に取り組む」という方針が示された。三菱重工は,既存の軽水炉の安全性・信頼性向上や長期継続利用に向けた技術開発に着実に取り組む一方で,将来に向けた取り組みとしてSMRをはじめとした多様な革新的原子力技術開発を推進している。

Column
報告
  • 我が国でのあり方を問う
    山口 彰, 菅原 慎悦, 佐治 悦郎
    2020 年 62 巻 3 号 p. 147-152
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     「適切な安全」の姿から逸脱しないよう努めることがリスクマネジメントの要諦であり,それを行うためには安全目標を関係者が理解し共通のものとすることが不可欠である。また,安全目標は「社会との約束事」でもあり,その社会がもつ価値観と無関係に科学技術的知見のみをもって客観的に導き出せると解すべきものではない。そうした認識を踏まえ,わが国での安全目標のあり方をあらためて考察する。

  • ―三陸沖から房総沖の地震活動長期評価の功罪―
    吉田 至孝
    2020 年 62 巻 3 号 p. 153-157
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     刑事裁判において,三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価が,東京電力福島第一原発を襲った東北地方太平洋沖地震津波を予見できたかが争われ,東京地方裁判所は無罪の判決を言い渡した。裁判官は,地震本部の長期評価は具体的な根拠を示さず,そのため専門家,実務家,内閣府によって疑問が示され,客観的に信頼性,具体性があったと認めるには合理的な疑いが残るとした。本報告では,原子力学会誌2018年1月号の中で示したわが国の地震・津波研究に関して,当時の会合記録や関係者の回顧録を用いより深く掘り下げ,2002年の地震本部の見解に信頼性があったのかどうか考察するとともに,得られた知見を紹介する。

連載講座
  • 第6回 加速器駆動システムにおける未臨界度監視
    方野 量太, 山中 正朗
    2020 年 62 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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     加速器駆動システム(ADS)は一定の出力を得るために,未臨界炉心と外部中性子源が組み合わされた原子力システムである。我が国ではマイナーアクチノイド(MA)を主な対象とした核変換炉としてJAEAで研究が進められている。JAEAが提案するADSでは核燃料物質としてPuとMAが装荷されるため実効遅発中性子割合が小さく,安定な出力運転を実現させるために適切な未臨界度が設定される。万が一臨界に近づいた場合にはそれを検知し安全に停止できるような未臨界監視手法が求められている。第6回では,ADSの概要と従来の未臨界度測定手法の適用性およびその精度を検証し,従来法が持つ課題解決に向けた近年の取り組みについて紹介する。

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