2019年12月に開催された「再処理・リサイクル部会セミナー」における岸田の基調講演の内容を,その時の講演のスタイルとともにまとめた。コミュニケーションの基本構造から解き明かし,伝え方や心構えについて注意を払うことを解説した。大切なのは,コミュニケーションを担う双方の間に共同体意識を生むことであり,共に未来を作り出してゆくという意識を持つことである。そのためには,自らも変わる準備がなくてはならない。
東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所の事故以降,福島県では子どもたちの健康や生活に対する放射線の影響を,現在および将来において最小限に食い止めることが極めて重要な課題となっていた。これまでの学校教育では,放射線に関する教育が十分に実施されていなかった。そのために,福島県教育委員会として取り組んだ放射線教育や防災教育についての具体的な内容や,福島県内の小学校・中学校で実践されている放射線教育の実施教科について紹介する。今後も,子どもたちの新たな夢や希望の実現のために,福島発の放射線教育を創造し,推進していきたい。
甚大な被害を与えた福島第一原子力発電所事故から早9年半。福島県内の空間線量率は,除染作業と放射線の減衰によって減少するとともに,苦難を乗り越え復興に向けた取り組みが具体的に前進している。福島県環境創造センター交流棟(愛称:コミュタン福島)は,「対話」と「共創」を基本に据え,福島県の「今」を伝える展示室と探究的な体験研修を通して,正しく放射線を理解させ,福島の環境を知り,創り,発信する使命を持っている。そこで,これまで企画・運営してきた探究的な学びの実際と,放射線も含めた子どもたちの未来を切り拓く「学びの連続性」の取り組みを紹介させていただく。
福島県では2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故以降,義務教育課程から高等教育に至る各校種において積極的に放射線教育が進められてきた。その内容は単に放射線の物理的な側面に留まらず,地域の実情に合わせた幅広いものとなっている。一方で,事故から9年が経過し,今後の学校教育の中でいかに放射線教育を継続的に行っていくべきかが近年の課題として浮上している。これまで福島県で培ってきた放射線教育を維持し,また全国的に広げるための方法として,既存の学校カリキュラムに無理なく挿入できる放射線教育を構築する必要があると考えている。
福島県立高校の理科教員として,生徒たちに福島第一原子力発電所事故後の放射線や福島の現状について学ぶ場を設けてきた。この中でアンケートとして,福島県民健康調査の質問事項を尋ねたところ,約3割の生徒が福島県民の「後年影響」に懸念を示した。この結果は,福島県内の高校生に対して,放射線や福島の現状についての学びの場を設ける必要性を示している。このような教科横断的で地域課題的な学びは,「総合的な探究の時間」で展開するのがふさわしい。課題研究に取り組む高校生のテーマとして,放射線や福島の現状に関するテーマを取り上げることも有効である。風評の払拭のためには,このような放射線や福島の現状に関する学びの充実こそ求められる。
福島第一事故の後でも地球環境保全やエネルギーセキュリティの観点から原子力発電の新規導入を目指している国は多く存在しており,事故を含め多くの経験と技術を有している日本に対する人材育成への協力の要請が多く寄せられている。これに応えて多くの国内の機関が人材育成への協力を行って来ており,継続した貢献に対する感謝が寄せられている。しかし日本全体としての協力の整合性等,原子力人材育成ネットワーク等を通して解決すべき課題がある。
「もんじゅ」は2018年4月に,廃止措置段階に移行した。わが国初めてのナトリウム炉の廃止措置であり,約30年をかけて進める大事業である。「もんじゅ」では,設計や開発,製作,建設および40%出力運転などの50年にわたる活動を通じて膨大で多岐にわたる技術成果を得てきた。これまでに蓄積された知見・技術を決して散逸させることなく,今後の高速炉の実用化に向けた研究開発に確実に活用していくことが必要である。
現代社会は電磁ノイズであふれています。電磁気学は100年以上も前に確立されているにも関わらず,回路設計やコンピュータ設計では考慮されておらず,ノイズは力づくで抑え込んでいます。使用した電力の大部分は放射ノイズとして,さらに熱として捨てられています。この書物では,ノイズ発生のメカニズムを,数式を使わないで明らかにします。ノイズの物理を理解した上で,ノイズ削減の方法を提案します。来るべきノイズレス社会では電線は地中化されノイズに邪魔されない安全な空間が実現しています。
第3回では,外部ハザードについて,リスク評価におけるハザードの選定や評価として適用されるリスク分析について概説するとともに,一例として火山降灰ハザード評価について示している。また,リスク評価の目的は原子力施設の安全性の確保や向上であり,外部ハザードのリスク評価から得られた情報を用いたリスク対処に対するプロセスについても考察を行った。
核セキュリティの向上に関して,世界的にソフト・ハード双方でさまざまな対策が行われている。今回は,不法な核物質を検知するための技術開発について,放射線計測技術の観点から開発が進んでいるわが国の研究開発の動向について解説を行う。京都大学では,中性子計測による核物質検知手法を新たに開発し,これらの手法を用いた核物質検知システムの開発を行っている。原子力機構においては,核共鳴蛍光非破壊分析法を用いた核物質検知システムの開発を行っており,さまざまな試験を通して成果を挙げている。核物質検知技術は,安全・安心の社会構築に向けたインフラ技術として,わが国でも更なる研究開発が求められている。
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会 (SNW) は,東京電力福島第一原子力発電所が位置する福島浜通り地区にある唯一の工学系高等教育機関である福島工業高等専門学校 (福島高専) において継続的に対話会を実施してきた。同高専では,第一原子力発電所の廃止措置,地域の再生・復興に貢献する人材の育成に重きを置き教育を実施してきており,これに応える学生は真摯かつ優秀である。こうした,次世代を担う若者に夢を与える教育がいかになされ,それを受けた福島の若者が将来の原子力について何を思い,また,地元に生まれ育った視点から福島はエネルギー政策にどうかかわってきたのかについて対話会の参加者から報告してもらい,意見の共有を図った。
福島第一原子力発電所の事故から9年が経ち,帰還困難区域と当時の大熊,双葉両町の区域を除いて避難指示が解除されてから3年が経つが,富岡町や浪江町などの浜通りの住民の帰還は進んでいない。福島の住民の方々の帰還および帰還した住民の方々の安心を深めるためのコミュニケーション活動を福島事故直後から進めてこられた長崎大学と環境省の活動と合わせて福島特別プロジェクトの活動を紹介し,福島事故の影響を改めて考える。
国際エネルギー機関 (IEA) の「2019年版世界エネルギー見通し」 (WEO2019) は,世界のエネルギーの現状について,温暖化対策等の目標から大きく乖離しているとして,脱炭素化を中心としたエネルギー・システムの抜本的な変革を求めている。将来のエネルギー像についてのシナリオ分析から,単一の解決策はなく,色々な技術・燃料の総合的な取り組みが必要であり,各国政府の強力な政策が不可欠であると強調している。
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