2014年に東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故に関する調査委員会報告書をまとめた日本原子力学会は,事故から10年目の節目を迎えたことを機に,その報告書で指摘した改善策や提言のその後の実施状況を分析して達成の度合いを評価し,今後さらに取り組むべき課題をまとめた。さらに学会は,1F廃炉への学術的提言の発信や福島の復興・再生支援など1F事故後の取組を総括するシンポジウムを開催した。
福島第一原子力発電所の廃炉における廃棄物対策のマイルストーンである,「処理・処分の方策とその安全性に関する技術的な見通し」に向けた関係機関の取組みについて,廃棄物の特徴を踏まえた,目標および技術戦略,実現のための研究開発計画,および研究成果の現状について解説し,将来の検討の方向性を述べる。
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴い甚大な被害を受けた福島第一原子力発電所は,長期間にわたる廃炉作業を開始している。この作業は前例のない困難な作業であり,国が前面に立って研究開発を推進し,数十年間を要する作業を計画的に推進している。PartⅡでは,経済産業省が『廃炉研究開発計画』に基づき実施している『廃炉・汚染水対策事業』について解説する。同事業に基づき実施されている補助事業の具体的な内容の一部はPartⅢで解説される。福島第一原子力発電所の廃炉作業が,今後もさまざまな研究機関,事業者等の参画の下に国内外の叡知が結集され,一歩一歩着実に前進していくことを期待したい。
福島第一原子力発電所(1F)の廃炉に伴って発生する廃棄物について,国際廃炉研究開発機構(IRID)では,固体廃棄物の性状把握ならびに保管に関する研究開発に関して,汚染メカニズムと分析を組み合わせた廃棄物の性状把握方法や,保管中に課題となる水素ガス発生の具体的対策の研究を進めている。また,処理・処分の研究開発に関して,廃棄物の特性を踏まえ処分までを見越し適用可能な固化処理技術を抽出する手法の開発や,それら検討の前提となる処分概念候補と安全評価手法を開発している。これら内容について,本稿で主な研究開発を記した。当事業では,各課題について,技術的に成熟度の高いものを対象にして,現場適用性を評価できるデータの整理を行っている。固体廃棄物の処理・処分の方策とその安全性に関する技術的な見通しを示すための技術的根拠を提示することがIRIDの役割である。
わが国の中性子標準は,原子力分野をはじめ,医療などの産業活動,先端計測研究の場で使用される中性子検出器や中性子線量計の基準として用いられている。最近10年は,中性子計測に関わる新しいニーズに応える標準開発も行われている。J-PARCの稼働や医療用の大型加速器の増加に伴う高エネルギー側への拡張,およびホウ素中性子捕捉療法への寄与のための大線量への拡張である。本稿では,中性子標準の開発の現状と新しい標準開発について紹介する。
高速炉は2030年代以降の実用化を目指す第4世代原子炉に位置づけられ,わが国ではこれまでナトリウム冷却高速炉(SFR)の開発を進めてきた。今回はSFRの燃料として開発してきているMOX燃料の概念と構造およびこれまで知見として得られている原子炉内での特徴的な照射挙動について紹介し,燃料設計に対する設計要求や設計方針とこれらに対応した設計評価の考え方や設計手法開発および将来の次期SFRに向けたMOX燃料開発の状況について述べる。
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