米国産業界は,リスク情報活用を通じて過去20年以上にわたり,安全と運転の実績の改善を両立させてきた。国内原子力事業者は,リスク情報を活用した意思決定(RIDM)を発電所のマネジメントに導入し,より効果的にリスクを低減し安全性を向上させるとともに,発電所の稼働率向上に向け効果的,効率的運用のため「リスク情報活用の実現に向けた戦略プランおよびアクションプラン」に沿った取り組みを進めている。原子力リスク研究センターは,この事業者のRIDM推進の支援,および,RIDMに必要な産業界共通のPRA研究推進に取り組んでいる。
原子力発電所のプラント運営・保守管理への活動に対してリスク情報を活用する取り組みにより,規制の枠に留まることなく,強化すべき改善点を把握するとともに,有限な資源を有効に活用し,継続的に発電所の安全性を向上させていく。
リスク情報の分析によりプラントの脆弱性を把握し対策を講じることは,原子力安全の向上に向けた重要な取り組みの一つである。また,近年リスク情報を活用した原子力規制検査が施行され,事業者による自主的なパフォーマンス向上が注目されている。
現在,発電所の運営・保守に対してリスク情報の活用に取り組んでおり,本稿では柏崎刈羽原子力発電所で実施しているリスク情報活用の取り組みを紹介する。
原子力システムを含む重要インフラシステムでのサイバーセキュリティ脅威が顕在化している。また,原子力以外の産業分野では,システムの連携や新規ソフトウェアの脆弱性を利用したサイバー攻撃の脅威が次々と出現し,産業・制御システムを含めたサイバーセキュリティ対策が喫緊の課題になっている。ここでは,他産業分野での動向および対策状況も踏まえ,システムベンダーでの立場から原子力施設におけるサイバーセキュリティ対策について解説する。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を医療機関において実施するためには,加速器を用いた治療システムの実現が不可欠であった。研究用原子炉を用いたBNCTの経験をもとに,サイクロトロンを用いた治療システムの開発がすすめられ,臨床試験が始まった。臨床試験の結果から切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌を適応症例として2020年3月に医療機器の承認が得られた。2020年6月には2つの医療機関においてBNCTの保険診療が開始された。ここではBNCT治療システムおよび線量計算プログラムの概要と,医療機関におけるBNCTの保険診療について紹介する。
本会は,福島第一原子力発電所事故,金品授受問題等の原子力を取り巻く状況を踏まえて,2021年5月に倫理規程の改定を行った。本稿では,改定の検討を行った倫理委員会における検討の経緯,倫理規程改定の概要について紹介する。
原子力学会の若手・中堅会員で構成された未来像検討ワーキンググループは,理事会の依頼を受けて幅広い視点から原子力の未来像を検討すると共に,学会全体で議論すべき課題を抽出し,2021年3月12日に中間報告を兼ねたシンポジウムを企画した。本稿はその報告である。
日本原子力学会核燃料部会の連載企画「多様な原子燃料の概念と基礎設計」の最終回として,新しい原子炉のための核燃料開発を概説する。核燃料に要求される性質を簡単にまとめ,核燃料の種類と分類を概説した後,新しい原子炉のための核燃料開発に際しての照射炉と照射試験の重要性を説く。そのうえで,わが国の核燃料開発に期待することとして著者の考えを示す。
国際原子力機関(IAEA)は,原子力安全と核セキュリティの相互補完を通じた強化の上で必須となる両者のインターフェースに関する各国のアプローチについて技術報告書を発出した。報告書は加盟国への良好事例に関する知見提供を目的として,両者のインターフェースの調整において重要な,法規の枠組み,原子力施設,放射線源,文化醸成,緊急事案への準備と対応のそれぞれについての各国の事例,分野横断的な課題の6項目をテーマとしてまとめている。
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