日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
67 巻, 10 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
巻頭言
Perspective
特集
  • PRAから得られた知見の活用と不確実さ
    櫻本 一夫
    2025 年67 巻10 号 p. 567-570
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     わが国のエネルギー自給率はわずか10%程度であり,電力の安定供給の観点から原子力エネルギーは貴重なエネルギー源の一つである。原子力発電所を継続的に活用していくためには,安全性を向上させていく取り組みが必要となり,確率論的リスク評価(PRA)はそのような取り組みを行っていくための効果的なツールである。しかしながら,PRAの結果は数値として扱われるため,その値の不確実さが注目されやすく,これまであまり活用されてこなかった。PRAを活用することで,対策を実施した場合の効果や設備の安全上の重要度の違いを把握することが可能となることから,不確実さを理解し,不確実さがあることを含めてPRAを利用していくことが,原子力発電所を安全に利用していくための重要な要素の一つになる。

  • 地震PRAにおける入力情報の不確かさへの対応フラジリティ評価
    原口 龍将
    2025 年67 巻10 号 p. 571-574
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     地震に関する確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment; 以下,地震PRA)によるリスクの定量化には,大きく分けて事故シナリオの分析,地震動ハザード評価,フラジリティ評価,事故シーケンス評価というステップがあり,それぞれに何らかの不確かさを有している。このうちフラジリティ評価では,入力となる地震動や設備の地震応答,設備の持つ耐力に関わる不確かさを考慮して評価するものであり,これらを適切に分析して定量化することが地震動に対するリスク情報を活用していくうえで重要である。

     本稿では,日本原子力学会標準「原子力発電所に対する地震を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:2015」(以下,地震PRA学会標準)1)を参考に,フラジリティ評価の概念について紹介したうえで,応答・耐力に関する不確かさの要因について説明し,その定量化に向けた考え方などについて示すものである。

  • 火災PRAにおける火災進展解析モデルの不確かさへの対応
    池 正熏
    2025 年67 巻10 号 p. 575-578
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     原子力施設を対象とした内部火災PRAにおける火災モデルの不確かさおよびその対応について検討した。内部火災PRAの重要なインプットである火災進展評価に用いられるスプレッドシートモデル,ゾーンモデル,および数値流体力学(CFD)モデルの種類と特性を概説し,火災モデルに内在する不確かさを分析した。また,NUREG-1824に基づく不確かさの定量化手法を説明し,不確かさ定量化の例を提示した。不確かさへの取組みとして,火災進展解析のライブラリ化や深層学習技術を用いたCFDモデルの代理モデル開発について提案した。

  • 研究機関におけるCFD技術の進展―機構論的CFD技術の現状と今後の展開―
    山下 晋
    2025 年67 巻10 号 p. 579-582
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     原子力熱流動分野において数値流体力学(CFD)技術は,原子炉の最適設計,事故進展時における炉心および格納容器内の熱流動場予測など多方面で活用されている。本報告では,日本原子力研究開発機構が開発している機構論的CFD技術を,過酷事故時の溶融物の機構論的挙動予測,定常運転時の燃料集合体内部における気泡流挙動の機構論的予測といった原子炉熱流動現象に適用した事例について紹介する。事例紹介を通じて,機構論的CFD技術の現状とそれを原子炉熱流動現象に適用する際の課題と今後の展開について述べる。

  • 企業におけるCFD技術の進展―原子炉容器の圧力損失評価への適用―
    緒方 智明, 竹内 淳一, 岡野 匡哲, 坂本 裕之
    2025 年67 巻10 号 p. 583-587
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     近年,コンピュータ性能の向上に伴いCFD技術が進展しており,大規模な解析が可能となっている。これまで,原子炉容器および炉心の熱水力設計は流動試験を中心に発展してきたが,今後は流動試験に替わりCFD技術を活用することが期待される。

     本稿では,原子炉容器内で発生する圧力損失の評価にCFD技術を適用した例を紹介する。

  • ナトリウム冷却高速炉開発における熱流動解析技術の展開
    田中 正暁
    2025 年67 巻10 号 p. 588-592
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     日本原子力研究開発機構でのナトリウム冷却高速炉(SFR)開発における熱流動解析技術の展開として,今後のSFR実証炉の概念設計に対する,技術・知識を集約した統合評価手法「ARKADIA」で整備する熱流動解析技術を含む解析評価技術基盤の適用と,「常陽」新規制基準対応の経験を踏まえた安全審査対応に向けた展開,既存の解析経験(ナレッジ)を資産化し,有効活用するためのナレッジ連携解析機能の構築について概説した。また,将来的にデジタルツイン技術への拡張も視野に開発を進める熱流動解析技術の展開について言及した。

解説シリーズ
報告
  • 福島県林業研究センターにおける樹木の放射性セシウム汚染に関する研究について
    小川 秀樹
    2025 年67 巻10 号 p. 598-600
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     東京電力福島第一原子力発電所事故以降,放射性セシウム(放射性Cs)による樹木汚染により,福島県の林業活動は長期的な影響を受けている。このため福島県林業研究センターでは,林業に生じた諸課題に対応するためにさまざまな研究を進めてきた。そのなかで,木材として利用されるスギと,きのこ栽培用の原木として利用されるコナラの汚染状況については,原発事故直後から継続的に調査を進めてきた。その結果,フォールアウト時に放射性Csが直接付着した樹皮の放射性Cs濃度は,フォールアウトから数年後でも高い濃度であること等を明らかにした。その結果を元に,木材生産において廃棄物となるスギの樹皮を安全に燃焼処理する技術等の開発や,きのこ原木に利用するコナラ幹の樹皮表面の放射性Csを除去する装置の開発を,大学との共同研究で進めた。さらに,コナラのきのこ原木への長期的な利用を見据え,コナラへの放射性Csの吸収を,カリウム肥料を利用して抑制する手法の検討も進めている。近年は,大学や企業との共同研究により,ドローンや人工知能を利用して,樹木の本数,材積等の情報を地上の空間線量率とともに取得するシステムを開発した。今後,実証試験を進めるとともに,避難区域等の森林の管理や利用等に活用されることが期待される。

  • 村上 毅, 西原 健司, 牟田 浩明, 小原 徹, 松村 哲夫, 鈴木 達也, 稲垣 八穂広, 佐藤 淳也, 吉田 芙美子, 秋山 大輔, ...
    2025 年67 巻10 号 p. 601-605
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     2024年10月6〜10日に,核燃料サイクルを中心に議論するGLOBAL2024国際会議が,日本原子力学会(再処理・リサイクル部会)主催により,東京で開催された。世界23か国から500名以上の参加があった。口頭発表およびポスター発表の合計は約300件にのぼり,盛況のうちに幕を閉じたことは,脱炭素エネルギー源としての原子力利用が世界で推進されている状況を肌で感じさせた。本稿では本会議全体概要とトピックスを紹介する。

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