日本原子力学会誌ATOMOΣ
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巻頭言
時論
Perspective
特集 1F事故-15年目の総括Ⅴ
特集
  • 軽水炉の安全確保からみた核融合炉
    宮田 浩一
    2026 年68 巻8 号 p. 514-517
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     核融合発電施設(以下,核融合炉)は開発段階にあるが実用段階に向け発電炉としての安全性を議論しておく必要がある。このような観点から,原子力学会2025年秋の大会の原子力安全部会と核融合工学部会の合同企画セッションが設けられ,さらにそのフォローアップセミナーが10月に開催された。筆者は原子力安全部会の幹事として軽水炉発電施設(以下,軽水炉)の安全に長く携わってきており,核融合炉設計の特徴を踏まえ,軽水炉の安全設計との違いについてこれらの機会において説明した。本稿では,筆者の経験を元に軽水炉の状況に照らして核融合炉のリスク評価上の留意点について説明する。なお,核融合炉にはさまざまな炉型があるが,ここではトカマク型の核融合炉を念頭に議論している。

  • フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方
    澤田 和宏
    2026 年68 巻8 号 p. 518-521
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     令和5年4月,わが国初の国家戦略として「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定した。世界的なカーボンニュートラルに向けた動きの中で,政府主導による科学的・技術的進展もあり,諸外国においては民間投資が増加しており,その活況な民間投資を受け,米国や英国等のスタートアップは,これまでの政府の計画よりも早い野心的な発電時期を目標に掲げ,研究開発競争を加速している。わが国においても,従来の国際熱核融合実験炉(ITER)計画/幅広いアプローチ(BA)活動からの原型炉開発というアプローチを強力に推進するとともに,フュージョンエネルギーを新たな産業として捉え,フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)の設立やスタートアップへの支援強化,ムーンショット型研究開発制度による挑戦的な研究開発の推進など,多面的なアプローチによりフュージョンエネルギーの実用化の加速を図っている。

     この国家戦略を踏まえ,内閣府の核融合戦略有識者会議の下に「フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方検討タスクフォース」を設置し,約1年間にわたり議論を重ねた。この過程では,海外(米国,英国)や研究機関,J-Fusion等へのヒアリング及びパブリックコメントを実施し,国内における現在の法体系や過去の検討も踏まえ,令和7年3月25日に「フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方」を公表した。

     本稿では,この「基本的な考え方」の概要と,最近の政府動向について解説する。

  • 規制当局としてまず確認したいリスク
    永瀬 文久
    2026 年68 巻8 号 p. 522-524
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     内閣府が「フュージョンエネルギーの実現に向けた安全確保の基本的な考え方」を決定したことを受け,原子力規制委員会は,フュージョン装置の規制に関する検討を行うために,原型炉等の研究開発を進める事業者等から開発状況や安全確保の考え方,今後の見通し等について聴取する意見交換会合を開催している。本稿では,これまでに事業者等から得た情報や原子力規制庁内での調査及び議論を基に,規制当局としてまず確認したいリスクについて私見をまとめる。

  • 科学のリスクとまだ見ぬ科学のリスク
    奥本 素子
    2026 年68 巻8 号 p. 525-528
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     科学技術のリスクを管理する際には,そのリスクが管理可能なリスクか否かということを検証する必要がある。核融合炉という技術は不定性が高く,そのリスクの範囲を科学的に定めることは難しく,専門家がリスクの責任を負うことに限界がある。本稿ではサイエンスコミュニケーションの観点から不定性の高い科学技術の運用で,なぜ専門家の中でリスクを話し合うことに限界があるのかについて論じ,リスクを社会と分かち持つという概念をポスト・ノーマルサイエンスの議論から紹介していく。

解説
  • 高い不確実性を前提としたCLADS基礎・基盤研究とその戦略
    眞田 幸尚, 須山 賢也, 飯島 和毅
    2026 年68 巻8 号 p. 529-533
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     福島第一原子力発電所(1F)の廃炉および環境回復は,作業対象や作業環境に関する情報取得が高線量等により制約される中で進められる,極めて不確実性の高い長期的事業である。このため,廃炉の各段階において求められるのは,不確実性を完全に解消することではなく,不確実性が残る状況を前提として,将来の工程選択肢を狭めないための技術基盤をあらかじめ整備しておくことである。日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では,燃料デブリや放射性廃棄物の性状把握,分析・処理・保管・処分に関する基礎・基盤研究を通じて,多様な技術オプションを幅広く準備・維持することを研究戦略の中核としてきた。本稿では,廃炉全体工程に内在する判断点を俯瞰的に整理した上で,CLADS研究のうち,判断に用いられる情報を整備する研究を,判断そのものを代替するものではなく,判断が成立するための前提条件を整える研究として位置づけるとともに,その他の工程において将来の選択肢を確保するための研究の役割を整理する。これにより,CLADSの基礎・基盤研究を,高い不確実性を前提とした研究基盤として捉え直し,1F廃炉・1F周辺の環境回復における研究の意義と今後の展望を示す。

連載講座
  • 第6回 SiC/SiC複合材料〜炉内構造材料としての視点〜
    近藤 創介
    2026 年68 巻8 号 p. 534-538
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/10
    解説誌・一般情報誌 認証あり

     SiC/SiC複合材料の適用性は,単純な材料特性だけでは評価できない。本稿では,照射環境下における材料挙動を,構成要素の特性変化としてではなく,損傷進展機構の成立という観点から捉える。さらに,実機環境における空間的不均一性および時間発展を考慮し,材料,環境,時間が相互に作用する問題として整理する。見えてくるのは,材料のふるまいが個々の特性値だけでは尽くせず,構成要素の関係の中に現れるということである。

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