日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
29 巻, 4 号
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特集1
  • 岩瀬 克己
    2012 年 29 巻 4 号 p. 255
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    本特集は第24回日本内分泌外科学会総会において討議されたテーマの中から,甲状腺外科診療において最も身近で重要な課題である「再発甲状腺分化癌の治療戦略」を採り上げました。甲状腺癌の大部分を占める甲状腺分化癌(乳頭癌>>濾胞癌)はきわめて良好な生命予後を示す固形癌として知られている。その良好な生命予後の一方,再発予後は決して良好とは言えず,切除後の累積再発率は20年間で20~30%と報告されている。こうした状況から,初回治療については再発予後予測因子を考慮して再発予防と術後早期のQOLとのバランスを考慮した術式の選択と内用療法(アブレーション)の適応について多くの提案が成されている。一方,再発後の生命予後においても,その再発様式がそれを大きく左右することが知られており,その予後予測因子を知ることは,その後の治療戦略を立てる上で大変重要な要素となる。再発病変に対する治療には,局所的治療として外科治療と骨転移,脳転移,肝転移,胸水などに対する手術以外の臓器特異的治療があり,転移臓器に非特異的な治療として放射性ヨード内用療法がある。しかし,他の再発癌に対して一般的に用いられる抗腫瘍薬の効果はほとんど期待できず,その治療戦略上の有力な手段とはなっていない。したがって,再発甲状腺癌の予後改善を目指すには手術を主体とする局所治療と内用療法の効果に頼るしかないのが現状であり,両者の適応と限界を検討し,適切な組み合わせを求めることとなる。また,遠隔転移再発癌と言えども他の癌の生命予後に比べ比較的良好な経過を取るものが多いことから,逆にQOL低下を招くような治療は避けなければならない。今回は,「再発甲状腺癌の治療戦略」を主題とし,その外科治療とアイソトープ治療のあり方をテーマとして,乳頭癌再発後の生命予後因子,再発甲状腺分化癌に対する外科治療(2題)と内用療法(2題)の5題のご発表を頂きました。従来は,我が国と欧米各国とではアイソトープ(131I)治療を取り巻く医療環境の違いから海外の治療指針を適用することによる不都合もあり,我が国で独特の治療戦略が採られてきました。すなわち,分化癌に対しては外科治療に重点を置いた局所コントロールを主体とした治療戦略が多くの施設で採られてきました。しかし,この数年の間に外来診療における放射性ヨード照射線量の増加やrh-TSHの保険診療認可などを受け,甲状腺癌に対するアイソトープ治療の環境も大きく変化しつつあり,内用療法を積極的に採りいれる診療施設が増加する傾向が伺われる。今後,我が国における「甲状腺分化癌の治療戦略」を再検討する時期が到来しているとも言える。今回の特集が新たな治療戦略の策定の一助となることを期待するものです。
  • 伊藤 康弘, 宮内 昭
    2012 年 29 巻 4 号 p. 256-258
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    甲状腺乳頭癌の予後因子については様々な研究がなされているが,実際に再発をきたした後の生命予後がどうなっているのかは,あまりデータがない。今回われわれは,リンパ節再発および遠隔再発後の乳頭癌の生命予後因子について検討した。術後にリンパ節再発をきたした329症例における検討では,再発時年齢,原発巣の腫瘍径,原発巣のEx,病理組織検査によるaggressive histology,3cm以上のリンパ節転移が生命予後を左右した。多変量解析ではEx2以外の因子が独立した生命予後因子として認められた。遠隔再発をきたした105例では再発年齢,原発巣のEx,肺以外への再発が単変量解析で生命予後因子として認められ,このうち再発年齢,Exが多変量解析でも独立した生命予後因子であった。もともとの原発巣やリンパ節の状態が,生命予後を規定することがわかった。
  • 今井 常夫, 菊森 豊根, 内田 大樹, 林 裕倫, 佐藤 成憲, 武内 大, 都島 由紀子
    2012 年 29 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    1979年から2009年までに行った再発甲状腺癌に対する手術104例を,手術で腫瘍を肉眼的に切除できた群(R群)と,肉眼的に明らかに癌の遺残を認めた群(P群)に分け,手術後の経過を検討した。R群はP群に比較し有意に全生存率,疾患特異的生存率,無再発生存期間が良好であり,肉眼的に完全切除が行えれば,肉眼的に癌が遺残した場合に比べて良好な予後が得られるという結果だった。気管周囲の再発症例では,マージンゼロであっても長期間の局所コントロール可能な症例が存在した。マージンを確保する目的で喉頭全摘を行った症例はなかった。気管周囲の切除では,肉眼的治癒切除の場合でもほとんどの症例がマージンゼロに近く,それでも比較的良好な予後が得られたのは,同じ頸部の扁平上皮癌の術後経過に比べて大きく異なる点と考えられた。手術合併症との関連は症例ごとの判断が必要である。
  • 川真田 明子, 岡本 高宏
    2012 年 29 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    甲状腺分化癌の再発形式として最も多いリンパ節転移に対してはその摘出あるいは系統的郭清を行うが,触知できない小さな転移リンパ節を的確に摘出することは必ずしも容易でない。一方で進行再発例では外科治療が困難となる。これらの場合における当科の戦略を報告する。触知の難しい転移リンパ節に対しては色素を使ったマーキングを行っている。超音波ガイド下に穿刺を行ってピオクタニンを注入し,これを目安に目標のリンパ節へ達して摘出する。本法により転移リンパ節を確実に摘出でき,取り残しの懸念がない。また剝離操作が最少限となり合併症の危険を回避できる。一方,手術野の解剖学的把握が難しくなる場合がある。手術適応外と判断した転移リンパ節に対しては放射線外照射治療を行い,腫瘍縮小効果や血中サイログロブリン値の低下あるいは症状緩和の効果を得ている例がある。
  • 絹谷 清剛
    2012 年 29 巻 4 号 p. 268-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    放射性ヨウ素131Iによる内用療法目的に患者さん達を紹介していただく側にとって,なぜこのような症例を内用療法に紹介してくるのであろうかと疑問に感じることが少なからず経験される。このことは,医学的適応の有無のみならず,放射線管理上の適応の面においてもそうである。本稿では,内用療法を考慮する際の原則的な事柄を総括する。
  • 東 達也
    2012 年 29 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    再発甲状腺分化癌へのアイソトープ治療(RIT)の予後に関するデータは少ない。我が国のガイドラインでも局所再発・リンパ節転移例ではRITのみでの制御は難しく,外科処置を先行しRITは補助療法とすることが望ましいとされるが,同じ再発といっても初回手術時のアブレーションないしRITの有無を考慮して,対処すべきである。アブレーション後再発では外科処置を優先し,RITはあくまで補助療法だが,RIT抵抗の可能性も念頭にFDG-PETでの集積も確認し,外照射や分子標的治療なども含めた総合治療を考慮すべきだろう。逆にRIT未治療の再発例にはRITを積極的に早期に施行すべきと考える。
特集2
  • 藤森 実, 茂松 直之
    2012 年 29 巻 4 号 p. 278
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    乳癌診療は,2000年にPerouらによってintrinsic subtypeが発表されて以来,これを念頭に置いて全体の治療戦略を考えていく必要性が広く認知され,この10年間で大きく変化してきたといえる。整容性も考慮した確実な局所療法としての外科手術と放射線療法に,内分泌療法,化学療法そして分子標的治療を的確に組み合わせていくのが今日の乳癌治療戦略であるが,このような状況を踏まえて,第24回日本内分泌外科学会総会では,「乳癌診療の未来」として,治療全般にわたる近未来から将来に向けた研究展望を発表・討論するシンポジウムが開催された。このシンポジウムでは乳房温存手術における正確な病巣把握のための新規補助診断技術,乳癌内分泌治療とくにアロマターゼ阻害剤をめぐる最新情報,エストロゲンレセプター陽性乳癌におけるmicroRNA研究,トリプルネガティブ乳癌に対する治療戦略,乳癌の嫌気的環境を標的とした新規腫瘍選択的治療のトランスレーショナルリサーチが発表されたが,本特集ではこれら5演題についてそれぞれ執筆していただき,さらにシンポジウムでは取り上げることができなかった放射線治療の進歩についても書き加えていただいた。この特集により,乳癌治療の進歩に向けてさらなる展望が開けることを期待する。
  • 中野 正吾, 藤井 公人, 吉田 美和, 高阪 絢子, 毛利 有佳子, 安藤 孝人, 手塚 理恵, 秋月 美和, 福富 隆志, 石口 恒男, ...
    2012 年 29 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    Real-time Virtual Sonography(RVS)は磁気位置センサーユニットを用いて,超音波施行中に探触子走査面に一致したMRI/CT画像情報をリアルタイムに表示することができる画像診断装置である。我が国で開発された革新的画像融合技術であり,愛知医科大学では2005年よりRVSを導入し乳腺画像診断への応用開発を行っている。RVSの位置精度における検討では乳腺MRI造影病変検出における超音波画像とMulti-Planar-Reconstruction(MPR)画像との位置ずれは,3次元方向においてそれぞれ7.7,6.9,2.8mmであり,3次元誤差は12.0mmであった。Second-look USにおけるMRI-detected lesionの検出率は超音波単独では30%であったが,RVS併用により90%まで改善した(p<0.001)。RVSを用いることで術者の技量にかかわりなく再現性をもってMRI造影病変近傍に超音波探触子を誘導することが可能であった。3D-CT lymphography,SPECT,PET-CTとの組み合わせや時相の異なる超音波画像情報の比較などへも応用可能な新技術であり,乳腺画像診断の新たなモダリティとなることが期待される。
  • 岩瀬 弘敬, 山本 豊
    2012 年 29 巻 4 号 p. 284-288
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    閉経後乳癌に対する術後内分泌療法はタモキシフェンからアロマターゼ阻害薬に主役の座が移った。また,アロマターゼ阻害薬は進行再発乳癌の一次内分泌療法としても推奨されている。アロマターゼ阻害薬耐性の二次内分泌療法としては,異なる構造を持つアロマターゼ阻害薬,タモキシフェン,トレミフェンなどの選択的エストロゲンレセプター機能調節物質(SERM),あるいはアゴニスト作用を持たないフルベストラントなどが挙げられるが,その投与順序は明らかでない。アロマターゼ阻害薬耐性例には,mTOR阻害薬やPI3K阻害薬のような細胞内シグナル阻害薬と内分泌療法薬の併用についても大きな期待がある。さらに,長期間のエストロゲン枯渇療法後の再燃には,エストロゲン療法が有効な場合もある。ホルモン依存性があると考えられる閉経後再発乳癌には,生物学的因子や治療経過を考慮して,作用機序の異なる内分泌療法薬を逐次交代投与することがQOLを維持した延命に有益である。
  • 山下 啓子, 遠山 竜也, 吉本 信保, 遠藤 友美
    2012 年 29 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    乳癌組織のエストロゲンレセプター(ER;estrogen receptor)の発現量は内分泌療法や化学療法の奏効性や予後などの生物学的特性に関与する。乳癌組織のERの発現調節に関しては,ER遺伝子のメチル化やER蛋白のユビキチン化による分解などの報告があるが,臨床的に重要であるものは未だ見出されていない。最近,ERのmRNA 3’末端非翻訳領域に結合してERのmRNAと蛋白発現を抑制するマイクロRNA(microRNA)が報告された。われわれは乳癌組織におけるこれらERのmRNAに直接結合するmicroRNAの発現を定量的RT-PCR法により検討して,ERの蛋白発現や予後に関与するmicroRNAを見出した。さらに最近,ER陽性乳癌の生物学的特性に関与すると考えられるmicroRNAとその標的遺伝子を同定し,これらが治療標的あるいは薬物療法の感受性のバイオマーカーとして有用であると推測している。
  • 紅林 淳一
    2012 年 29 巻 4 号 p. 293-297
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は,生物学的悪性度が高く,早期に再発し,治療に難渋することが多い。現在,TNBC患者の予後改善を目指し,数多くの基礎的・臨床的研究が行われている。TNBCは,luminalやHER2サブタイプ乳癌と異なり,明確な「治療の標的」が存在しないことが最大の問題である。一方,最近の基礎研究により,遺伝子発現プロファイルを用いればTNBCは,複数のサブタイプに分類することが可能であり,サブタイプ毎に治療効果の期待できる薬剤を選別できることが示唆されている。今後は,TNBCのサブタイプ分類の検査法を確立し,そのサブタイプ分類で選別されたTNBC患者を対象に,最も有効性が期待される薬剤を用いた臨床試験が行われるべきである。そのようなアプローチにより,治療に難渋するTNBCの「個別化治療」が実現するかも知れない。さらに,各々のサブタイプ毎に癌の進展を牽引する“driver”遺伝子が判明すれば,それらを標的とした新たな治療薬の開発につながる。
  • 藤森 実, 藤田 知之, 西村 基, 越川 佳代子, 名倉 直彌, 天野 純, 谷口 俊一郎
    2012 年 29 巻 4 号 p. 298-300
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    トランスレーショナルリサーチの必要性が提唱されて久しいが,癌治療における基礎研究の成果を臨床の場に橋渡しした実例を紹介する。われわれは1970年代から研究が始まった固形癌の嫌気的環境を標的とした嫌気性菌ベクターの基礎実験をもとに,組換えビフィズス菌製剤による新規腫瘍選択的治療薬の開発研究を行っている。ヒト常在菌であるBifidobacterium longumB. longum)菌を担癌動物に静脈内全身投与すると腫瘍組織でのみ特異的に集積・増殖することを見出し,Prodrug/Enzyme療法に用いられるCytosine Deaminase遺伝子を導入した組換えB. longum菌を作製した。ヒト乳癌細胞株移植ヌードマウスの治療実験を施行した結果,腫瘍内局所でのみ高濃度の5-FUが検出され腫瘍縮小効果が認められた。前臨床試験の結果,phase Ⅰ/Ⅱaプロトコールが米国FDAに承認され,臨床治験が開始されることとなった。
  • 酢谷 真也, 茂松 直之
    2012 年 29 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    乳房温存手術を施行された場合,浸潤癌,非浸潤性乳管癌いずれにおいても基本的に全例で術後照射が推奨されている。乳房切除術後の放射線治療は局所再発率の高い腋窩リンパ節転移陽性例に推奨され,胸壁および鎖骨上窩リンパ節領域に対して照射が行われる。近年,照射技術の進歩により標的体積内の線量分布均一性は向上しており,メタアナリシスにて,術後照射は局所制御率向上のみならず生存率の向上にも寄与することが示されている。一方,乳癌薬物療法の分野では,HER2陽性乳癌において,化学療法へのHER2阻害薬の併用により,術前補助療法として用いた場合には病理学的完全奏効率が,術後補助療法として用いた場合には生存率が向上することが報告されている。現時点では放射線治療とHER2阻害薬併用の長期の有効性および安全性は確立しておらず,左側乳房への放射線治療時には心臓への照射線量に十分注意することが必要である。
特別寄稿
  • 福成 信博
    2012 年 29 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    甲状腺腫瘍に対するインターベンションは,のう胞性病変に対するエタノール局注療法が1980年代から試みられ,臨床効果が報告されてきた。のう胞病変に対する一定の効果は得られるものの,充実性,血流豊富な腫瘍性病変に対しては十分な効果とは言えなかった。現在,本邦において熱凝固療法としてラジオ波焼灼療法(RFA)が肝臓,腎臓,乳腺において臨床応用されており,甲状腺腫瘍に対しても,その臨床応用が開始されている。海外でも甲状腺良性腫瘍や切除不可能な悪性腫瘍を対象にRFAのみならず,レーザ治療(ILP)や集簇超音波治療(HIFU)などが実施され,現在多くの臨床報告がなされている。これまでの我が国における甲状腺Interventionの経緯と海外における現状をまとめると共に,現在,われわれの施設で行っている甲状腺RFAの現状に関して述べる。
症例報告
  • 川﨑 由香里, 杉野 圭三, 西原 雅浩, 川口 康夫, 坂井 寛, 楠部 潤子, 岡本 英樹, 土肥 雪彦
    2012 年 29 巻 4 号 p. 314-317
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    症例は66歳,女性。50歳時にバセドウ病に対して甲状腺左葉部分切除を施行。経過観察中に甲状腺腫大を認め,チアマゾール内服を継続していた。吐下血を主訴に近医受診。食道静脈瘤からの出血を認め,内視鏡的静脈瘤結紮術を施行された。その後の検査で巨大甲状腺腫からの血流による食道静脈瘤と診断され,加療目的に当科紹介・転院となった。前頸部に10cmを超える甲状腺腫大を認め,甲状腺全摘術を施行した。腫大した甲状腺は極めて血流豊富で,特に右Berry靭帯周囲では,気管膜様部から食道に向かう怒張した静脈を数本認めた。術後第6病日に上部消化管内視鏡検査を行い,食道静脈瘤の著明改善を確認した。巨大な甲状腺腫大を呈する症例の診療に際しては,下行性食道静脈瘤が存在している可能性を念頭に置いておく必要があると考えられた。
  • 佐藤 伸也, 橘 正剛, 横井 忠郎, 山下 弘幸
    2012 年 29 巻 4 号 p. 318-321
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    甲状腺未分化癌は甲状腺乳頭癌や濾胞癌からの未分化転化によって生じるとされる。今回その経過を超音波検査で確認できた症例を経験した。症例は83歳女性で,4cmの濾胞性腫瘍として外来で経過観察中に,超音波検査で内部均一で等エコーであった腫瘍が,腫瘍の約半分が低エコーとなり,腫瘍径も増大した。再度の細胞診で未分化癌が強く疑われたため,手術を施行したが術後3カ月で局所再発および遠隔転移をきたし,未分化転化判明から4カ月後に患者は死亡した。はからずも甲状腺濾胞性腫瘍が未分化転化する過程を超音波検査で確認できた症例となった。
  • 壁谷 雅之, 北野 睦三, 齊藤 祐毅, 古川 麻世, 杉谷 巌
    2012 年 29 巻 4 号 p. 322-325
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー HTML
    症例は,甲状腺乳頭癌の38歳,女性。甲状腺癌(T4aN0M1,stageⅡ)の診断で,34歳7カ月時点に甲状腺全摘,気管合併切除(気管輪1-5,端々吻合),中心領域郭清術が施行された。術後,多発肺転移に対し内照射療法を計4回施行しているが,肺転移巣は徐々に増多,増大した。38歳4カ月時点で軽い上気道炎を契機に呼吸苦が出現した。入院の上全身管理を行ったが呼吸不全のため永眠された。甲状腺乳頭癌は,非常に予後が良いことで知られ,特に若年で発症した場合は更に高い治癒率のため本疾患で亡くなることは稀有である。また,本疾患は腫瘍増殖速度が非常に緩徐である,疾患特異的治療として内照射療法が有効である,などの他の悪性腫瘍とは異なる特徴がある。これら本来治療する上で利点と言える特性は,がん終末期においては反対にその対策を困難にする。今回,生命予後が予測できず対応に苦慮した症例を経験したので報告した。
  • 椿 秀三千, 伊藤 公一, 松本 雅子, 鈴木 美穂, 竹内 透, 加藤 万事, 市原 周
    2012 年 29 巻 4 号 p. 326-328
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
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    症例は54歳,女性。前頸部腫大と疼痛のため甲状腺疾患の疑いで当院に紹介となった。局所所見では甲状腺右葉の腫大と圧痛を認めた。超音波検査は甲状腺右葉が軽度腫大しており,右葉中下部全体に低エコー域を認めた。血液検査ではCRPは0.51mg/ dℓ(基準値0.3以下)とやや高値を示したが,甲状腺ホルモン濃度は基準値内にあり抗サイログロブリン抗体や抗甲状腺ぺルオキシダーゼ抗体も基準値内であった。以上の所見より亜急性甲状腺炎と診断し経過観察とした。初診時から4カ月が経過した時点で超音波検査を実施した際に甲状腺右葉中下部に微小な高輝点が点在する9.1×7.6×6.9mm大の辺縁不整な低エコー域を発見した。同部位に対する細胞診で甲状腺乳頭癌が判明し手術を施行した。以上のように亜急性甲状腺炎においては結節性病変,特に悪性疾患の合併の見落としを防ぐためにも,超音波検査による経時的な経過観察は必要であると考えられた。
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