日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
31 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集1
  • 冨永 芳博
    2014 年 31 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    第46回日本甲状腺外科学会学術集会を平成25年9月26日,27日名古屋市 ウィンク愛知にて開催させていただきました。会長を拝命してから約2年間,色々な企画を考えてまいりました。そして,プログラムの隅々にその思いを盛り込みました。メインテーマは先達の背中から見た甲状腺・副甲状腺外科の明日としました。SwedenからAkerstrom先生,TaiwanからChiang先生,ItalyからElisei先生,そして日本からは宮内先生,高見先生に特別講演でお話しいただきました。今学会へ出席いただいた若い先生方に感激していただきたかった。この分野の明るい未来を充分感じ取っていただけたと期待しております。今学会を契機に一人でも多くの若い先生がわれわれの仲間に入って下されば幸いです。色々な分野との知識の交流を計りました。内科,放射線科,病理と外科とのクロストーク,教育セミナー,ランチョンセミナー,CPCなどですが,より大局的に甲状腺・副甲状腺外科を診る契機になっていただけたと存じます。又,未分化癌コンソーシアム,日本甲状腺病理学会,市民公開講座,PSSJとの合同シンポジウムの機会を設けました。サブテーマは反回神経と副甲状腺としました。Chiang先生,Akerstrom先生のすばらしい特別講演を皮切りに,いくつかのシンポジウム,ワークショプで両テーマを取り上げました。熱のこもった討議がなされうれしく感じております。今回は副甲状腺に関する演題が多く,口演,ポスターにも多くの発表が見られました。もうひとつの取り組みは,国際化です。今回は韓国から3題の演題の応募がありました。抄録の演題名,発表者,所属は英語表記いただき,発表スライド,ポスターは出来る限り英語で表記するようにお願いしました。少なからず英語表記のポスターが見られましたし,口演を英語で発表された方もいらっしゃいました。国際化,特にアジアの国々との交流は積極的であるべきと考えます。本学会での発表を国際学会,英語での論文投稿の登竜門になることを望みます。是非次からの学会会長にも継続いただきたいと存じます。さて,甲状腺の手術の際,重大な問題となる合併症のひとつは副甲状腺機能低下症です。Billrothが甲状腺手術をした際,テタニーが併発し,そのことから副甲状腺の存在が注目され,その機能が確認されたのは有名な話です。本学会でもワークショップ2で甲状腺手術における副甲状腺機能温存はどの様にするか?を取り上げ,川崎医大 乳腺内分泌外科,田中 克浩先生と,野口病院 内野 眞也先生に座長をお願いしました。甲状腺と副甲状腺の接点である本問題を,今回の特集に選択したいと思います。6名の演者の方々には本問題について熱く語って頂きました。皆様における今後の診療のお役に立つものと期待いたします。
  • 鈴木 尚宜, 竹内 靖博
    2014 年 31 巻 1 号 p. 2-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    甲状腺手術後の副甲状腺機能低下症における臨床的問題は低カルシウム血症とその関連事象である。副甲状腺ホルモン不足による副甲状腺機能低下症に対する治療は,活性型ビタミンD3製剤の投与が主体となる。血清カルシウム濃度は,ある程度の過換気状態でも低カルシウム血症による自覚症状が生じないレベル(補正カルシウム濃度8.0mg/dL程度)を維持する。尿路結石症や腎機能低下のリスクを抑えるために,随時尿のカルシウム(mg/dL)/クレアチニン(mg/dL)比を0.3以下にする。高カルシウム尿症を生じる場合や尿路結石の合併例には,サイアザイド系利尿薬の併用を検討する。副甲状腺機能低下症患者に副甲状腺ホルモン製剤を併用した場合に,活性型ビタミンD3製剤の必要量の減少,および尿中カルシウム排泄の改善が報告されている。副甲状腺ホルモン不足による副甲状腺機能低下症を副甲状腺ホルモン製剤で治療することは今後の検討課題である。
  • 木原 実, 宮内 昭
    2014 年 31 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    甲状腺全摘術の合併症である副甲状腺機能低下症は少なからず生じる。これを予防するためには副甲状腺をin situに血行温存する方法と自家移植をおこなう方法があり,いずれも有効な方法である。移植法では回復は期待できるが,血行温存法と比べてその機能回復の程度は劣り,移植だけであれば少なくとも2腺以上は必要となる。より良い機能温存のためには出来る限り血行温存に努めるべきであるが,血行温存できなかった副甲状腺は可能な限り摘出標本から探し出し1腺でも自家移植しておくと永続性副甲状腺機能低下症のリスクを下げることができる。
  • 宇留野 隆, 正木 千恵, 渋谷 洋, 北川 亘, 長濱 充二, 杉野 公則, 伊藤 公一
    2014 年 31 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    最初に,永続性副甲状腺機能低下症を回避するために必要な,術翌日の血中i-PTH(Day1-PTH:非移植副甲状腺機能)と移植腺数を検討した。Day1-PTH≧10pg/mlでは,永続性機能低下は0.6%(3/493)と低かった。Day1-PTH<10pg/mlでも,2腺以上移植した症例は,9.2%(22/239)に抑えられた。次に,術中i-PTH値(全摘後5分値:PTT-PTH)と,Day1-PTHの相関を調べた。PTT-PTH≧15pg/mlは,Day1-PTH≧10pg/mlに対して,感度80.15%,特異度82.91%,PPV 76.22%,NPV 85.94%であった。計算上,PTT-PTH<15pg/mlの時,移植腺なしでは,36.1%の確率で永続性機能低下となりえる。2腺以上の移植を行うと8.3%となり,絶対危険減少27.8%,相対危険減少77.0%が期待される。
  • 日比 八束
    2014 年 31 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    永続的副甲状腺機能低下症は,甲状腺全摘術で懸念すべき合併症の一つである。今回甲状腺全摘を要する疾患ごとに,副甲状腺の機能温存状況を検討した。その結果,術後1年の時点でintact PTH値が正常値下限であった症例の頻度は甲状腺癌症例で0.78%,バセドウ病で2.0%,非中毒性甲状腺腫では0%であった。また副甲状腺が将来過形成をきたす可能性のある重症慢性腎臓病やMEN2A型への甲状腺全摘を施行した症例では副甲状腺を全摘し,一部前腕筋肉内へ自家移植したがこれらの症例で永続的副甲状腺機能低下症をきたしたものはなかった。副甲状腺の温存状況は個々の症例や対象疾患により様々ではあるが,まずは発見しやすい上腺を確実に術中に同定することが重要と思われる。
  • 菊地 勝一, 松塚 文夫, 岸本 昌浩
    2014 年 31 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    背景:われわれの施設における甲状腺手術時術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討し,副甲状腺の取り扱いについて考察した。 対象,方法:平成20年から24年まで,明和病院において行った248例の甲状腺手術例中,全摘(超亜全摘)術は63例,葉切除術は185例であった。全摘(超亜全摘)術の内訳は,分化癌:36例(乳頭癌35例,瀘胞癌1例),腺腫(多発):3例,バセドウ病:19例(全摘:9例,超亜全摘:10例),橋本病:5例である。手術は原則,分化癌は全摘か葉切除,バセドウ病,橋本病,腺腫は全摘,超亜全摘術を行っている。この全摘(超亜全摘)術について,術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討した。副甲状腺の取り扱いについては,疾患の如何に関わらず,上副甲状腺については可及的に温存,下副甲状腺については,可及的同定,摘出筋肉内移植をした。一過性は,1~2カ月後にi-PTHが回復カルシウム剤,ビタミンD3の投与をやめた症例,永久性はそれ以後も投与を続けた症例と定義した。われわれのテタニーの標準対処は,カルチコール2A+生食100ml/1時間点滴,経口的としてアスパラCa8錠(分4),ビタミンD3(2μg)投与である。 結果:葉切除185例の副甲状腺機能低下合併症はなかった。全摘(超亜全摘)術は63例の甲状腺術後,副甲状腺機能低下合併症は11例(17%),内訳は一過性9例(14%),永久性2例(3%)であった。分化癌36例中,副甲状腺機能低下合併症は9例(25%),内訳は一過性7例(19%),永久性2例(6%)であった。バセドウ病19例中,一過性副甲状腺機能低下1例(5%)で亜全摘(超亜全摘)の症例であった。橋本病 全摘5例中一過性副甲状腺機能低下1例(20%)であった。強いテタニー,全身けいれんを伴う症例は2例あり,バセドウ病とやせた甲状腺癌の全摘症例であった。 結論:1.一般病院における甲状腺術後,副甲状腺機能低下症の頻度を報告した。2.副甲状腺の同定と筋肉内移植は永久性副甲状腺機能低下症を避けるためには妥当な方法と思われた。
  • 福島 俊彦, 鈴木 眞一
    2014 年 31 巻 1 号 p. 24-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    永続的上皮小体機能低下症は,甲状腺手術において避けるべき合併症の一つである。本稿では,当科で行っている上皮小体温存手技の実際を解説する。1.Capsular dissection:要点は,膜解剖の正確な把握である。Surgical thyroid fasciaとtrue thyroid fasciaを確認し,その間で,剝離操作を行う。これにより,自ずと上皮小体はin situに温存できる。加えて,反回神経はsurgical thyroid fasciaと同じ層で温存されることになる。2.上皮小体の自家移植:中心領域のリンパ節郭清を併施する場合,下腺の血流は犠牲にせざるをえないことが多いので,摘出しmincingしたものを胸鎖乳突筋内に自家移植する。胸腺舌部に迷入している下腺も可及的に確認し,同様に自家移植する。3.Surgical loupeの使用:高解像で明るい2.2倍レンズのloupeとloupe装着型のLEDライトを好んで使用している。これにより,明視野下に膜解剖の認識が可能である。
特集2
  • 今井 常夫, 岡本 高宏
    2014 年 31 巻 1 号 p. 27-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    日本甲状腺外科学会の事業として行われていた甲状腺癌登録は,個人情報保護法の制定後休止している。甲状腺癌登録の歴史・現状については,この特集において伊藤公一先生が詳しく記載されている。がん登録は必要だけれど,誰がイニシアチブをとってどのように継続し推進していくかは,非常にむつかしい課題である。この特集は,学会として甲状腺癌登録の再開を考える上で参考となるのではないかと考えられる分野について執筆をお願いした。がん登録の「専門家」というものは存在しないため,おのおのの執筆者の方には無理を承知でお願いしたところであり,それでも各分野の歴史・現状をはじめ,将来展望についてもしっかり書いていただいており,読み応えのある内容となっている。特集は甲状腺癌について日本甲状腺外科学会で甲状腺悪性腫瘍登録委員会委員長である伊藤公一先生に執筆いただいた。乳癌は日本乳癌学会登録委員会副委員長で,がん登録の総本山である国立がん研究センター中央病院の木下貴之先生に,泌尿器科の癌登録は日本泌尿器科学会がん登録推進員会委員長である徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部泌尿器科学分野の金山博臣先生に執筆いただいた。またNCDとがん登録について東京大学の友滝愛先生にご執筆いただいた。NCDについてなじみの薄い会員も多くおられることと思う。NCDとはNational Clinical Databaseの略で,外科専門医制度と連動した日本外科学会主導の臨床データベース事業である。専門医の申請・更新にはNCDによる症例登録が必須であるため,外科専門医はNCDについて知っているが,泌尿器科や耳鼻咽喉科・内科系の医師にはほとんど知られていないのが現状と考えられる。外科医も専門医申請や更新に必要なため登録しているという程度の認識であることも多いかもしれない。しかし年間120万件のデータが登録されるビッグデータであり,今後これらのデータを最大限に利活用したフィードバックが期待される。現在NCDに登録されている内容には,甲状腺手術症例はがん情報も収集されている。すなわちがん登録として利用することもこのシステムを使えばすでに可能である。実際乳癌や膵癌はNCDでがん登録を行っている。しかし甲状腺癌の場合は,耳鼻咽喉科で行われた手術はNCDで登録されないため,現時点でNCD登録だけでは片手落ちとなる。また未分化癌など手術不能例,甲状腺微小乳頭癌の非手術例の登録も行われない。個人情報保護法が発令されたときの対応は学会によって大きく異なった。乳癌登録は,乳癌学会が資金を出して独自のシステムを作成し個人情報保護法に抵触しないシステムを新たに作成し乳癌登録を継続した。そのシステムは現在NCDに移行し年間5万例の乳癌が登録される大規模なデータベースに成長した。甲状腺外科学会は,資金的なこともありがん登録は中断したが,NCDのシステムを利用すれば学会が独自に登録を再開するよりは少ない予算で登録が可能となることが考えられる。米国は法律に裏付けされたSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)という地域がん登録システムを持っているが,全国登録ではなく,米国人口の28%を収集しているサンプル調査である。日本で従来行われてきた地域がん登録も同様のサンプル調査となっており,乳癌学会で登録されているような年間5万件という全例登録にせまる乳癌登録には遠く及ばない。しかし学会主導である限界か,2010年に行われた予後調査における予後判明登録率は48.9%にとどまった。2013年12月に制定された「がん登録推進法」では,住民票による生存確認・死亡情報との突合が明記されており,学会主導のがん登録にも「がん登録推進法」の予後調査が適用できれば,予後調査が飛躍的に正確になることが期待される。がん登録を学会主導で今後も行っていくのか,国主導のシステムにまかせるのか,両者をうまく合体させることが可能なのか,これからの検討課題である。
  • 友滝 愛, 宮田 裕章, 岩中 督
    2014 年 31 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    医療の質向上を目的とした臨床データベース事業として,2011年から外科専門医制度と連携したNational Clinical Database(NCD)が始動した。NCDは開始当初より,一部の臓器がんに対してはがんの詳細情報が登録され,2012年からは乳癌登録・膵癌登録も開始された。NCDデータは,がん診療の質を評価する指標の開発やがん医療の均てん化の取り組みなど,様々な活用が期待される。一方,がん情報の症例登録では,登録の悉皆性や予後情報の追跡調査などデータの質の担保が重要である。個人情報保護や倫理的側面に配慮したうえで,他のがん登録との連携も見据えたデータ収集の効率化を検討している。さらに,医療現場にリアルタイムで直接情報をフィードバックする仕組みを構築し,患者の術後死亡や合併症の予測率を計算する機能の開発や,NCDデータを基盤とした臨床研究などにも取り組んでいる。NCDは患者視点に立ち,医療従事者が理解・納得して参加できる事業として,さらに発展を目指している。
  • 伊藤 公一
    2014 年 31 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    甲状腺悪性腫瘍登録として甲状腺悪性腫瘍全国登録(UICC),地域がん登録,National Clinical Database(NCD)の3種が存在するが,そもそもの目的が異なるために,不一致,無駄な作業が多数存在し,現場の登録業務で問題が山積している。そこで,それぞれの経緯,現状を調べ,登録項目の詳細を分析した。それらが効率よく整理,省力化されたうえで,長年に渡り日本甲状腺外科学会が管轄し,諸般の事情で8年前より休止中であるUICCの円滑な復活に繋げたい。
  • 木下 貴之
    2014 年 31 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    日本乳癌学会全国乳がん患者登録調査は,本邦における乳がん治療の現況を把握し,その診断,治療,予後,疫学を検討することにより,乳がんの発生および治療成績についての統計から乳がんの発生要因を明らかにし,治療成績の向上や治療の均てん化を図ることを目的としている。1975年に乳癌研究会の事業として全国登録を開始し,個人情報保護法に対応して,2004年次症例よりWeb登録による新システムでの登録が開始された。2011年には乳がん登録が学会の認定施設および関連施設の必須条件となり,2012年より乳がん登録が外科学会のNCDへ移行され,乳腺専門医にはNCDの共通基本項目に加えて乳がん登録が必須となり,専門医制度と紐付けされた。今後はquality indicatorの選択により,診断や薬物療法などの会員および施設毎の評価も可能となり,本邦における乳がん診療の均てん化や質の向上に寄与するものと期待される。
  • 金山 博臣
    2014 年 31 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    泌尿器科における癌登録は,「膀胱癌取扱い規約」の刊行を契機に大学病院および関連病院の協力のもと国立がんセンターが事務局となり1983年に全国の膀胱癌患者の登録調査が開始された。1981年症例の集計結果が編集・製本され1985年に「全国膀胱癌患者登録調査報告第1号」が発行された。その後毎年膀胱癌患者の登録が実施され,2001年からは前立腺癌の登録も開始された。その後,膀胱癌,前立腺癌の登録を日本泌尿器科学会の会員が所属する全ての医療機関で行い,腎盂尿管癌,精巣腫瘍,腎癌についても登録を推進することを目的に,2002年に日本泌尿器科学会「がん登録推進委員会」が発足し,膀胱癌,前立腺癌,腎盂尿管癌,精巣腫瘍,腎癌の登録を行ってきた。最近の登録では対象施設の20~30%,専門医基幹教育施設の30~35%が登録している。今後,日本泌尿器科学会では専門医制度との連携も視野にNational Clinical Database(NCD)への参加が検討されており,NCDによる癌登録についても検討の予定である。
特別寄稿
  • 山崎 知子, 田原 信, 高見 博
    2014 年 31 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    近年,各癌腫にて分子標的治療の開発は目覚ましく,多くの分子標的治療薬が臨床に登場している。甲状腺癌においても近年分子標的薬の開発がとても目覚ましい。2013年ASCO(American Society of Clinical Oncology)にて放射性ヨード治療抵抗性の局所進行または転移を有する分化型甲状腺癌(Differentiated thyroid cancer以下DTC)に対してもSorafenibがプラセボとの比較にて統計学的有意に無増悪生存期間(PFS)で延長を示した。そのほかLenvatinib,Vandetanibに対する臨床試験が進行中である。甲状腺髄様癌(MTC)に対してVandetanibがプラセボとの比較にて統計学的有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが示され,欧米(FDA,EMA)ではすでに承認されている。従来の細胞障害性抗癌剤ではみられない副作用も観察されるため,副作用発現情報や対応方法の知識が重要である。
原著
  • 山田 光一郎, 田中 信三, 平塚 康之, 渡邉 佳紀
    2014 年 31 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/30
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    甲状腺乳頭癌の多くは予後良好であるが,周囲臓器浸潤例などは高危険度とされている。浸潤臓器の中でも,反回神経は最も頻度の高い浸潤部位である。今回われわれは甲状腺乳頭癌のうち原発巣が反回神経に浸潤していた49例について検討した。10年の粗生存率および疾患特異的生存率は,それぞれ69.0%,86.1%であった。初診時遠隔転移,反回神経以外の他臓器への浸潤(神経を含む複数臓器への浸潤)が予後と有意に相関していた。複数臓器への浸潤例では,初診時遠隔転移を認めなくても,術後遠隔転移出現率が高く,甲状腺全摘術+術後放射性ヨード治療の適応と考えられた。一方,反回神経単独への浸潤例については,予後が比較的良好である可能性もあり,甲状腺全摘術+術後放射性ヨード治療の適応とするかどうかは,今後のさらなる検討が必要であると考えた。
症例報告
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