日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Print ISSN : 2186-9545
31 巻 , 2 号
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特集1
  • 北野 博也
    2014 年 31 巻 2 号 p. 77
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    内視鏡下に行う頸部手術は,1996年Gagnerが腹腔鏡を利用し,上皮小体を摘出したことから始まった。その後,甲状腺手術にも応用され,本邦では1999年高度先進医療として認可された。本法には,大別して全手術行程を腹腔鏡下に頸部より離れた位置から,腹腔鏡用の手術器具を用いて行う完全内視鏡下手術と,従来の手術器具を用い,鎖骨下の被覆される部位でかつ指が到達する範囲を切開し,内視鏡補助下に行う手術がある。両者にはそれぞれ利点と欠点があるが,両手術法の発展に本邦の外科医が貢献してきたことは間違いのない事実である。その後,ロボット支援手術の一つとしてda Vinci(Intuitive Surgical Inc.)が開発されたが,アームが大きく甲状腺手術には不向きであった。2006年,da Vinciを改良したda Vinci Sが開発された。da Vinci Sはda Vinciと異なり,操作性も格段に向上したので甲状腺手術にも応用されるようになった。本装置を用いることで,従来内視鏡手術では難易度の高かった結紮や縫合が容易となり,手振れのない精密手術が可能となった。また,立体視できることにより,内視鏡手術の最大の欠点であった平面画像を見ながら手術操作を行うことが不必要となった。基本的には完全内視鏡下甲状腺摘出術と同様に前胸部より行うことも可能であるが,韓国で行われている腋窩を切開して行う方法が主流となっている。しかし,本邦ではまだ頸部手術でのda Vinci Sの使用は認可されていない。本特集では,1)da Vinci Sと最近開発されたda Vinci SIの概要について触れた後,2)ではこの分野の第一人者である武中篤氏に,各領域で行われているロボット支援手術の経験から,ロボット手術を導入することの利点と欠点を説明してもらった。更に,頭頸部外科領域でのロボット支援手術に関する薬事承認を目指している藤原和典氏に,甲状腺を含めた頭頸部外科領域での応用の現状を報告してもらった。また,本邦で数少ない甲状腺に対するロボット支援を経験している伊藤博之氏に,腋窩切開によるロボット支援手術の実際について執筆願った。最後に,本邦ではda Vinci Sの導入に時間がかかり,大きく諸外国より遅れた感があるが,本当に本手術法を甲状腺外科に導入することの意味について,数多くの内視鏡外科手術の経験がある高見博氏に意見をお聞きすることにした。
  • 福原 隆宏, 藤原 和典, 北野 博也
    2014 年 31 巻 2 号 p. 78-82
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    低侵襲手術である内視鏡外科手術は,近年ロボット支援手術へと発展してきた。手術支援ロボットda Vinci(da Vinci surgical system, Intuitive Surgical Inc.)は,2000年にFDA(アメリカ食品医薬品局)により承認された。2006年に開発された後継機種のda Vinci Sは,視認性や操作性などの点で格段に改良されたため,海外では甲状腺手術や頭頸部癌に対する経口的手術などにも使用されている。一方,本邦では2009年に泌尿器科,婦人科,胸腹部外科(心臓外科を除く),消化器外科領域に薬事申請が認められ,手術支援ロボットによる手術が可能となった。しかし保険に関しては,2012年に前立腺全摘術が保険収載されたのみであり,他の手術は依然として保険の適応がない。
  • 武中 篤
    2014 年 31 巻 2 号 p. 83-86
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    ダヴィンチシステムによるロボット支援手術は高解像度三次元ハイビジョンシステムによるすぐれた視野,7自由度を有するロボットアームおよび多関節鉗子,コンピュータ―制御された容易な操作性により,非常に大きな潜在能力を有する手術手技である。しかし,機器の特性上の弱点も多数存在し,未だ完成したものではなく発展途上の手術である。近い将来には,現時点における弱点を克服した新機器が登場することが予想される。一方,われわれが解決すべき医療制度や教育制度などの問題点も山積している。機器の進化に遅れることなく,各学会が精力的にこれらの課題に取り組んでいくことが求められる。
  • 藤原 和典, 福原 隆宏, 北野 博也
    2014 年 31 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    頭頸部領域におけるロボット支援手術は,ロボット支援下経口的咽喉頭癌とロボット支援下甲状腺切除術があげられ,海外では徐々に普及し,良好な成績が報告されている。しかし,本邦においては,薬事は未承認の状態である。そこで現在,鳥取大学,東京医科大学,京都大学の3施設が共同して,先進医療Bのもとでロボット支援下経口的咽喉頭癌切除術に対する臨床研究の準備を行っており,最終的には,薬事申請を行い,頭頸部癌での適応拡大を目指している。ロボット支援下経口的咽喉頭癌切除術とロボット支援下甲状腺癌切除術では術後の嚥下機能などの機能温存が可能である点や外切開をさけられる点などの利点があり,薬事承認後は,本邦でも積極的に導入される手術であると考えられる。
  • 伊藤 博之, 清水 顕
    2014 年 31 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    da Vinciサージカルシステムによるロボット支援下甲状腺手術は,機器の持つ極めて高い利便性,安定性により内視鏡下甲状腺手術を応用発展させた術式である。内視鏡手術の欠点を克服し,安全性が高く確実な方法である。前頸部に創部を作らず腋窩から手術を行うため,術後の整容面で優位性がある。ロボット支援下手術の概要と利点,問題点を概説する。
  • 高見 博, 池田 佳史
    2014 年 31 巻 2 号 p. 95-97
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    著者らが考案した完全内視鏡手術である腋下アプローチについて論説した。さらに,ロボット手術の長所・短所について記した。甲状腺におけるロボット手術は腋下アプローチが基盤となっているが,なぜ著者らが考案したCO2ガスを用いた方法を用いることなく,“gasless”に走ったのであろうか。手技的にはgaslessの方が優しいが,究極の整容性を求めるなら,CO2ガスで充満させる方法の方が明らかに優れている。
特集2
  • 菅間 博, 亀山 香織
    2014 年 31 巻 2 号 p. 98
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    甲状腺腫瘍の術前診断では,他臓器では必須の組織診の代わりに,穿刺吸引細胞診が行われる。甲状腺の細胞診は超音波ガイド下に行われ,微小腫瘍も的確に穿刺が可能なため,臨床的に高い正診率が求められる。しかし,甲状腺細胞診の正診率(感度,特異度)は,施設間や診断医間でのバラツキが大きい。その原因として,甲状腺腫瘍の組織・細胞学的特徴とともに,甲状腺細胞診の報告様式や標本作成上の問題などがあげられる。具体的には以下の点があげられる。1)甲状腺細胞診の報告様式に対するコンセンサス形成が世界的に十分でなかった。国内の細胞診報告様式としては,パパニコロウ協会ガイドラインを修正した甲状腺癌取扱い規約(第6版)の判定区分が推奨されていたが,必ずしも統一して使われていなかった。結果として2)濾胞性腫瘍の細胞診での良悪性判定は不可能とされ,甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは推奨グレードはC3(エビデンスはなく,診療で利用・実践しないことを勧める)となっている。3)甲状腺のFNA標本は,大量の血液が混入や吹きつけ手技の良否などにより不適正な標本になり易く,また,免疫染色や遺伝子学的な分子病理学的検索には必ずしも適さない。これらの点を解決すべく,甲状腺細胞診の新たな報告様式として甲状腺のベセスダシステムが提案されている。ベセスダシステムは,米国のNIHで開発された甲状腺腫瘍に特化した報告様式で,濾胞性腫瘍は別区分とすることにより1)の問題解決がなされている。今年,改訂が予定されている第7版の甲状腺がん取扱い規約では,ベセスダシステムが細胞診の報告様式として採用される方向にある。また,新しい細胞診標本の作成法として液状化検体細胞診(LBC法)が導入されつつあり,分子病理学の細胞診への応用が期待されている。本特集は,日本の甲状腺腫瘍の診療に,甲状腺細胞診が大きく貢献することを願い企画した。新たに導入されるベセスダシステムによる甲状腺細胞診の報告様式への理解の助けとなることを期待している。同時に,新しい細胞診の標本作成法であるLBC法と分子病理診断の進歩を紹介する。甲状腺細胞診の新しい報告様式と技術が普及し,細胞診の正診率向上ばかりでなく,将来,分子標的治療に細胞診が利用されることが期待される。
  • 覚道 健一, 谷口 恵美子, 若狭 朋子, 山下 弘幸
    2014 年 31 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    日本甲状腺学会は,甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013を出版した。甲状腺結節の診療では細胞診が重要な役割を持つ。しかし細胞診で30%以上の症例は,良性・悪性の結論が出ない「検体不適」,「鑑別困難」,「悪性疑い」に診断される。甲状腺結節取扱い診療ガイドラインでは,これらを実地臨床の場でどのように取り扱うかの解決策を示した。細胞診で鑑別困難に分類された症例は,画像などの臨床検査と合わせて手術対象例を絞り込む。細胞診でも,鑑別困難をさらにリスク分類することを推奨した。まず鑑別困難を「濾胞性腫瘍」と「その他(濾胞性腫瘍以外)」に分類する。濾胞性腫瘍群は,悪性の可能性の高い(favor malignant)と良性の可能性が高い(favor benign)に分類することを推奨した。すなわち鑑別困難群の大半(70~90%)を占める良性結節患者に無用な診断的葉切除術を適応しないことを求めている。欧米では全例に診断的葉切除術が薦められるのに対し,日本では「濾胞性腫瘍」患者でも,他の臨床検査項目が良性の患者は経過観察も選択肢となる。濾胞性腫瘍の亜分類を省略した診断様式を選択すると,国際的診断様式と読み替え可能な6カテゴリー分類に変換できる。平易な診断用語を用い,悪性の確率,甲状腺結節の性状が類推しやすい言葉を用い利用者の利便性を図った。
  • 坂本 穆彦
    2014 年 31 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    日本甲状腺学会は2013年8月に「甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013」を刊行し,その中で穿刺吸引細胞診分類を提起した。わが国ではすでに作成当時の国際標準に準拠した甲状腺細胞診判定基準が「甲状腺癌取扱い規約」第6版(2005年)に掲載されており,このたびの日本甲状腺学会のガイドライン刊行によって,わが国にはあたかも2つの細胞診判定基準が生じたかの様な状態となった。他方,「甲状腺癌取扱い規約」は近年改訂されることになっており,ここでは2008年に米国より示されたベセスダ・システムに基づいた変更が行われる。このことは,「規約」刊行母体の日本甲状腺外科学会ではすでに機関決定されている。この様な状況をふまえ,本稿ではベセスダ・システムの概容と意義について概説する。甲状腺細胞診の判定基準が国内に複数存在するという事態は是非とも回避されねばならない。
  • 越川 卓, 尾関 順子, 柴田 典子, 植田 菜々絵, 佐々木 英一, 村上 善子, 細田 和貴, 谷田部 恭, 長谷川 泰久
    2014 年 31 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    甲状腺外科学会病理小委員会では甲状腺細胞診の報告様式を現在の甲状腺癌取扱い規約の様式から甲状腺細胞診ベセスダシステムへ移行することを検討中である。本稿では,取扱い規約とベセスダシステムの報告様式の違いを紹介すると共に,自験例の診断成績を用いて甲状腺細胞診ベセスダシステムの妥当性について検討した。取扱い規約とベセスダシステムの主な違いは,①細胞学的に鑑別困難な症例を,濾胞性腫瘍を疑う群(FN/SFN)とそうでない群(AUS/FLUS)の2つの診断カテゴリーに分けた点,②不適正の判定基準を明確にした点,③各診断カテゴリーについて悪性の危険度を数値で示した点の3点である。両者の基本的な考え方は類似しているので,大きな混乱なくベセスダシステムへの移行が可能と考えている。
  • 亀山 香織
    2014 年 31 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    2013年に甲状腺結節取扱い診療ガイドラインが発刊された。ここではこれまですべて鑑別困難と報告していた濾胞性腫瘍疑いの例を,細胞所見よりfavor benign,borderline,favor malignantの3群に亜分類し,ある程度臨床医のニーズに応えることとした。この3群の分類は元々伊藤病院で行っているものであり,ガイドラインへの収載に際しては病理委員4名で検証を行い,有効性を確認した。一方で2007年に欧米でベセスダ方式という,やはり甲状腺細胞診の診断様式が発表されている。わが国のガイドラインと類似しているが,定義や臨床的取扱いなど課題もみられる。各施設ではどの様式を使っても,その判定に対する臨床的取扱いについては病理医と臨床医できちんと取り決めをしておくことが重要である。
  • 鈴木 彩菜, 廣川 満良, 宮内 昭
    2014 年 31 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    液状化検体細胞診(LBC)とは,細胞診の採取器具から検体を専用保存液内に移し,特別な方法で専用スライドに薄く塗抹する細胞診標本作製法である。甲状腺のLBCに関する報告はいまだ少ないが,LBCの導入により,不適正率の減少,診断精度の向上,鏡検作業の負担軽減につながったことから,今後広く普及していくことが予想される。ただし,LBC標本の細胞所見は通常塗抹標本と異なるため,鏡検の際にはその点に精通しているべきである。LBCを導入する際は,通常塗抹からLBCに変更するのではなく,通常塗抹標本を作製後に,穿刺針洗浄液を用いてLBC標本を併用作製することを推奨する。
  • 菅間 博, 住石 歩, 千葉 知宏, 宍戸-原 由紀子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    甲状腺腫瘍の乳頭癌と濾胞癌では遺伝子変異のパターンが異なる。乳頭癌ではRET/PTC再構成とBRAF(V600E)変異が,濾胞癌では多彩なRASの変異とPPARγ/PAX8再構成が高頻度に認められる。さらに低分化癌と未分化癌では,p53やβカテニン(CTNNB1)遺伝子の変異が加算される。現在,液状化検体(LBC)細胞診標本に応用が容易な遺伝子変異として,免疫染色とFISHにより検出可能なものがある。免疫染色によりBRAF(V600E)変異,p53とβカテニン(CTNNB1)の異常は検出可能である。FISHによりRET/PTCとPPARγ/PAX8の遺伝子再構成は検出可能である。BRAF(V600E)とRET/PTCで理論的には乳頭癌の大部分を診断することができる。PPARγ/PAX8で濾胞性腫瘍の半数程度に診断可能であるが,細胞診断上問題となる濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別には有用でない。将来,分子病理診断が,細胞診の正診率向上のみでなく,分子標的治療にも利用されることが期待される。
原著
  • 坂下 智博, 本間 明宏, 畠山 博充, 水町 貴諭, 加納 里志, 古沢 純, 飯塚 さとし, 畑中 佳奈子, 福田 諭
    2014 年 31 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    穿刺細胞診で悪性が確定しなかった場合にも画像的に甲状腺癌が疑わしいなどの理由により手術を行うことが少なくない。術後病理診断と画像所見との関係について比較し,どのような画像所見が癌予測因子として有用であるかについて検討した。対象は甲状腺腫瘍摘出を行ったもののうち,術前細胞診で悪性以外であった58症例。術前エコー検査所見(微細石灰化,辺縁不整,内部low echo,縦横比1以上,Haloの消失)が陽性であった場合に,術後病理で悪性であった陽性適中率(PPV),陰性であった場合に術後病理が良性であった陰性適中率(NPV)をそれぞれ算出した。前述した各エコー所見のそれぞれのPPVは74,89,71,89,65%。NPVはいずれの所見も51~58%にととどまった。辺縁不整および縦横比1以上がみられた場合のPPVは89%であり,これらの所見は有用な癌予測因子となりうると考えられた。
症例報告
  • 野水 整, 松嵜 正實, 片方 直人, 菅家 康之, 佐久間 威之, 伊藤 泰輔, 渡辺 文明, 山口 佳子
    2014 年 31 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    巨大甲状腺腫の呼吸困難のため受診し,気管狭窄による窒息で死亡した剖検例を経験したので報告する。臨床的には巨大甲状腺腫と臨床経過から甲状腺原発未分化癌や悪性リンパ腫が鑑別診断として挙げられたが,患者が慢性甲状腺炎で治療を受けていたことから特に悪性リンパ腫が疑われた。剖検にて左舌根部,左頸部リンパ節,気管傍リンパ節,甲状腺,気管を巻き込み,気管粘膜,食道粘膜に浸潤する15×8cmの充実性腫瘍で,組織学的にはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse large B cell lymphoma, Non-germinal center B-cell like)の像を示した。甲状腺は慢性甲状腺炎(線維亜型)の像で,リンパ腫細胞の増殖・浸潤像は明らかでなかった。本症例は甲状腺周囲組織に発生した悪性リンパ腫で,巨大な甲状腺腫を呈した稀な例である。
  • 野田 諭, 松谷 慎治, 浅野 有香, 倉田 研人, 柏木 伸一郎, 川尻 成美, 高島 勉, 小野田 尚佳, 大澤 雅彦, 平川 弘聖
    2014 年 31 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
    ジャーナル フリー HTML
    症例は66歳女性。高CEA血症の精査にて甲状腺腫瘍を指摘され当院紹介。右葉に18mm大の腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診で濾胞性腫瘍と診断された。濾胞性腫瘍として1年6カ月超音波のみで経過観察され変化を認めなかった。2年6カ月後,他院PET検査で甲状腺への異常集積を指摘され,再受診した。CEAの上昇,腫瘤の増大傾向を認め,カルシトニンが高値であり,手術を施行,術中組織検査にて髄様癌と診断,非機能性の副甲状腺過形成を伴っており,甲状腺全摘術,頸部リンパ節郭清と副甲状腺全摘術および自家移植を施行した。病期はpT2N0M0 StageⅡであった。初診時の画像および細胞診結果から濾胞性腫瘍と診断,長期超音波で経過観察された髄様癌の1例を経験した。初診時診断に反省すべき点は多いが,経過を追えた点で貴重な経験と考え,文献的考察を加えて報告する。
  • 大石 一行, 深田 修司, 菱沼 昭, 佐藤 伸也, 横井 忠郎, 橘 正剛, 森 祐輔, 覚道 健一, 山下 弘幸, 田尻 淳一
    2014 年 31 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
    ジャーナル フリー HTML
    症例は8歳女児。母親は遺伝性髄様癌と診断され甲状腺全摘術と側頸部リンパ節郭清術を受けていた。遺伝を心配した母親に連れられて当院を受診し,RET遺伝子検査でexon11 codon634に母親と同じmissense変異を認めた。超音波検査で甲状腺内に明らかな腫瘤は認めず,カルシトニンやCEAの上昇はなかったが,カルシウム負荷試験では陽性であった。上記の遺伝子変異は髄様癌発症のhigh risk群に分類されるため,髄様癌発症の可能性について両親と面談を繰り返した後,最終的に発症前の予防的甲状腺全摘術を希望された。術後の病理組織診断は微小髄様癌,C細胞過形成が甲状腺内に多発しており,遺伝性髄様癌に一致する所見であった。遺伝性髄様癌に対して海外では幼少時での手術を推奨する施設もあるが,本邦では予防的甲状腺全摘術の報告はほとんどない。今回われわれは予防的甲状腺全摘術を行った遺伝性髄様癌の一女児例を経験したので報告する。
  • 笹井 久徳, 古川 雅史, 平井 崇士, 伊東 眞人
    2014 年 31 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    耳下腺腫瘍はその大部分は良性腫瘍であり,転移性耳下腺腫瘍となると耳下腺腫瘍全体のごく少数を占めるに過ぎず,さらに甲状腺癌からの転移となるとその報告は非常に稀である。症例は72歳女性で左耳下部の腫瘤を主訴に当科を受診。10年前に甲状腺癌に対する手術既往例があり,CT画像にて左耳下腺内に約40mmの腫瘤を認めた。同部からの穿刺吸引細胞診にて乳頭状集塊の異形細胞を認め,一部に核内細胞質封入体や核溝を認めたことから甲状腺乳頭癌からの転移が疑われた。甲状腺補完全摘術,左耳下腺腫瘍摘出術を勧めるも甲状腺残存葉摘出の同意は得られなかったため左耳下腺腫瘍摘出術のみをおこなった。術後の顔面神経麻痺は認めず,病理検査にて甲状腺乳頭癌の転移と診断された。初回手術から10年以上経過後に耳下腺転移をきたした稀な症例ではあるが今後もできるだけ長期に及ぶ経過観察をおこなっていく必要性がある。
  • 藤井 清香, 田中 克浩, 太田 裕介, 小池 良和, 山下 哲正, 下 登志朗, 水藤 晶子, 山本 裕, 椎木 滋雄, 紅林 淳一, 園 ...
    2014 年 31 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    症例は54歳の男性で,血清CA19-9高値の精査目的のCT検査にて甲状腺腫瘤を指摘された。消化器系の探索を行ったが,異常は認めなかった。甲状腺腫瘍の細胞診にて乳頭癌との診断を得たため,甲状腺全摘+リンパ節郭清術を行った。血清CA19-9は術前では74.6U/mLと高値を示していたが,術後は基準範囲内まで低下した。摘出標本の免疫組織染にて,約50%の腫瘍細胞でCA19-9が陽性であり,CA19-9の産生を証明した。血清のCA19-9が上昇しているにも関わらず,消化器系に異常を認めない場合は,消化器疾患の検索のみにとどめることは不十分であり,甲状腺や乳腺といった消化器以外の検索も必要であることに注意を要する。
  • 小久保 健太郎, 林 昌俊, 栃井 航也
    2014 年 31 巻 2 号 p. 158-160
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
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    症例は67歳の女性。3カ月前より前頸部の腫脹を自覚し,近医を受診した。精査にて甲状腺乳頭癌,頸部リンパ節転移が疑われ当院を紹介受診した。左頸部に胡桃大の腫瘤を触知した。術前頸部造影CT検査で甲状腺左葉上極に8mm大の石灰化を伴う結節を認めた。左頸部には35mm大の石灰化を伴う腫大リンパ節を認めた。リンパ節は内頸静脈,斜角筋への浸潤が疑われた。左椎骨動脈は大動脈弓部から直接分岐し,第4頸椎の横突起を通り上行していた。術中,左頸部外側区域転移リンパ節は胡桃大で周囲と強固癒着し,内背側にリンパ節に接する動脈を認めた。術前確認していた走行異常の左椎骨動脈と判断し,慎重に転移リンパ節から剝離することで動脈を損傷することなく頸部リンパ節を郭清しえた。椎骨動脈の走行異常の把握は甲状腺手術時の頸部外側区域リンパ節郭清施行時に,血管損傷のリスクを下げるためには重要である。
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