日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
31 巻, 3 号
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会告
特集1
  • 石戸谷 滋人, 宮里 実
    2014 年 31 巻 3 号 p. 165
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    二次性高血圧の中でも,副腎性高血圧への関心が高まってきており,医療機関で治療を受ける患者数も増加傾向にある。それに併せて,各々の副腎疾患についてガイドラインの類も徐々に刊行されつつある。原発性アルドステロン症においては「原発性アルドステロン症の診断治療ガイドライン―2009―」,褐色細胞腫では「褐色細胞腫診療指針2012」が既に上梓されている。
    しかしこれらのガイドラインにはかなり踏み込んだ内容の術前診断を要求している部分があり,内分泌専門医や放射線(IVR)専門医の協力なしには施行しえないものが多い。原発性アルドステロン症で手術を前提にした場合には副腎静脈サンプリングが必須とされているが,現実的に対応可能なのか? クッシング症候群/サブクリニカルクッシング症候群の確定診断にはデキサメサゾン抑制試験が必要だが,それを検索してくれる内科医が自施設にいるのか? 外科サイドからこのような悩みを聞く機会が多い。さらに,術後の経過観察を誰が行うのかも,統一された見解はないように思う。「手術は治療の終わりではなく始まり」とされる褐色細胞腫の場合,術後の血圧やカテコラミンの測定,画像評価はどうするのか? 皮質腫瘍/髄質腫瘍に限らず,転移再発が顕在化した場合に集学的治療(全身化学療法,放射線治療など)を担うのはどこの部門か?そしてどのような治療を施すのか? 多くの副腎外科医が手術以外にも,試行錯誤しながらこれらの事項に臨んでいるものと推察される。
    特集1では,このような現実を踏まえて,外科の立場で実際に副腎疾患を扱っている専門の方々に,どの程度まで術前評価,術後経過観察を行いえるのか,また,実際に行っているのか,そのreal worldも含めて執筆をお願いした。これから副腎外科に取り組む若手医師にも理解しやすい内容で,一部には自験例を交えて記述頂いている。本特集が副腎外科治療に携わる方々にとって今後の治療の一助になれば幸いである。
  • 内海 孝信, 加賀 麻祐子, 川村 幸治, 神谷 直人, 今本 敬, 鈴木 啓悦, 市川 智彦
    2014 年 31 巻 3 号 p. 166-170
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)は外科的に治癒が期待できる二次性高血圧であり,患側の副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘除術が標準術式である。PAは適切な診断・治療が遅れると高血圧の重症化だけではなく,高アルドステロン血症による心・脳血管障害の発生や腎機能障害の進行など不可逆的な臓器障害に至る可能性がある。スクリーニング検査の発展・普及に伴い早期発見が可能となり,現在では高血圧患者の3~10%程度を占めると報告されている。推定患者数は非常に多くcommon diseaseとも考えられるが,PA診断に必要な検査を行う内分泌内科医や放射線科医が必ずしも各施設に在籍しているとは限らない。本稿ではPA診療ガイドラインに沿いつつ,手術療法の対象となるPA患者の診断・治療および術後のフォローアップに関して,われわれ外科医が診療可能な範囲を意識して述べる。
  • 宮里 実, 石戸谷 滋人, 斎藤 誠一, 荒井 陽一
    2014 年 31 巻 3 号 p. 171-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    副腎性クッシング症候群は,副腎皮質からの糖質コルチコイド(コルチゾール)が過剰分泌される病態で,特有の身体的特徴(中心性肥満,満月様顔貌,皮膚線条)を有し,糖尿病,高血圧,骨粗鬆症などの重篤な内科的疾患を併存する。サブクリニカルクッシング症候群はクッシング症候群特有の症状はないが,同様に糖尿病,高血圧などの併存疾患を有する。身体的特徴,内科的併存疾患,腹部CTで副腎インシデンタローマの存在でそれら疾患を疑う。ACTH,コルチゾール,尿中17-OHCSと17-KS測定でスクリーニングを行い,デキサメサゾン抑制試験によるコルチゾールの日内変動消失やその尿中代謝産物の高値で確定診断にいたる。悪性さえ除外できれば,腹腔鏡下副腎摘除術は,治療の第一選択である。
  • 竹原 浩介, 酒井 英樹
    2014 年 31 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    褐色細胞腫はカテコールアミンを産生する神経内分泌腫瘍であり,高血圧を中心とした様々な臨床症状を呈する。手術にて治癒可能な疾患であるが,約10%が悪性であり,また病理組織学的な良悪性の鑑別が困難なため,良性と判断されても,術後に再発する症例もある。厚生労働省難治性疾患克服研究事業研究班により褐色細胞腫および悪性褐色細胞腫の診断基準および診療アルゴニズムが作成され,指針に準じた診療が一般的となっている。褐色細胞腫の術前には十分量のα遮断薬の投与が必要であり,術後24時間は低血圧や低血糖に注意する必要がある。また悪性の可能性を念頭においた長期の経過観察が必要である。悪性褐色細胞腫に関しては確立された有効な治療方法がなく,手術,CVD療法やMIBG照射を組み合わせた治療が施行されている。
  • 山本 勇人
    2014 年 31 巻 3 号 p. 180-183
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    内分泌非機能性副腎腫瘍とは,内分泌学的検査にて内分泌活性がないと判断された副腎腫瘍のことである。その分類は内分泌非機能性腺腫,骨髄脂肪腫,神経節腫,囊胞,転移性腫瘍などがあるが,副腎皮質癌の中にも内分泌非機能性のものが存在する。系統的な内分泌学的検査により内分泌非機能性副腎腫瘍の診断を行い,CT,MRI検査などの画像診断で良性悪性腫瘍の鑑別を行うことが重要である。内分泌非機能性副腎腫瘍の手術適応は悪性を疑わせる画像所見を認めるもの,あるいは腫瘍径4cm以上の腫瘍と考えられている。腫瘍径4cm未満においては定期的に画像検査,内分泌学的検査を施行し,増大傾向を認めるもの,内分泌活性を認めるものは外科的切除を検討する。
  • 川崎 芳英, 海法 康裕, 伊藤 明宏, 中村 保宏, 森本 玲, 佐藤 文俊, 荒井 陽一
    2014 年 31 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    近年,画像検査機器の進歩に加え,内分泌腫瘍に対するガイドラインが策定され,今後,副腎腫瘍の発見頻度が増加するものと予想される。現状では内分泌専門医が常勤してない医療施設も多く,画像検査で偶発的に発見された副腎皮質癌(ACC)を疑われる症例が,われわれ外科医へコンサルトされる場面が想定される。その際は,内分泌学的検査をする必要があり,外科医にもある程度の内分泌学的知識が要求される。しかし,術前,術後のミトタンなどによる補助療法に関しては,副腎不全などの特異的な副作用があり,施行に際しては内分泌専門医による対応が必要と考える。low stageのACCのうちWeiss criteriaにてscoreの高い症例では術後再発のリスクが大きく,外科医としては,再発時には常に外科的切除の可能性を念頭に,個々の症例に注意深い経過観察と慎重な対応が求められる。
特集2
  • 山下 弘幸, 冨永 芳博
    2014 年 31 巻 3 号 p. 189
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    副甲状腺機能亢進症(HPT)に対しては,外科的切除が唯一の確実な治療法である。原発性HPT(PHPT)は血清カルシウムを含む生化学スクリーニング検査の普及および人口構成の高齢化に伴い,診断頻度が増加している。そのような状況のなかで,古典的な症状を有する症例だけでなく自覚症状がはっきりしない症例も増えてきている。無症候性の場合,一般的に腫大副甲状腺が小さく局在診断が困難なことがある。腎性HPT(RHPT)は2008年の塩酸シナカルセトの保険収載をうけて手術数やPEITによるインターベンション治療が少なくなっている。2014年2月よりこのシナカルセトは副甲状腺癌ならびに副甲状腺摘出術不能又は術後再発のPHPTにおける高Ca血症に対する治療薬として使用可能となった。そのような状況を踏まえて,今回の特集を組ませていただいた。
    まず,宮章博先生には軽症PHPT術後のQOL解析方法や結果について,海外での報告を中心に詳しく解説していただいた。筋肉,平衡機能や睡眠の改善が得られる可能性が高いとなると,NIHのガイドラインにあわなくても全身状態に問題がない症例には治癒手術をすべきとの意を強くするものである。横井忠郎先生には“特殊な病態と治療”について詳しく解説していただいた。カルシウムが正常範囲であるPHPTの機序の推察など興味深く,今後の研究を期待したい。中村道郎先生にはRHPTの病態や治療およびシナカルセトの副甲状腺に対する影響などにつき詳述していただいた。むすびに,“PTxを躊躇することで,血管や心臓弁の石灰化,骨密度の低下など患者にとって生命予後に直結する不可逆性変化をおこしてしまうこともあり,PTxへタイミングよく移行することと,質の高いPTxを行うことがわれわれ医療者にとって大切”との外科医(だけでなく腎臓内科)へのメッセージをいただいた。福成信博先生には主として,RHPTに対するインターベンション治療(主としてPEIT)の現状やガイドラインについて述べていただいた。シナカルセト導入後はPTxと同様にPEIT施行症例も少なくなっている。副作用でシナカルセットが使えない場合や外科的切除も困難な場合にのみ適応となるが,手技や術後の管理に精通する必要性を述べている。最後に,山本貴之先生には,シナカルセトの適応拡大後の原発性副甲状腺機能亢進症,副甲状腺癌に対する治療戦略についてまとめた最後に,“基本はその対象はあくまでも外科的切除不能なPHPTおよび副甲状腺癌による高Ca血症に対してであり,外科的切除の判断に迷うPHPTや副甲状腺癌そのものに対してではないことをわれわれ内分泌外科医は認識する必要がある”と締めていただいた。
    時代とともにHPTの臨床像に変遷はあるが,外科的切除が唯一の確実な治療法であるという原則はかわらないことを認識すべきと総括したい。
  • 福成 信博
    2014 年 31 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    内科治療に抵抗する抵抗性の高PTH血症が持続し,高P血症(>6.0mg/dL)または高Ca血症(>10.0mg/dL)が存在する場合は,副甲状腺摘出術(PTx)または経皮的エタノール注入療法(PEIT)などの副甲状腺インターベンションが適応とされる。ここでは,PEITに代表される非手術・選択的局所療法を中心に記載する。
    本邦では超音波による責任病巣の検出能向上に伴い,1990年後半より二次性副甲状腺機能亢進症に対して選択的副甲状腺注入療法が積極的に行われ,2004年には副甲状腺への経皮的エタノール注入療法(PEIT)が保険の適用となり,更にビタミンD(VD)製剤の直接注入に関する臨床試験も行われた。対象とする腺のサイズや多腺病変への適応が議論され,またPEIT後の癒着が臨床的に大きな問題となったが,2008年にPTH分泌を抑制するシナカルセット塩酸塩の登場以来,副甲状腺に対するインターベンションは大きくその立場を変えることとなった。
  • 横井 忠郎, 森 祐輔, 橘 正剛, 佐藤 伸也, 山下 弘幸
    2014 年 31 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    古典的な原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を日常診療で診ることは相対的に少なくなっており,むしろ無症候性で発見されることが増えている。さらには正カルシウム血症であることもしばしば認められる。これらの病態はPHPTの前駆あるいは初期像と考えられているが,結論は出ていない。正確な診断についてはPTH不適合分泌を見逃さないことや,ビタミンD不足を初めとする二次性副甲状腺機能亢進症の合併を除外することが大切である。治療に当たってはNIHガイドラインを参考にする施設が多いと思われるが,ガイドライン自体にも問題点が多い。ガイドライン上の手術適応に固執すると,適切な治療時期を逸することもあり,注意が必要である。
  • 宮 章博, 宮内 昭
    2014 年 31 巻 3 号 p. 202-204
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    原発性副甲状腺機能亢進症は,様々な神経精神症状を伴う場合がある。一見自覚症状がない,いわゆる生化学型の患者ではこれらの症状があっても漠然とした非特異的症状であるので,加齢,日常生活のストレス,あるいは他の疾患の影響かと判断される可能性がある。これらの漠然とした症状が手術によって変化するかどうかを評価するために健康関連QOLの包括的尺度のSF-36が利用されてきたが,疾患特異的尺度としてPAS scoreが提唱されている。PAS scoreは簡便で迅速に計算できるので臨床の現場で利用しやすい。筋肉や平衡機能,睡眠などの症状の変化に対しても手術療法のQOL評価がされている。これらの評価によって,一見症状がない軽症の副甲状腺機能亢進症の場合でも手術によって症状が改善することが分かってきた。このことは,いわゆる無症候性副甲状腺機能亢進症の手術適応を考えるうえで大きな根拠になる。
  • 山本 貴之, 冨永 芳博
    2014 年 31 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)はその大部分が副甲状腺の1腺腫大の腺腫で,多腺腫大の過形成,稀な副甲状腺癌も原因となる。いずれの病態においても病的副甲状腺の摘出術(PTX)が第一選択となるが,血液検査の普及に伴い,線維性骨炎や腎結石を繰り返す症候性PHPTは減少し無症候性PHPTの頻度が増加してきている。無症候性PHPTの手術適応については議論の余地があるが,米国NIHガイドライン2008に準じることが多い。本年2月シナカルセトが外科的切除不能なPHPT,副甲状腺癌による高カルシウム血症に対して適応拡大となった。これらの疾患は比較的稀であるが,現在他に有効な治療法がないためこれらの患者にとっては福音となる。但しPHPTの治療の第一選択はあくまでPTXであり手術可能な症例に対してむやみにシナカルセトを使用することは厳に慎むべきである。
  • 中村 道郎
    2014 年 31 巻 3 号 p. 210-213
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    腎性副甲状腺機能亢進症は,いわゆる「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」の一部と捉えられる。その中で副甲状腺組織が結節性過形成にまで進展した病態では,細胞の各種受容体密度の減少が原因で内科的治療に抵抗性を示すようになり,重度のものは外科治療すなわち副甲状腺摘出術が必要となる。病因がCKDであり,手術後に再発・再燃することや,腎移植後に遷延・持続する症例も存在する。手術件数の現状では,日本透析医学会から治療ガイドラインが提示された2006年以降手術数の増加を認めたが,2008年の塩酸シナカルセトの日本発売をうけて手術数は激減しており,シナカルセトの副甲状腺細胞や組織に与える影響などが研究中である。慢性透析療法をうけている患者の生命予後を考慮する時,不可逆性に変化した副甲状腺に対しては,異所性石灰化などの弊害が顕在化する前に,根治的な外科的治療に移行することは大切である。
原著
  • 大場 崇旦, 花村 徹, 岡田 敏宏, 渡邉 隆之, 金井 敏晴, 前野 一真, 伊藤 研一, 天野 純
    2014 年 31 巻 3 号 p. 214-218
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    1996年~2005年に当科で手術を行った甲状腺高分化乳頭癌症例278例を,全摘群134例,非全摘群144例に分け,再発・予後を解析した。再発は全摘群で21例(15.7%),非全摘群で5例(3.5%)と全摘群で有意に多く(p<0.01),遠隔再発は全摘群で12例(8.9%),非全摘群で1例(0.7%)であった(p<0.01)。原病死は全摘群で3例(2.2%),非全摘群では0例であった(p=0.2)。より進行した症例に全摘が施行されるというselection biasの影響が考えられるが,進行した乳頭癌を手術のみでコントロールすることの限界を示唆している結果とも考えられた。再発リスクの高い症例においては放射性ヨウ素によるablationなど手術以外の治療戦略を加えることが必要と考えられ,放射性ヨウ素によるablationが施行可能な施設が限られた本邦において,ablationを施行すべき症例を選択する指標の確立が必要と考えられる。
  • 古屋 舞, 池田 達彦, 澤 文, 市岡 恵美香, 斎藤 剛, 清松 裕子, 井口 研子, 坂東 裕子, 原 尚人
    2014 年 31 巻 3 号 p. 219-222
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    原発性副甲状腺機能亢進症患者の外科的治療について,高齢者を対象とした検討が本邦では少ない。今回われわれは75歳以上の後期高齢者手術症例を検討した。対象は2009年1月から2013年8月までに,当科で手術を施行した82例中の75歳以上12症例(15%)で,患者背景として既往併存疾患が多くみられたが手術および術後経過は高齢者において術後テタニー症状の出現が少ないこと以外には他の年齢層の患者群と比較して明らかな特徴は認めなかった。また,12例のうち3例に,術直後より見当識障害,食思不振,歩行障害などの著明な改善を認めた。原発性副甲状腺機能亢進症の外科的治療は安全かつ症状改善に有効であり,近年の診断能の向上に伴い,より低侵襲の手術も可能となったことを踏まえ,高齢者においても患者背景や合併症などのリスクを考慮した上で手術療法は検討されるべきである。
  • 内田 尚孝, 吹野 俊介, 遠藤 雅之
    2014 年 31 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    (背景)70歳以上の高齢者でホルモンレセプター陽性乳癌に対しては,温存乳房に対する放射線療法の省略は容認しうるという見解がある。
    (方法)2003年~2008年の期間に,StageⅠ-Ⅱ乳癌の診断で,当院にて乳房温存術または腫瘍径3cm以下で乳房切除術を行った60歳以上の女性67例を対象とした。乳房温存術のみ(Bp)群,乳房温存術+放射線療法(BpRT)群,乳房切除(Bt)群の局所無再発生存期間(LRFS),全生存期間(OS)を検討した。
    (結果)Bp群,BpRT群の間でLRFS,OSに有意差は認めなかった。しかし,多変量解析の結果,放射線療法の省略は,局所再発および生存率低下の有意な関連因子であった。
    (結論)60歳以上の乳癌において,乳房温存術後の放射線療法は,原則として実施することが望ましい可能性が示唆された。その省略は,例外的選択肢として容認しうる可能性が示唆された。
症例報告
  • 岩井 大, 小西 将矢, 安藤 奈央美, 馬場 奨, 友田 幸一
    2014 年 31 巻 3 号 p. 228-231
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    高度肥満(BMI 52)の甲状腺癌手術症例を経験した。術後出血の診断や,出血に対する気管切開術の容易化のため,甲状腺手術の際に前頸部脂肪組織切除術を併用した。今後の高度肥満症例の増加が考えられるが,肥満症例でも積極的に甲状腺手術が行えるよう,前頸部脂肪組織切除術併用などの手術法の工夫が必要と思われる。
  • 榎本 圭佑, 島津 宏樹, 長井 美樹, 武田 和也, 原田 祥太郎, 阪上 雅治, 内野 眞也, 今村 亮一, 山口 誓司, 伏見 博彰, ...
    2014 年 31 巻 3 号 p. 232-237
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    副甲状腺癌は,再発や転移による様々な症状を呈することに加え,高カルシウム血症に伴う臨床症状を引き起こし,致死的な経過をたどる場合がある。われわれは高カルシウム血症をコントロールできずに不幸な転機をたどった副甲状腺癌の一例を経験した。症例は62歳・女性。嗄声を主訴に近医耳鼻科を受診。左反回神経麻痺を指摘され紹介受診となった。6年前に左下副甲状腺腺腫摘出術の既往があった。治療前検査にて副甲状腺癌と診断し,全身麻酔下にen blocな切除手術を施行した。病理組織学的検査で,腫瘍は高度な脈管侵襲と被膜浸潤,隣接臓器浸潤,リンパ節転移を認めた。摘出標本のDNAシークエンスではHRPT2EGFRRASBRAFにいずれも遺伝子変異を認めなかった。免疫染色によるEGFR発現は陰性であった。術直後は血清カルシウム,iPTHは正常化したが,術後1カ月後より徐々に高iPTHが出現し,高カルシウム血症の状態へと移行した。多発肺転移,胸膜転移,縦隔リンパ節転移が出現した為,Cetuximab,Docetaxel,S-1を適時併用した化学療法を施行したがPDとなった。高カルシウム血症に対し,補液とゾレドロン酸の投与に加え,合成カルシトニン誘導体製剤の投与も行ったが,高カルシウム血症からの急性膵炎にて術後8カ月で死亡した。患者同意を得た上で遺伝子解析を行い,化学療法を行った経験について報告する。
  • 堤内 俊喜, 下出 祐造, 辻 裕之, 木下 英理子, 北川 典子, 一柳 健次
    2014 年 31 巻 3 号 p. 238-242
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    症例は78歳,女性。前頸部腫瘤を主訴として,前医を受診。前医でのFNAにて甲状腺乳頭癌と診断され,手術加療目的に当科紹介となった。術前の超音波およびMRI検査にて,右甲状腺内に40×37×35mm大の腫瘍と,右内頸静脈内に突出するように腫瘍塞栓を認めた。また,一部総頸動脈と腫瘍の境界が不明瞭な箇所を認め,画像上は明らかな浸潤は認めなかったが,総頸動脈への浸潤の可能性も示唆された。手術は甲状腺全摘術,右内頸静脈合併切除,右総頸動脈外膜切除,右頸部廓清術(D2b),気管切開術を行った。術後の病理診断で甲状腺乳頭癌の未分化転化の診断であった。術後65日目に局所再発と肺転移を認め,現在Weekly Paclitaxelによる全身化学療法中である。肉眼的治癒切除を行い,術前と比べてPS(Performance Status)を大きく損なうことなく経過している。
    甲状腺未分化癌は,予後が非常に悪く積極的な手術加療とならないことも多いが,根治的切除が可能であれば積極的に手術を考慮することが必要と思われた。
  • 川﨑 由香里, 杉野 圭三, 西原 雅浩, 川口 康夫, 楠部 潤子, 土肥 雪彦
    2014 年 31 巻 3 号 p. 243-246
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/31
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    症例は63歳女性。甲状腺腫大の精査で施行した頸部CT検査で右上甲状腺動脈瘤を指摘され,当科紹介となった。甲状腺は右葉有意にびまん性に腫大し,頸部エコー検査でも右上甲状腺動脈の一部が瘤状に描出され,上甲状腺動脈瘤を疑い,手術を施行した。術中所見では右上甲状腺動脈に約12mmの動脈瘤を認め,同部を含めて甲状腺右葉切除術を施行した。病理組織検査で,甲状腺動脈瘤,橋本病と診断された。
    甲状腺動脈瘤はこれまでに28例しか報告されていない稀な疾患である。しかしその約半数は破裂症例で,致死率は10%とされる。そのため,無症候性であっても,外科的切除もしくはコイル塞栓による早急な治療が必要な疾患と考えられる。
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