日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
31 巻, 4 号
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会告
巻頭言
目次
編集委員会
特集1
  • 今井 常夫
    2014 年 31 巻 4 号 p. 251-252
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    2014年5月に開催した第26回日本内分泌外科学会総会において,シンポジウム「グレーゾーンの甲状腺癌に対する術式」を企画させていただいた。座長は,2014年10月開催の日本甲状腺外科学会学術集会会長 山下弘幸先生と,2015年5月開催の日本内分泌外科学会総会会長 鈴木眞一先生にお願いした。座長の先生方にシンポジストをご指名いただき,4名の演者による発表と総合討論を行っていただいた。2010年に発刊された甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは,甲状腺乳頭癌のリスク分類にTNM分類を採用し,低リスク(T1N0M0)・高リスク(T>5cm,高度のEx,高度のN1)に該当しない日本独自の「グレーゾーン」という分類を設けた。その時点で発行されていた海外のガイドラインにこのような分類はなく,日本内分泌外科学会,日本甲状腺外科学会を中心とした専門家委員によるコンセンサスで決定した。2010年当時の海外のガイドラインは,1cm以上の甲状腺乳頭癌に対しては「甲状腺(準)全摘術+アブレーション」がグレードAで推奨されており,現在も変わっていない(今後改訂されるガイドラインで変更があるという情報もある)。それに対して2cmまでは葉切除術で良い,さらにグレーゾーンに相当する場合は葉切除術でも可とした日本のガイドラインの設定は世界の潮流と大きく異なっていたが,委員長をはじめとした委員のコンセンサスでこのようなガイドラインを世に問うこととした。2010年の甲状腺腫瘍診療ガイドラインの発刊と時期を同じくして30mCiによる外来アブレーションが可能になったこと,その後にタイロゲンの外来アブレーションにおける使用が保険収載されたことが追い風となり,また日本のガイドラインを発行したことにより世界の潮流を多くの外科医が知ることになったためか,杉谷巌先生が今回の特集に執筆されているようにNCDデータでは甲状腺全摘術が多く行われているという実態が明らかとなった。同時に反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症といった合併症の頻度が高いことも示された。グレーゾーンを設定した真意は,甲状腺全摘術を海外のガイドラインのように推奨すると反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症が頻発して,予後が良いはずの甲状腺乳頭癌で患者さんの術後QOLが著しく低下することが懸念されたからである。甲状腺亜全摘術が日本の甲状腺癌手術の標準術式であったが,この術式は反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症といった合併症が少なく済むという点で極めて優れた術式である。極論すれば手術中に反回神経の愛護的操作や正常副甲状腺の存在をあまり注意しなくても,術後大きな合併症となる可能性は低い。しかし甲状腺全摘と両側気管周囲リンパ節郭清を同時に行うと,反回神経の愛護的操作や正常副甲状腺の同定が必須となる。高リスク症例では,腫瘍の進展や多数のリンパ節転移のため反回神経の温存や正常副甲状腺の同定はよりむずかしくなる。グレーゾーンの症例を葉切除術で行い反回神経の温存や正常副甲状腺の同定にあまり留意していなければ,いきなり高リスクのときだけ反回神経の温存や正常副甲状腺の同定をしようとしても無理がある。日本全体としは,甲状腺外科専門医の数が充分とは言えず,地域的な遍在も大きい。このような状況を考慮して「グレーゾーン」という広い範囲を設けたが,将来的には甲状腺外科専門医が増加しグレーゾーンでも甲状腺全摘術が合併症なく実施されるようになることが理想である。グレーゾーンまでは甲状腺外科を専門としない外科医が手術することも多いのはやむを得ないが,高リスク症例や,グレーゾーンの葉切除術後に再発し残存甲状腺全摘術が必要な症例は,合併症なく甲状腺全摘ができる甲状腺外科専門医が手術すべきである。今後グレーゾーンに対する術式がどのような現状であるか,合併症がどれくらいか,などのデータが集積していけば,グレーゾーンの設定が適切であるかを含めて今後のガイドライン改訂の貴重な資料となる。甲状腺手術を行っているより多くの外科医がガイドラインを読み,日本内分泌外科学会や日本甲状腺外科学会に入会し,全体として日本の甲状腺外科手術がレベルアップすることを期待する。
  • 日比 八束
    2014 年 31 巻 4 号 p. 253-257
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    当院では,2005年4月以降,1cm以上の甲状腺乳頭癌に対しては甲状腺全摘術およびD2a郭清を基本術式として原則施行してきた。一方,2010年10月に甲状腺腫瘍診療ガイドラインから甲状腺乳頭癌に対する「診断と治療のアルゴリズム」が作成委員会のコンセンサスに基づいて提示され,当院でのその術式選択について再考するべき時期が来たのではないかと考えている。本稿では2005年4月から2013年12月までに甲状腺全摘術およびD2a郭清を施行したT1bN0M0以上の甲状腺乳頭癌症例249例の手術成績を検証し, ‘gray zoneの甲状腺乳頭癌に対する術式’ を再検討した。現在は外来にて30mCiの放射性ヨードアブレーションが可能となり,gray zone乳頭癌に対し全摘術が選択する施設もあるいは増加してくると思えるが,その一方でその合併症リスクを十分承知して,これを術中回避する努力を絶やさないことが義務づけられる。
  • 福島 俊彦, 水沼 廣, 中野 恵一, 阿美 弘文, 旭 修司, 片方 直人, 鈴木 悟, 鈴木 眞一
    2014 年 31 巻 4 号 p. 258-260
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    近年の悪性腫瘍診療において,診療ガイドラインの果たす役割は大きい。2010年版甲状腺腫瘍診療ガイドラインによれば,グレーゾーン症例に対する術式は,確立したものがないが,T3あるいはN1症例には,全摘を推奨している。2005年から2013年10月までに経験したグレーゾーン症例は50例,男性12例,女性38例で,14~78歳(50.3±18.9),平均腫瘍径は28.6±7.9mmであった。現在の当科における手術方針は,45歳未満:片葉に限局,Ex0 or 1,N0,M0の場合は片葉切除+D1,対側に癌および癌疑いの結節あるか,あるいは,Ex2 or N1 or M1症例には全摘+D2-3,45歳以上:T1aかつN0,M0の症例は片葉切除+D1,それ以外の症例は,全摘+D2-3としてきた。したがって,グレーゾーン症例に対して葉切除を行った7例中6例は小児例を含む45歳未満症例であった。外側リンパ節郭清は,術前USやCTで転移陽性と判断した場合,当該部位を含んだ領域を郭清するという方針になりつつある。
  • 杉谷 巌
    2014 年 31 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    乳頭癌のリスクに応じた取扱いが推奨される中,甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版では,乳頭癌のリスク分類法としてTNMステージングを推奨したうえで,T1N0M0の低リスク癌には葉切除を,T>5cm,高度のN1,高度のEx,M1などの高リスク癌には全摘を推奨した。中間のグレーゾーンに対する方針は術後合併症の発生頻度と予後のバランスをもとに,個々の症例について決定することが求められた。癌研式乳頭癌の癌死危険度分類では,M1,50歳以上で高度のExまたは3cm以上のNを認めるものが高危険度群で,それ以外はすべて低危険度群とした。低危険度群の82%に甲状腺温存手術が行われたが,術式による予後の差はなく,疾患特異的10年生存率は99%以上であった。再発率は8%で,再発危険因子として,年齢60歳以上,T>3cm,Ex2,2cm以上のNが有意であった。これらに該当する症例をグレーゾーンとして,甲状腺全摘・放射性ヨウ素内用療法を推奨すべきかどうかは今後の検討課題である。
  • 佐藤 伸也, 横井 忠郎, 森 祐輔, 橘 正剛, 山下 弘幸
    2014 年 31 巻 4 号 p. 266-272
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    当院で2012年に初回手術を施行した甲状腺乳頭癌症例の術後合併症を評価し,合併症の観点から適切な手術術式を検討した。全体として反回神経麻痺は症例あたり5.9%に生じたが,一過性および永続性の両側麻痺はなく,また片側麻痺の神経温存例での麻痺の回復率は88.9%であった。副甲状腺機能低下症は退院時に51.0%の症例で生じていたが,術後3カ月で6.5%,術後1年で2.0%まで低下しており,1年以上の永続症例はすべて少量の活性型ビタミンD製剤のみで良好にコントロールされていた。一方で片葉切除例での甲状腺機能低下症の発症率は38.9%で,片葉切除例であっても比較的高率に甲状腺ホルモン剤を内服していた。以上のことから,片葉切除を施行しても甲状腺機能低下症が予想される場合は甲状腺全摘を手術術式として選択してもよいと考えており,その点も考慮した当院の術式選択の境界(グレーゾーン)はT1とT2の間であった。
特集2
  • 木村 理
    2014 年 31 巻 4 号 p. 273
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    この度「膵・消化管内分泌腫瘍の診療の考え方」を日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌の特集を組ませていただきました。膵・消化管内分泌腫瘍は最近では分子標的薬が登場し,またストレプトゾトシンも承認され,手術治療ばかりでなく,様々な治療法が現れ,治療の幅が増えてきました。現在,独自の特色に合わせた様々なプロフェッショナルな先生方に膵・消化管内分泌腫瘍の解説をしていただきます。2013年に膵・消化管内分泌腫瘍のガイドラインができて,インターネットからダウンロードできるようになりました。このガイドラインは膨大な内容を含んでおりますので,まず分かりやすく説明することとしました。ガイドラインでは大まかなことは分かりますが,臨床では膵・消化管内分泌腫瘍に関して分からないことがまだたくさんあります。すなわち疫学については九州大学の伊藤鉄英先生に解説していただきます。膵・消化管内分泌腫瘍の病理について詳しい東北大学の笠島敦子先生にお願いいたしました。膵内分泌腫瘍(P-NET)の外科治療と最近使われるようになった分子標的薬について東京医科歯科大学の工藤 篤先生,非切除P-NETの治療はどうすべきか北里大学の高野幸路先生より臨床的に有用な知見をいただきます。膵・消化管内分泌腫瘍は分化型であれば進行はゆっくりではあるが,長期的には肝転移などから命取りになる疾患です。膵・消化管内分泌腫瘍の疫学や病理の基礎的なことを勉強して,外科治療,内科治療,最新の分子標的薬の知識は日々進歩しており,臨床医は患者さんのために勉強し続ける必要があるのは言うまでもありません。日本内分泌・甲状腺学会雑誌の本特集が膵・消化管内分泌腫瘍の最新のバイブルになり,読者の皆様の日常臨床に役立つことを信じております。多発性内分泌腫瘍症(MEN)では甲状腺,副甲状腺,副腎,膵・消化管内分泌腫瘍を治療しなければなりません。よって膵・消化管内分泌腫瘍の知識は甲状腺外科や副腎外科を専門とする先生方にとってもたいへん有用と考えます。ぜひ日本内分泌・甲状腺学会の会員の皆様には本特集を読んでいただけたらと思いますのでよろしくお願い申し上げます。
  • 木村 理, 渡邊 利広, 平井 一郎
    2014 年 31 巻 4 号 p. 274-278
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    消化管に発生する神経内分泌腫瘍(NET)の多くは膵臓と消化管に発生する。膵・消化管内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインはNET患者が迅速に,診断が正しくなされ,最新治療が受けられるように作成された。このガイドラインはダウンロードで誰でも見ることができる。Clinical Questionは大きく5つの項目があり,CQ1はNETの診断,CQ2は病理,CQ3は外科治療,CQ4は内科治療・集学的治療,CQ5はMEN1に伴う膵・消化管NETに関する質問と回答である。本ガイドラインを参考にすることにより,臨床医にとってより膵・消化管内分泌腫瘍が分かりやすくなり,より良い治療ができるようになったと考えられる。
  • 伊藤 鉄英, 河邉 顕, 李 倫學, 肱岡 真之, 五十嵐 久人, 中村 和彦, 奥坂 拓志, 河本 泉, 今村 正之, 島津 章
    2014 年 31 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    There have been few epidemiological data on gastroenteropancreatic neuroendocrine tumors (GEPNETs) in Japan. First, we reported the epidemiology of pancreatic endocrine tumors (PNETs) and gastrointestinal neuroendocrine tumors (GI-NETs) in Japan in 2005. Next, we conducted the second survey regarding with GEPNETs patients who received treatment in 2010. A total of 3,379 individuals received treatment for PNETs in 2010. The number of patients in 2010 was an increase of about 1.2 times as compared to that in 2005. Non-functioning tumor (NF)-PNET constituted 64.5%, followed by insulinoma (20.9%) and gastrinoma (8.2%). On the other hand, an estimated 8,088 patients received treatment for GI-NETs. The number of patients in 2010 was an increase of about 1.8 times as compared to that in 2005. The locations of GI-NETs varied: foregut, 26.1%; midgut, 3.6%; and hindgut, 70.3%. The frequency of carcinoid syndrome in GI-NETs was only 3.2%. The results show that the number of Japanese patients with GEP-NET in 2010 was an increase compared in 2005.
  • 笠島 敦子, 笹野 公伸
    2014 年 31 巻 4 号 p. 284-289
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    膵・消化管神経内分泌腫瘍(gastroenteropancreatic neuroendocrine tumor:GEP-NET)の罹患数の増加に伴い,病理医が組織診断を行う頻度も必然的に増加している。GEP-NETは,比較的典型的な組織像を呈するが,一部は他の外分泌系腫瘍に類似し診断に注意を要する。非典型的組織像を呈する症例の多くは,適切な免疫組織化学法により鑑別可能であるが,日常診療で遭遇する頻度は極めて少なく,未だ十分な理解が得られているとは言い難い。加えて近年では,超音波内視鏡の普及により,少ない組織量での診断を求められる機会が増加している。また,GEP-NETのWHO分類は,核分裂数とKi67 indexによって決定されるが,これは,その後の治療方針や予後予測に極めて重要な因子であるため,より再現性の高く客観的な評価方法が求められる。病理組織診断の注意点と最近のトピックスを解説する。
  • 工藤 篤, 田邉 稔
    2014 年 31 巻 4 号 p. 290-297
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    膵神経内分泌腫瘍の術後5年生存率は60~80%,肝転移再発率は30~85%と報告されている。原発巣切除の意義は極めて高く,リンパ節郭清が必要である。核出術が選択可能な腫瘍の肉眼型分類は,理論上被膜形成のある単純結節型に限定されるが,被膜形成や被膜外浸潤などの病理学的所見を術前に判定することは極めて困難であることは極めて明白であり,リンパ節郭清を伴う定型的切除を選択することがベストである。また,本邦においては初診時に遠隔転移を認める症例が約2割,非機能性NECに至っては半数を占める。肝転移を伴う症例の予後は極めて不良であり,集学的治療の一環としての外科切除が果たす役割は極めて重い。しかしながら,切除だけで根治を狙うことには限界がある。従来のソマトスタチンアナログ製剤に加えて,2011年にエベロリムスが2012年にスニチニブが保険適応となった。近年の大腸癌に対する集学的治療の革新的な進歩がそうであったように,膵神経内分泌腫瘍においても分子標的療法の発展に伴い外科治療の適応は今後ますます拡大していくことが予想される。
  • 高野 幸路
    2014 年 31 巻 4 号 p. 298-302
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    外科治療によって切除不能な膵神経内分泌腫瘍に対する治療法について,①機能性神経内分泌腫瘍の内分泌症状の薬物療法②抗腫瘍薬による薬物療法③肝転移に対する外科治療以外の局所療法④集学的治療⑤放射線療法に分け,多くは膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドラインに準拠して説明する。非切除膵NETに対する治療法を選択する際には,組織学的grade,肝転移の程度,内分泌症状の有無,患者の全身状態,使用可能な治療法などから見た総合的な判断が必要である。
特別寄稿
  • 佐々木 純
    2014 年 31 巻 4 号 p. 303-309
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    6例のMarin-Lenhart症候群を経験した。これら6例はGraves病と,過機能性甲状腺結節の合併と見なし得た。この症候群の結節と結節以外の部分は131Iシンチグラムをみても,或いは文献によれば,組織学的にみても,大きな差はなかった。従って,この両部分の病因の少なくとも一部は共通しているはずである。ところが現在の通説によれば,結節部分はTSHと無関係に甲状腺ホルモンを過剰産生する自律性腫瘍であり,結節以外の部分は抗TSH受容体抗体で刺激されている自己免疫疾患である,という説明になる。かつ二種類の甲状腺機能亢進症が,1個の甲状腺の中に隣り合って共存しているという,理解し難い説明になってしまう。これらふたつの学説は,片方或いは両方ともに,誤りである可能性が高い。しかし,これらの両甲状腺部分が,ともにTSH刺激に対して過敏すぎる,或いはTSH受容体が多すぎる,と仮定すれば,すべての現象が矛盾なく説明できる。過機能性甲状腺結節が,TSH刺激に対して過剰反応することは,既に証明されている。Graves病甲状腺腫の中のTSH受容体が,異常に多いことも既に知られている。その多すぎるTSH受容体を中和して,この疾患を自然治癒させる為に,抗TSH受容体が作られると推察される。抗体は抗原に結合すると離れないから,不運にもTSHに似てしまった,この抗体は抗原であるTSH受容体に結合したまま,いつまでも甲状腺を刺激し続けて,甲状腺機能亢進症を悪化させていると推察される。治療はTSH受容体を減らすことである。
  • 伊藤 研一, 清水 一雄, 吉田 明, 鈴木 眞一, 今井 常夫, 岡本 高宏, 原 尚人, 筒井 英光, 杉谷 巌, 杉野 公則, 絹谷 ...
    2014 年 31 巻 4 号 p. 310-313
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    本邦においても進行甲状腺癌に対する分子標的薬が承認され,放射性ヨウ素治療(RAI)抵抗性進行性分化型甲状腺癌に対する治療が新しい時代に入った。しかし,適応患者の選択に際しては,病理組織型,進行再発後の放射性ヨウ素(RAI)治療に対する反応などを適切に評価した上で判断することが重要であり,分子標的薬特有の有害事象に対する注意も必要である。分子標的薬の適正使用に際しては治療による恩恵と有害事象を十分に考慮した適応患者の選択が肝要である。また,未解決の問題に関しては,本邦での臨床試験による検討が必要と考えられる。
原著
  • 森 祐輔, 橘 正剛, 横井 忠郎, 佐藤 伸也, 山下 弘幸
    2014 年 31 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    甲状腺癌に対して甲状腺葉切除や亜全摘術が多く行われている本邦にとって残存甲状腺全摘術における合併症については重要な臨床課題であるが,まとまった報告は少ない。今回,われわれは当院での残存甲状腺全摘術症例を検討したので,術後合併症を中心に報告する。2006年から2012年までに当院で手術を施行した甲状腺分化癌再発症例あるいは放射性ヨード治療目的で残存甲状腺全摘術を行った66例を対象とした。年齢は26~83歳(平均年齢は55歳),男女比は9:57。残存甲状腺切除した甲状腺内に乳頭癌を認めたのは63.6%(42/66例)。術後合併症は一過性反回神経麻痺3.0%,永続性反回神経麻痺は認めなかった。永続性副甲状腺機能低下は3.0%(2/66例),一過性副甲状腺機能低下は26.6%(16/66例)であった。甲状腺癌術後の残存甲状腺切除手術は反回神経麻痺や副甲状腺機能低下といった合併症が多いとされているが,安全に手術することは十分可能であると考える。
症例報告
  • 手塚 理恵, 今井 常夫, 安藤 孝人, 毛利 有佳子, 高阪 絢子, 吉田 美和, 藤井 公人, 中野 正吾, 福富 隆志
    2014 年 31 巻 4 号 p. 319-322
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    症例は23歳時にRET遺伝子変異が確認された多発性内分泌腫瘍症2A型(MEN2A)女性保因者。26歳時に画像上病変不明だがガストリン負荷試験陽性のため,甲状腺全摘術+両側D1郭清を施行した。術後14年目にCEA・カルシトニンの異常高値と右内深頸リンパ節腫大を認め,右内深頸リンパ節郭清術を施行した。姉・母・本人の順番で1995年から1999年に甲状腺手術を行い,いずれもStage Ⅰであった。姉・母は両側D3b郭清を施行し病理組織学的リンパ節転移は認めず(n0),現在まで再発の兆候はない。最後に手術した本例は両側D1郭清にとどめn0だったが,初回治療で郭清しなかった内深頸リンパ節に再発を認めた。MEN2Aに対して予防的外側リンパ節郭清は不要と考えられている。同一家系内で予防的外側リンパ節郭清をしなかった症例にのみ再発を認めたが,治癒切除が可能であった。微小MTC症例でも,長期間経てから再発をきたすことがあるので長期にわたって慎重な経過観察が必要である。
  • 鈴木 孝尚, 大塚 篤史, 石井 保夫, 本山 大輔, 永田 仁夫, 杉山 貴之, 古瀬 洋, 大園 誠一郎
    2014 年 31 巻 4 号 p. 323-327
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    62歳女性。二次性副甲状腺機能亢進症に対して副甲状腺摘出術を施行した。左下の腺腫は同定できず,3腺摘出+右前腕自家移植術を施行した。リン・カルシウム・intact PTH(iPTH)はコントロールされたが,7年後より高カルシウム血症・iPTH高値が出現した。Methoxyisobutylisonitrile(以下MIBI)シンチグラフィで頸部に残存腺の腫大が確認され,残存副甲状腺摘出術を施行。しかし術後も高カルシウム血症・iPTH高値が持続し,再度MIBIシンチグラフィを施行。前回同定できなかった縦隔内異所性副甲状腺を確認した。胸腔鏡下異所性副甲状腺摘出術を施行した結果,カルシウム・iPTH値は正常化し,以後はリン・カルシウムのコントロールも良好である。4腺目の残存副甲状腺摘出後に,5腺目の胸腔内異所性副甲状腺腺腫を診断した1例につき報告する。
  • 福家 智仁, 鬼塚 哲郎, 飯田 善幸, 上條 朋之, 須田 稔士, 今井 篤志
    2014 年 31 巻 4 号 p. 328-331
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/17
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    63歳男性,甲状腺乳頭癌(T4aN0M0)に対して甲状腺左葉峡切除,D1郭清を施行した。術中反回神経への腫瘍浸潤があり,反回神経合併切除し,頸神経ワナによる神経移行術を行った。手術6年後,左中内深頸領域にリンパ節転移を認めたため左D2a郭清を行った。術中NIMを用いたところ再建に用いた左頸神経ワナを同定でき,温存することができた。術後声帯の萎縮は見られず,音声の悪化は見られなかった。甲状腺癌再手術例において,反回神経の同定は通常困難であるが,表面電極付挿管チューブを用いたNIM(nerve integrity monitoring)は再建神経の同定に有用であると考えられた。
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