日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
32 巻, 4 号
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会告
巻頭言
目次
編集委員会
特集1
  • 鈴木 眞一
    2015 年 32 巻 4 号 p. 219
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    内分泌外科領域では,甲状腺,副甲状腺についで副腎が重要な臓器であり,構成医師の中でも内分泌外科医に次いで多いのが泌尿器科医である。ややもすると甲状腺に偏りやすい本学会誌ではあるが,副腎の最新知見は読者にとって欠かせないものと考える。本特集は,2015年5月28日,29日に福島市で開催された第27回日本内分泌外科学会においてシンポジウム2「副腎皮質腫瘍の診断と治療」,ワークショップ3「副腎皮質腫瘍・褐色細胞腫 パラガングリオーマの診断と治療」で発表をいただいた先生方から,大会会長として推薦し依頼したものである。馬越洋宜先生と西川哲男先生(中井一貴先生)には副腎静脈サンプリングについて執筆いただいた。特に馬越先生には多施設データベースの構築とその臨床的意義につき,西川先生には副腎腺腫の部分切除が可能となる超選択的副腎静脈サンプリング法につき詳述いただいた。西本紘嗣郎先生にはアルドステロン産生腺腫発生母地の解明の鍵としてアルドステロン合成酵素免疫染色と次世代シークエンサーでの最新の知見を執筆していただいた。関敏郎先生にはクッシング症候群の術前診断と術後管理につきあらためて解説いただいた。特別講演も賜った笹野公伸先生(山﨑有人先生)には副腎皮質癌の治療標的因子につき執筆いただいた。皮質腫瘍関連が多い中で,この領域の第一人者である成瀬光栄先生に,ご自身を中心にまとめられた褐色細胞腫 パラガングリオーマの診療ガイドラインにつき解説いただいた。いずれも本邦の副腎領域のエキスパートからの珠玉の稿であり,内分泌外科医にとっては垂涎の特集と思う。また普段は全く副腎に接しない,甲状腺外科とくに甲状腺副甲状腺のみの領域の先生方にも専門医の知識として,また試験対策としても絶好の特集といえ,1人でも多くの先生方に一読いただければ幸いである。
  • 馬越 洋宜, 和田 典男, 一城 貴政, 松田 祐一, 亀村 幸平, 福岡 富和, 藤井 雄一, 甲斐 達也, 坂本 竜一, 小河 淳, 鈴 ...
    2015 年 32 巻 4 号 p. 220-224
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    原発性アルドステロン症の病型診断において副腎静脈サンプリング(AVS)は標準的な診断法とされるが,AVSの判定基準や実施方法は標準化されておらず,その診断精度は十分に担保されていない。そのためわれわれはAVSに関するエビデンスを創出のためのAVSデータベース(WAVES-J)を構築し,1)AVSの成功率,2)左副腎静脈採血部位,3)局在判定基準に関する知見を得た。成功率についてはAVSに熟練した施設では約90%の成功率が得られ熟練施設への集約化の必要性が示唆された。採血部位については,左副腎静脈の中心静脈と下横隔静脈との合流部である共通幹での採血が費用,容易さ,診断精度の点からも標準的であると考えられた。局在判定基準については,AVSの結果が“グレーゾーン”の症例では対側副腎の抑制を示すContralateral ratioが手術適応の決定に重要であること示された。今後さらにAVSの標準化に関するエビデンスの確立が期待される。
  • 中井 一貴, 大村 昌夫, 西川 哲男
    2015 年 32 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    原発性アルドステロン症(PA)は,二次性高血圧において最も頻度の高い疾患であり,その過半数は手術治療によりPAおよび高血圧の治癒が期待できる。当院で施行している区域別副腎支脈採血(S-ATS)は,通常の副腎静脈サンプリング(AVS)より詳細な局在診断および病型診断を可能とする。S-ATS診断に基づいた片側副腎部分切除によるアルドステロン産生腺腫(APA)の治療は,片側副腎アルドステロン症の治療において,副腎全摘と同等の治療効果を有し,侵襲性を軽減する。両側副腎アルドステロン産生腺腫では,少なくとも一側の副腎を部分切除で治療することにより,医原性副腎不全を伴わずに両側副腎の根治的治療を行うことが可能となった。S-ATS診断および副腎部分切除により,PAの手術治療の低侵襲化と根治的治療の適応拡大が期待できる。
  • 西本 紘嗣郎, 北村 陽典, 中川 健, 関 次男, 小坂 威雄, 大家 基嗣, 笹井 伸哉, 向井 邦晃
    2015 年 32 巻 4 号 p. 230-233
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    われわれは,世界で初めてホルマリン固定パラフィン包埋切片上にアルドステロン合成酵素(cytochrome P450,family 11,subfamily B,polypeptide 2)とコルチゾールの合成酵素(cytochrome P450,family 11,subfamily B,polypeptide 1)を区別して検出できる免疫組織化学染色法に成功した。本稿では,同染色法によりこれまでに明らかとなったアルドステロン産生部位の組織学およびアルドステロン産生病変の病理学について解説する。
  • 関 敏郎, 安田 敦, 深川 雅史, 花井 一也, 寺地 敏郎
    2015 年 32 巻 4 号 p. 234-238
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    副腎性クッシング症候群はACTH非依存性であり腺腫・癌腫・過形成・異形成が原因となる。本症候群による高コルチゾール血症は生命予後を著しく低下させるため,存在診断は確実に行う必要がある。コルチゾールの自律的分泌能が低い症例や周期性を示す症例では,存在診断が困難となる場合がある。副腎偶発腫瘍の指摘が増加する中,クッシング徴候を示さないサブクリニカルクッシング症候群の診断には注意が必要である。本症候群においては治療の第一選択は手術である。安全で適切な手術を施行するには局在診断が重要となる。典型的な片側性の腫瘍であれば局在診断は容易であるが,両側性の腫瘍では診断は困難となる場合がある。中でも,クッシング症候群と原発性アルドステロン症を合併する場合,局在診断には副腎静脈サンプリングが有用となる。術後管理においては腫瘍摘出直後より生じる副腎皮質機能低下症に対する対策を徹底させることに尽きる。
  • 山﨑 有人, 中村 保宏, 佐藤 文俊, 笹野 公伸
    2015 年 32 巻 4 号 p. 239-242
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    副腎皮質癌は悪性度の高い腫瘍である。副腎皮質癌の約半数はホルモン産生を伴い内分泌腫瘍としての側面も有する。現在,局所の副腎皮質癌では外科的切除が最も有効とされているが,術後の再発率も高く,術後補助化学療法の必要性が示唆されている。副腎皮質癌における化学療法のkey drugとしてはmitotaneが以前より使用されているが,これに勝る治療薬は現時点ではない。しかしmitotaneは有害事象も多岐にわたり慎重な投与および経過観察が必要とされる。それゆえ,使用例も限られることから経験のある専門施設での治療が望まれる。加えて昨今では数多くの悪性腫瘍において,driver mutationsの原因遺伝子の解析が進み分子標的薬が導入されてきている。副腎皮質癌においても,driverとなる原因遺伝子の候補が報告されてきているものの,未だ有効な分子標的薬はない。今後の更なる展開が望まれる。本稿では,このような副腎皮質癌の診療の現状および今後の治療標的因子の展望について述べる。
  • 成瀬 光栄, 立木 美香, 馬越 洋宜, 田辺 晶代
    2015 年 32 巻 4 号 p. 243-245
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    褐色細胞腫・パラガングリオーマは適切な診断と治療により治癒が期待できる一方,診断の遅れは,高血圧クリーゼ,不整脈,たこつぼ型心筋症などを合併する。更に約10%が悪性で,初期の診断が困難かつ有効な治療法がない。著者らは日本内分泌学会臨床重要課題委員会と厚労省難治性疾患克服研究事業研究班との協力で褐色細胞腫診療指針2012年を取りまとめたが,本稿では2014年に米国内分泌学会から発表された褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドラインの要点を解説する。根拠となる論文には4段階のエビデンスレベル,診療行為には2段階の推奨グレードが付記されている。基本的な点は我が国における診療指針と同様であるが,機能検査,画像検査,遺伝子検査などの各点で差異を認める。我が国の保険医療制度を考慮して日常診療に活用する必要がある。
特集2
  • 岡本 高宏
    2015 年 32 巻 4 号 p. 246
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    臨床の現場では不確実さにどう向き合うかが常に課題となり,甲状腺がん診療もその例外ではない。全摘をしなくてよいのか?経過観察で大丈夫か?そうした疑問に既に答えがあり,それに基づく一定の指針があれば医療者は患者さんと決断を共有できる。診療ガイドラインの果たす役割は大きい。ただし,それで事足れりではない。たとえば同じTNMでも葉切除で全く問題ない患者さんがいる一方で,全摘後に補助療法を行っても再発する場合がある。つい先頃この世を去ったサケット先生は,予想通りあるいは期待通りにいかない可能性を数値にして「エビデンス」と呼んだが,これは「平均値」と言い換えてもよい。患者さんは皆平均人ではない。平均値に基づくガイドライン通りに診療を行っても,うまくいかないことがある。こうした現実に向き合うには,私たちが暮らす地域の人,歴史,文化を理解する必要がある。海外のガイドラインを参考にする際にもそれを忘れてはならない。エビデンスが医療に必要な知識の,ほんの一部に過ぎない所以である。本特集でご執筆いただいたエキスパートの先生方には厚く御礼申し上げます。
  • 福成 信博
    2015 年 32 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    今回のATAガイドラインでは,超音波所見と予想される悪性の可能性および腫瘍径を制限した細胞診の適応に関して明らかに記載されている。1cm以下の腫瘍に対しては,特徴的な超音波所見,リンパ節腫大,臨床的高危険要素(幼児期の頸部への外照射歴,甲状腺癌の家族歴)などを除けば,1cm以下の危険性の少ない症例を精査から除外することを提唱している。また,微小甲状腺癌の全てに対して,極めてわずかな例外的結果を防ぐために精査,加療を行うことは患者にとって有益であるよりも,有害であると決断付けている。また,殆どの甲状腺癌は低リスクであり,多くの甲状腺癌は人体の健康をわずかながら脅かすリスクをみせているが,十分に治療可能であると述べられており,今回のATAガイドラインは,微小乳頭癌に対する精査・加療を不要との意思を明らかにしたものである。
  • 松津 賢一, 杉野 公則, 伊藤 公一
    2015 年 32 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    甲状腺乳頭癌の初期治療方針は,諸外国とわが国では従来大きく異なっていた。甲状腺切除範囲は,わが国では亜全摘以下の甲状腺温存手術が中心であったが,欧米では広く全摘が推奨されていた。しかしATAは今回のガイドライン改訂で個々の症例のリスクに基づいて切除範囲を決定するRisk-adapted managementを採用した。4cmより大きな腫瘍,肉眼的腺外浸潤,臨床的リンパ節転移,遠隔転移のいずれかを有する症例は高リスクとして全摘を,1cmより小さく腺外浸潤やリンパ節転移がなければ低リスクとして葉切除を推奨し,どちらにも該当しない症例では個々の症例ごとにいずれの術式も選択可能とした。未だ甲状腺切除範囲と予後に関するエビデンスが十分とは言えず,残された課題も多いが,今回のATAガイドライン改訂に伴って,NCCN,BTAを含む欧米のガイドラインは,わが国と類似した治療戦略を取ることになった。
  • 伊藤 康弘, 宮内 昭
    2015 年 32 巻 4 号 p. 259-263
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    近日中にアメリカ甲状腺学会(ATA)の甲状腺結節と甲状腺分化癌取り扱いガイドラインの最新版が出版されるが,今回はいくつか大きな変更点がある。その一つが甲状腺微小乳頭癌の取り扱いである。今までは細胞診で乳頭癌と診断された場合は当然のように手術が施行されていたが,今回は1センチ以下の微小乳頭癌でリンパ節転移や局所進展のないものは,たとえ画像上癌を疑っても細胞診による診断をしないことを推奨し,またたとえ癌と診断がついたとしてもすぐに手術を行うのではなく,経過観察(active surveillance)を取り扱いの選択肢として採択した。これは日本から論文の形で発信された内容を受け入れたものであり,実に画期的な変化である。ただ,もちろんATAガイドラインの内容をすべて日本の実地医療に適用するのがよいかどうかについては異論もあるかも知れない。本稿では微小乳頭癌の経過観察について,ATAガイドラインと日本の診療の合致点および差異について述べる。
  • 野口 靖志
    2015 年 32 巻 4 号 p. 264-266
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    米国甲状腺学会の新しいガイドラインでは,ablationをriskの低い症例では推奨しないとされており,従来のようにriskを問わず,全ての甲状腺癌患者に全摘術を施行してablationを行う方針から大きな方向転換を示している。また,adjuvant therapyという新しい考え方も示されており,今後の更に変化を示そうとしている。この様なablationの考え方の変化と,我が国の現状,更には我が国とのヨード制限の差異についても解説し,今後,われわれに求められるevidenceについて述べる。
  • 櫻井 晃洋
    2015 年 32 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    米国甲状腺学会は2015年6月に甲状腺髄様癌の診療に関するガイドラインを改訂して公表した。2009年に公開した内容と比較すると,RET遺伝子変異のリスク分類の変更や疾患分類の変更など,いくつか大きな変更がなされている。また診断や治療についてのアルゴリズムも,基本的な考え方には大きな変化はないものの,より簡潔な形で提示されており,甲状腺髄様癌の診療に標準化に非常に参考になるものである。ただ,米国で推奨される内容は,わが国の医療の現状とは必ずしも合致しないものもある。わが国においても,米国をはじめとした海外のガイドラインの動向を参考にしつつ,わが国の実態に即し,かつエビデンスに基づいた診療の標準化が求められる。
  • 山下 俊一
    2015 年 32 巻 4 号 p. 274-279
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    米国甲状腺学会(ATA)が,小児甲状腺結節・分化がんの取扱いについて,診断の進め方と手術の選択方法,術後管理の詳細について405編におよぶ論文精査と専門家の意見を反映し,欧米の現時点でのコンセンサスを取り纏めた。既報の成人甲状腺がん治療ガイドラインと比較すると,発見された小児甲状腺がんの治療手順が中心であり,原則成人版と大差はない。すなわち,予後良好な小児甲状腺結節・分化がんの術前のリスク推定による治療選択ではなく,術中所見と術後リスクを考慮した術式(全摘中心)の議論と,術後フォローアップ時における血中サイログロブリン(Tg)濃度を,再発癌マーカーとし,全摘後も高リスクと評価される患者への放射性ヨウ素内用療法を推奨した管理ガイドラインとなっている。小児甲状腺がんの前向き調査がなく,自然経過を考慮した議論の余地もあり,現在実施されている福島県の約38.5万人を対象とする甲状腺超音波検査の今後が重要となる。
原著
  • 山田 光一郎, 田中 信三, 渡邉 佳紀, 吉田 尚生
    2015 年 32 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    はじめに:初診時に外側区域リンパ節転移を認めた甲状腺乳頭癌症例について,主に頸部再発について検討した。対象:2003年11月から2013年4月までに当科で初回手術を施行した甲状腺乳頭癌症例のうち,初診時に外側区域リンパ節転移を認めた58例。結果:頸部再発は15例(25.9%)で認め,5年制御率は82.0%であった。最終転帰は原病死3例,担癌他病死2例,担癌生存9例であった。最終的にN再発が残存している症例は6例であった。そのうち再手術にても完全切除できず制御困難である症例は1例であった。残りの5例については,進行した多臓器遠隔転移を認めたため経過観察が4例,他疾患を伴い,頸部再発は予後に関係ないため経過観察が1例であった。結論:外側区域リンパ節転移を伴う甲状腺乳頭癌は,頸部再発の頻度が高いものの,再手術による制御は比較的良好であることが示唆された。
症例報告
  • 有村 俊寛
    2015 年 32 巻 4 号 p. 285-289
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    学童期に受けたバセドウ病手術後,50年間経過観察されず,特徴的な身体所見を有した,経緯詳細不明な症例を経験した。症例は59歳,女性。甲状腺機能低下症および副甲状腺機能低下症にて当院へ紹介。発見契機:頭部CTでの両側大脳基底核小脳石灰化。既往歴:学童期のバセドウ病手術(詳細不明)。特定の疾患での受診歴,通院歴なし。初潮11歳,閉経46歳。妊娠出産歴なし。家族歴:両親は他界。同胞に同様の身体所見や内分泌疾患などの既往なし。現症:低身長,肥満,円形顔貌。軽度精神発達遅滞疑い。頸部にU字状創瘢痕。甲状腺を両葉に結節状に触知。頸部US:両葉に結節性甲状腺腫の所見。経過:術後結節性甲状腺腫,甲状腺機能低下症および副甲状腺機能低下症による低Ca血症と診断。甲状腺ホルモン補充,活性型VitD3およびCa剤投与で,経過良好である。本症例の甲状腺手術の身体発育への影響は,推察困難であった。副甲状腺機能低下症の鑑別は,確定に至っていない。
  • 岩谷 胤生, 三浦 大周, 藤井 丈士, 西川 徹, 津川 浩一郎
    2015 年 32 巻 4 号 p. 290-294
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
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    症例は64歳の男性。2011年春より腹痛,食欲不振,体重減少を認めていた。2012年2月にアルコール性慢性膵炎急性増悪および十二指腸潰瘍と診断された。また血液検査でCa 12.2mg/dl,iPTH 396pg/dlと異常高値を指摘され原発性副甲状腺機能亢進症と診断された。身体所見では右前頸部の鎖骨背面に硬い腫瘤の一部を触知した。頸部超音波およびMRIでも同部位に一致して24mmの一部境界不明瞭な不整形腫瘤を認めた。99mTc-MIBIシンチグラフィでも甲状腺右葉下極尾側に早期像・後期像ともに異常集積を認めた。以上より臨床的に副甲状腺癌を疑い甲状腺右葉および右下副甲状腺腫瘍切除+胸腺舌部を含めた気管周囲リンパ節郭清術(Ⅱ,右Ⅲ,Ⅳ番)を施行した。術後の病理組織診断では副甲状腺異型腺腫と診断された。副甲状腺癌と副甲状腺異型腺腫を術前に診断することは困難とされ,本症例でも診断および治療法の決定に難渋した。稀な副甲状腺異型腺腫の診断と治療について文献的考察を含めて報告する。
  • 林 昌俊, 栃井 航也, 小久保 健太郎, 丹羽 真佐夫, 高橋 啓
    2015 年 32 巻 4 号 p. 295-298
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/04
    ジャーナル フリー HTML
    症例は59歳女性,無症状。生理不順,不妊症で精査された折,超音波検査で甲状腺右葉に3×4×5mmの低エコー不整な結節を認めた。穿刺吸引細胞診はクラスⅢであったが乳頭癌が否定できないため手術を施行した。CT検査では右鎖骨下動脈起始異常を認め,非反回下喉頭神経の存在が示唆された。術中,顔面神経刺激装置で下喉頭神経を検索しながら手術を行った。右下喉頭神経は甲状腺下極のレベルで迷走神経より分岐し,Toniato分類ⅡB型と考えられた。右下喉頭神経を温存し,甲状腺右葉切除術およびD2a郭清を施行した。病理組織検査ではPapillary carcinoma T1a Ex0 N0 M0 StageⅠと診断した。術前画像検査で非反回下喉頭神経の存在を疑うことが重要であり,その際に顔面神経刺激装置を用いることでその走行を同定しえた。
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編集後記・奥付
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