日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Print ISSN : 2186-9545
32 巻 , 3 号
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会告
目次
編集委員会
特集1
  • 原 尚人
    2015 年 32 巻 3 号 p. 153
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    甲状腺癌に対する新たな分子標的薬の承認にさきがけ,日本甲状腺外科学会および日本内分泌外科学会では甲状腺癌薬物療法委員会を組織した。甲状腺癌を取り扱うのは外科系医師が多く,薬物療法になれていない者も少なからず存在する懸念が発生した。そこで甲状腺癌薬物療法委員会では,日本臨床腫瘍学会に連携プログラムを依頼したところ,ご快諾を得てこのシステムが始まった。その後日本頭頸部外科学会,日本甲状腺学会にもご賛同を得て現在は5学会で協定を結んだプログラムとなった。具体的には外科系医師から腫瘍内科医への紹介,併診,コンサルテーションなど自由に選べ,地域性も考慮したシステムで,相談内容も有害事象の対策はもちろんのこと,薬物療法の適応そのものや,患者に関わる様々な問題点をチーム医療として解決していく手段として利用できることを願っている。当院では甲状腺癌に対する分子標的薬の導入はすべて入院で行っている。入院と同時にコンサルテーションを行い入院日から腫瘍内科の併診,また病棟および外来看護師,薬剤師とも連携,有害事象発現時は皮膚科など他の診療科まで即時に対応があり連携システムがうまく起動しているように感じている。患者退院後の外来フォローも腫瘍内科医が外来看護師や化学療法室看護師と連動して,主治医以上に細かく観察してもらえるため大変重宝している。このような有益なシステムであるが,連携登録システムによる登録数を見るとまだまだ浸透しているとは言いがたい。今回の特集では連携がうまくいっている代表的な施設からの実情を報告していただき,うまくいくコツなどをご伝授いただきたいと願った。また,このプログラムの臨床腫瘍学会側の窓口となった国立がん研究センター田村研治先生にパートナー側からのお話をご依頼した。
  • 岩崎 博幸, 菅沼 伸康, 中山 博貴, 吉田 達也, 山中 隆司, 吉田 明
    2015 年 32 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    甲状腺癌に対する分子標的薬として2014年6月にソラフェニブ(商品名ネクサバール)が,2015年5月にレンバチニブ(商品名レンビマ)が販売され,臨床での使用が可能となった。当院では,内分泌外科医が,他臓器がんで使用経験がある腫瘍内科医,皮膚科医,放射線治療医らと共に,甲状腺癌の適応症例の選定から,手足症候群,皮疹,高血圧,下痢などの副作用管理をチーム医療で安全に行うよう連携業務を行っている。適応症例の選定,初回投与量,減量,休薬,再開の判断はもとより,電子カルテ上でのマニュアルを共有することで,共通処方(セット登録)で予防と軽症例への対応から皮膚科併診のタイミングを明確にした。さらに,看護師,薬剤師らが中心となって,患者教育と細やかなfollow-up,治療開始前から始める必要なケアや副作用対策の詳細な説明を行っている。
  • 鈴木 章史, 杉野 公則, 田原 信, 野中 榮夫, 塩谷 純子, 横塚 智, 佐々木 太郎, 平野 昌美, 板垣 陽香, 輿水 やよい, ...
    2015 年 32 巻 3 号 p. 159-165
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に対して2014年6月ソラフェニブ(ネクサバール)が,「根治切除不能な甲状腺癌」に対して2015年5月レンバチニブ(レンビマ)が使用可能となった。各々,分子標的薬特有の副作用があり,そのマネジメントをいかに行い,安全・適正に使用していくかが大切である。甲状腺専門病院である当院では,医師,薬剤師,看護師,栄養士,検査室,医事が化学療法ワーキンググループを通じて,分子標的薬の運用方法を検討してきた。国立がん研究センター東病院の見学などを通じてそのマネジメントを学び,当院の実情に則した,外来から入院までのクリニカルパスの作成や,薬剤師によるテレフォンフォローアップの試み,副作用パンフレットの活用などを行っている。多職種が関わるチーム医療の一つがこの分子標的薬導入である。当院での取り組みが,「甲状腺を病む方々のために」参考になれば幸甚である。
  • 井上 めぐみ, 安藤 雄一
    2015 年 32 巻 3 号 p. 166-169
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    名古屋大学医学部附属病院化学療法部は院内診療科からのコンサルテーションやカンファレンスを診療基盤としており,「甲状腺癌診療連携プログラム」もこのような日常診療のなかで機能している。2015年6月までにこのプログラムへ登録された19例では,薬物療法開始のタイミング,合併症を有する症例での薬物療法の可否,特殊な組織型や未分化転化例に対する治療方針についてのコンサルテーションが多かった。一方,腫瘍進行が緩徐である,骨転移に対する局所治療を優先する,合併症の治療を優先するなどの理由により,同期間の8例では薬物療法が選択されなかった。甲状腺癌は解剖学的および病態的に境界領域に属する疾患であり,また有効な新規分子標的治療薬が使用できるようになったことから,甲状腺専門医に加えて内分泌外科・内科,耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍科,腫瘍内科など異なる専門性をもつ医師が連携して診療の質の向上を図ることが重要である。
  • 田村 研治
    2015 年 32 巻 3 号 p. 170-173
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    甲状腺がんに対する分子標的薬剤の承認が相次いでいる。「根治切除不能な分化型甲状腺がん」に対して適応症をもつソラフェニブ,「根治切除不能な甲状腺がん」に対して適応症をもつレンバチニブである。今後も,血管新生阻害剤,BRAF阻害剤,mTOR阻害剤,MEK阻害剤などの開発が甲状腺がん領域で進んでおり,承認が期待される。日本甲状腺外科学会,日本内分泌外科学会,日本甲状腺学会,日本頭頸部外科学会と日本臨床腫瘍学会の5学会は,「甲状腺がん診療連携プログラム」事業を開始した。分子標的薬剤の適正使用に関して,専門外科医とがん薬物療法専門医が,学会レベルで協力するモデルケースとなる。
特集2
  • 日比 八束
    2015 年 32 巻 3 号 p. 174
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    日常診療で患者さんから,自分が罹患している病気が子供にも発症する可能性があるかといった質問はよくされると思います。内分泌外科領域では多発性内分泌腫瘍症1型・2型は神経内分泌腫瘍が遺伝する疾患として有名であり,内分泌外科医から,その関連する疾患は遺伝する可能性があることを患者サイドに説明する機会は多いと思います。多発性内分泌腫瘍症1型・2型においては,関連疾患の病態,浸透率や予後などについて解明が進み,さらには国内外からもガイドラインが提示されており,その診断・治療方針については明確になってきています。しかしながら,言うまでもなく多発性内分泌腫瘍症1型・2型だけが家族性に発症する内分泌外科疾患ではありません。患者サイドに上記のような質問をうけて説明する時に,あるいは実際に家族性に発症している内分泌外科疾患症例に遭遇した時に,たとえ頻度は低くても多発性内分泌腫瘍症以外の家族性に発症する内分泌外科疾患についてよく知っておくことは内分泌外科医として必要なことと思います。以上のことから,今回の特集ではあえて‘多発性内分泌腫瘍症以外の’家族性内分泌外科疾患をテーマに選びました。甲状腺分化癌については伊藤康弘先生に,原発性副甲状腺機能亢進症については野口病院の内野眞也先生に,副腎皮質腫瘍については札幌医科大学の櫻井晃洋先生に,副腎髄質腫瘍については筑波大学の竹越一博先生にと,内分泌外科領域の家族性疾患に造詣の深い,我が国を代表する先生方に執筆をお願いいたしました。この特集が内分泌外科領域に携わる方々のお役に立てれば幸いと存じます。
  • 伊藤 康弘, 宮内 昭
    2015 年 32 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    家族性甲状腺癌の中でもっとも有名なものはRET遺伝子変異を伴う髄様癌である。しかし,日常臨床ではあまり留意されていない甲状腺分化癌も,原因遺伝子は同定されていないものの家族内発症が知られており,その臨床的意義が議論の的になっている。本稿では家族性乳頭癌を中心に,その頻度,臨床病理学的因子,予後について散発性乳頭癌との差異について検討した。その結果,家族性乳頭癌は家族歴のない症例に比べて腫瘍が単発性ではなく,多発性のものが多い以外に大きな特徴がなく,予後についても家族歴の有無は関係しなかった。従って手術術式としては全摘を行うことが望ましい以外,家族歴があるからといって特別に留意すべき点は見いだせなかった。また,low-riskな微小癌の経過観察を行ったシリーズでも家族歴の有無は,経過観察の妨げにならないことも判明した。
  • 内野 眞也, 松本 佳子, 伊藤 亜希子
    2015 年 32 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    家族性副甲状腺機能亢進症の多くは多発性内分泌腫瘍症(MEN)によるものであるが,MEN以外の家族性副甲状腺機能亢進症には副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群(HPT-JT),家族性孤発性副甲状腺機能亢進症(FIHP),家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)がある。HPT-JTは,副甲状腺腺腫あるいは癌,顎腫瘍,腎腫瘍,子宮病変を主徴とする常染色体優性遺伝疾患であり,原因遺伝子はCDC73遺伝子である。副甲状腺腫瘍は初発時に1腺あるいは2腺腫大までのことが多く,一見すると散発性の副甲状腺腫と見間違える。副甲状腺機能亢進症の発端者が若年発症で,臨床的にMENの可能性が低く,副甲状腺機能亢進症が術後再発している場合,顎腫瘍や腎腫瘍などを合併している場合は,HPT-JTを強く疑う。FIHPは,家族性に副甲状腺機能亢進症のみが認められる非症候性の場合で,副甲状腺腺腫あるいは癌を発生する常染色体優性遺伝疾患である。FIHPでは,MEN1CDC73CASR遺伝子変異などが認められることがある。
  • 櫻井 晃洋
    2015 年 32 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    遺伝性疾患を適切に診断することは,患者の治療およびサーベイランスの方針を確立するのはもちろんのこと,疾患によってはリスクのある血縁者に対する早期の介入を可能にする点でも極めて重要である。副腎皮質は機能性・非機能性腫瘍が多発する臓器であるが,遺伝性に発生する症例の割合はさほど多くはない。また,こうした遺伝性副腎皮質腫瘍の多くは他臓器の病変も伴う腫瘍症候群の一病変として認められる。したがって,遺伝性副腎皮質腫瘍の適切な診断・治療のためには,副腎病変の特徴のみならず,随伴する病変の特徴も把握しておく必要がある。本稿では単一遺伝子に起因する副腎皮質腫瘍もしくは副腎皮質腫瘍を伴う遺伝性腫瘍症候群のうちMEN1を除く疾患について,その概要を紹介する。
  • 竹越 一博
    2015 年 32 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    Pheochromocytoma/paragangliomaは40%と遺伝性の頻度が極めて高く,かつ15種類の原因遺伝子が同定されている。この40%という数字はヒトの全て腫瘍性疾患の中でも際立って高値であり,褐色細胞腫は遺伝性腫瘍と認識される。従って,今後の褐色細胞腫の診断と治療には原因遺伝子同定が必要と考えられる。さらに15~20%の症例に腫瘍細胞における体細胞遺伝子変異による発症も報告されている。遺伝性の頻度が高い点と変異遺伝子毎に臨床症状が異なる点を勘案すると,本疾患は遺伝情報を用いたオーダーメイド医療を考慮すべき疾患であり,今後そのロールモデル的役割を担うことが期待される。
症例報告
  • 稲石 貴弘, 柴田 有宏
    2015 年 32 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    症例は24歳女性。誘因なく右季肋部痛を自覚し,当院を受診した。CT検査で右副腎に75mm大の腫瘤性病変を認め,腫瘍内出血の疑いもあり入院精査を行った。副腎内分泌機能検査で異常所見は認めなかった。原因不明の副腎出血と診断し,全身状態は安定していたために保存的治療を行った。3カ月後のCT検査で血腫は40mmに縮小したが,腫瘍性病変の存在が否定できず,また再出血の可能性も考慮し,4カ月後に腹腔鏡下右副腎摘除術を施行した。摘出標本は副腎出血で矛盾はなかったが,原因となる所見は認めず,最終的に特発性副腎出血と診断した。特発性副腎出血は稀な疾患であり,腫瘍性病変の有無の鑑別が困難とされる。今回,保存的治療の末に腹腔鏡下で摘除した特発性副腎出血の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 柴田 雅央, 武内 大, 中西 賢一, 林 裕倫, 菊森 豊根
    2015 年 32 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    気管支囊胞は胎生期に気管支原基が異所性組織に迷入することにより発生する。縦隔に生じることが多いが,稀に腹腔・後腹膜・食道・皮膚・頸部・横隔膜・胃に生じることがある。今回,当初は副腎腫瘍と思われ手術を施行し,術後病理検査にて後腹膜気管支囊胞と診断された症例を報告する。症例は44歳女性。左副腎腫瘍疑いにて紹介受診。左副腎に接して8.6×5.1cm大の内部均一・境界明瞭な腫瘤を認めた。内分泌学的検査では異常を認めなかったが,悪性病変の可能性が否定できないことから手術を施行した。被膜損傷による腫瘤内成分の播種の可能性を懸念し,開腹にて手術を施行した。腫瘤は周囲臓器への浸潤を認めず副腎とも容易に剝離することができたため副腎は温存し腫瘤のみ切除した。術後病理検査にて気管支囊胞と診断された。後腹膜気管支囊胞は稀な疾患であり,副腎と接している際には副腎腫瘍との鑑別が困難なことがあり留意が必要である。
  • 大石 一行, 澁谷 祐一, 高畠 大典, 岩田 純, 松本 学
    2015 年 32 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    症例は64歳女性。2008年4月子宮腫瘍に対して膣式子宮全摘術を施行し,子宮平滑筋肉腫(StageⅠ)と診断された。2010年10月再発転移に対してGEM(gemcitabine)+DTX(docetaxel)による化学療法を開始したが,2010年10月CTで甲状腺左葉に9×10mm大の腫瘤が出現し,2012年12月には31×31mm大まで増大した。2013年3月に気管偏位をきたしたため当科を紹介受診し,エコーで左葉全体を占拠する47×36×52mm大の低エコー腫瘤を認めFNAで子宮平滑筋肉腫の甲状腺転移と診断した。7月に甲状腺左葉切除術を施行し,子宮平滑筋肉腫の甲状腺転移と最終診断された。2014年1月にはCTで甲状腺右葉に小結節として再発が疑われた。5月より緩和ケア目的に転院し,甲状腺手術から18カ月後に死亡した。転移性甲状腺癌は比較的稀であり,原発巣として腎癌,乳癌,肺癌の順に多いとされる。子宮平滑筋肉腫の甲状腺転移の報告はこれまでに数例しかなく,比較的稀な症例と思われたため文献的考察を含めて報告する。
  • 植木 雄志, 佐藤 雄一郎, 森 香織, 正道 隆介, 畠野 宏史, 川崎 隆, 本間 慶一
    2015 年 32 巻 3 号 p. 211-214
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/19
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    【症例】43歳男性。家族歴,既往歴に特記事項なし。20xx年2月から咳嗽あり,近医CTにて甲状腺腫瘍+多発肺転移の診断となり5月に当科紹介初診された。PET-CTでは甲状腺,頭部皮膚,両肺野に集積を認めた。頭部皮膚腫瘍を生検したが良性の血管平滑筋腫の診断であり,6月に甲状腺全摘およびD1郭清を施行した。術後病理診断では筋線維腫症であり,血小板由来成長因子受容体β(platelet-derived growth factor receptor β,PDGFRB)蛋白の過剰発現を認めることから,PDGFRB遺伝子変異を伴った内臓病変を有する成人全身型筋線維腫症例と考えられた。化学療法を施行するも,肺・膵臓などの内臓病変が増悪し,初診後8カ月で原病死した。【まとめ】非常に稀な成人筋線維腫症例を経験した。PDGFRB遺伝子変異が診断の決め手となったが,内臓病変を伴う全身型は予後不良で,治療法の確立が望まれる。
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