日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Print ISSN : 2186-9545
33 巻 , 3 号
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会告
目次
編集委員会
特集1
  • 伊藤 康弘
    2016 年 33 巻 3 号 p. 139
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺癌の治療ラインは長い間,変化がなかった。分化癌は手術,放射性ヨウ素を用いたアイソトープ治療および甲状腺刺激ホルモン抑制,髄様癌は手術のみ,そして未分化癌は手術,外照射および殺細胞薬による化学療法(これは手術に先駆けて行われることも多い)が通常の治療戦略であり,長年にわたって新しいラインは登場しなかった。しかし最近になってこれらの癌に対し,分子標的薬剤によるがん薬物療法という新たなラインが加わった。現時点で我が国では放射性ヨウ素抵抗性の進行再発分化癌に対するSorafenibおよびLenvatinib,進行再発髄様癌に対するVandetanibおよびLenvatinib,Sorafenib,そして未分化癌に対するLenvatinibが保険収載されている。

    しかしここで問題がある。多くの甲状腺外科医は上記のような背景があるため,がん薬物療法に習熟してない。また,その一方でがん薬物療法の専門医(腫瘍内科医)の多くは甲状腺癌のbiologyについて知識が十分とは言えず,投薬そのものはできても,その前にどういう症例にどういうタイミングで使用すべきかについては手探り状態になりがちである。また,甲状腺外科医と腫瘍内科医とは今まで極めて縁が薄く,接点は全くといっていいほどなかった。現在は診療連携プログラムが充実してきており,患者の紹介も比較的スムーズにできるようになっては来ているが,まだまだ甲状腺癌のがん薬物療法を然るべき症例にきちんと行うという根本的な点については改善の余地がある。

    今回の特集はその一助となればということで,企画されたものである。外科医の立場からみた分子標的薬剤を用いたがん薬物療法を不肖,私が担当し,それに続いて分化癌,髄様癌,未分化癌における分子標的薬剤による治療のノウハウや注意点をその道の専門家に述べていただいた。この特集が甲状腺癌を扱う臨床諸家にとって,有意義なものとなることを心から願ってやまない。

  • 清田 尚臣
    2016 年 33 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    これまで放射性ヨウ素治療(RAI)に不応な転移・再発分化型甲状腺癌に対する薬物療法はドキソルビシンが治療選択肢の一つであったが,その有効性は不十分なものであった[1]。しかし,2014年にmulti-target kinase inhibitor(m-TKI)であるソラフェニブ(sorafenib:SOR)の有効性が証明され,新たな治療オプションとして日本でも使用できるようになった[2]。さらに,レンバチニブ(lenvatinib:LEN)も第Ⅲ相試験において明らかな有効性が示され[3,4],RAI不応転移・再発分化型甲状腺癌の治療オプションがさらに充実することとなった。一方で,その使用にあたっては適応の慎重な判断と適切な管理が非常に重要な課題である。本稿では,このような分化型甲状腺癌(differentiated thyroid cancer,DTC)における分子標的薬の適正使用と今後の展望について解説する。

  • 高橋 俊二
    2016 年 33 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺髄様癌はC細胞(カルシトニン産生細胞)から発生する希少癌であり,家族性(MEN2)と散発性があるが,殆どでRET遺伝子の変異が認められる。主に変異RET遺伝子と血管新生を標的とした分子標的薬の開発が進んできている。バンデタニブは,海外の第3相試験でPFSの有意な延長,奏効率45%,国内第1/2相試験で奏効率38.5%が得られた。おもな有害事象は下痢,高血圧,発疹,間質性肺疾患であった。レンバチニブは海外の第2相試験で奏効率36%,国内の第2相試験では奏効率22%が得られ,主な有害事象は高血圧,食欲不振,手足症候群,疲労,蛋白尿であった。ソラフェニブは海外の第2相試験で奏効率6.3%,国内では奏効率25%,有害事象は手足症候群,高血圧などだった。この3剤が2015年から2016年にかけて承認された。髄様癌に対する分子標的治療はプラセボに比較して生存期間に有意差が認められていないこともあり,進行が急速あるいは有症状の症例に対する治療選択肢として考えるべきである。

  • 岡野 晋, 田原 信
    2016 年 33 巻 3 号 p. 151-154
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺未分化癌は極めて進行が早く予後不良な疾患である。初診時すでに進行例となっていることも多く,唯一の根治的な手術療法を行うことが不可能な際には,緩和的放射線療法や施設毎の薬物療法が行われてきた。また,薬物療法に関する標準治療は確立しておらず,例え積極的な治療を行っても,その治療成績は満足できるものではなかった。

    近年の研究により,甲状腺癌に関連する増殖因子とその受容体,遺伝子の異常によるシグナル経路の活性化などが解明される中,基礎的な研究結果に基づいた新規薬剤の開発も行われ,甲状腺癌に対する薬剤が相次いで保険承認されている。その中でも特筆すべきは,未分化癌に対しても使用可能な薬剤の登場であり,レンバチニブは分化型甲状腺癌のみならず,未分化癌に対してもその有用性が確認されている。

    未分化癌に対する分子標的治療薬の開発状況,そしてレンバチニブの有用性に関して述べたい。

  • 伊藤 康弘, 木原 実, 宮 章博, 宮内 昭
    2016 年 33 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺分化癌,髄様癌,未分化癌に対するTKIを用いた分子標的薬剤治療が認可され,進行再発甲状腺癌の治療はかなり変化してきている。しかし実臨床の場ではなかなか教科書通りにはいかず,担当医を悩ます場面があることも事実である。ある程度は自分自身の経験や聞知した知識で乗り切れるものの,未だに誰も答えをもっていない問題があることも事実である。TKIをはじめるべき時期,逆にやめるべき時期,癌の生物学的態度とTKIの効果との関連など臨床側が知りたい点はまだまだある。本稿では外科と腫瘍内科の中間地点の立場からこれらについて問題を提起してみた。

特集2
  • 小野田 尚佳
    2016 年 33 巻 3 号 p. 160
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    2010年のガイドライン発刊以降にいくつかの注目すべき論文が発表されている。とくに,National Cancer Database[1]による信頼性の高い調査は,甲状腺未分化癌の臨床像を具体的な数値で示すことができている。一方で,生命予後は過去20年全く改善が認められていないと報告されている[2]。今までの治療法は意義がなかったのだろうか?これまで行われてきた集学的治療をレビューし,今後の課題を示していただいた。

    探索的に行われていた化学療法の成果は,不明のままであった。甲状腺未分化癌患者を対象として国内で実施されたweekly paclitaxelによる化学療法の臨床試験[3]は,現時点での標準治療の成績を客観的に提示したものと考えられ,新規治療開発の基準となるデータとしてご紹介いただいた。

    話題の中心ともいえる甲状腺未分化癌に対する最新の分子標的治療については,本号の別特集を参照されたい。

    治療成績の改善を目指す上において,発症や進展に関わる基礎的研究成果の理解は重要であるが,技術の進歩によって臨床所見の裏付けとなる遺伝子異常が確認できるようになってきている。新たな治療法の創生に向けての多数のヒントが隠されている大変興味深い基礎的分野の知見をご紹介いただいた。

    いずれの文章でも,難治性の希少疾患である甲状腺未分化癌の診断,治療,研究には,多施設での連携や登録制度の確立,臨床試験の充実が必要であることが述べられており,甲状腺癌診療における現在の重要課題のひとつとしてこれらの課題を読者と共有できることを希望する。

  • 光武 範吏
    2016 年 33 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺未分化癌は,頻度が少なく,また極めて悪性度が高いため,これまでまとまった解析の報告は少なかった。2015,2016年に3つの次世代シークエンサーを用いた甲状腺未分化癌の網羅的ゲノム解析結果が報告されたので,本稿ではそれらをまとめて紹介する。甲状腺未分化癌では,分化癌で見られるドライバー変異のうち,BRAFRAS変異の頻度が高く,それらの重複はなかった。RET/PTCなどの融合遺伝子は全く検出されなかった。未分化癌で頻度が上昇している遺伝子変異は,TP53TERTプロモーター変異が約70%で最も多く,その他は,PI3K-AKTシグナル経路を活性化する変異,クロマチンリモデリングに関与する変異などであった。今後は,同定された変異の分子機能解析を進め,臨床応用可能な標的の同定を行っていく必要がある。多施設共同研究を進め,研究の進展を促進させることが望まれる。

  • 神森 眞
    2016 年 33 巻 3 号 p. 166-169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺未分化癌は,極めて悪性度が高く病状の急速な悪化を伴うためその多くは診断後半年以内に不幸な転帰をとることが知られている。標準的な治療法は,未確立であり探索的な集学的治療が行われるも科学的なエビデンスは存在していないが,全身療法が必要であることは明白である。本稿では,わが国の甲状腺未分化癌化学療法の歴史的背景と甲状腺未分化癌コンソーシアムを中心に施行された全国規模の医師主導多施設共同研究「甲状腺未分化癌に対するweekly paclitaxelによる化学療法の容認性,安全性に関する前向き研究」(ATTCJ-PTX-P2,UMIN ID 000008574)の成果と合わせて今後の甲状腺未分化癌の化学療法の位置づけと展望について論じることとする。

  • 野田 諭, 小野田 尚佳, 柏木 伸一郎, 徳本 真央, 田内 幸枝, 高島 勉, 平川 弘聖, 大平 雅一
    2016 年 33 巻 3 号 p. 170-173
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺未分化癌は稀な疾患であるが,甲状腺癌死に占める割合は高くその予後は極めて不良である。根治を期待できる割合は非常に少なく,大部分の症例で短期間のうちに不幸な転帰をたどるため,主たる治療の目的は癌の根治ではなく,延命とQOLの維持である。手術療法,化学療法,放射線療法を組み合わせて行う集学的治療は,治療に伴う有害事象と患者が受ける恩恵を十分に勘案したうえで,バランスよく行わなければならない。術前治療の概念,新規薬剤の登場により集学的治療の適応や順序も今後さらに変化していくと思われる。個々の症例で診断,治療,予後について十分に検討して症例集積を行い,新たな治療戦略を構築していくことが重要である。

原著
  • 下出 祐造, 辻 裕之
    2016 年 33 巻 3 号 p. 174-179
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/24
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    甲状腺乳頭癌は一般に悪性度は低いが高率にリンパ節転移を認める。頸部中央区域の郭清は推奨されているが,外側区域の郭清は適応やD2aとD2bの選択,予防的郭清の要否などにおいて明確な指針に乏しいのが現状である。われわれは甲状腺乳頭癌における外側区域リンパ節転移の局在部位を頻度別に3群に区分けし評価したところ,転移局在部位別にリンパ節がⅤbやⅦに転移した群はⅤa,Ⅵにとどまる群に比べ転移リンパ節の最大径が大きく個数が多くなり,逆に原発巣のサイズは小さくなる傾向が示された。そこで転移リンパ節最大径/原発巣最大径(N/T比)を算出したところ同じく増大する傾向が示され,ROC曲線よりⅤa,Ⅵにとどまる群のCut Off値は約0.5でそれより低値であれば外側区域リンパ節転移の範囲が有意に狭く,逆にⅦに転移した群は約1.3でそれよりも高値では範囲が広くなる傾向を認めた。以上よりN/T比は外側区域リンパ節転移に対する至適郭清範囲の選択おいて参考となる可能性が示された。

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