【緒言】甲状腺や副甲状腺に対する手術は現在比較的安全な手術とされており,入院期間も比較的短い。しかし一方で,術後出血は気管切開や死亡例などの報告もある重大な合併症である。今回,当院にて経験した甲状腺,副甲状腺疾患手術症例において止血術が必要となった症例に関して検討した。
【対象と方法】対象は2012年1月~2016年12月までに当院で行われた手術症例9,553例中,気管皮膚瘻造設術,切開排膿術を除外した9,408例。年齢中央値51歳(10~93歳),男女比は男性1,808例,女性7,600例。術式別では甲状腺全摘術3,286例,甲状腺片葉切除術5,289例,その他(副甲状腺摘出,生検術など)833例。疾患別では悪性甲状腺腫5,900例,良性甲状腺腫2,138例,バセドウ病828例,その他542例。術後出血の危険因子として性別,年齢,BMI,術式,初回手術時の出血量,surgical energy deviceの有無,疾患,手術時間について検討した。
【結果】9,408例中,止血術が必要となった症例は119例(1.26%)であった。死亡症例はなかった。性別の検討で男性1.9%,女性1.1%(p=0.046)と有意差を認めたが,年齢,BMI,術式,surgical energy device使用の有無,疾患別,手術時間別において有意差は認められなかった。
【結語】止血術を要する術後出血の危険因子は性別のみであった。
抄録全体を表示