日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
36 巻, 4 号
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会告
目次
編集委員会
特集1
特集2
  • 小野田 尚佳
    2019 年 36 巻 4 号 p. 202
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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  • 高橋 淑郎, 中島 範昭, 佐藤 真実, 藤盛 啓成, 石田 孝宣
    2019 年 36 巻 4 号 p. 203-208
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    近年,世界的に甲状腺微小乳頭癌に対する過剰診断・過剰治療が問題視されている。欧米のガイドラインでは過剰診断にならないよう1cm以下の結節に対するFNAを推奨しない方向に進んでいるが,我が国では世界に先駆けて微小癌に対する非手術・経過観察(active surveillance)の前向き試験が行われ,この結果,本邦のガイドラインでは微小癌に対するactive surveillanceが認められるようになった。本邦からの微小癌に対するactive surveillanceのエビデンス発信により,諸外国でもactive surveillanceが受け入れられつつあるようであるが,微小癌の治療選択を標準化するために克服しなければならない課題は残っており,そのためには我が国だけでなく諸外国からのエビデンスの蓄積,医療者および一般社会への教育,啓蒙も必要である。

  • 金井 敏晴, 伊藤 研一, 千野 辰徳, 小野 真由, 大野 晃一, 伊藤 勅子, 前野 一真
    2019 年 36 巻 4 号 p. 209-212
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    2018年に改訂された本邦の甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは,甲状腺乳頭癌を再発リスクに応じて超低リスク,低リスク,中リスク,高リスクの4群に分類し,それぞれのリスク分類に基づいた管理方針が推奨されるようになった。ATA,NCCNといった海外のガイドラインでも類似した分類がなされており,腫瘍径,腺外浸潤,遠隔転移などは共通したリスク因子である。超低リスク乳頭癌に対する非手術経過観察の推奨や,低リスク乳頭癌に対する葉切除の推奨など本邦が海外に影響を与えてきた点,放射性ヨウ素内用療法の適応など海外から本邦が取り入れた点,また将来的なリスク分類の展望などについて述べる。

  • 都島 由希子, 原 尚人
    2019 年 36 巻 4 号 p. 213-220
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    欧米においては,甲状腺乳頭癌の初期治療として全摘術後に放射性ヨウ素内用療法(RAI)を行うのが長らく標準治療であった。一方,わが国では,葉切除,亜全摘といった甲状腺温存手術も多く行われていた。日本内分泌外科学会と日本甲状腺外科学会(JAES/JSTS)は,2010年にガイドライン初版を公開し,わが国における背景とエビデンスをもとに,Risk-adapted managementの概念を導入し,症例ごとに術式の選択できる余地を残した。2015年の米国甲状腺学会(ATA)のガイドラインの改訂では,本邦の論文も採用され,甲状腺乳頭癌の治療は世界的にも変化している。昨年の日本のガイドラインの改訂では,新たなリスク分類が提唱され,分かりやすい治療アルゴリズムが作成された。しかし,全摘VS葉切除,予防的中央区域郭清の是非に関しては,術後治療や経過観察方針にも関わる問題であり,課題が残されている。

  • 吉田 有策, 堀内 喜代美, 岡本 高宏
    2019 年 36 巻 4 号 p. 221-224
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    2014年の英国甲状腺学会の診療ガイドライン,2015年の米国甲状腺学会診療ガイドラインに続いて,わが国の診療ガイドラインは2018年に改訂された。各診療ガイドラインにおいては様々な相違点がある。本稿では術後補助療法,主に放射性ヨウ素内用療法,TSH抑制療法に視点をおいて診療ガイドラインを比較する。放射性ヨウ素内用療法は,内照射を「Remnant ablation」,「Adjuvant therapy」,「Therapy for persistent disease」という目的別に区分して治療対象・治療線量を決定する方針がATAおよびわが国のガイドラインに取り入られている。これにより今まで各国で一致しなかった治療対象と治療方針,治療線量が一致し,よりよいエビデンスの構築が目指せる環境が整ってきたと考えられる。TSH抑制療法は高リスク乳頭癌には行い,低リスク乳頭癌には行わないという方針は各ガイドラインで一致している。ただし,乳頭癌に限った質の高いエビデンスは乏しく,今後の課題である。

  • 野田 諭, 小野田 尚佳
    2019 年 36 巻 4 号 p. 225-228
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    2018年に甲状腺腫瘍診療ガイドラインが改訂され,甲状腺乳頭癌のリスク分類が刷新された。それに伴いリスク分類に応じた標準的初期治療が示され,治療が均てん化されつつある。しかしながら,本項のテーマである術後の経過観察法についてはガイドラインでは触れられておらず,担当医の裁量に任される部分が大きい。一方で海外では以前より甲状腺乳頭癌のリスク分類がなされ,術後の経過観察法も系統立てて行われている。本稿ではそれらを参考に,本邦での経過観察法につき過去の知見も交えて考察する。

特別寄稿
  • 杉谷 巌, 伊藤 康弘, 宮内 昭, 今井 常夫, 鈴木 眞一
    2019 年 36 巻 4 号 p. 229-230
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会会員の皆様にご協力をいただきました「成人の甲状腺微小乳頭癌の取扱いに関する実態調査」の結果報告が英文誌Thyroid(2019 Sep 25. doi: 10.1089/thy.2019.0211. [Epub ahead of print])に掲載されました。

    皆様の多大なるご協力に深く感謝申し上げるとともに,その要約を特別寄稿としてご報告いたします。

    なお,原著につきましては,日本内分泌外科学会の予算より支出していただき,オープンアクセスとなっております。どなたでも全文をご覧いただけますので,是非お目通しください。

    【背景】転移や浸潤が明らかでない成人の低リスク微小乳頭癌(cT1aN0M0)に対する積極的経過観察(active surveillance:AS)は,日本の2施設(隈病院,がん研病院)において1990年代より前向き臨床試験が行われ,その良好な結果により,妥当な治療方針として世界的にも受容されつつある。しかし現在,日本における実臨床の中で,本疾患がどのように診断され治療されているかは明らかでない。

    【方法】2018年8月から11月に,日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学の会員が所属する全1,177施設を対象としたアンケート調査を行い,134施設(外科81,耳鼻科・頭頸部外科48,その他5)から回答を得た。

    【結果】

    1)超音波検査で本疾患を疑う場合の細胞診の適応

    全例行うとした施設が13.4%,5mmを超える場合に行うとしたのが51.5%,1cmを超える場合としたのが27.8%であった。

    2)低リスク微小乳頭癌と診断された場合の基本的な治療方針と患者への説明

    即時手術を勧めるとしたのは1施設のみで,手術とASの両方の選択肢を提示するが医師の判断として手術を第一選択として勧めるのが26.1%,医師の判断は一切はさまないとしたのが38.8%,ASを第一選択として勧めるのが31.3%であった。

    3)低リスク微小乳頭癌であっても,積極的に手術を勧める要件

    腫瘍が背側被膜に近い場合が98施設,微小癌が多発している場合が91施設と多かった。次いで,腫瘍径が1cmに近い(45施設),家族歴(25施設),妊娠希望(24施設),年齢40歳以下(20施設),60歳以上(13施設)で,とくに条件はないとした施設は13施設のみであった。

    4)手術件数に占める微小癌の割合

    回答施設での2017年1年間の成人乳頭癌手術6,486例のうち低リスク微小乳頭癌は1,175例(18.1%)を占めた。

    5)低リスク微小乳頭癌の実際の治療方針

    最近の任意の3カ月間において取扱われたcT1aN0M0乳頭癌576例のうちASが採用されたのは310例(53.8%)で,即時手術が行われた266例を上回った。外科施設と耳鼻科施設で本疾患の取扱いに差はなかったが,専門医認定施設(関連施設を含む:55.4%)ではそれ以外の施設(41.5%)より,7大都市圏の施設(64.1%)ではそれ以外の施設(37.0%)より,6名以上の甲状腺外科医がいる施設(67.6%)では5名以下の人員の施設(40.1%)より,ASの採用率が有意に高かった。

    そのほか,低リスク微小乳頭癌の診断,ASの適応や実際の方法,今後の研究課題などについて多くの有益な意見を頂戴した。

    【結語】日本において,低リスク微小乳頭癌に対するASは過半数の症例に採用されており,一定の理解を得られていると考えられた。しかし,その適応については施設ごとのばらつきが大きかった。ASのさらなる普及のためには,患者や医療従事者の啓発,社会医学的環境の整備が重要と考えられた。

原著
  • 石原 博雅, 稲石 貴弘, 宮嶋 則行, 柴田 雅央, 高野 悠子, 武内 大, 菊森 豊根
    2019 年 36 巻 4 号 p. 231-234
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    1cm以下の超低リスク甲状腺微小乳頭癌(以下,PMC)に対しては手術を行わず経過観察を行ったとしてもほぼ問題なく,たとえ経過観察中に腫瘍が増大しても手術療法に切り替えれば予後は良好であることが報告されている。今回,当院における甲状腺乳頭癌に対する非手術経過観察症例について検討した。経過観察中に新たにリンパ節転移や遠隔転移を認めたものはなく,全例生存中であり,87.8%の症例で腫瘍径に変化はなく,7.3%の症例で縮小傾向を示した。これらの所見は既報と一致しており,PMCを非手術経過観察とすることは治療選択肢の一つとして妥当なものと考えられた。

  • 前野 一真, 清水 忠史, 相馬 藍, 竹腰 大也, 小野 真由, 大場 崇旦, 伊藤 勅子, 金井 敏晴, 上原 剛, 伊藤 研一
    2019 年 36 巻 4 号 p. 235-239
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    【緒言】分化癌に比し予後不良とされる甲状腺低分化癌の臨床像を理解するため,当科における甲状腺低分化癌の臨床的特徴および遠隔成績を後方視的に解析した。【対象】2002年から2012年までに当科で外科的切除を施行した低分化癌31例(観察期間中央値:107カ月(7~192カ月))。【結果】年齢中央値は62歳で,腫瘍径4cm以上が7例(22.6%),隣接臓器への直接浸潤例が13例 (42.0%),遠隔転移あり(M1)が10例(32.3%)と進行例が多かった。隣接臓器合併切除を9例(29.0%)で施行し,17例(54.8%)で根治切除(R0)を施行しえた。一方,9例(29.0%)が顕微鏡的遺残(R1),5例(16.1%)が肉眼的遺残(R2)となった。全症例の10年疾患特異的生存率(CSS)は69.4%で,M0におけるR0の10年無再発生存率(DFS)90.9%,CSS 90.0%に対し,R1/R2ではDFS 62.2%(p=0.17),CSS 70.0%(p=0.22)と低い傾向が認められた。【結語】甲状腺低分化癌では局所進行例が多く,遺残例の予後は不良な傾向を認め,術後療法や再発・M1例への新たな治療戦略の構築を要する。

  • 田口 敦士, 末廣 篤, 北村 守正, 楯谷 一郎, 岸本 曜, 樋渡 直, 堀 龍介, 大森 孝一
    2019 年 36 巻 4 号 p. 240-244
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    T3優位型バセドウ病は,バセドウ病のうち抗甲状腺薬治療中にT4と比較してT3が有意に高値を呈する一群を指す。内服での寛解が困難であり手術適応となる例も多いが,T3優位型バセドウ病について外科的観点から述べた報告は乏しい。今回われわれはT3優位型バセドウ病の手術症例について検討した。京都大学医学部付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で2011年1月から2018年3月までにバセドウ病に対し甲状腺(亜)全摘術を施行した55例のうち,T3優位型は16例であった。T3優位型では通常型と比較して,術前TRAb値が高く,甲状腺重量が大きく,手術時間が長く,術中出血量が多かった。甲状腺重量と手術時間および術中出血量との間には正の相関がみられた。T3優位型は通常型に比べ抗甲状腺薬内服治療に抵抗性であり,長期の内服継続により甲状腺の腫大および手術合併症リスクの増加をまねくおそれがあるため,早期に外科的治療ないしは放射性ヨウ素内用療法を考慮する必要があると考えられる。

症例報告
  • 大橋 敏充, 柴田 博史, 久世 文也, 青木 光広, 水田 啓介, 伊藤 八次
    2019 年 36 巻 4 号 p. 245-249
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    縦隔まで進展する巨大なびまん性甲状腺腫大を有し気道狭窄を呈したバセドウ病に対し,甲状腺全摘術を施行した。

    症例は69歳女性。10年以上前から,バセドウ病でチアマゾール内服加療を行っていたが,服薬コンプライアンスは不良であった。増悪する呼吸苦にて前医受診した。巨大甲状腺腫による気道狭窄,および甲状腺機能亢進症による心不全と診断され,入院加療行い呼吸苦は改善した。手術のため当院紹介となった。

    甲状腺の最尾側は大動脈弓の下まで達していた。また,気管の最狭窄部は5.4mmであった。手術時には体外循環の準備をした上,意識下気管内挿管を試みた。通常径の気管チューブによる気道確保が可能であった。摘出甲状腺重量は506gであった。術後,狭窄部の気管径は正常近くまで改善していた。バセドウ病の場合,呼吸苦がない状態であれば,気道狭窄を伴う甲状腺腫であっても,通常の気管挿管で気道確保できる可能性が高いと考えられた。

  • 橘 智靖, 折田 頼尚, 春名 威範, 小松原 靖聡, 直井 勇人, 田尾 裕之, 水谷 尚雄, 西﨑 和則
    2019 年 36 巻 4 号 p. 250-254
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/21
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    今回われわれは縦隔内甲状腺腫症例において,過去の画像所見から腫瘍の増大過程を確認し得たので経過および治療について報告する。症例は72歳,女性。近医内科の胸部単純写真にて縦隔に異常陰影を認めたため,当科を紹介され受診した。同院では胸部単純写真を11年前に,また8年前からは年に1回撮影していた。画像所見上,11年前気管の偏位はわずかであったが,縦隔の腫瘤影は徐々に気管分岐部付近まで下降した後,側方への増大を認めた。CTでは甲状腺右葉から縦隔へと進展する境界明瞭な腫瘤影の下端は気管後方,大動脈弓下端レベルまで及んでいた。術中,腫瘍を縦隔側から頸部側へ脱転することにより頸部アプローチのみで摘出することができた。術後反回神経麻痺は認めなかった。頸部アプローチにおいては腫瘍下方の盲目的剝離を要するため,下方への増大傾向を示す縦隔内甲状腺腫は手術を検討する必要があると考えた。

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