甲状腺癌気管壁浸潤に対して気管壁切除を行う症例を経験する。硬性支持組織を用いて気管壁再建を行う場合は,DP皮弁など頸部以外から皮弁を採取して再建する報告が多い。今回われわれは,甲状腺癌気管浸潤に対し気管壁合併切除を施行し,二期的に耳介軟骨と頸部局所皮弁を用いて気管再建を行い良好な経過が得られたので報告する。
79歳女性。甲状腺乳頭癌に対して,甲状腺全摘,左D2a郭清,気管開窓術を行った。気管切除範囲は第1~4気管軟骨の左半周と一部膜様部を切除した。切除術の約1年後に,気管皮膚瘻閉鎖術を行った。Hinge flapで気管内腔を再建し,同部位に軟骨膜とともに採取した左耳介軟骨を短冊状に3分割し縫着した。頸部皮膚欠損は両外側の頸部皮膚にadvancement flapを作成し閉鎖した。
術後,気管狭窄は起こさず呼吸困難もなく経過している。DP皮弁など頸部外からの皮弁を用いず,本法は簡便で低侵襲であり,整容面でも優れている。高齢者の気管切除症例に対する再建方法として良い適応であると考える。
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