日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
37 巻, 4 号
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会告
目次
編集委員会
特集1
  • 酒井 英樹
    2020 年 37 巻 4 号 p. 225
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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  • 進藤 久和, 森 祐輔, 高橋 広, 佐藤 伸也, 山下 弘幸
    2020 年 37 巻 4 号 p. 226-231
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)の治療の基本は手術であり,病的副甲状腺をすべて切除することである。今回はPHPTの手術適応を決めるための病状評価に必要な画像診断と,手術成功率を向上させるための局在診断に欠かせない画像診断を解説する。PHPTの骨粗鬆症の評価には,皮質骨である前腕骨での骨塩定量が重要である。一方で腰椎は変形が強いと正確な評価が困難となる。局在診断では,まず頸部USで副甲状腺の解剖学的な局在を念頭に病的腺を検索するが,ときに描出不能な位置に存在することもある。MIBIシンチは,とくに異所性副甲状腺腫の検索に有用である。甲状腺結節に集積することがあり,US所見と併せて鑑別する。CT検査は,造影剤を用いたdynamic studyが局在診断に有用である。当院では3相で撮影しており,とくに動脈相は副甲状腺を確実に造影するために,総頸動脈が造影されてから撮影を開始している。PHPT診療における画像診断の工夫を紹介する。

  • 富家 由美, 𠮷田 英里, 小川 貴美雄, 日比 八束
    2020 年 37 巻 4 号 p. 232-236
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    原発性副甲状腺機能亢進症の外科的治療では,局在不明や多腺病変疑いなど術式の判断に苦慮する症例が存在する。当科での術中迅速intact PTH測定(IOPTH)導入後の手術症例156例では,局在不明例は5例あり,実際は多腺病変であった2例を含めて両側検索により責任病変を発見し摘出しえた。また,術前多腺病変を疑った症例は6例あり,全例両側検索を行うことでintact PTHは正常化した。IOPTHの併用により検索範囲を縮小しえた可能性を後方視的に検討したところ,6例のうち5例はIOPTHの結果が正確に反映されており,術式を両側検索未満に縮小できる可能性が示唆された。局在不明や多腺病変を疑う症例では両側検索は原則必要と考えられるが,今後術中診断ツールを進歩させることにより,外科的治療の低侵襲化の可能性を模索していく必要がある。

  • 望月 保志, 計屋 知彰, 大庭 康司郎, 宮田 康好, 酒井 英樹
    2020 年 37 巻 4 号 p. 237-241
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    二次性副甲状腺機能亢進症(Secondary hyperparathyroidism:SHTP)は進行した慢性腎臓病に発症する疾患であり,特に慢性透析患者では高頻度に併発する。その発症は,慢性透析患者の生活の質(quality of life:QOL)ならびに生命予後に影響するとされ,積極的な治療介入が必要である。かつては副甲状腺摘出術(Parathyroidectomy:PTx)が主たる治療であったが,活性型ビタミンD製剤およびカルシウム受容体作動薬(カルシミメティクス)の登場で,手術症例数は低下し,近年はその適応が限られるようになった。しかし薬物療法抵抗性あるいは服薬困難により手術療法が必要となる症例も多く存在する。SHPTに対する治療変遷を振り返り,その中でのPTxの立ち位置を再考する。

  • 富田 祐介, 中村 道郎
    2020 年 37 巻 4 号 p. 242-246
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    腎移植は慢性腎臓病(CKD)に対する唯一の根治的治療法であり,生命予後を改善することは広く知られている。しかし,移植腎が機能しているにも関わらず心血管性疾患に代表される非免疫学的な合併症での死亡の増加が課題である。腎移植レシピエントは,腎機能のほぼ全てに改善がみられる一方で,糸球体濾過量はCKD stage2~4に分類され,腎移植後もなおCKDが持続する。腎移植後のCKDに伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の病態は,術前のCKD-MBDからのキャリーオーバー,遷延性副甲状腺機能亢進症,免疫抑制剤の内服の要因から特殊である。さらに腎移植を施行しても改善しない異常や新たに生じる異常が存在し,移植前から移植後への一貫したCKD-MBD管理が求められる。特に維持透析が長期に及ぶ生体腎移植の候補患者や献腎移植の待機患者に対しては,術前に積極的な治療介入と適切なタイミングでの副甲状腺摘出術を行い,腎移植を施行する前にCKD-MBDの治療を完結しておくことが重要である。

特集2
  • 西本 紘嗣郎
    2020 年 37 巻 4 号 p. 247
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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  • 西本 紘嗣郎, 関 次男, 馬越 洋宜, 成瀬 光栄, JRAS Study Group
    2020 年 37 巻 4 号 p. 248-256
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    原発性アルドステロン症(PA)は主にアルドステロン産生腺腫(APA)と特発性アルドステロン症に分類される。われわれは,アルドステロン合成酵素(CYP11B2)とコルチゾールの合成酵素(CYP11B1,CYP11B2とアミノ酸配列が93%同一)を区別して特異的に検出できる免疫組織化学染色法に初めて成功した。その結果,APAと非機能腺腫との病理学的鑑別が可能となった。さらにアルドステロン産生細胞クラスター(APCCと新規命名)などの新たなPA病変が判明してきた。最近われわれは,最大PA病変が5mm未満の患者は,それが5mm以上の患者と比較して,術後の治癒率が有意に低いことを報告した。さらに,ロジスティック回帰分析により最大PA病変が5mm未満の患者を予測する計算式も作製した。コンピュータ断層撮影(CT)が副腎腺腫を検出するが最大PA病変が5mm未満の可能性が高い症例は,CTが非機能腺腫を検出している可能性が高いことを利用し,副腎静脈サンプリングを補完する新しい方法を開発した。ここではこれらの研究成果について概説する。

  • 牧田 幸三
    2020 年 37 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    超選択的副腎静脈サンプリングによる副腎内の支脈別採血により,中心静脈レベルの採血データの不安定性が補完され,原発性アルドステロン症のより精確な診断が期待できる。副腎内ホルモンマッピングは治療成績の向上につながり,両側腺腫の部分切除などの新たな治療戦略も生んでいる。副腎静脈の解剖形態は副腎内の血流のダイナミズムに大きな影響を与え,結果的にホルモンの拡散状態や濃度変化に大きく影響する。サンプリングの施行や採血データ解釈においては,血管造影学的解剖のみならず,背景にある副腎の微細血管構築(組織学的知識)の理解も望まれる。サンプリング施行前にCTによる精細な観察によって,副腎の中心静脈を同定し,副腎周囲の血管解剖を把握することや腺腫の存在部位を確認することが重要なことは言うまでもないが,副腎内支脈は描出不可能なことや径5mm以下,数mmの腺腫はしばしば検出不能であることも知っておくべきである。

  • 佐藤 悠佑
    2020 年 37 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    クッシング症候群の多くは副腎腺腫から過剰にコルチゾールが分泌されることによって生じ,高血圧や糖尿病などを呈する。網羅的な遺伝子変異解析により,クッシング症候群を生じる副腎腺腫において,半数以上の症例にプロテインキナーゼAの触媒サブユニットをコードするPRKACA遺伝子の変異が生じていることが知られるようになった。変異は全て206番目のロイシンに生じており,変異によって触媒サブユニットと調節サブユニットの結合が阻害され,サイクリックAMP非依存性にプロテインキナーゼAが活性化している。また,およそ2割の症例ではGNAS遺伝子が変異しており,合計で7割の症例において,プロテインキナーゼAの活性化に関わる遺伝子に体細胞性変異が生じている。一方で,サブクリニカルクッシング症候群ではCTNNB1遺伝子に高頻度に変異が生じているとされ,症候性のクッシング症候群とは独立した病態であることが推測される。

  • 稲石 貴弘, 一川 貴洋, 添田 郁美, 柴田 雅央, 高野 悠子, 武内 大, 角田 伸行, 菊森 豊根
    2020 年 37 巻 4 号 p. 270-275
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    副腎皮質癌は予後不良な悪性腫瘍であり,難解な手術手技に加えて転移再発症例やcStage Ⅳ症例に対する集学的治療,ミトタン投与のマネージメントなど多岐にわたる診療が必要とされ,内分泌外科医の果たす役割は大きい。

    当科において,2004年から2020年の間に外科的切除を施行した副腎皮質癌は13例であり,年齢中央値68歳,男性3例で女性10例,右7例で左6例であった。開放手術10例(開胸開腹9例,開腹1例)で,腹腔鏡手術3例であった。病期分類はStage Ⅰが3例,Ⅱが3例,Ⅲが5例,Ⅳが1例であり,術後補助療法として7例にミトタンを投与した。7例に転移再発を認め,5例が無再発経過中である。副腎皮質癌は予後不良の疾患であり,完全切除を目指した手術手技や,集学的治療に対する幅広い知識を習得することが肝要である。

  • 計屋 知彰, 酒井 英樹
    2020 年 37 巻 4 号 p. 276-281
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    副腎皮質癌は発生頻度の低さからまとまった報告が少なく,その治療方針に迷うことも少なくない。このような中,欧州内分泌学会などがまとめたガイドラインが発表されており,治療方針のUpdateが行われている。

    副腎皮質癌は完全切除が行われたかどうかにより予後が変化する疾患である。このため周囲臓器との合併切除が必要と判断される場合もあり,開腹手術がGold standardとされている。むしろ腹腔鏡手術の適応は限定的である。

    本稿では既存のガイドラインを概説しつつ,副腎皮質癌の治療,特に手術治療に関して泌尿器科の立場から論じたい。

  • 大杉 治之, 池田 純一, 滝澤 奈恵, 三島 崇生, 杉 素彦, 室田 卓之, 木下 秀文, 松田 公志
    2020 年 37 巻 4 号 p. 282-287
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    副腎皮質癌は,非常に稀な疾患であり,一般的に悪性度の高い腫瘍である。限局性の症例では,外科的切除術が第一選択となり,腫瘍被膜を損傷しない一塊切除術が望まれる。開放手術が一般的であるが,腹腔鏡手術も選択肢の一つである。また,転移を有する症例では,化学療法を中心とした集学的治療が必要であるが,ホルモン過剰産生腫瘍に対する症状緩和目的のdebulking手術などの外科的切除術が必要となる症例もある。今回,われわれの施設で経験した副腎皮質癌の症例を後方視的に解析し,泌尿器科の立場から,副腎皮質癌に対する外科的切除術について考察した。

提言
臨床経験
  • 友田 智哲, 杉野 公則, 小野 怜子, 山崎 春彦, 正木 千恵, 赤石 純子, ヘイムス 規予美, 鈴木 章史, 松津 賢一, 宇留野 ...
    2020 年 37 巻 4 号 p. 310-314
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    症例は右声帯麻痺を認める57歳の男性。甲状腺右葉に2.1cmの腫瘍を認め,細胞診で乳頭癌(cT4aEX2右反回神経N0M0)と診断し甲状腺全摘術およびD1郭清術を予定。甲状腺左葉側から手術開始し,左迷走神経にAPSTM電極を手術開始から終了まで装着した。左側終了時には左迷走神経のAmplitudeは低下を認めず(1,251μV),右側の術操作を開始した。右葉の原発巣の切除の為気管を脱転した際に,左側迷走神経のAmplitudeが144μVまで低下を認めたので手術の中断・再開を繰り返しながら甲状腺切除を完遂した。閉創時の左迷走神経V2のAmplitudeは891uVであった。術後の喉頭ファイバー検査では,術前からの右声帯麻痺を認めたが,左声帯の運動は問題なかった。当院の検討では甲状腺手術時の非手術操作側の声帯麻痺は0.12%に認められる。今回の症例は,甲状腺手術時の術操作による反対側の反回神経へのダメージを持続的な筋電図の変化によってモニタリングした初めての報告として興味深いと思われた。

症例報告
  • 毛利 有佳子, 坂野 福奈, 伊藤 由季絵, 後藤 真奈美, 井戸 美来, 安藤 孝人, 髙阪 絢子, 藤井 公人, 中野 正吾, 高橋 恵 ...
    2020 年 37 巻 4 号 p. 315-321
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    副甲状腺癌は稀少疾患であり術前診断がむずかしい場合もある。最終診断が副甲状腺癌であった3例の臨床所見と術後病理診断の検討を行った。症例1は40歳代女性,尿路結石発症時に高カルシウム(Ca)血症とインタクトPTH(iPTH)高値を指摘された。頸部腫瘤は触知せず,超音波検査で甲状腺右葉下極に腫瘤を認めた。副甲状腺腺腫の診断で右下副甲状腺摘出術を施行後病理診断で副甲状腺癌と診断された。症例2は60歳代女性,数年来の関節痛,易骨折性があった。左頸部に腫瘤を触知し,超音波検査で左副甲状腺腫大を認め,高Ca血症とiPTH高値より副甲状腺癌を疑い甲状腺葉峡部切除+左副甲状腺摘除術を行ったが病理診断は副甲状腺腺腫であった。6年後高Ca血症と肺転移を認めたため病理再検を行い副甲状腺癌に診断が変更された。症例3は20歳代男性,左大腿骨骨折の保存的加療時に骨塩量低下を指摘された。左頸部に腫瘤を触知し,高Ca血症とiPTH高値より副甲状腺癌を疑い甲状腺左葉+左副甲状腺摘出術を行った。病理診断は副甲状腺癌であった。3例のうち術前の臨床診断が術後初回病理診断と一致したのは1例のみであった。原発性副甲状腺機能亢進症は,術前後の臨床・画像所見を参考に病理学的診断することが重要である。

  • 木村 隆浩, 足立 詩織, 尾崎 大輔, 清水 直樹, 家根 旦有
    2020 年 37 巻 4 号 p. 322-326
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/18
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    甲状腺癌気管壁浸潤に対して気管壁切除を行う症例を経験する。硬性支持組織を用いて気管壁再建を行う場合は,DP皮弁など頸部以外から皮弁を採取して再建する報告が多い。今回われわれは,甲状腺癌気管浸潤に対し気管壁合併切除を施行し,二期的に耳介軟骨と頸部局所皮弁を用いて気管再建を行い良好な経過が得られたので報告する。

    79歳女性。甲状腺乳頭癌に対して,甲状腺全摘,左D2a郭清,気管開窓術を行った。気管切除範囲は第1~4気管軟骨の左半周と一部膜様部を切除した。切除術の約1年後に,気管皮膚瘻閉鎖術を行った。Hinge flapで気管内腔を再建し,同部位に軟骨膜とともに採取した左耳介軟骨を短冊状に3分割し縫着した。頸部皮膚欠損は両外側の頸部皮膚にadvancement flapを作成し閉鎖した。

    術後,気管狭窄は起こさず呼吸困難もなく経過している。DP皮弁など頸部外からの皮弁を用いず,本法は簡便で低侵襲であり,整容面でも優れている。高齢者の気管切除症例に対する再建方法として良い適応であると考える。

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