日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
39 巻, 2 号
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巻頭言
目次
編集委員会
特集1
  • 田中 克浩
    2022 年 39 巻 2 号 p. 69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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  • 佐々木 梓
    2022 年 39 巻 2 号 p. 70-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    私は2020年度まで川崎医科大学附属病院で初期研修を行い,2021年度から同病院乳腺甲状腺外科学に入局した。乳腺甲状腺外科への入局を考えていたが,入局先を決める際,将来に目を向けるととても怖くなり,非常に悩み,同期の中で一番最後に入局を決めた。

    自分の未来を想像した時,結婚や出産,育児についても浮かび,外科医のキャリアとの両立を考えるとお互いが大きな障害になり得るのではないか,専門医の取得と継続,外科医として働き続けることができるのかと不安になった。あえて理想の実現が難しいかもしれない道に進む必要があるのか,仕事は仕事として両立が楽な道を選ぶべきではないのかと考えもした。

    このような不安を抱える医師は私だけではないと思う。私が乳腺甲状腺外科へ入局するまでの経緯,どのように考え最終的な選択に至ったのかを悩んでいる後輩たちの役に立てばと,また少しでも多くの女性医師の活躍に貢献できればと思う。

  • 寺崎 梓, 井口 研子, 吉田 瑞穂, 白谷 理恵, 佐藤 璃子, 竹内 直人, 岡﨑 舞, 上田 文, 市岡 恵美香, 瀬尾 恵美子, 坂 ...
    2022 年 39 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    日本における女性医師の割合は年々増加傾向であり,今後女性医師の活躍が我が国の医療を支える鍵となるのは揺るがない事実である。当科においては構成員の半数以上が女性医師であり,入局者も毎年半数以上が女性医師である。このような環境下で当院独自の工夫は,「女性医師キャリアアップ支援システム」の存在である。これはいわゆる時短勤務であるが勤務時間や曜日の設定を自ら決めることができ,週30時間以上であれば常勤として雇用され専門医取得や維持を目指すものである。さらに休日・夜間のオンコールや当直は免除が可能である。また科の所有する有給枠外での雇用となるため人員の削減になることもない。筆者も当システムを利用し3人の育児と仕事を両立した経験があり,当科の現状も踏まえダイバーシティ時代における女性外科医のキャリア形成における問題と今後の展望について述べる。

  • 舛岡 裕雄, 宮内 昭, 山本 正利, 能田 拓也, 安藤 孝人, 佐野 奨, 佐々木 崇博, 藤島 成, 東山 卓也, 伊藤 康弘, 木原 ...
    2022 年 39 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    術前から声帯麻痺を認める甲状腺癌反回神経浸潤症例はやや悪性度が高い腫瘍であり,術後療法を考慮して甲状腺全摘術が選択されることが多い。一方,すでに一側声帯麻痺があるため,甲状腺全摘術によって一過性でも健側の声帯麻痺を合併すると,両側声帯麻痺に対する気道確保目的に気管切開を要する可能性が高く,著しく患者の負担が増えることとなる。当院では,2011年以降に,術前に声帯の不全あるいは完全麻痺を伴った甲状腺癌147症例に対して,術中神経モニタリング使用下に甲状腺全摘術を施行した。声帯麻痺の程度,術中所見,反回神経の処理法,およびその結果を後方視的に分析した。気管浸潤による気管合併切除を要した24例を除いた123例中,気道確保目的に気管切開状態となったのは4例(3.3%)であった。術前に十分なinformed consentを得た上であれば,一期的甲状腺全摘術は容認できると考えられる。

  • 横井 忠郎
    2022 年 39 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    術前から一側性反回神経麻痺を認める症例は,高リスク症例であり,原則として甲状腺全摘術を必要とする。ただし両側反回神経麻痺をきたすリスクがあり,状況によっては片葉切除に留めることもありえる。甲状腺全摘術を行うのであれば,健側の麻痺を予防するため,術中反回神経モニタリング(IONM)は必須である。IONMの使用を前提としたフローチャートがガイドラインで提唱されているが,本稿ではその補足に加え,二期的手術などの異なるアプローチも提示する。また術中ステロイドや冷却水による物理的冷却などの神経保護も積極的に適応すべきである。今後は内視鏡手術の可能性や,遺伝子解析による劇的な治療戦略の変化も予想される。しかし最も重要なのはShared decision makingを十分に行い,患者の治療選択の機会を奪わないことである。

特集2
  • 菊森 豊根
    2022 年 39 巻 2 号 p. 92
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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  • 竹越 一博
    2022 年 39 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    褐色細胞腫(pheochromocytoma)/傍神経節腫(paraganglioma):PPGLは各々,副腎髄質,傍神経節細胞より発生する腫瘍である。PPGLは本世紀に至り遺伝的背景の研究の急速な進歩により,その概念が全く変わった疾患である。その理由としては下記の2点に集約されよう。(Ⅰ)新しい原因遺伝子SDHBおよびSDHDを初めとして多数の原因遺伝子の同定により,遺伝性の頻度が10%を遥かに上回り,約30~40%であることが明らかにされた。(Ⅱ)悪性化と密接に関係する遺伝子(SDHB)が発見されたこと。

    すなわち,PPGLの診療においては遺伝子診断により,症例毎に「悪性(遠隔転移)」「再発・多発」のリスク評価のうえ,個別化した医学的管理を行うことが求められる。今後のがんゲノム治療時代の新たな問題として,ガン遺伝子パネルの2次的所見(secondary findings:FS)で同定されるPPGL遺伝子変異が挙げられる。

  • 木村 伯子
    2022 年 39 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)はWHO内分泌腫瘍分類(WHO)第3版(2003)までは良性PPGLと悪性PPGLに2分類されていたが,WHO第4版(2017)では,すべてのPPGLは転移する可能性のある非上皮性の悪性腫瘍(肉腫)であると明記された。その悪性度は低悪性度から高悪性度まであるが,PPGLではGAPP分類が唯一の悪性度の診断基準である。胸腹部PGLはカテコールアミン産生腫瘍として従来から交感神経性PGLと呼称されたが,近年,頭頸部PGLはアセチルコリン合成酵素(ChAT)が特異的に陽性で,副交感神経性PGLであることが判明した。WHO第5版(2022年)では両者は副交感神経性PGL vs 交感神経性PGLと対比して併記された。さらに,本稿ではPPGLの遺伝子異常と形質発現の関係(クラスター分類)とGAPPの類似性や,PPGLと上皮型神経内分泌腫瘍との鑑別診断に言及した。

  • 田辺 晶代, 内原 正樹, 成瀬 光栄
    2022 年 39 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    PPGLに対する治療の第一選択は腫瘍摘出であり,薬物治療は術前治療あるいは切除不能性に対する慢性治療として施行される。PPGLの診断が確定したら速やかにα受容体遮断薬を開始し,頻脈に対してβ受容体遮断薬を併用する。交感神経受容体遮断薬で十分な治療効果が得られない症例にはメチロシンを併用する。PPGLの根治治療は未だ存在せず,治療目標はカテコールアミン過剰症状のコントロール,無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の延長である。手術困難例では抗腫瘍治療として化学療法,対症療法としてαβ受容体遮断薬やメチロシンの内服が行われる。海外ではチロシンキナーゼ阻害薬,Mammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬,免疫チェックポイント阻害薬が試みられている。

  • 森 博史, 若林 大志, 萱野 大樹, 絹谷 清剛
    2022 年 39 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    難治性褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)の治療の1つに,131I-metaiodobenzylguanidine (MIBG)を用いた放射線治療(核医学治療)がある。PPGL患者には様々な治療法が提供されているが,131I-MIBGの腫瘍集積は選択的・特異的で,131I-MIBG治療は治癒切除不能なPPGL病変のある患者に対して優れた治療法である。131I-MIBG治療で客観的奏効が完全奏効に達することは少ないが,複数回治療によって部分奏効が長期間持続し,カテコラミン値の低下による症状改善が報告されている。代表的な有害事象として骨髄抑制を認めるが,不可逆的なものはほぼ認められないと報告されている。2022年からPPGLに対する131I-MIBG治療の保険診療が開始された。本項目では筆者の施設での経験を交えながら,131I-MIBG治療の有効性や治療の実際について解説を行う。

  • 一川 貴洋, 菊森 豊根
    2022 年 39 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    褐色細胞腫とパラガングリオーマ(PPGL)はカテコールアミン産生腫瘍であるため,術前より適切に選択的α1遮断薬(主にドキサゾシン)を投与して周術期合併症リスクを軽減させる必要がある。本邦および各国の主なPPGLのガイドラインでは,術前のドキサゾシンの推奨投与量や投与期間,メチロシンの併用や生理食塩水の点滴負荷の有無などについてそれぞれ推奨度がやや異なる。当院での126例のPPGL手術症例経験に基づくと,ドキサゾシンの術前投与は約2カ月前から開始し,最終投与量目標は16mgに設定し,緩やかに漸増させ,その間は塩分や水分の経口摂取を励行することで安全かつ十分な術前準備が可能であり,メチロシン投与や生食点滴負荷は必須ではないと考える。また正常高血圧で自覚症状がない無症候性症例や,カテコールアミン産生が診断基準に満たない非機能性症例に対しても,術前ドキサゾシンの非投与時のリスクが大きいため,画像上PPGLと診断された症例は全例に術前ドキサゾシン投与することを推奨する。

特別寄稿
  • 小野田 尚佳, 宮 章博, 木原 実, 東山 卓也, 舛岡 裕雄, 宮内 昭
    2022 年 39 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    新型コロナ感染症が拡がる状況下,甲状腺専門病院での診療状況を検討した。例年(2017~19年の平均)と比較して,初診患者数は2020年5月に58%減少,通年で26%減少。同年6月から1年間の手術は1,625件で,例年より9%減少。悪性腫瘍手術は200件以上減少し,手術患者の性別,組織学的分類,腫瘍径,進行度には差は認めなかったが,60歳代以降の患者,隣接県以外の遠方から受診した患者が有意に減少し,自覚症状がある患者が減少していた。均一疾患患者が対象であったこと,コロナ感染患者を受け入れなかったこと,全室個室で患者間の接触を制限できたことなどが感染症対応に有利に働いた。リスク要因排除のための協力依頼も患者・家族の受け入れは良好であった。治療した悪性疾患の進行度に変化はなかったが,遠方からの高齢者の受診が減少しており,受診を控えた潜在的進行癌患者の存在が危惧される。

症例報告
  • 竹原 浩介, 城島 五穂, 井手 昇太郎, 入江 準二, 渡辺 淳一
    2022 年 39 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    症例は75歳,男性。約3年前より右肺上葉の結節影で定期的な経過観察を受け,その際のCTで増大する左副腎腫瘍を指摘。既往歴として,肝細胞癌にて約4年前,肝後区域切除術施行,限局性前立腺癌にて約2年前より,内分泌療法施行中。右肺上葉の結節影は18mmで,3年間でほとんど変化なし。左副腎腫瘍は内分泌非活性であり,3年前は25mmであったが,42mmに増大していた。また左腎門部に20mmのリンパ節腫大も新しく出現。PET-CT検査では左副腎および左腎門部リンパ節に著明な集積を認め,右肺上葉の結節への集積はわずかであった。副腎腫瘍は原発性か転移性かの術前診断は困難であった。腹腔鏡下左副腎摘除術および左腎門部リンパ節摘除術施行。病理組織の結果は,腺癌であり,免疫染色の結果から肺癌の副腎転移およびリンパ節転移と診断された。転移巣切除で診断された肺癌副腎転移の1例を経験したので報告する。

  • 川野 汐織, 舛岡 裕雄, 伊藤 康弘, 廣川 満良, 宮内 昭
    2022 年 39 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    血清サイログロブリン(Tg)値が甲状腺分化癌の全摘後における重要な腫瘍マーカーであることは周知の事実であるが,片葉切除後にも有用かどうかは明らかでない。今回,片葉切除後の病理検査で濾胞腺腫と診断され,術後いったん低下したTg値が再度急上昇したことで遠隔転移が発見された結果,濾胞癌と診断が改められた3例を報告する。3例は初回手術時64歳,57歳,75歳のいずれも女性で,手術1~4年後に抗Tg抗体陰性下でTg値が経時的に上昇した。2例に対して補完全摘および放射性ヨウ素(RAI)内用療法を施行し,1例に骨転移,もう1例には骨転移および肺転移が発見された。残る1例には胸部CTで肺転移を疑う所見が認められ,補完全摘後にRAI内用療法を施行した。濾胞腺腫の片葉切除後であってもTg値が経時的かつ指数関数的に上昇する場合には濾胞癌の遠隔再発を疑って,補完全摘およびRAI内用療法を施行すべきである。

  • 中里 陽子, 平野 浩一, 三ツ間 智也, 大森 嘉彦, 藤原 正親, 菅間 博
    2022 年 39 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    症例は70代の男性,胸部CT検査で気管を右側に大きく圧排する縦隔内甲状腺腫を認めた。甲状腺左葉腫瘤の圧排により呼吸困難症状を認めたため,手術を施行した。左葉は頸部操作のみで摘出しえた。病理学的には腺腫様甲状腺腫を背景にWHO分類のWDT-UMP相当の腫瘍がみられた。本邦の甲状腺癌取扱い規約では,濾胞腺腫の診断となると考えられる。遺伝学的検索でRAS変異がみられたが,良悪性の確定は困難であった。術後経過観察中の2年半後に肺転移を強く疑う陰影が出現した。境界型悪性腫瘍と思われる腫瘍については慎重な経過観察を要する。

  • 関 健太, 宇留野 隆, 武内 寛, 中居 伴充, 山田 祐揮, 前田 純一, 星野 竜広, 横田 俊也, 池田 晋悟, 森田 茂樹, 池田 ...
    2022 年 39 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/29
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    甲状腺結節に対する超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(FNAC)は,比較的安全な検査で重篤な合併症は稀である。われわれはFNAC後に発症した,咽頭後間隙から後縦隔に至る血腫による呼吸困難に対し緊急手術を要した症例を経験したので報告する。

    症例は68歳の女性。甲状腺右葉背側の4mm大の結節に対しFNACを施行。検査直後は特に症状発現なし。独歩帰宅中に,増悪する呼吸困難が出現し同日再来院。到着時,頸部腫脹はなかったが気道喘鳴を伴う呼吸困難があり,緊急気管内挿管を要した。造影CT検査では咽頭後間隙から後縦隔へ広がる血腫を認め,気管膜様部圧排による気道狭窄を生じていた。緊急手術で血腫を除去し縦隔内を観察したが出血源は同定できなかった。血腫の存在部位よりFNACの穿刺針が甲状腺背側をわずかに貫通し咽頭後間隙に出血したと考えられた。血腫除去,甲状腺右葉切除術,中央区域郭清を行い術後5日目に退院,甲状腺結節は甲状腺乳頭癌の診断であった。

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