ジャフィー・ジャーナル
Online ISSN : 2434-4702
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選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 畠山 直人
    2025 年 23 巻 p. 1-21
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/16
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    長引く国内低金利環境に直面する本邦金融機関は,利鞘確保のため,海外での貸出や海外クレジット商品への投資を積極化してきた.特に2019年前半にかけて,CLO (Collateralized Loan Obligation) を中心に残高が大きく伸びている.これとともに,海外クレジット投融資にかかる金融機関における適切なリスク管理と,その金融安定面への影響が注目されるようになっている.CLOは相対的にレバレッジが高く信用力の低い企業向けの貸付であるレバレッジド・ローンを裏付け資産とする証券化商品であるが,裏付け資産の価格を含む市場データの入手の難しさなどから,近年の注目度の高まりに対して,その市場価格を実証的に分析した学術研究は少ない.また,一般的な1ファクター・ガウシアンコピュラモデルによるデフォルト判定と確定的な回収率の下でモデルのキャリブレーションを試みると,多くのトランチの市場価格を整合的に説明できないことが分かる.そこで本研究では,デフォルト判定と依存関係のある確率的な回収率モデルを導入し,CDOのトランチ価格を評価する.確率的な回収率モデルを導入することで,確定的な回収率モデルに比べて市場価格へのキャリブレーション能力が向上することを確認する.また,キャリブレーションの結果からは,密度関数がバスタブ型の極端な回収率分布がCLO市場に織り込まれている可能性が示唆される.

  • 菊池 健太郎
    2025 年 23 巻 p. 22-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/16
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    2次ガウシアンモデルに基づく金利期間構造モデルは,下限金利を持つショートレートモデルであり,債券価格のボラティリティ変動を表現するだけでなく,金融危機後に先進国でみられた超低金利イールドカーブを表現する柔軟性を備えている.本研究では,2次ガウシアンモデルを債券と株式に適用し,多通貨市場での債券・株式の同時価格付けモデルを構築する.そのうえで,投資期間に応じた債券や株式のリスクプレミアムと解釈される債券のタームプレミアムと株式のフォワードイールドの解析表現を導出する.また,日米の市場データを用いたモデルの推定を行い,推定値が観測値と高い適合度を示すことを確認するほか,債券のタームプレミアムや株式のフォワードイールドの計測値と景気循環との関係が,先行研究で得られている性質と整合的であることを示す.さらに,日米の金融資産価格に影響を与える共通変数と各国の資産価格のみに影響を与える固有変数が,債券や株式のリスクプレミアムにどのような影響を与えているのかを定量的に明らかにする.

  • 水門 善之
    2025 年 23 巻 p. 66-78
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/16
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    本研究では海外市場での金利変動が日本の金利市場に与える影響を検証すると共に,機械学習手法を用いて,海外市場からの影響を考慮した円金利の予測モデルの構築を行った.具体的には,グローバルな国債市場におけるイールドカーブの変動に対する相関行列の変遷をクラスタリングすることで,近年の日本と海外市場の関係性の変化(連動性の高まり)を示した.更に,構造VARモデルを用いて米国市場の日本市場に対する伝播の状況を確認すると共に,各種機械学習モデルを用いて,日本市場の金利予測モデルの構築を行った.その際,日本市場の金利情報に加えて,米国市場のデータも特徴量として用いることで,近年の円金利の予測精度の向上を確認した.加えて,特徴量のモデルへのインプット方法の違いによる情報の有効性についても併せて検証した.なお,日本国債の投資家を対象とした調査においても,近年,取引の際に海外金利を注目するといった回答の割合が増えおり,本研究で示した,日本市場の金利予測における海外市場情報の有用性を示す結果と整合的な内容と言えよう.

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