本論文では起源の異なるPhospholipase D (以下PLaseD) の構造と作用性の相関について明らかにすることを目的とし,
Streptomyces chmmofuscms PLaseDに注目した。その精製された標品をSDS-PAGEにより分離した結果分子量約57kDaと約40kDaの2つのタンパク質バンドを認めた。それら両タンパク質のアミノ酸配列分析を行うと, N末端アミノ酸から20残基までのアミノ酸配列が完全に一致していた。そこで, 約57kDaタンパク質を,
Staphylococcus aureus V8Proteaseによる限定分解を行った。さらに約57kDaのタンパク質の主な限定分解物であるpeptide断片についてアミノ酸配列分析を行つた。その結果約57kDaタンパク質の限定分全解から得られた約10, 14, 16, 18, 20, 30, 42および46kDaの8 peptide断片はいずれもDNAから全解析された
Streptomyces chromofuscus PLase Dのアミノ酸配列中に見い出された。それらのことから, 約57kDaタンパク質は, DNAから解析された
Streptomyces chromofuscus PLase Dのアミノ酸配列と同一であることを示唆した。筆者らは,
Strepomyces chromofuscus起源PLase Dは, 植物起源PLaseDに比べ, ホスファチジル基転移能が低く, より広いpH領域で作用することを確認している。この相違は,
Streptomyces chromofuscus 起源PLase Dには約57kDaとそのC末端側のアミノ酸から一部peptideが欠落したと推定される約40kDaの2種のPLase Dが存在することに起因すると考えられた。それら2種のPLaseDの分子構造を検討することは, PLase Dの作用性を見る上で重要と考えられる。
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