日本食品保蔵科学会誌
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34 巻, 3 号
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  • 坂東 麻由, 牛島 幸一郎, 中野 龍平, 稲葉 昭次, 久保 康隆
    2008 年 34 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2008/05/31
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    セイヨウナシ'ラ・フランス'果実は成熟時に爆発的なエチレン生成と急激な果肉軟化を示す典型的なクライマクテリック型果実である。一方, 同じナシ属に属するチュウゴクナシ品種'ヤーリー'果実は成熟中に多量のエチレンを生成するが軟化しない。本研究では果実軟化の制御にかかわる因子を同定するために, これらナシ果実の細胞壁タンパク質のプロテオーム解析を行った。さまざまな成熟ステージの'ラ・フランス'細胞壁タンパク質を二次元電気泳動で分離したところ, 成熟に伴い変化する19個のタンパク質スポットを得た。これらのうち, エチレン作用阻害剤である1-MCP処理による軟化抑制を行うと, 15個のタンパク質の蓄積がプレクライマクテリック期と同等になった。また, 19個のタンパク質のうち8個が'ヤーリー'果実では成熟に伴って変動せず, 果肉硬度と同じ挙動を示す結果となった。このうち1-MCPにより変動し, 'ヤーリー'では変化しなかったのは2個のスポットである。これら2個のタンパク質の蓄積パターンは果肉軟化様相と同じ挙動を示しており, 軟化の鍵因子の有力な候補と考えられた。
  • 松井 年行, 小杉 祐介, 三木 英三
    2008 年 34 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 2008/05/31
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本報告は, 収穫後のキュウリ果実の硬度と色の関連において20日間13℃と25℃で貯蔵された果実の品質の変化を理解するため, インベルターゼとショ糖合成酵素 (SS), ショ糖リン酸合成酵素 (SPS) 活性の収穫後の変化について検討した。
    貯蔵された果実の可溶性と細胞壁結合性インベルターゼ活性は, 貯蔵4-16日まで25℃のものは13℃で貯蔵されたものよりも有意に高かった。キュウリの酸性インベルターゼ活性は, 25℃貯蔵開始8日でSS活性の30-35倍高かった。25℃貯蔵された果実のSSとSPSは, 8日の活性がもっとも高かった。
    以上の結果より, キュウリ果実における13℃の低温貯蔵が, 可溶性および細胞壁結合性の両画分のインベルターゼ活性を抑制するため, ショ糖の分解を抑制するのに効果的であることが示唆された。13℃での低温貯蔵は, 果実に対して低温障害を起こさず, 果実のショ糖含量および色や硬度の保持に効果的であることが認められた。
  • 平 智, 今井 絵里子, 五瓶 正人
    2008 年 34 巻 3 号 p. 139-143
    発行日: 2008/05/31
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    プラスチックフィルムで個別包装 (個装) されたカキ'平核無'樹上脱渋果の低温条件下における貯蔵性に及ぼす果実の収穫時期の影響について検討した。
    10月3日 (満開後108日) に樹上でエタノール処理を行って脱渋した果実を, 11月2日 (果頂部のカラーチャート値約5), 11月10日 (果頂部のカラーチャート値約6で果面全面着色期) および11月16日 (果頂部のカラーチャート値約7) の3時期にそれぞれ収穫して個装した後1℃または5℃で貯蔵した。
    貯蔵実験の結果, いずれの収穫時期の果実でも1℃貯蔵果は5℃貯蔵果よりも貯蔵性が優れた。また, 貯蔵温度にかかわらず11月2日収穫果の貯蔵性が最も高かった。果実の軟化率から判断した11月2日収穫果の1℃貯蔵における貯蔵可能期間は約3か月であった。なお, 貯蔵温度にかかわらずいずれの収穫時期の果実でも貯蔵中の果皮色, 果肉硬度および果汁の可溶性固形物含量の変化は小さかった。また, 貯蔵果の食味は貯蔵期間が長くなるにつれて若干低下する傾向が認められたが, 5℃貯蔵果は1℃貯蔵果より食味の変動が大きかった。11月2日収穫の1℃貯蔵果の食味は約3か月間ほぼ良好であった。
  • 清水 孝敏, 澤井 祐子
    2008 年 34 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2008/05/31
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    各種果汁製品を用い190g容缶入り果実飲料を調製し, GABA濃度を分析した。その結果, 柑橘系果実飲料中のGABA濃度はほかの果実飲料に比べ高く, オレンジで17-40mg/100g, リオレッド・グレープフルーツで33mg/100gであった。次いで, 800g容PETボトル入りリオレッド・グレープフルーツ果実飲料を調製し, 加熱殺菌処理 (80-115℃), 恒温暗所保存処理 (20-55℃), 蛍光灯照射処理 (設定照度20,000ルクス) を施した。果実飲料中にはアミノ酸, 還元糖, 有機酸が共存したが, いずれの処理においてもGABA濃度の減少は認められなかった。以上の結果, GABA濃度を保証した常温流通可能な柑橘系果実飲料の可能性が示唆された。
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