日本食品保蔵科学会誌
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43 巻, 4 号
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  • 堀西 朝子, 雪本 亮, 東出 晃平, 岸田 邦弘, 森 一, 尾﨑 嘉彦
    2017 年 43 巻 4 号 p. 153-162
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/11/06
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     新品種のウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)‘露茜’は,ウメ‘養青梅’とニホンスモモ‘笠原巴旦杏’の種間交雑種である。果実の成熟に伴い果皮に加えて果肉にもアントシアニンを蓄積し鮮紅色に着色するという特徴があり,エチレンガスにより,追熟するとさらにアントシアニン量が増加することが知られている。本研究では‘露茜’のフェノール性化合物の特徴を,親品種のウメ‘養青梅’と日本スモモ‘笠原巴且杏’,主要品種である‘南高’との比較,および追熟中の変動から解析した。‘露茜’果肉中のアントシアニンの蓄積はその親品種である‘笠原巴旦杏’の形質由来であると推察された。また,‘露茜’の特徴であるネオクロロゲン酸が主たるフェノール成分であることは,‘養青梅’の特徴であった。‘露茜’果実の赤色強化法である未熟果のエチレンガスによる追熟処理ではアントシアニン類だけでなく,ネオクロロゲン酸濃度も上昇させた。‘南高’と同様に,‘露茜’果肉にもヒドロキシ桂皮酸アセチル化シヨ糖エステル類が存在することがLC-MS分析によって示唆された。さらに‘露茜’のフェノール性化合物両分(TAP)のラット小腸二糖水解酵素阻害効果とラットの血糖上昇抑制効果について評価した。TAPはマルターゼ,グルコアミラーゼとスクラーゼに対して阻害活性を示した。また,ラットにおいてデンプン投与後の血糖上昇を遅延させたが,マルトースとスクロースでは顕著な効果を示さなかった。

  • 南 和広, 樫村 修生, 前崎 祐二, 清柳 典子, 丹羽 光一, 相根 義昌, 渡部 俊弘
    2017 年 43 巻 4 号 p. 163-170
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー

     私たちは,血管機能を向上させる働きのある機能性食品を評価するための非侵襲的ヒト対象試験法を構築した。ω3脂肪酸は,血管機能を向上させる機能があることが知られている。そこで,本研究では,ω3脂肪酸を多く含むことで知られるサチャインチオイルを使用した。血管内皮機能障害は,高血圧や動脈硬化などの心血管疾患の初期症状である。近年,血管内皮機能は,血流依存性血管拡張反応(FMD)の測定によって評価できることが明らかとなっている。本試験に使用したサチャインチオイルは,リノレン酸が,全脂肪酸の45.5%と高いω3脂肪酸含量を示した。サチャインチオイル(350mg)を健康な被験者(男性10人・女性10人:平均年齢21.6±0.83歳)に経口投与したところ,摂取3時間後のFMDが11.2±2.53%(通常時)から,17.2±1.82%に上昇した。一方,プラセボとしてキャノーラオイル(9.7%リノレン酸含有)を投与してもFMDは,11.7±2.05%への上昇にとどまった。以上の結果は,サチャインチオイルが,ヒトの血管内皮機能を向上させることを示している。私たちは,本研究の成果から,FMDを基礎とした本法を,ヒト血管機能を増進させる機能性食品の簡便で効果的な評価法として提案する。

  • 蓑島 良一, 椎葉 究
    2017 年 43 巻 4 号 p. 171-177
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー

     γ-アミノ酪酸(GABA)は多くの豆類に存在していることはすでに明らかになっている。本研究では大豆の生育や登熟期の部位のGABA含量についての検討を行った。

     完熟大豆のGABA含量は他の豆類より低いが,発芽期や登熟期でGABAが増加する傾向があった。また,特に登熟期にGABA含量が増加する傾向があり,登熟前期に莢中に多く存在し,登熟後期にかけてのGABA含量は,莢中が減少し,豆中に増加する傾向があった。登熟大豆中のGABAは,登熟前期に莢中で生成し,登熟後期に豆中に移行すると考えられる。また,登熟大豆中のGABAの機能としては,虫の食害や病原菌から未熟種子を防御している可能性が考えられた。

     登熟大豆と発芽大豆のスラリー中のGABA生成の最適温度が約20℃異なっていた。また,登熟大豆スラリーの最適pHは幅広く安定であったが,発芽大豆ではpH6.0にピークが存在した。このことより,大豆の発芽期と登熟期でGABAを生成する酵素(グルタミン酸デカルボキシゲナーゼ:GAD)の性質が異なっている可能性が示唆された。

  • 李 夢秋, 宮沢 幸敬, ZHAO Gang, 鈴木 公一, 川井 泰, 増田 哲也, 小田 宗宏
    2017 年 43 巻 4 号 p. 179-186
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー

     ビフィズス菌による,新規に合成されたN-acetylsucrosamine(Fruβ2-1αGlcNAc, SucNAc)の資化性について検討した。ビフィズス菌を,SucNAcを含むGAM(40)培地(通常培地の40%濃度,グルコースを0.12%含む)に培養し,増殖が促進されるかどうかを調べた。その結果,GAM(40)培地と比較し,SucNAc(1.0%)を添加した培地における増殖性が明らかに高い菌株がみられた。次いで,B. longum strain No.14-2を用い,半合成培地にglucose(0.12%)とSucNAc(0.5%)を添加し,培養の経時変化を調べた。本菌株は,培養12時間で培地中のグルコースを消費し,一旦増殖が止まった(第1の増殖相)。しかし,共存するSucNAcは全く消費されなかった。その後,培養36時間より48時間にかけて第2の増殖相がみられた(ジオーキシ)が,これはSucNAcが消費されたことによるものであった。

     半合成培地にglucoseまたはsucroseを単一炭素源として,さらに,glucoseとSucNAcを同時に炭素源としてB. longum strain No.14-2を培養し,得られた培養菌体より各々のcell-free extractを調製した。それらの各種糖質に対する分解活性を調べたところ,glucoseあるいはsucroseを単一炭素源とした場合には,いずれの糖質(disaccharide, oligosaccharide)に対しても分解活性は認められなかったが,glucoseとSucNAcを共存させた場合には,SucNAcを含め多種の糖質を分解した。

     本菌株はSucNAcを単独では資化できないものの,グルコース共存下では資化できること,そして,菌体内には多様な糖質分解活性がみられるようになったことなど,糖質分解酵素の発現・誘導が使用する炭素源により異なることがわかった。したがって,ビフィズス菌の糖質代謝の多様さが示されたことになるが,どのような糖質(炭素源)が,どのような機序で多様性をもたらすのかは興味ある課題と考える。

  • 平成28年度日本食品保蔵科学会技術賞
    国正 重乃
    2017 年 43 巻 4 号 p. 187-191
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/11/06
    ジャーナル フリー
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