以上を総括して要約すると
(1) 大豆タン白質の製パン機能の付与に顕著な効果を示した加塩擂潰ゲル添加ドウの凍結保蔵が他のタン白質で何のように影響するかを検する目的で, 乳, 魚肉, 卵の夫々を分別して得た各タン白質について験した。なお, 小麦グルテンのみは常法に従って調製したドウの凍結保蔵を行った。
(2) 小麦グルテンは凍結保蔵によって, 明らかに製パン性の向上が認められ, 混捏ドウを-30℃, 14日間保蔵したもので顕著であった。
(3) 乳タン白質には製パン性を認められなかったが, 小麦グルテンの製パン性を阻害することもなかった。また, 未加熱脱脂粉乳より調製した未加熱乳タン白質, 市販のスキムミルクより得た加熱乳タン白質共に, ドウ調製に先立って行った加塩擂潰が明らかに機能低下を来す結果となり, 大豆タン白質と異る挙動を示して, 本研究の今後に重要な示唆を与える結果となった。
(4) 特A級のスケソー冷凍摺身をWhole Protein, 塩溶性によって分別したActomysin, Residual Proteinの3区分に分ち, 各々について製パン性を験した結果, Whole Proteinが顕著な製パン阻害を示したが, 他の2区分の製パン挙動より推して, Whole Protein区分に残存する約10%の水溶性タン白質が強く影響したものと推定した。
(5) 小麦グルテンを全く加えることなく, 塩溶性タン白質Actomyosin区分15%, パン用小麦粉30%, 米粉55%より成るパンを焼成した結果, 明らかなスポンジドウの形成と, 焼成によるスポンジネットの熱固定ができることを知り, 小麦グルテン代替タン白質の検索に重要な示唆を与える結果となった。
(6) 全卵を分割, 透析, 凍結乾燥して得た卵白, 卵黄は共に優れた製パン性を示した。しかし, 卵白では添加ドウの凍結保蔵が製パン機能を低下させる結果となったが, 卵黄では反対に僅かながら同機能を向上する結果となり, 構成タン白質の構造要素と併せて, 共存成分が重要な要素となっていることが示唆された。
(7) これらの結果を総括して, 大豆タン白質では顕著な効果が認められた, 加塩擂潰グル添加ドウの凍結保蔵が, 総てのタン白質について有効なものではなく, 却て逆に働く場合があることを知ると共に, 相補的なタン白質の組合わせが, 今後の研究に重要な要素となることが示唆された。
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