ウメ果実の収穫熟度および品種による低温障害感受性並びに低温ショック効果の差異を調査した。
1.ウメ果実'花香実'を早期および後期 (緑色) に収穫し, 低温障害発生率を調べたところ, 早期収穫果で非常に高かったが, 後期収穫果では障害が全くみられなかった!さらに, '養青'・'南高'・'玉英'・'古城'の4品種について, 早期および標準期収穫果を用いて同様の調査をしたが, '花香実'のように収穫期による明確な差異はなかった。この4品種に低温ショック処理 (氷水2時間浸漬) を施し, 6℃に貯蔵したところ, 無処理に比べ障害発生が抑えられ, その効果は早期収穫で大きい傾向があった。
2.'鶯宿'果実 (大阪府産) を早期, 標準期, 後期に収穫し, 低温障害発生率を調べた。その結果, 早期収穫で最も大きく, 次いで標準期収穫であり, 後期収穫では障害が発生しなかった。これら果実に低温ショック処理を施し, 6℃貯蔵したところ, いずれも障害を抑えていたが, その効果は早期収穫で顕著であり, 障害発生は無処理果の半分以下に抑えられた。また, 後期収穫果でも, 無処理果では6℃貯蔵中に軟化および黄化が起こったのに対し, 処理果では抑制され, その意味では低温ショック効果がみられた。
3.奈良県産'鶯宿'でも早期, 標準期および後期収穫果の間に大阪産のものとほぼ同様の関係がみられた。しかし, 和歌山県産'鶯宿'果実では, 異なった傾向がみられ, 早期および後期収穫果で大きく, 標準期収穫果で小さかった。本試料の果粒重は通常のものの半分以下であった。
4.これらの結果より, 果実が小さい場合に例外はあったものの, 一搬的には標準的収穫期より後期収穫期に至る間で低温障害感受性が低下するものと推察された。
5.低温ショックによる低温障害抑制効果は, いずれの品種, 熟度でも認められたが, 障害発生の高い収穫熟度や温度において効果が大きい傾向があった。
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