以上の結果を総括して
(1) 米粉と小麦粉末グルテンを主体とするパンの焼成にあたって, ドウ形成能を有するタン白質素材の検索を行い, 粉末ゼラチンが優れた製パン機能を有することを知り, 小麦グルテンの半量を置換しても, 米粉主体のパンが焼成できることを知った。
(2) 分離大豆タン白質自体は, 小麦グルテンを代替する機能は全く認められなかったが, これを加塩, 擂潰, 凍結乾燥したものでは, 小麦グルテンの半量を置換して, 米粉主体のパンが焼成できた。
(3) これらの結果に基いて, 凍結変性によるタン白質分子間の会合が製パン性に及ぼす影響を検する目的で, 混捏直後, 一次, 二次発酵を経過した小麦粉ドウの冷蔵, 冷凍保蔵を行い, 0.1N-醋酸, 70% Ethanol可溶性タン白質の変化を追跡した。
(4) 4℃, 24hrs冷蔵した各ステップのドウでは0.1N-醋酸抽出区分の減少と, 70% Ethanol抽出区分の顕著な増大がみられ, グルテニン成分に変化のあったことが示唆された。
(5) このようなグルテニン区分の変化は, SDS-Polyacrylamide Gle Electrophoresisからも裏付けられ, また, 焼成パンの比容積の低下を原因したと考えられる。
(6) -10℃, -30℃で冷凍した小麦粉ドウ, 米粉ドウのいずれにも, 抽出タン白質量, 製パン性ともに大きな変化は認められなかった。
抄録全体を表示