生薬の抽出残渣に含まれている澱粉の有用性を評価するため, 澱粉の物理化学的な諸特性を調べた. 澱粉 (S) は,
Panax ginseng C.A. Meyerの根, ニンジン (PG) と
Panax notoginseng (Burk.) F.H. Chenの根, サンシチニンジン (PN) から調製した. PGとPNの粉末生薬には, 澱粉が5.0-20.0, 2.0-5.6%含まれていた (Table 1). S-PGとS-PNの平均粒子径は, 6.3±1.1, 11.0±0.7μmであった (Fig. 1). S-PGとS-PNの結晶型は, C
B, C
A型であった (Fig. 3). S-PG-4とS-PN-4は, 44.2-69.5, 51.2-72.5℃に吸熱曲線を, また, 8.6±0.4, 11.7±0.7J/gのエンタルピーを示した (Table 2). 水分と熱に対して, S-PN粒はS-PG粒よりも安定な構造を持っていると推察された. S-PGとS-PNには, 燐が56.0-64.0, 67.0-120.0μg/g, カルシウムが38.0-83.0, 26.0-180.0μg/g含まれていた (Table 3). S-PGとS-PNのα-アミラーゼによる72時間後の分解率は, 82.3±4.8, 55.0±7.5%であった (Fig. 4). α-アミラーゼにより生澱粉から生成した (分解率, S-PG-4:13.2%;S-PN-4:20.7%) 主な糖類は, 三単糖 (40.2-40.6%) とマルトース (36.4-39.1%) であった (Table 4). グルコアミラーゼにより生澱粉から生成した (分解率, S-PG-4:17.6%;S-PN-4:27.9%) 主な糖は, グルコース (92.9-98.3%) であった (Table 5). S-PG-4とS-PN-4は, 1時間分解後, α-アミラーゼによって凸凹に侵食されたが, グルコアミラーゼによっては原型をとどめており粒子表面に小粒が付着していた (Fig. 2). グルコアミラーゼによって分解されたS-PG-4とS-PN-4の方が, α-アミラーゼによるものよりも, 熱安定性の高いことが推察された.
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