Journal of Applied Glycoscience
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53 巻, 2 号
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Regular Papers
  • 小嶋 道之, 清水 英樹, 大庭 潔
    2006 年 53 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    デンプン性豆類 (小豆およびインゲンマメ; [手亡および金時の2品種]) から調製したアンの食物繊維含量と粒子形態との関係について検討を行った.3種のアンの総食物繊維値は,煮熟時間の増加にともない低下した (Fig. 1).しかし,煮熟時間の違いによるアンの一般成分値にはほとんど違いが認められなかった (Table 1).調製したアンの粒度分布は,煮熟時間に関係なくほぼ一定であった.しかし,走査型電子顕微鏡観察によるアン粒子表面の観察から,煮熟時間が長いと粒子表面に損傷部位が多く存在することを認めた (Fig. 3, 4).調製したアン中の崩壊粒子,損傷粒子および完全粒子の割合を求めたところ,崩壊粒子は1%前後と少なかったが,煮熟時間の増加にともなって損傷粒子が増大し,逆に完全粒子が減少することを見出した (Fig. 5).アンの食物繊維定量値とアンの完全粒子の割合には正の相関関係が認められた (Fig. 6).これらの結果を総合して,デンプン性豆類の加熱による食物繊維定量値の増加の主な理由は,加熱により形成されたアン粒子中の「完全粒子」により,消化酵素が作用しづらいことに由来すると判断した.
  • 藤井 和俊, 飯干 雅恵, 柳瀬 美千代, 鷹羽 武史, 栗木 隆
    2006 年 53 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    Sucrose phosphorylase (SPase, EC 2.4.1.7) は,sucroseをglucose 1-phosphateとfructoseに加リン酸分解する酵素である.本酵素は,無機リン酸の定量,配糖体やオリゴ糖,アミロースの合成に利用できるが,産業利用に適した耐熱性をもつ酵素の報告例はない.産業利用において優れた耐熱性をもつSPaseを取得するために,Streptococcus mutans 由来のSPaseをコードする遺伝子にerror-prone PCRを用いてランダム変異を導入した.耐熱性の向上した変異酵素のスクリーニングには,glucan phosphorylaseを併用したsucroseからのアミロース合成を利用し,加熱後のSPase活性を合成されるアミロースをヨウ素呈色することで検出した.スクリーニングした結果,耐熱性の向上に寄与するアミノ酸置換八つ (T47S,S62P,V128L,K140M,Y77H,Q144R,N155S,D249G) を見出した.これらのアミノ酸置換を組み合わせることで本酵素の耐熱性は向上し,八つのアミノ酸置換全てを組み合わせた耐熱性酵素は,57℃で20分間の加熱では失活せず,60℃で20分間の加熱でも加熱前の60%以上の活性を維持していた.耐熱性酵素を含む菌体抽出液を20% sucrose存在下で65℃20分間加熱することで,簡便かつ迅速にアミロース合成に使用可能な酵素を調製できた.
  • 吉井 英文, 大橋 哲也, 古田 武, Pekka Linko
    2006 年 53 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    生理活性蛋白質の包括粉化は,蛋白質の安定化改善のために非常に重要な操作である.蛋白質溶液を無水マルトースまたは無水トレハロースのような無水糖に添加した場合,水分子は結晶水として糖に組み込まれる.そのため,糖質粉末内に蛋白質が包括される.本研究は,無水マルトースまたは無水トレハロースの結晶変換法による酵素蛋白質の包括粉末化特性について検討した.無水糖の結晶変換によって包括粉末化された酵素活性は,無水糖から含水糖への結晶変換速度に依存した.包括粉末化されたアルコールデヒドロゲナーゼの残存活性は,ヒドロキシル-β-シクロデキストリンを加えた酵素水溶液をアモルファス無水トレハロースに添加した場合高い包括酵素活性粉体を得た.
  • 小嶋 道之, 清水 英樹, 大橋 美穂, 大庭 潔
    2006 年 53 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    小豆およびインゲンマメ (手亡品種および金時品種) の3種類の豆から調製した未処理デンプンの平均粒径は約30-40 μm,粒子形状は球形または楕円形で,結晶形はC形であった (Fig. 1, 2, 3).単離した豆デンプンの溶解度および膨潤力は,加熱温度の上昇に伴っていずれも増加した.また,3種類の豆デンプンの溶解度には大きな差はみられなかったが,小豆デンプンの膨潤力は手亡および金時デンプンのそれより高かった.3種の豆デンプンにおいて脱脂処理デンプンではA形近似のX線回折パターンを示し,溶解度はそれぞれの未処理デンプンよりも高い値を示した.温水処理デンプンでは,未処理デンプンと類似のX線回折パターンを示したが,溶解度および膨潤力は低い値であった.湿熱処理デンプンでは,A形近似のX線回折パターンを示し,未処理デンプンよりも膨潤力が顕著に低下した.また,糊化凍結融解処理デンプンでは,X線回折図は非晶質のパターンを示し,50℃での溶解度および膨潤力は他の試料よりも高い値であった (Fig. 4, 5, 6).3種類の豆から単離したデンプンのレジスタントスターチ (RS) 含量は,いずれも1%前後であった.また,脱脂処理および温水処理デンプンのRS含量は,未処理デンプンのそれとほとんど変わらなかったが,湿熱処理デンプンのそれは2.5-4.2%の値を示した.また,糊化凍結融解処理デンプンのRS含量は,各種加工処理デンプンの中で最も高い値を示し,小豆デンプンで約4%,手亡デンプンで約9%,金時デンプンで約8%であった (Fig. 7).
  • 久松 眞, 古林 卓也, 苅田 修一, 三島 隆, 磯野 直人
    2006 年 53 巻 2 号 p. 111-113
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    pH 2.0の酸性培地下で優れたアルコール発酵を示す酸耐性酵母MF-121株を,酸性温泉街を流れる河川から単離した.酒醸造用酵母は,この酸性培地下ではほとんど発酵しなかった.デンプン,パン,米飯を硫酸で完全加水分解した溶液から調製した培養液 (pH 2.5) で,MF-121株は硫酸を除去しなくても高いエタノールを生産した.生理学的分類および遺伝子配列から,本酵母はIssatchenkia orientalisに最も似ていた.
第13回糖質関連酵素化学シンポジウム
  • 阪本 龍司
    2006 年 53 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    (1) Aspergillus niger由来のエキソポリガラクチュロナーゼ (Exo-PG) の機能解析:ペクチン中のガラクチュロン酸残基は部分的にメタノールや酢酸,キシロースで修飾されている.本研究ではA. nigerより2種のExo-PGを単離し,種々のタイプのペクチン質に対する特異性を検討した.その結果,両酵素ともにキシロガラクチュロナンおよびアセチル化ホモガラクチュロナンを末端から切断し,キシロガラクチュロン酸およびアセチル化ガラクチュロン酸を生成することをESI-ITMS分析等により明らかにした.すなわち,Exo-PGはホモガラクチュロナンに結合するキシロースや酢酸によって反応が妨害されないことが判明し,ペクチン中の修飾基分布の解析に有効であることが示唆された.(2) Penicillium chrysogenum由来のエキソアラビナナーゼの機能解析:直鎖状還元型アラビナンを基質として,本酵素の反応産物をHPAEC分析した結果,本酵素は非還元末端よりビオース単位で切断することが明らかとなった.DP 7を基質として,酵素反応産物の経時変化を分析することにより,本酵素は“multi-chain attack mode”で基質に作用することを明らかにした.種々のアルコール,糖の存在下で直鎖型アラビナンに本酵素を作用させると,アラビノビオース転移能を示した.グリセリンを受容体とした場合の主要転移産物を単離し,その構造をNMR等によりO-α-L-arabinosyl-(1→5)-O-α-L-arabinosyl-(1→1)-glycerolと決定した.このことから本酵素はアノマー保持型酵素であることが証明された.さらに本酵素遺伝子の塩基配列を決定し,アミノ酸配列相同性検索と疎水性クラスター解析の結果から,本酵素は既報のアラビナン分解酵素とは異なるタンパク構造を有していることが判明し,7種の機能未知タンパク質とともに新たにGHファミリー93が形成された.
  • 山本 拓生, 西本 友之, 茶圓 博人, 福田 恵温
    2006 年 53 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    嫌気性好熱菌Thermonanerobacter brockii由来コージビオースホスホリラーゼ (KP) は加リン酸分解反応によりコージビオースからグルコースとβ-グルコース-1-リン酸 (β-G1P) とを生成する.本酵素はまた,グルコースとβ-G1Pとからコージビオースのみならず重合度3以上のコージオリゴ糖を生成することが明らかとなっている.適当な受容体糖質の存在下で本酵素をβ-G1Pに作用させることにより新規なオリゴ糖や新規なコージオリゴ糖を調製することが可能である.本研究では,効率的なオリゴ糖の生産や新規なオリゴ糖の酵素合成を目指すため,酵素側からのアプローチとして遺伝子工学的手法を用いて野生型酵素よりもさらに有用な機能を獲得した改変酵素の創出を試みた.KP遺伝子にランダム変異を導入し,機能改変酵素のスクリーニングを行った.その結果,70,75℃における活性半減期が野生型KPの4-7倍に増大した耐熱化変異酵素D513Nと,重合度の大きい生成物を野生型よりも多く産生するDP変異酵素S676N,N687Iを得た.基質特異性改変酵素を獲得する目的で,KPと類縁酵素であるトレハロースホスホリラーゼ (TP) との間でキメラ酵素を作製した.キメラ酵素V-IIIは,全アミノ酸配列中の約84%がTPに由来するにもかかわらず,本酵素はKP活性を示したことから,置換した領域が基質特異性に大きく寄与すると考えられた.本キメラの速度論的解析の結果,コージビオースに対する親和性が野生型KPと比較して著しく増大していた.また,グルコース以外の単糖を受容体としないこともわかった.さらに,本キメラはリン酸非存在下でβ-グルコシド結合をもつオリゴ糖に作用して糖転移物を生成した.これらの結果から,キメラV-IIIの獲得した特異性変化は,触媒部位の還元末端側の構造が変化し,この部位における基質結合能力が著しく低下したためと推定された.
  • 阪田 朋子, 宮久保 博幸, 長田 悠子, 和田 理恵子, 高橋 秀典, 八波 利恵, 福居 俊昭, 中村 聡
    2006 年 53 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    好アルカリ性Bacillus sp. 41M-1株は,アルカリ性領域に反応の至適を有する新規なキシラナーゼ(キシラナーゼJと命名)を生産する.キシラナーゼJはマルチドメイン酵素であり,GHファミリー11に属する触媒ドメインと機能未知ドメインから構成される.キシラナーゼJのタンパク質工学検討により,この機能未知ドメインはCBMファミリー36に軸するキシラン結合ドメイン(XBD)であることがわかった.また,キシラナーゼJのXBDは不溶性キシランに結合し,それに連結した触媒ドメインによる不溶性キシランの加水分解を促進する機能を有していることが明らかとなった.キシラナーゼJのXBDのファージディスプレイを行い,不溶性キシランへの結合能を有する組換えファージの取得に成功した.次に,XBD遺伝子にランダム変異を導入し,野生型XBD提示ファージに比べて不溶性キシラン結合能が低下したファージを取得した.得られた変異体ファージの塩基配列解析の結果,Phe284,Asp286,Asp313,Trp317およびAsp318が不溶性キシランへの結合に関与していることが考えられた.また,T316Iアミノ酸置換(Thr316のIleへの置換を表す)を有するXBDを提示した変異体ファージは,野生型XBD提示ファージに比して不溶性キシラン結合能が向上していることがわかった.さらに,T316Iのアミノ酸置換の導入により,キシラナーゼJの不溶性キシラン加水分解活性が向上することが明らかとなった.
  • 中井 博之, 伊藤 達也, 谷沢 茂紀, 松原 一樹, 山本 健, 奥山 正幸, 森 春英, 千葉 誠哉, 佐野 芳雄, 木村 淳夫
    2006 年 53 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    植物種子が発芽する際に貯蔵物質である澱粉は,各種加水分解酵素により酵素分解され,生長に必要な物質・エネルギーの供給源となる.澱粉は植物種子中に不溶性の澱粉粒として存在するため,現在までα-アミラーゼが唯一澱粉粒に直接作用できる酵素であると考えられてきた.しかし,我々は植物α-グルコシダーゼが澱粉粒への吸着・分解能をもつことを明らかにし,第2の澱粉分解経路 (澱粉粒にα-グルコシダーゼが作用し,直接グルコースを遊離する経路) の存在を示した.さらに,植物α-グルコシダーゼには,触媒ドメインとは独立して機能する澱粉粒吸着ドメインがC末端に存在することを解明した.本ドメインに保存された芳香族アミノ酸に対する部位特異的変異導入により,澱粉粒吸着に関与する残基を推定した.植物種子中には,複数のα-グルコシダーゼが存在する.我々は,イネ種子中に可溶性および不溶性 (界面活性剤により可溶化が可能) の性質を示す2種のアイソザイムを見出した.両酵素の発現様式から,14品種のイネ種子を二つのグループ (グループ1,2) に大別した.グループ1は,不溶性酵素のみが乾燥種子に検出されるイネ品種である.不溶性α-グルコシダーゼが登熟期で合成され,完熟に伴い種子中に保存されるが,発芽の進行につれ消失する.発芽後に可溶性酵素が新たに合成される.グループ2の品種では,可溶性および不溶性の酵素が乾燥種子に検出された.両酵素は登熟期で合成され,発芽期間中の活性は変化せず,一定のレベルで推移する.グループ1からは赤米を,グループ2では日本晴を実験対象に選び,α-グルコシダーゼの機能解析を行った.翻訳後修飾やゲノム遺伝子発現調節によるアイソフォームやアイソザイムの形成機構ならびに精製酵素を用いた性質の解明を行った.多様なα-グルコシダーゼが関与する澱粉代謝の一端が明らかにされた.N末領域に生じる翻訳後限定分解は,植物酵素に対し一般的に観察される現象であった.
  • 宮永 顕正, 小関 卓也, 松澤 洋, 若木 高善, 祥雲 弘文, 伏信 進矢
    2006 年 53 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    アラビノキシランは,植物細胞壁の成分の一つであり,β-1,4キシラン主鎖にα-1,2またはα-1,3結合でアラビノースが側鎖として結合している構造をとっている.α-L-アラビノフラノシダーゼは,そのアラビノキシランのキシラン主鎖と側鎖アラビノース間の結合を切断する酵素である.Aspergillus kawachii由来のα-L-アラビノフラノシダーゼB (AkAbf54) は,構造未知である糖質分解酵素ファミリー54に属しており,反応機構なども不明であった.われわれはこのAkAbf54のX線結晶構造解析を行った.AkAbf54をPichia pastorisで大量発現させ,結晶構造解析を行った.全体構造を明らかにしたところ,AkAbf54は触媒ドメインとアラビノース結合ドメインの二つのドメインから構成されていた.アラビノースとの複合体構造では,アラビノースが触媒ドメインに1分子,アラビノース結合ドメインに2分子結合していた.複合体構造および変異体を用いた実験などから,求核残基がGlu221,酸/塩基触媒がAsp297であることを明らかにした.興味深いことに隣り合ったシステイン残基Cys176およびCys177がジスルフィド結合を形成し,アラビノースを疎水的に認識していた.アラビノース結合ドメインは,糖質結合ドメイン (CBM) ファミリー13と似たフォールドをとっていた.しかし,糖リガンド結合部位やモチーフが異なるなどいくつか異なる点がみられた.これらのことを考慮に入れた結果,アラビノース結合ドメインは新規な糖質結合ドメインであるCBM42に分類された.われわれはCBM42の詳細な機能解析を行い,CBM42はヘミセルロースの側鎖の糖であるアラビノースのみを認識して結合するという,これまでには例のない新規な糖質結合ドメインであることを示した.
  • 袴田 航, 室井 誠, 西尾 俊幸, 奥 忠武, 高月 昭, 長田 裕之, 福原 潔, 奥田 晴宏, 栗原 正明
    2006 年 53 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    現在,新H5N1型インフルエンザやSARSなど続々と出現する新興ウイルス感染症や鳥インフルエンザのヒトへの伝播等,新興ウイルス感染症は人類の脅威となっている.しかし,ウイルス感染症に対する有効な薬剤の開発は,細菌感染症の抗生物質に比べ遅れている.そこで,ウイルス共通の感染機序に基づいた薬剤の開発が重要と考え,外被を有する多くのウイルスの感染・増殖には複合型のN-結合型糖鎖が関与している知見を基にして,小胞体N-結合型糖鎖プロセシング酵素を標的酵素とした分子標的薬の開発を目指して研究を行っている.分子標的薬の開発には,標的酵素である糖鎖プロセシング酵素の基質特異性の解明が必要であると考えた.そこで,合成プローブを用いてN-結合型糖鎖プロセシングの第1段階を担うプロセシンググルコシダーゼI (EC 3.2.1.106)と第2段階を担うプロセシンググルコシダーゼII (EC 3.2.1.84)のグリコンおよびアグリコン特異性を調べ,α-グルコシダーゼ (EC 3.2.1.20, GH13 and GH31) のそれと比較した.その結果,グルコシダーゼIのグリコン特性はGH13 α-グルコシダーゼと,グルコシダーゼIIのグリコン特性はGH31 α-グルコシダーゼと同様であった.またグルコシダーゼIとグルコシダーゼIIのアグリコン認識は同様であり,GH13およびGH31 α-グルコシダーゼとは異なっていた.そこで,プロセシンググルコシダーゼIおよびIIを標的として,酵素阻害剤候補化合物の設計と合成を行った.これら候補化合物のin vitro酵素阻害活性と細胞レベルでのウイルス外被糖タンパク質の合成・成熟・転送阻害およびプラーク法による感染性ウイルス数の測定を行った.その結果,in vitroにおいてヘプチトール誘導体,スルフォニル誘導体の一部にIC50約50 μMの阻害活性を,カテキン誘導体の一部にIC50 0.9 μMの強力な阻害活性を見いだした.さらに,細胞レベルではカテキン誘導体の一部にプロセシンググルコシダーゼ阻害を作用点とするとみられる比較的強い抗ウイルス活性を見いだした.今後,ウイルス外被糖タンパク質の糖鎖構造解析等により詳細な作用機序の解明を行う予定である.
  • 栗木 隆, 高田 洋樹, 柳瀬 美千代, 大段 光司, 藤井 和俊, 寺田 喜信, 鷹羽 武史, 本同 宏成, 松浦 良樹, 今中 忠行
    2006 年 53 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    私たちは新酵素neopullulanase (EC 3.2.1.135)を発見し,本酵素がα-1,4-およびα-1,6-グルコシド結合の加水分解のみならず,糖転移反応によりα-1,4-およびα-1,6-グルコシド結合を形成する反応を触媒することを示した.Neopullulanaseを用いた一連の実験結果より,私たちはこれら四つの反応を触媒する酵素の構造上の類似性および共通の触媒機構を指摘し,α-アミラーゼファミリーの概念を提案し,かつ定義した.変異導入による実験によりneopullulanaseのただ一つの触媒活性中心が四つのすべての反応,すなわちα-1,4-およびα-1,6-グルコシド結合の加水分解ならびに糖転移反応によりα-1,4-およびα-1,6-グルコシド結合を形成する反応を行っている証拠が示された.さらに構造解析の結果,neopullulanaseのただ一つの触媒活性中心がこれら四つのすべての反応を行っている決定的な証明がなされた.私たちは,このα-アミラーゼファミリーの概念を基盤としてグルカン加水分解酵素とグルカン転移酵素の相互変換,およびそれらの特異性変換を試みており,それにより工業的に有用なテーラーメードの酵素を創成してきている.α-アミラーゼファミリーの概念に基づき,私たちはThermus由来のamylomaltaseをたくみに処理して実質的にその加水分解活性を消失させ,シクロアミロースの工業生産のために完全な4-α-glucanotransferaseを創り上げた.ここでは,α-アミラーゼファミリーの概念をグルカン加水分解酵素とグルカン転移酵素の相互変換,およびそれらの特異性変換のための合理的設計手段として再び論証する.
  • Maher Abou Hachem, Sophie Bozonnet, Martin Willemoës, Birgit C. B ...
    2006 年 53 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/20
    ジャーナル フリー
    Barley α-amylase binds sugars at two sites on the enzyme surface in addition to the active site. Crystallography and site-directed mutagenesis highlight the importance of aromatic residues at these surface sites as demonstrated by Kd values determined for β-cyclodextrin by surface plasmon resonance and for starch granules by adsorption analysis. Activity towards amylopectin and amylose follows two different kinetic models, degradation of amylopectin being composed of a fast and a slow component, perhaps reflecting attack on A and B chains, respectively, whereas amylose hydrolysis follows a simple Michaelian kinetics. β-cyclodextrin binding at surface sites inhibits only the fast reaction in amylopectin degradation. Site-directed mutagenesis and activity analysis, furthermore show that one of the surface binding sites as well as individual subsites in the active site cleft have distinct roles in the multiple attack on amylose. Although the two isozymes AMY1 and AMY2 share ligands for three structural calcium ions, they differ importantly in the effect of calcium on activity and stability, AMY1 having the higher affinity and the lower stability. The role of the individual calcium ions is studied by mutagenesis, crystallography and microcalorimetry. Further improvement of recombinant AMY2 production allows future direct mutational analysis in this isozyme. Specific proteinaceous inhibitors act on α-amylases of different origin. In the complex of barley α-amylase/subtilisin inhibitor (BASI) with AMY2, a fully hydrated calcium ion at the protein interface mediates contact between inhibitor residues and the enzyme catalytic groups in a manner that depends on calcium and which can be suppressed by site-directed mutagenesis of Glu168 in BASI. Finally certain inhibitors and enzymes are targets of the disulphide reductase thioredoxin h that attacks a specific disulphide bond in BASI and, remarkably, reduces two different disulphide bonds in the barley monomeric and dimeric amylase inhibitors that both belong to the CM-proteins and inhibit animal α-amylase.
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