Journal of Applied Glycoscience
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55 巻, 2 号
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Regular Papers
  • 小林 昭一, 三輪 章志, 大竹 郁子, 三浦 靖, 村岡 弘樹, 小川 智
    2008 年 55 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    我々は疎水性食品素材と澱粉の混合液中でサイクロデキストリン合成酵素(CGTase)を作用させるとポリフェノールのような各種疎水性食品素材が分散されることを見出し,CGTaseの澱粉への作用で生成されたサイクロデキストリンやマルトオリゴ糖によりある種複合体が形成されるものと推測した.CGTaseの代わりにα-アミラーゼを用いた場合も抹茶のような疎水性食品素材が同様に水溶液中に分散した.我々はこれらの複合体をCDラップおよび糖質ラップと命名した.これらの現象を明らかにする目的で,分光分析法と核磁気共鳴法を用い,ある重合度をもつマルトオリゴ糖はコンゴーレッドの呈色を変化させ,この糖質のNMRプロファイルはコンゴーレッドの添加により変化することを示した.これらの結果から,コンゴーレッドがマルトヘプタオースと緩やかに相互作用して,ある種複合体を形成すると推論した.
  • 茶木 貴光, 馬場 貴司, 樋浦 望, 小林 幹彦
    2008 年 55 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    アルギン酸リアーゼを産生する海洋性細菌の同定を行うとともに菌体外酵素についてDEAE陰イオン交換カラムを用いたHPLCによる部分精製を試み,諸性質について検討を行った.その結果,節足動物の腸内容物より得られた細菌はPseudoalteromonas属に属していた.酵素は分子質量が32.0 kDa,また酵素反応時の最適温度,pHはそれぞれ50°Cおよび7.1-7.7(リン酸バッファー)であり,温度,pHに対する安定性はそれぞれ40°Cおよび6.3-8.9であった.また,Mg2+,Ca2+いずれの添加においても酵素活性が無添加群と比較し300%以上の増大を確認した.アルギン酸よりマンニュロン酸およびグルロン酸画分を調製し酵素反応を行ったところ,それぞれに由来するオリゴ糖が観察され,両基質に作用していることが示唆されたものの,いずれのグリコシド結合を切断しているかまでの特定には至らなかった.以上の結果から,今回精製した菌体外酵素は,これまでPseudoalteromonas属では報告のない至適温度が高く,かつMg2+,Ca2+いずれのイオン添加において著しく酵素活性が増大する新規な酵素であることが示唆された.
  • 木下 かおる, 伊藤 梓, 服部 誠, 好田 正, 高橋 幸資
    2008 年 55 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    正味荷電の違いによって選択したアスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu),Gluおよびリシン(Lys),ならびに,アスパラギン(Asn)およびグルタミン(Gln)のように2種のアミノ酸の組合せによる馬鈴薯澱粉粒の糊化温度および粘度に対する特徴的効果について,それぞれ示差走査熱量計およびラッピドビスコアナライザーによって評価した結果から解析した.これらの結果は個々のアミノ酸と比較した.Asp,GluおよびLysは,AsnおよびGlnより糊化温度の上昇に大きな効果をもち,ピーク粘度を非常に低下させた.いずれも正味荷電が負のAsp+Gluを組合せたときの糊化温度に対する効果は,個々のアミノ酸の糊化温度上昇効果の和に従い,正味荷電がそれぞれ負および正のGlu+Lysを組合せたときのそれは,二つのアミノ酸のそれぞれの効果の相乗となった.しかし,いずれも正味荷電がゼロのAsn+Glnの組合せの糊化温度に対する影響は,変化が少なく評価し難かった.ピーク粘度に対するAsp+Glu,ならびに,Asn+Glnの組合せの効果は,いずれもそれぞれ二つのアミノ酸の低下効果の和に近かった.
ノート
  • 栗波 哲, 杉本 雅俊, 天谷 美都希
    2008 年 55 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    美山南宮地在来,大野在来,今庄在来,池田在来,常陸秋ソバ,信濃1号,およびキタワセソバの7品種のソバから得たソバ澱粉の理化学的性質を検討した.ソバ澱粉のRVAによる糊化温度は66.5-70.8°Cの範囲であった.ゲルろ過法によるアミロース含量は27.3-31.8%の範囲であり,アミロペクチンの長鎖に対する短鎖の比は3.0-3.3であった.ソバ澱粉の膨潤力は,信濃1号を除いて,アミロース含量と負の相関関係を示した.93°Cにおけるソバ澱粉の膨潤力および溶解度は約30,約12 g/100 g D.M.であった.パンクレアチンによる分解率は3時間処理で77-81%であった.ソバ澱粉の形状は楕円形,多角形で,大きさは約3-10 μmであった.X線回折図はA型図形を示した.
第15回糖質関連酵素化学シンポジウム
  • 片山 高嶺, 和田 潤, 藤田 清貴, 清原 正志, 芦田 久, 山本 憲二
    2008 年 55 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    我々は,1,2-α-L-フコシダーゼおよびエンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼの遺伝子をそれぞれBifidobacterium bifidum JCM1254株およびBifidobacterium longum JCM1217株より単離した.1,2-α-L-フコシダーゼは,ミルクオリゴ糖やムチン糖タンパク質糖鎖の非還元末端側に結合したα-(1→2)-フコシル基によく作用した.また,活性ドメインはデータベース上の機能未知タンパク質に高い相同性を示し,新規な糖質加水分解酵素ファミリー95として分類された.X線結晶構造解析から明らかとなった活性発現に重要な残基は,+1サブサイトにある一残基を除いてすべて保存されていた.大腸菌で発現させたエンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼは,コア1型のO-グリコシド結合に作用して二糖を遊離した.腸内細菌のゲノム上にそのホモログが存在しており,新規な糖質加水分解酵素ファミリー101として分類された.両酵素とも実際に腸内に存在する天然基質によく作用することから,これらの酵素がビフィズス菌と宿主との共生を考える上で非常に重要であることが示唆された.このことは,最近,北岡らによって発見されたビフィズス菌のGNB/LNB経路によっても支持される.
  • 奥山 正幸, カン ミンソン, 矢追 克郎, 三石 安, 森 春英, 木村 淳夫
    2008 年 55 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    大腸菌YicIはα-xylosidaseは,GH31のなかで最も研究が行われている酵素の一つであり,立体構造解析,生化学的な研究が数多く行われている.YicIの酵素反応の至適pHは7.0,pH安定領域,温度領域はそれぞれ4.7-10.1,47°Cまでの範囲内である.YicIはGH31のα-glucosidaseと30%程度の配列類似性を示すが,YicIは厳密に非還元末端のα-xylosyl基を認識している.二つの変異酵素(TIM-barrelドメインのβ→α loop 1をα-glucosidase様に変化させたL1Chi,loop 2に位置するCys307,Phe308をα-glucosidase様シーケンスに置換したC307I/F308D)では,α-xylosidase活性が低下し,α-glucosidase活性が上昇する.YicIのプラス側サブサイトの特異性を糖転移反応受容体特異性により評価した.YicIはエカトリアルの4-OHを選択して受容体とする.またYicIの糖転移反応は1糖受容体に対しα-1,6結合の1生成物を生成する非常に特異性の狭い反応である.これら糖転移産物のうちα-D-xylopyranosyl-(1→6)-D-mannopyranose,α-D-xylopyranosyl-(1→6)-D-fructofuranose,α-D-xylopyranosyl-(1→3)-D-fructopyranoseは新規糖である.さらにα-D-xylopyranosyl-(1→6)-D-mannopyranoseならびにα-D-xylopyranosyl-(1→6)-D-fructofuranoseラット小腸α-glucosidaseに対して緩い阻害を示す.
  • 杉本 和久, 野村 耕司, 西裏 宏美, 大段 光司, 釜阪 寛, 西村 隆久, 林 英雄, 栗木 隆
    2008 年 55 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    カルボキシル化合物への糖転移反応を触媒する糖質関連酵素を求めてスクリーニングを行った.Streptococcus mutans由来スクロースホスホリラーゼは特に酸性条件下で安息香酸への明確な糖転移活性を示した.Leuconostoc mesenteroides由来スクロースホスホリラーゼもまた活性は弱いものの同様の反応を触媒した.スクロース,安息香酸およびS. mutans由来スクロースホスホリラーゼを用いた反応液から3種の主生成物が検出された.これら化合物およびアセチル化物を単離し構造解析を行い,得られた生成物の構造を1-O-benzoyl α-D-glucopyranose, 2-O-benzoyl α-D-glucopyranoseおよび2-O-benzoyl β-D-glucopyranoseであると決定した.酵素反応液および単離した1-O-benzoyl α-D-glucopyranose水溶液中に生じた生成物の経時変化を調べた結果,酵素反応により1-O-benzoyl α-D-glucopyranoseが生成し,2-O-benzoyl α-D-glucopyranose と 2-O-benzoyl β-D-glucopyranoseは1-O-benzoyl α-D-glucopyranoseの分子内アシル基転位の結果生じたものであることがわかった.本酵素の受容体特異性について検討を行い,本酵素は種々のカルボキシル化合物に対し糖転移できることを明らかにした.酢酸,リン酸,ハイドロキノンを受容体とした際の本酵素反応のpH依存性について比較した結果,カルボキシル化合物が受容体となるためにはカルボキシル基が非解離状態であることが重要であると考えられた.本酵素の糖転移反応を用いて1-O-acetyl α-D-glucopyranoseの合成にも成功した.酢酸および酢酸配糖体の官能評価を試みたところ,配糖化により酢酸特有の酸味が著しく低減していることが明らかとなった.
  • 村上 洋, 桐生 高明, 木曽 太郎, 中野 博文
    2008 年 55 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    Paraconiothyrium sp. KD-3の培養上清から乳糖酸化酵素を精製し,その性質を調べた.本酵素の分子量は54 kDaで分子内にFADを有していた.また酸素や2,6-ジクロロフェノールインドフェノールを電子受容体に用い,乳糖以外に,セロオリゴ糖,マルトオリゴ糖,D-グルコース,D-ガラクトース,D-キシロース,L-アラビノースなどを酸化し,各々のアルドン酸と過酸化水素を生成した.本酵素は安定性が市販のヘキソースオキシダーゼ剤に比べ高く,物質変換に適していた.通気,撹拌,pH調整しながら2L容リアクター中で反応液500 mLを反応させたところ,10-20%(w/v)の乳糖は完全にラクトビオン酸に変換された.この際,10%炭酸カルシウムスラリー添加によるpH制御が有効で,25% NaOHによる中和では酵素が徐々に失活した.カタラーゼの添加は,過酸化水素の分解による酵素安定化と溶存酸素濃度の上昇に効果的であった.陽イオン交換樹脂を担体に用い,シクロヘキシルカルボジイミド処理した固定化酵素を調製した.この固定化酵素はバッチ反応において18.5%(w/v)の乳糖を完全に変換することができた.D-ガラクトース,D-キシロース,L-アラビノースから,本酵素により対応するアルドン酸を得た.これらは,いずれも高いカルシウム安定性と,カルシウムイオンに対して比較的低い結合力を示した.
  • ―大豆(オカラ),コーヒー豆の場合―
    笠井 尚哉
    2008 年 55 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    未利用農産物の有効利用についての関心が再び高くなっている.これらの多くは,未利用農産物とバイオマス-エタノール生産・化学資源としての有効利用あるいは粕・廃棄物-環境問題としてリンクされてきている.そして,ようやく環境問題やエネルギー問題として改めて検討すべき時代に入ったものと思われる.農産物は古くから食糧や飼料そのものであり,種子・果実は,食品生産のためのデンプンやタンパク質あるいは脂質の給源でもある.しかしながら,農産物がすべて利用できることは実に少ない.タンパク質,糖質,脂質が食品素材として分離・抽出されたあとの農産物は,結局,その多くがいわゆる「粕」として廃棄・燃焼されているのが現状である.特に食品工業が発展して加工食品が大量生産されてからは著しい.たとえば,大豆ではオカラであり,醤油粕でもある.これらは基本的には農産物であるので,当然ある程度の酵素分解は可能であり,可溶化物の利用も可能なはずである.決して活性炭にしかできないような難分解性繊維ではない.また当然ながら大豆であるので多くの有用な大豆成分を未だ多く含んでいる.これらの副産物の多くは難分解性繊維のみではなく糖質やタンパク質,あるいはそれらの複合体から構成されており,詳細な分析が非常に困難とされているだけである.それゆえ,成分や構造について詳細には検討されておらず,素材のもつ可能性についても十分には理解・利用されていないのである.たとえば醤油粕やオカラ=難分解性繊維(!?)として捉え,単純に「セルラーゼ-組み替え-高生産」図式で単純に解決できるとするのは明らかに誤りである.私たちは,ダイズとコーヒー豆をモデルに,その細胞の構成成分とその構造を考えながら,最適な食品加工用酵素の選択,各構造物の単離と検討および化学成分検討を行い,高度酵素分解を行った.
  • 岡田 秀紀, 川添 直樹, 山森 昭, 小野寺 秀一, 塩見 徳夫
    2008 年 55 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    植物エキス発酵飲料(以下FPE)は数十種類の野菜,果物を原料とし,sucroseの浸透圧を利用してエキスを抽出し約半年間,酵母および乳酸菌によって自然発酵させた褐色,粘ちょう性の飲料である.この飲料の投与によりラットの寿命延長効果が示唆されており,アルコール性胃粘膜障害抑制効果を有することやβ-(1,3)glucanが存在することをすでに報告している.FPE中に含まれるglucose,fructose以外の糖質の検索は,60%近い糖濃度の飲料であるため困難であったが,高感度に検出する方法を用いることにより微量に含まれるオリゴ糖類の検出が可能となり,その結果,数種の新規糖質および希少糖が見いだされた.FPEから活性炭クロマトグラフィー,amide-80カラムおよびODS-80Tsカラムを用いたHPLCにより十数種の糖類を単離した.これら糖質について酸加水分解による構成糖分析,MALDI-TOF-MS分析,完全メチル化メタノリゼートのGC分析,COSY,HSQC,HSQC-TOCSY,HMBC等の2次元NMR分析等により構造解析を行った.この結果,5種類の新規糖質を見いだし,それぞれO-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-D-glucopyranose(Fp2-6G),O-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-O-β-D-glucopyranosyl-(1→3)-D-glucopyranose,O-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-O-[β-D-glucopyranosyl-(1→3)]-D-glucopyranose,1F-β-D-glucopyranosylsucrose,1F-β-D-galactopyranosylsucroseと決定した.これらの糖質は,発酵熟成中に生成された.新規糖質合成株のスクリーニングを行ったところ植物エキス発酵飲料の発酵熟成中の液から酵母5株(Y-1,-2,-3,-4,-5)を分離した.この株から調製した粗酵素液10 mLをpH 5.0の緩衝液に30%濃度になるよう溶解したglucose,fructose混液100 mLに加え,37°Cで加温した.5株についてFp2-6G合成活性を調べたところ,Y-1株粗酵素反応液中にFp2-6Gと同じ保持時間の糖が検出された.この反応液について各種クロマトグラフィーを行い糖を単離し,構造解析したところFp2-6Gであることが確認された.Y-1株粗酵素によるFp2-6Gの生成量は,上記反応系では非常に少なかったが,反応168時間後においても増加していた.また,基質濃度(glucose:fructose=1:1)の増加にともなって生成量が増加したが,70%濃度が上限であった.
  • 一ノ瀬 仁美, 小竹 敬久, 円谷 陽一, 金子 哲
    2008 年 55 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    アラビノガラクタン-プロテイン(AGPs)は高等植物のプロテオグリカンの一種であり,その生長や発生への関与が示唆されている.また,食品素材・食品添加物として用いられているガムアラビックやカラマツアラビノガラクタンはAGPsの一種である.AGPsの糖鎖は,その分子の大部分を占め,β-1,3-ガラクタン主鎖にβ-1,6-ガラクタン側鎖が結合している.これらのガラクタン鎖を加水分解できる酵素はAGPs分解に重要であるが,その研究はきわめて少ない.われわれはPhanerochaete chrysosporium由来エキソ-β-1,3-ガラクタナーゼ(Pc1,3Gal43A)とTrichoderma viride由来エンド-β-1,6-ガラクタナーゼ(Tv6GAL)を初めてクローニングすることに成功した.Pc1,3Gal43Aは糖質加水分解酵素(GH)ファミリー43と糖結合モジュール(CBM)ファミリー35の二つのモジュールで構成されていた.本酵素は二つのガラクトース残基間のβ-1,3結合のみを加水分解するエキソ型酵素であるが,AGPsに作用した場合にはβ-1,6結合のガラクタン側鎖をバイパスしてガラクトースとβ-1,6-ガラクトオリゴ糖を生産した.また,C末端側のCBM35はβ-1,3-ガラクタンに特異的に結合した.Pc1,3Gal43Aの配列を用いたBLAST検索により見出されたClostridium thermocellum, Streptomyces avermitilis等の細菌や植物(Arabidopsis thaliana)の類似配列を発現させ,エキソ-β-1,3-ガラクタナーゼが生物界に広く存在することを明らかにした.一方,Tv6GALの配列を用いたBLAST検索より見出されたS. avermitilis由来の配列が,β-1,6-結合のガラクトースからなる基質のみを加水分解するエンド型酵素であることを明らかにした.
  • 門倉 一成, 坂本 裕輔, 六谷 明子, 池上 孝紀, 平野 貴子, 山本 真広, 齋藤 香織, 袴田 航, 糸井 史朗, 杉田 治男, 奥 ...
    2008 年 55 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/03
    ジャーナル フリー
    われわれが谷津干潟土壌より単離したVibrio parahaemolyticus KN1699株は,キチン分解によりヘテロ二糖 [β-N-アセチル-D-グルコサミニル-(1,4)-D-グルコサミン(GlcNAc-GlcN)] を生成するユニークな分泌性のキチン分解酵素系を有している.GlcNAc-GlcNの生成メカニズムを調べたところ,本ヘテロ二糖は,GHファミリー18キチナーゼ(Pa-Chi)の作用によるキチンからジ-N-アセチルキトビオース [(GlcNAc)2] の生成,続いてCEファミリー4キチンオリゴ糖デアセチラーゼ(Pa-COD)の作用による(GlcNAc)2の還元性末端側の糖の脱アセチル化により生成することを明らかにした.二つの酵素を利用してキチンから(GlcNAc)2とGlcNAc-GlcNを量産するために,大腸菌によるリコンビント酵素の大量調製について検討した.KN1699株のゲノムから分泌シグナル配列を含む各ORFのクローニングを行い,プラスミドを作製した後,大腸菌に導入した.これを用いて各リコンビナント酵素(Pa-rChi, Pa-rCOD)の発現を行った結果,各酵素を大量に発現させ,さらに培養液中に効率的に分泌させることに成功した.続いて,これら2種のリコンビナント酵素を用いたオリゴ糖生産について検討を行った.その結果,Pa-rChi分泌組換え大腸菌を2%キチン含有培地で培養することで,粉末キチンから(GlcNAc)2を収率60%で生産することに成功した.さらに,Pa-rCOD分泌組換え大腸菌から調製した粗酵素溶液を用いて,(GlcNAc)2からGlcNAc-GlcNを高収率で生産することができた.今後は,生産したGlcNAc-GlcNの機能性について解析する予定である.
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