Journal of Applied Glycoscience
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55 巻, 4 号
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Regular Papers
  • 峯尾 仁, 金澤 匠, 森川 奈央, 石田 京, 近江 沙矢子, 町田 絢香, 野田 高弘, 福島 道広, 知地 英征
    2008 年 55 巻 4 号 p. 203-209
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    小腸と膵臓の消化酵素の適応について,異なる種類のデンプンを摂取させたラットで検討した.オスのSD系ラット(6週齢)に,トウモロコシデンプン,またはリン含量の異なる2種類のバレイショデンプンを含む3種類の飼料を摂取させた.小腸のスクラーゼ,マルターゼおよびラクターゼ活性と,膵臓のアミラーゼ活性の変化を飼料摂取後1,3,5週目に測定した.十二指腸のスクラーゼおよびマルターゼ活性は三つのデンプン群間で有意な差異を生じたが,ラクターゼ活性は差異を生じなかった.空腸と回腸の二糖類分解酵素と膵臓のアミラーゼ活性は,3群間で差異はなかった.以上のように,異なるタイプのデンプンに対する二糖類分解酵素の適応は,十二指腸でのみ局所的に生じ,それより下位の小腸部位では生じなかった.
  • 柳下 隆弘, 伊藤 浩一, 遠藤 繁, 高橋 幸資
    2008 年 55 巻 4 号 p. 211-216
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    澱粉とアミノ酸を加熱し,メイラード反応により20種類のアミノ酸複合澱粉を創出した.負の正味電荷をもつグルタミン酸,正の正味電荷をもつリシンと複合した澱粉は,正味電荷が0のアミノ酸との複合澱粉に比べ,顕著な糊化温度の上昇,糊化粘度および膨潤の減少が認められた.これらの電荷をもつ複合澱粉の糊液は,膨潤粒が存在することから自由水と同様に容易に水分が蒸発したが,荷電アミノ酸複合澱粉ゲル中の水は,他のものより著しく横緩和時間(T2)が短くなり,このことは,澱粉性食品にドライな食感をもたせるような改質に貢献しうる.
  • 南条 文雄, 御藤 慶一, 岡 ひとみ, 村松 久司, 加藤 伸一郎, 永田 信治
    2008 年 55 巻 4 号 p. 217-224
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    シクロイヌロオリゴ糖生成酵素を生産する土壌細菌を単離しPaenibacillus polymyxa MG-CF6 と同定した.本菌株が生成するシクロイヌロオリゴ糖生成酵素を培養上清液からSDS電気泳動で単一バンドになるまで精製した.本酵素の分子質量は128kDa,至適pH7.0,至適温度40℃であった.また,本酵素のpH安定性は6.0-9.0,温度安定性は40℃以下であった.本酵素は,シクロイヌロヘキサオースとシクロイヌロヘプタオースを2.5:1の比率で生成した.本酵素のN-末端アミノ酸配列は,Bacillus macerans CFC1およびBacillus polymyxa MGL21の生産するシクロイヌロオリゴ糖生成酵素のアミノ酸配列の一部分と完全に一致した.さらに,本酵素の遺伝子配列を解析したところ,本酵素は3999のヌクレオチド配列にコードされた1333残基のアミノ酸からなるタンパク質であることが明らかになった.本酵素のアミノ酸配列を既知の酵素のアミノ酸配列と比較したところ,本酵素はBacillus circulans MCI-2554,Bacillus macerans CFC1およびBacillus polymyxa MGL21の生産するシクロイヌロオリゴ糖生成酵素のアミノ酸配列とそれぞれ83,95および98%の相同性を有することがわかった.
  • 大櫛 祐一, 坂本 正弘, 東 順一
    2008 年 55 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    ヤマブシタケ子実体の熱水抽出残渣に含まれるβ-glucanの抽出を,タンパク質分解酵素・キチン分解酵素を用いた酵素処理とマイクロ波照射により試みた.本研究では,4種類の酵素を単独あるいは組み合わせて用いた(Actinase E,Proteinase K,Chitinase-RS,Chitinase).初めに,単一の酵素を用いて処理を行った結果,Actinase Eを用いたときに最もglucanの抽出効果が高かった(5%水酸化ナトリウムによって抽出されるglucan量の52.5%に相当した)(Table 1).抽出物の分子量分布は,タンパク質分解酵素を用いた場合とキチン分解酵素を用いた場合では異なっており,キチンを分解した場合に得られる抽出物では,5%水酸化ナトリウム抽出物の分子量分布と似ていた(Fig. A,B).次に,タンパク質分解酵素とキチン分解酵素を同時に用いる処理を行った.その結果,Proteinase KとChitinaseを同時に用いた場合に最もglucanの抽出効果が高く,その抽出量は5%水酸化ナトリウムによって抽出されるglucan量の95.5%に相当した(Table 1).抽出物の分子量分布から,5%水酸化ナトリウムを用いた抽出よりも酵素処理を行った方が,glucanをより高分子の状態で抽出できることが示唆された(Fig. 1C,D).この酵素処理によって得られる(1→3;l→6)-β-D-glucanの構造は,5%水酸化ナトリウムにより抽出される(1→3;1→6)-β-D-glucanの構造とは異なっており,(1→3)結合に富んでいる後者に対し,前者は(1→6)結合に富んでいた(Table 2,Fig. 2).これは,酵素処理-マイクロ波照射によるアルカリ抽出とは異なり,タンパク質-キチンネットワーク内に存在していた(1→6)結合に富む(1→3;1→6)-β-D-glucanが抽出されたためであると考えられる.
  • 大櫛 祐一, 坂本 正弘, 東 順一
    2008 年 55 巻 4 号 p. 231-234
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    前報(Ookushi et al.: J. Appl. Glycosci., 55, 225-229 (2008))に引き続いて抽出方法を検討した結果,ヤマブシタケ子実体に含まれるglucanの92.7%を抽出することに成功した.その内訳は,42.3%がアルカリ抽出,17.7%が酵素処理-マイクロ波照射,10.7%が再度アルカリ抽出によって抽出された(Table 1).残りの22.0%はマイクロ波加熱熱水抽出により抽出される水可溶(1→3;l→6)-β-D-glucanである(Ookushi et al.: J. Appl. Glycosci., 53, 267-272 (2006)).熱水抽出残渣に含まれるglucanの構造をメチル化分析により解析した結果,全て(1→3;1→6)-β-D-glucanに属し,次の三つの異なった存在形態を有していることが明らかとなった.(1)水素結合により強いネットワークを形成している(1→3)結合に富んだタイプ,(2)タンパク質・キチンと複合体を形成している(1→6)結合に富んだタイプ,および(3)タンパク質・キチンと複合体を形成している(1→3)結合に富んだタイプであった.
報文
  • 小役丸 孝俊
    2008 年 55 巻 4 号 p. 235-244
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    メイン部とキャリヤー部からなるいわゆるスタインホール型(SH)段ボール製造用澱粉接着剤の高速接着時の必要物性を明確にするために,85℃で高濃度澱粉糊化液のせん断ひずみ初期のせん断弾性率,最大せん断応力値,せん断応力パターンと粘度をトウモロコシ,ハイアミローストウモロコシ(ハイロン-5),ワキシートウモロコシ,小麦,馬鈴薯,甘藷,タピオカの7種の澱粉について測定した.7種澱粉懸濁液糊化液の物性は澱粉種により大きく異なり,これら懸濁液糊化液と,7種の各澱粉をメイン部に使用してキャリヤー部にトウモロコシを用いたSH接着剤糊化液との85℃での物性比較から,SH接着剤の糊化液物性はメイン部澱粉懸濁液糊化液物性を大きく反映し,キャリヤー部糊化澱粉水溶液の添加はこれらの物性を増強した.せん断弾性率と最大せん断応力値は澱粉種により差異があった.また,澱粉濃度の増加により,85℃7種澱粉懸濁液糊化液の各せん断弾性率と最大せん断応力値は指数関数的に増加した.さらに,糊化液のせん断弾性率が表す弾性と最大応力までのひずみ量が表す柔軟性や流動性は個々の澱粉種により澱粉濃度増加による変化が特徴的に異なり,四つのタイプに分類された.弾性率が高い順序と最大応力までのひずみ量が小さな順序で整理すると,弾性率が高く最大応力までのひずみ量が少ないハイロン-5と,弾性率がやや高く最大応力までのひずみ量がやや少ない小麦・トウモロコシと,弾性率がやや低く最大応力までのひずみ量がやや大きな馬鈴薯・甘藷・タピオカと,弾性率が低く最大応力までのひずみ量の大きなワキシーと異なる四つのタイプに分類された.その結果,SH澱粉接着剤糊化液物性は使用する澱粉種によりその物性が異なることがより明白となった.また,弾性率は糊化澱粉粒の形状保持が良いハイロン-5や地上澱粉で高くなり,最大応力までのひずみ量はワキシーや地下澱粉で大きくなった.しかしながら,7種澱粉をメイン部に用いるSH接着剤にて片段試料と表ライナー原紙を170℃のホットプレートで加熱貼合して,ただちに剥離した際の初期接着性には,澱粉種による大きな相違はなかった.これらのことから,初期接着性には澱粉接着剤糊化液の澱粉粒構造の存在や弾性率の高さや最大応力値が最も優先する条件ではないと考えられた.
  • 小役丸 孝俊
    2008 年 55 巻 4 号 p. 245-254
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    スタインホール型(SH)段ボール製造用澱粉接着剤の高速接着時の必要物性を明確にするために,苛性ソーダ濃度を変えたトウモロコシ,ハイアミローストウモロコシ(ハイロン-5),ワキシートウモロコシ,小麦の高濃度澱粉糊化液について,85℃でせん断ひずみ初期のせん断弾性率,最大せん断応力値,せん断応力パターンと粘度を測定した.苛性ソーダ濃度変化による4種澱粉懸濁液糊化液のレオロジー物性の変化は,弾性率と最大応力に達するまでのひずみ量との組合せで整理すると,三つのタイプに類別された.ワキシーでは苛性ソーダ濃度が変化しても最大応力ひずみ量は9.6-10.8程度と大きく,弾性率は0.4kPa以下に低くなり,ハイロン-5では最大応力ひずみ量が0.7以下に少なく,弾性率は4kPa以上に高いレベルとなった.一方,トウモロコシと小麦では,苛性ソーダ濃度が0.9%まで増加するに従って,弾性率は6.8kPaから0.3kPaまで顕著に減少し,最大応力ひずみ量は0.3から3.8まで大きくなった.同様に,トウモロコシと小麦のSH接着剤糊化液でも,苛性ソーダ濃度の増加に従って弾性率が低くなり最大応力ひずみ量が増加した.苛性ソーダ濃度の増加に従ってSH接着剤糊化液は弾性体から流動体としての性質が強まったが,これらのSH接着剤を用いて片段試料と表ライナー原紙を170℃のホットプレートで加熱貼合して,ただちに剥離したときの初期接着性は,苛性ソーダ濃度に最適値があった.電顕観察によると初期接着時に強制剥離した接着剤凝集破壊部では,苛性ソーダ濃度の増加と共に次第に澱粉粒が膨潤して形状が不鮮明となったが,初期接着性の向上は,苛性ソーダ濃度が低く粒形状が鮮明な場合にも,苛性ソーダ濃度が高くて粒形状の痕跡もなく接着剤部が平坦に一体化した場合にもみられなかった.初期接着性最適苛性ソーダ濃度での糊化状況は粒形状が不鮮明な膨潤粒痕跡となる程度であり,初期接着性には澱粉粒間にキャリヤー部澱粉が介在するだけではなく,澱粉粒間での癒着融合が起こると共に,接着面積を増加する適度な流動性とある程度の弾性率の高さとのバランスが重要と考えられた.
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