北海道の5カ所の農業試験機関より,馬鈴薯品種生産力検定試験収穫物の提供を受け,これより澱粉を採取し,澱粉の粒径分布,灰分および無機物組成,粘度特性などを測定し,主として現行8品種について比較検討した。 1.粒径分布を測定するため簡易に4分画し,粒径分布の傾向がさほど大きく変動せず,大粒子の割合に大きな差が現われるところから,大粒子割合を比較した。その結果,ビホロ,紅丸より採取した澱粉には大粒子が多く,シレトコ,男爵薯,農林1号から採取した澱粉には少ないことが判った。 2.澱粉の灰分含量について,試験地の比較では士別,芽室産の試料は一般に灰分含量が高く,斜里産試料は中間で,中標津,島松産試料は低灰分であった。品種の比較では農林1号,紅丸などは灰分含量:が低いが,タルマエ,エニワなどは検査規格0.2%を上回る例が多かった。この灰分含量の高低と馬鈴薯の澱粉含有率や成熟期との相関は認められなかった。 無機物組成ではリン酸,カリ含量が多く,マグネシウムが次ぎ,カルシウム含量が少なかった。灰分とリン酸含量には密接な関係が認められた。 3.粘度特性では士別,芽室産の試料の最高粘度値が高く,中標津,島松産試料は低い傾向が認められた。品種では農林1号,紅丸の澱粉は最高粘度値が低く,エニワ,タルマエの澱粉は高い傾向を示した。最高粘度値の高い試料は概して糊化開始温度が高く,最高粘度到達温度が低い傾向がみられた。また灰分含量と最高粘度値にはある程度の関係がみられた。
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