地熱資源の要素は.熱.流体.き裂である.しかしながら.き裂には.性質の異なる二つの役割がある.その一つは.地熱貯留層内に存在する大小さまざまな大きさのき裂の全てが.一つの集合体として.深部にある熱源からの効果的な熱輸送を司る自然対流の発生のために必要な透水性に寄与することである.もう一つは.ある程度以上の大きさの透水性を持つき裂が.貯留層と坑井をつなぐ.坑井への流体の流入・出のための流路となり.地熱流体の生産・還元に寄与することである.このような貯留層内の透水性のため.貯留層内の圧力分布はほぼ一様である.また.貯留層内に発達する自然対流のため.貯留層圧力の垂直勾配は超静水柱圧状態である.
静止状態の坑井内温度から.ここでは.葛根田地熱貯留層内に発達する自然対流の上昇流の流速を推定した.さらに.その結果と開発前の貯留層圧力勾配に基づき.貯留層内の垂直方向の浸透率を推定したところ.約10
-14m
2となった.ここではまた.透水性の良いき裂に遭遇しなかった葛根田地域の坑井に対して.き裂透水性の改善を目的として水圧破砕を実施した.水圧破砕実施中ならびに終了後に実施した温度・スピンナー検層により.この水圧破砕によって.当初の予定通りの深度に良好な透水性を持つき裂が開口したことが明らかになった.注水終了後に実施したフォールオフテスト結果から本坑井のkh(浸透率・有効層厚積)は40×10
-12m
3であることが明らかになった.この結果を.スピンナー検層により明らかになったき裂ゾーンの厚さである15mで割ると.き裂ゾーンの浸透率は2.7×10
-12m
2と推定される.この結果は.上に述べた.貯留層内の自然対流現象を解析して得られた値に比べ約300倍大きい.
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