地下水学会誌
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47 巻, 2 号
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  • Kazi M. U. AHMED, 西垣 誠, Ashraf M. DEWAN
    2005 年 47 巻 2 号 p. 163-179
    発行日: 2005/05/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地下水は,バングラデシュが社会経済的に発展していく上で非常に重要である.人口の97%に安全な飲料水を供給し,自給に十分な米を国内生産している現状は,地下水を有効利用できている二つの成功の証といえる.利用が容易で水質が良好であること,そして安価な開発を可能にした技術により,国中で地下水の取水が盛んとなり,過去30年にわたって取水量は増え続けた.この増加傾向は,これから数年先まで変化しないものと思われる.90%以上の飲料水と70%以上の灌概用水が,完新世の未固結堆積物と鮮新世のDupi Tila帯水層から供給されている.
    国内の至る所で,地下水の利用を妨げる数多くの制約が存在する.推奨値を越える濃度のヒ素,過剰な鉄とマンガン,海岸部周辺及び内陸部の数箇所での高濃度塩化物,地下水位の低下,礫の存在,生物起源のメタンガスの存在,他の様々な汚染源による汚染といった要因が,バングラデシュ国内の地下水取水の主な制約となっている.
    地下水に大きく依存しているにもかかわらず,地下水の管理は適切に行われていない.地下水の開発には多くの政府機関が関わっている.総合的な地下水管理を確実なものとするために,多くの戦略や政策も整っている.しかしながら,国の定める水質基準や地下水法のように鍵となる法体系が欠如していることが,政策を実行する上での制約となっている.国立の地下水開発・管理機構(National Groundwater Development and Management Authority)と,地下水研究に関するアジア国際センター(Asian/International Center for Groundwater Studies)が,国内の地下水開発を適切に確保するための非常に重要な機関である.現在の地下水に対する認識の欠如は克服されなければならない課題であり,持続可能な発展を可能にする総合的な水資源管理を実施するという目標を確実なものとするよう,人々に地下水へ積極的に関わってもらわねばならない.
  • 浦越 拓野, 徳永 朋祥, 茂木 勝郎
    2005 年 47 巻 2 号 p. 181-197
    発行日: 2005/05/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    海底地下水湧出現象は,陸域水循環系の出口のひとつとして,また,陸域起源物質の沿岸域への供給経路のひとつとして重要である.海底地盤中の地下水流れのポテンシャル場や水理特性は,海底地下水湧出現象を規定する要因であり,これらを明らかにすることは,海底地下水湧出現象を理解する上で重要である.そこで,本研究では,海底地盤中の2深度での間隙水圧の長期連続測定から,鉛直間隙水圧分布と水理特性を評価する手法の開発を行い,海底地下水湧出の存在が知られている黒部川扇状地沖合に適用した.その結果,海底面下0.5m及び0.84mでの間隙水圧が静水圧よりそれぞれ0.23kPa及び0.63kPa程度高いことが明らかになった.また,波浪に対する間隙水圧の応答から,地盤のhydraulicdiffusivityが0.3-1.2m2/sと評価された.これらから,海底地下水湧出の流束は1.8×10-6-5.6×100-5m/sと推定された.
  • 自然減衰促進効果および地下水質の長期モニタリング
    中島 誠, 武 暁峰, 茂野 俊也, 西垣 誠
    2005 年 47 巻 2 号 p. 199-215
    発行日: 2005/05/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地下水中塩素化脂肪族炭化水素(CAHs)の自然減衰促進(ENA)手法として徐放性水素供給剤を約1年毎に注入することによりバイオバリアを設置し.ENA手法としての適用性を自然減衰促進効果および地下水質の約3年間にわたる長期モニタリングを行い考察した。
    バイオバリア設置による効果として.CAHs総モル濃度が低下し.その一部がエチレンまで完全分解していること.自然状態に比べて各CAHの一次分解速度定数が大幅に増加し.その値は水素供給剤注入からの時間の経過とともに安定してきていることが把握された。また.2回目水素供給剤注入以降の地下水質維持期には.pH.DO.ORPの変動が小さくなり.硫酸イオンの還元が見られなくなる等.1回目水素供給剤注入後の地下水質変動期とは異なる地下水質の傾向を示すことが把握された。
  • 微生物環境の変化と脱塩素化メカニズムについて
    中島 誠, 武 暁峰, 茂野 俊也, 染谷 孝, 西垣 誠
    2005 年 47 巻 2 号 p. 217-233
    発行日: 2005/05/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地下水中塩素化脂肪族炭化水素(CAHs)の自然減衰促進(ENA)手法として徐放性水素供給剤を用いたバイオバリアを設置し.CAHsの自然減衰効果を約3年間にわたってモニタリングするとともに.微生物生態学的試験により微生物環境の変化を測定した。
    微生物環境の変化としてバイオバリアの設置による微生物群集構造の変化とプロテオバクテリアβ.γ両サブクラスの優占化およびバイオバリア設置微後の時間の経過に伴う微生物群集構造.優占生物種の変化が観察された。微生物群集構造の変化はバイオバリアの作動状況等よりも自然環境の変化等の影響を強く受けていると推定され.CAHsの分解に強く関与すると考えられているDehalococcoides属細菌の検出状況の変化に関わらずCAHsの分解が認められていることから.未知の細菌がCAHsの分解に関与していることも推定された。
  • 大橋 伸行, 広城 吉成, 堤 敦, 神野 健二, 新井田 浩
    2005 年 47 巻 2 号 p. 235-251
    発行日: 2005/05/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    九州大学では現在.福岡市西部元岡地区の丘陵地に新キャンパスを建設中である。この丘陵地の麓の土地利用は民家.施設園芸.水田.畑であり.生活用水.施設園芸用水.さらには酒造業務用水として地下水が利用されている。特に施設園芸用の取水井は地下水の塩水化域に近く.塩水上の淡水レンズを揚水している取水井があることも観測されている。したがって.園芸用水の過剰揚水.さらには九州大学の新キャンパス建設に伴い地下水酒養量が著しく減少するようになれば.塩水侵入が助長される懸念がある。このため.現地の実情を事前に把握するために.地元の農業用水組合.関係自治体および九州大学とで構成する監視委員会を設置して観測を行っている。
    本報告ではこれまでに蓄積されたデータを整理すると共に.地下水取水や降水量等の変化に伴う淡水~塩水境界の挙動について考察を加えた。その結果.取水井によっては夏季に上昇する傾向が強いものの.電気伝導度は200~500μS/cmの範囲で変動し.塩分濃度が上昇しないように注意深く取水されている様子がうかがえた。また.地下水の取水井に近い観測井では.取水量の多い夏季に電気伝導度約20,000μS/cmの深度が上昇し.施設園芸の取水量の増加と連動する様子が観測された。一方.地下水の取水井から離れた観測井では.淡水~塩水境界が明瞭でその深度も安定していることもわかった。
  • 山中 勝, 奥村 維男, 中野 孝教, 島野 安雄
    2005 年 47 巻 2 号 p. 253-262_1
    発行日: 2005/05/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
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