地下水学会誌
Online ISSN : 2185-5943
Print ISSN : 0913-4182
最新号
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特集「水循環基本計画の下での地下水に関する取り組み」
資料
特集「地下水-地表水交流過程;その物質輸送および生態系への影響」
論説
  • 中山 忠暢
    2018 年 60 巻 2 号 p. 143-156
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    著者は地表水-地下水間での相互作用を考慮した統合型水文生態系モデルNICE(National Integrated Catchment-based Eco-hydrology)というプロセス型モデルを開発し,この相互作用が周辺域の水・熱・物質循環,生態系,及び生物地球化学へ非線形的に及ぼす影響を評価してきた。本稿では,釧路湿原,霞ヶ浦,首都圏,中国でのNICEの具体的な適用事例を通して,地表水-地下水相互作用が様々な側面から果たす役割を論説した。モデルを含む複数の手法の統合的利用を通したこの相互作用の時空間的な評価精度の更なる高度化によって,個別対応策では解決が困難であった複合的な環境汚染(水循環及び熱環境に及ぼす影響,物質循環及び植生変化に及ぼす影響,生物地球化学的循環に及ぼす影響)への対策に大きく寄与することが可能であると考えられる。

  • 川西 亮太, 井上 幹生
    2018 年 60 巻 2 号 p. 157-167
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    水域間のつながりを表す水文学的連結性は河川生態系を理解する上で重要な要素であり,魚類の生活史や生息環境にも密接に関連している。河川と海との縦断方向や河道と氾濫原や陸域とを結ぶ横断方向の連結性については魚類に対する意義が広く認識されている一方,河床の地下部(河床間隙水域)を介した河川表流水域と地下水域との鉛直的なつながりの重要性は理解が遅れている。そこで本稿では,魚類の生活史において,この鉛直的なつながりや河床間隙水域がどのような役割を果たしているのかを概説すると共に,著者らが対象としてきた底生魚ヒナイシドジョウでの事例を紹介する。また,今後の展望についても言及した。

  • 土原 健雄, 吉本 周平, 皆川 裕樹, 白旗 克志, 石田 聡
    2018 年 60 巻 2 号 p. 169-192
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    水循環を構成する重要な要素の一つである地表水と地下水の交流を扱う研究について,掲載論文数の推移,対象地やその地域的特徴,用いられる手法による分類から直近10年間の研究動向を紹介する。また,水文観測やモデル解析と同様,水文情報を提供し,地表水と地下水の交流を理解することを可能とする環境トレーサー法について,トレーサーの種類や対象スケールによる分類からその特徴を述べる。環境トレーサーを用いた研究は,広域の地域・流域レベルでの研究への適用が多いことが示された。一方で,河川間隙水域での交流のような局所的な現象に焦点を当てた研究が2000年代以降増加している。今後は,複雑な地表水と地下水の交流の水文過程を説明していく上で,異なる水文条件や試験地での環境トレーサーの適用の拡大,新たなトレーサーの現地適用,空間的・時間的スケールに合わせてトレーサーを選択し,適用する方法の構築が必要といえる。

論文
  • 久保 朋也, 笠原 玉青, 智和 正明, 大槻 恭一
    2018 年 60 巻 2 号 p. 193-203
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    渓流域に広がる河川間隙水域の有機物貯留量および分解を明らかにするために,渓流で優占するステップ地形に着目し,間隙水中の溶存有機炭素(DOC)と粒状有機物(POM)の濃度,堆積物中のPOM量から貯留量,生分解性溶存態有機炭素濃度(BDOC)と綿布分解速度から分解作用を評価した。河川水が流入するステップ上に拡がる河川間隙水域において,DOCとPOMの濃度が高く,BDOC濃度も高い傾向が見られたことから,貯留量が多く,分解速度も速いことが示された。また,間隙水中の有機物濃度は河川水に比べて高く,出水時に間隙水域に流入したPOMからDOCが溶出していることも示唆された。

  • 吉岡 有美, 伊藤 真帆, 中村 公人, 瀧本 裕士, 土原 健雄
    2018 年 60 巻 2 号 p. 205-221
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/08/31
    ジャーナル フリー

    石川県手取川源流部における地すべり性斜面崩壊により2015年5月以降に生じた河川での濁水流下と,これと同時期に生じた扇状地内での地下水位低下を契機とし,河川水―地下水交流の量的変化が周辺地下水に与える影響評価を目的に,水文データの整理,地下水と地表水の酸素・水素安定同位体比の観測を行った。斜面崩壊後,手取川河川水による涵養に減少傾向がみられたが,河川流量減少が生じていたことから,濁水流下のみが要因ではないと判断した。手取川周辺扇央部の左岸域では河川水による涵養の減少に伴って相対的に田面水による涵養の寄与が増加,右岸域では河川水による涵養と田面水による涵養の減少により地下水位低下が生じたことが示された。

訪問記
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