地下水学会誌
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67 巻, 2 号
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特集「堤防浸透破壊」
論説
論文
  • 藤井 宏和, 榊 利博, 森 裕紀, 小松 満
    2025 年67 巻2 号 p. 151-166
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

     河川堤防の浸透対策工法の一つにドレーン工がある。本研究では,その機能が長期にわたって健全に保たれていることを把握するための手法として,光ファイバに沿った温度分布変化の連続的計測と光ファイバケーブルの加熱を組み合わせた方法であるaDTS(active Distributed Temperature Sensing)の適用を目的とした。加熱式光ファイバケーブルを堤体の縦断方向に敷設し,地中の温度変化から見掛けの熱伝導率を計測することで堤体内の流速を推定して目詰まりを検知する方法である。その基礎的な研究として,まず,水平一次元実験により堤体模型実験で使用するフィルター材を選定するとともに,見掛けの熱伝導率と実流速の関係を整理した。次に,小型堤体模型実験よりフィルター材の目詰まりの有無に対する見掛けの熱伝導率の変化を把握した上で,大型堤体模型実験でaDTSの適用性を検証した。その結果,aDTSによるドレーン工のフィルター材の目詰まり検知の可能性が示唆された。

  • 夏目 将嗣, 小高 猛司, 岡本 隆明, 李 圭太
    2025 年67 巻2 号 p. 167-181
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

     河川堤防や堰などの浸透による被災事例の多くは,地層境界等の透水性のギャップが大きい部分で発生するパイピング現象によるものであると考えられる。トリガーとなる水みちが如何にして発達し,パイピングへと至るのか解明することは,河川構造物管理や地盤工学において重要である。本論文では,屈折率マッチング法を用い止水矢板及び複層構造を有した堤体における浸透実験を行うことで,パイピング現象における水みちの発達機構について検討した。これまで可視化することが困難であった地盤内部を高精度に可視化し,地盤内の粒子挙動を追跡することでパイピング現象における地盤の微量な変形から水みち内部の流体挙動を示した。

技術報告
  • 新清 晃, 小西 千里, 佐藤 喜一郎, 阿部 知之
    2025 年67 巻2 号 p. 183-190
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

     ボイリングや噴砂といった現象は,堤防下部の透水層の分布状況やその上部を被覆する土層の厚さ等が深く関わることが知られている。このような河川堤防周辺の水理構造の把握には,連続的かつ効率的に調査できる牽引式電気探査が有効であるが,従来の牽引式電気探査では,浅部の分解能が低い課題があった。この課題を解決するため電極を新たに製作し,浅部の探査に特化した牽引式電気探査装置を開発した。開発した装置の概要を示すとともに,当該装置を十勝川および肱川の河川堤防に適用し,噴砂や盤ぶくれが発生しやすい特徴的な土質構造を連続的に把握できた事例を報告する。

  • 野村 竜矢, 柿原 結香, 石原 雅規, 佐々木 哲也, 伊東 理博, 田中 聖二
    2025 年67 巻2 号 p. 191-198
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

    肝属川水系姶良川を対象に,河川堤防の堤体内水位観測結果に基づいて浸透対策工を検討した事例を報告する。まず,2022年9月から実施している堤体内水位観測について,観測方法と結果を整理した。次に,2022年9月18~19日にかけて上昇した堤体内水位を浸透流解析にて再現できるように,堤体の飽和透水係数と不飽和浸透特性,基礎地盤の飽和透水係数を更新した。最後に,更新した土質定数を用いて浸透対策工を検討した。

  • 川尻 峻三, 古川 全太郎, 脇中 康太, 石藏 良平, 重枝 未玲
    2025 年67 巻2 号 p. 199-212
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

    From July 7 to 10, 2023, the activity of a stationary front intensified, prompting the issuance of the emergency warning for heavy rains in Fukuoka and Oita prefectures. In some observation points in northern Kyushu, the recorded rainfall reached the highest levels in history. As a result, the water levels of the Kose River, a primary tributary of the Chikugo River, rose significantly, causing flooding and inundation damage in surrounding areas due to overtopping and overflow. The authors conducted a comprehensive field survey around the affected river levees near the Kose River starting on July 16, 2023, approximately nine days after the disaster. The survey methods included meticulous on-site inspections and detailed aerial photography using UAVs. From the field survey, although the maximum river water level was observed, the damage to the levee was limited. This result suggests that rising water levels on the landside may affect the levee.

論文
  • 酒井 隆太郎
    2025 年67 巻2 号 p. 213-231
    発行日: 2025/05/28
    公開日: 2025/08/08
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究では,全国の湧水・地下水に関する既存データを用いた地下水の水質形成過程を評価するための有効な調査・解析方法を検討した。湧水・地下水のHCO3-,SiO2,水温データを指標として,水質形成過程の特徴を調査するとともに地球化学計算コード(PHREEQC)による解析によって,実測データとの比較・検討を試みた。その結果,地質が花崗岩の場合,主に斜長石と炭酸塩鉱物の溶解が,火山岩類の場合は斜長石とシリカ鉱物の溶解が水質形成に関わっている可能性が示された。また,地質が堆積岩の地域では花崗岩と火山岩との中間的な地下水組成を示し,水源となる多様な地質の種類が水質形成に影響を及ぼしている可能性が示唆された。石灰岩,中・古生層,変成岩・蛇紋岩地域では,斜長石の溶解は少なく,炭酸塩鉱物やブルーサイト等の溶解が関係していることが示された。湧水・地下水のSiO2と水温との関係の検討からは,地下水流動過程において水温上昇を伴いつつ,斜長石等の溶解が進むケースとほとんど水温変化無しに溶解が進むケースとがある可能性が示された。

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