老年看護学
Online ISSN : 2432-0811
Print ISSN : 1346-9665
23 巻, 1 号
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巻頭言
特集1「老人看護専門看護師の活動紹介;6つの役割について」
特集2「高齢者の服薬管理」
原著
  • 沢田 淳子
    2018 年 23 巻 1 号 p. 52-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究は混合研究法に則り,「特別養護老人ホーム(以下,特養)における看護職であるケア管理者のケア管理能力自己評価票」を開発することを目的とした.質的手法で作成した自己評価票原案について,実践者・専門家による検討およびプレテストを行い,その後,全国の特養の看護師であるケア管理者3,000人を対象に質問紙調査を行い,信頼性・妥当性を検討した.その結果,自己評価票は《ケアマネジメント向上に取り組む能力》《特養の機能発揮への体制を整備する能力》《看取りの体制を整備する能力》《暮らしの継続を保障する体制を整備する能力》などの7つの能力,42評価項目で構成された.全体のCronbach α係数は0.974であり信頼性が確認され,確認的因子分析により内容妥当性および構成概念妥当性が確認された.自己評価票は特養の課題や役割拡大への対応,取り組むべきケア目標実現への能力を示しており,実践を評価項目と照らし合わせて評価し,自己成長につなげる指標として活用でき得る.

資料
  • 牧野 公美子, 杉澤 秀博, 白栁 聡美, 内藤 智義
    2018 年 23 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究は,日本における家族による代理決定の研究動向と今後の研究課題について,高齢者の終末期医療に着目して明らかにすることを目的とした.検索文献のうち適合基準を満たした39文献が分析対象となった.最も古い文献の発行年は2000年で,2006年以降は毎年報告されていた.方法論は「質的研究」,研究デザインは「記述的研究」,分析方法は「質的帰納的分析」と「記述統計」,研究実施場所は「病院」がそれぞれ最も多かった.調査対象別の文献数は,「家族・遺族」群が約半数を占めた.既存研究の結果は,【代理決定に伴う家族の心情】【家族の代理決定プロセス】【家族に対する専門職の代理決定支援】【家族による代理決定に対する看護師の認識】【代理決定に対する高齢者の思考】【立場による終末期医療への意向の相違】の6つのカテゴリーに要約された.今後は,代理決定者となる家族の心理的負担の軽減に資する介入研究等への進展が期待される.

  • 山口 初代, 大湾 明美, 佐久川 政吉, 田場 由紀, 砂川 ゆかり
    2018 年 23 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,地域包括ケアシステム構築を見据えて,その一助となるよう,沖縄県小離島のA島における高齢者の多様な地域活動への参加と相互扶助との関連性を検討することである.A島在住の全高齢者320人を対象に,質問紙による個別面接調査を実施した.有効回答は73.4%(N=235)であり,二変数関連分析,二変数相関分析,および分散分析を行った.地域活動への参加は,地域活動15項目への参加の有無をたずね,信頼性の検定後,「参加している地域活動項目数」について,「低群」「中群」「高群」の3段階に分け,尺度得点とした.相互扶助は,支援の有無と,依存の有無との組み合わせから,「①非支援・非依存」「②非支援・依存」「③支援・非依存」「④支援・依存」の4類型に分けた.相互扶助の類型と「参加している地域活動項目数」尺度得点の平均値に有意差がみられた.「③支援・非依存」「④支援・依存」の類型は,「①非支援・非依存」「②非支援・依存」の類型より,「参加している地域活動項目数」の尺度得点の平均値が有意に高かった.そのため,高齢者の地域活動への参加と高齢者による支援を一体化させるような地域活動を提案していくことが有効であろうと示唆された.

  • 港 美由紀, 小松 美砂
    2018 年 23 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究は一般病棟の看護師が実際に行っているアセスメントの内容を明らかにすることを目的とした.一般病棟の看護師7人に半構成的面接を行った結果,8カテゴリーと30サブカテゴリーが抽出された.看護師は【認知症高齢者の表情や言動の変化の把握】【認知症高齢者の身体状況の変化の把握】【認知症高齢者の日常生活活動の変化の把握】【認知症特有の行動症状の有無や程度の把握】といった本人の状態に着目しアセスメントしていた.また,【声かけやタッチングによる痛みの部位や程度の把握】【鎮痛剤の使用による痛みの変化の評価】といったアセスメント方法を用いるだけでなく,【認知症高齢者が信頼する身近な人との情報共有による痛みの評価】【看護師間の情報共有による痛みの評価と発現の予測】といった情報共有によりアセスメントを行っていた.これらの結果は認知症高齢者の痛みをアセスメントするうえで活用できると思われる.

  • 梅垣 弘子
    2018 年 23 巻 1 号 p. 94-102
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,遷延性意識障害高齢者のプラスの反応を引き出すケアの構成要素と,看護師としての変容過程を明らかにすることである.方法は参加観察と半構造化面接による質的帰納的研究である.対象は,職務経験9年以上で遷延性意識障害患者看護の経験が3年以上の看護師8人を対象とした.その結果,遷延性意識障害高齢者のプラスの反応を引き出すケアの構成要素は[きっかけを仕掛けて反応を待つ][わずかな反応から推測する]【意思や感情を代弁し交流する】[新たな反応を家族やスタッフと共有し巻き込む][家族の関心をつなぎとめる]であった.また,看護師は[義務的・機械的に看護する]時期があったが,[自己嫌悪を機に見つめ直す]ことで[人生経験,看護経験を手がかりに関わる]ようになり,患者や家族の力を目の当たりにして【患者の力をこの瞬間も信じる】ようになっていた.そしてこの関わりのなかで見つけた[ささやかなやりがいを支えにする]ことによって実践し続けてきた変容過程が明らかになった.

  • 松井 美帆
    2018 年 23 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,関東圏6病院における高齢者看護の実践状況と看護実践の卓越性との関連を明らかにすることを目的とした.病棟看護師を対象に,高齢者看護の質指標15領域72項目と看護実践の卓越性自己評価尺度を用いた無記名の質問紙調査を行い,101人より回答を得た.清潔ケア,口腔ケア,身体抑制領域で50%以上がよく行っていると回答していた項目がみられた.一方,包括的アセスメント,認知症ケア,尿失禁,疼痛マネジメント領域では実施割合の低い項目があった.さらに,すべての領域において看護実践の卓越性自己評価尺度との関連を認め,褥瘡予防領域と「医療チームの一員としての複数役割発見と同時進行」,せん妄および身体抑制領域と「患者の人格尊重と尊厳の遵守」において相関がみられた.基本的なケアが行われている一方で,認知症など高齢者特有のケアに対する実施割合が低いことから,今後も高齢者看護の質向上を目指した実践と評価を行っていく必要がある.

  • 仙波 雅子
    2018 年 23 巻 1 号 p. 111-120
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,下肢の整形外科高齢患者が療養環境に持ち込む特別な物とその意味を明らかにし,Csikszentmihalyiらの家庭にある特別な物とその意味分類との対比を行うことである.結果,本研究の研究対象者では,Csikszentmihalyiらの5カテゴリーと関連づけられた11の意味分類が抽出された.《精神的安定をもたらす物》として【思いやりを感じられる物】【癒しや励みになる物】【外部とのつながりをもてる物】の3つの意味分類,《家庭での生活を継続できる物》として【入院生活でも行える自宅で使い慣れた物】【睡眠を助ける物】【清潔を保てる物】【過去の入院から持ち続けた物】【手づくりの物】の5つの意味分類,《状況の把握と運動制限を補うための物》として【疼痛や可動域制限を補うための自助具】【体動制限時,物の位置や状況を把握できる物】【夜間,物の位置や時間を把握できる物】の3つの意味分類であった.以上より,入院時の準備段階から疾患や入院生活の特性に合わせた情報提供を行い,療養環境を整えるための看護支援を行う必要性が示唆された.

実践報告
  • ケア体験終了時のカンファレンス内容の分析より
    小山 尚美, 流石 ゆり子, 渡邊 裕子
    2018 年 23 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

     急性期病院の看護師を対象に介護保険施設での「認知症ケア体験研修」を開催し,研修で得た学びを明らかにすることを目的とした.対象者10人の研修終了時のカンファレンスの逐語録を分析した結果,197のデータから51コード22サブカテゴリーが形成され,【その人の不安な思いをとらえ安心につなげる援助の重要性】【その人を多面的にとらえた個別性のある看護の重要性】【その人らしい生活を継続するための連携の必要性】【医療者主体の思考を再考する機会】【高齢者の特徴を意識した身体合併症予防の関わりの必要性】の5カテゴリーに集約された.急性期病院看護師が介護保険施設という生活の場で認知症高齢者のケアを体験することは,認知症ケアに関する実践的な知識を習得し,急性期病院における認知症高齢者へのケアを再考する機会となることが示唆された.今後は,急性期病院における体験研修での学びの活用状況と関連要因を明らかにしていく必要がある.

委員会報告
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