本稿は2013年以降に筆者が実施した「カナダの農村空間の商品化」と「日本農業の存続・発展戦略」,「日本の農業地域区分」という三つの研究課題に関する調査・研究の体験を通して,フィールドワークに基づく農業・農村地理学の手順と方法を再考した。三つの研究課題に関する調査・研究は相互に密接に関連しており,それぞれ「伏線」,「着想・準備」,「実行」,「反復」,「展開」の5段階を踏んだことが確認できた。研究を持続するには, フィールドで考えフィールドから発想するという基本的な姿勢が不可欠である。外国との比較,応用的側面の導入,小地域での研究成果を広い地域の研究課題に広げること,長期にわたる調査・研究の継続の必要性がわかった。フィードワークの手順としては,既発表のものに加えて,研究者同士の連携や被調査者の人権への配慮,調査者と被調査者の良好な人間関係の確立とともに,研究成果の調査地域への還元が重要である。
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