日本在宅医療連合学会誌
Online ISSN : 2435-4007
1 巻, 2 号
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論文
原著
  • 柿田 尚子, 會田 信子
    2020 年 1 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    ジャーナル フリー

    指定介護老人福祉施設/特別養護老人ホーム(以下,特養)の入所者が医療機関に入院し終末期と診断された場合の終末期医療・ケア方針決定のプロセスにおいて,特養の看護責任者が認識している施設病院間連携に伴う困難と課題を明らかにした.全国特養の看護責任者 354 名を分析対象とし,2014 年に郵送質問紙法で実施した.提携病院よりも非提携病院に対して困難 ・ 課題と感じる割合が有意に多く,困難では医療処置困難(45.5%)や担当医連携(43.8%)などの順だった.課題では特養理解の差(79.7%)と医療依存度の弊害(71.8%)が 8 割近くを占め,医療機関に特養の実状を理解してもらう取り組みの必要性が示唆された.

  • 前川 一恵, 桑田 惠子, 星山 佳治
    2020 年 1 巻 2 号 p. 10-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    ジャーナル フリー

    [目的]在宅復帰を目指す高齢患者の摂食・嚥下機能の回復への看護援助の内容を明らかにする .

    [方法]地域包括ケア病棟に勤務する看護師 130 名を対象に , 摂食・嚥下機能の回復への援助 4 因子 43 項目に加えて , 在宅復帰に向ける食事への援助 3 因子 20 項目で構成した自記式質問紙調査を実施した .

    [結果]摂食・嚥下機能の回復への援助項目で実施割合が最も高かったものは ,「患者の覚醒状況の観察」(95. 0%)であった . 在宅復帰に向ける食事への援助項目では ,「入院前の認知機能の情報収集」(90.0%)であったが ,【 患者・家族への食事指導 】は 50%以下が 4 項目あった . 実施割合が低い項目は , 食具に関する援助項目と , 作業療法士への相談 , 食前の唾液腺マッサージや口腔内のアイスマッサージであった .

    [考察]患者の摂食・嚥下機能の回復を目指しては , 食具への知識や, 作業療法士との連携を増やす必要が示唆された. また, 高齢者が退院後も摂食・嚥下機能を維持していくためには , 患者・家族指導の実施割合を高める必要が考えられた .

  • 木村 琢磨, 野村 恭子, 川越 正平, 和座 一弘, 細田 稔, 新森 加奈子, 今永 光彦
    2020 年 1 巻 2 号 p. 18-26
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    ジャーナル フリー

    目的:「臓器・領域内科専門医」の「総合診療医」に対する理解度と「総合診療医」へのキャリア転向時における「在宅医療研修の必要性」の認識との関連性を明らかにする.

    方法:平成28年1 ~ 4月に「臓器・領域内科専門医」2,666名を対象に「総合診療医」へのキャリア転向に関する質問紙票調査を行った.質問紙票には,総合診療医の理解度スケール,在宅医療研修を重視するかについての項目などを含んだ.在宅医療研修を重視するか(重視群 / 非重視群)をアウトカムにロジスティック回帰分析を行なった.

    結果:有効回答は501名(回収率18.7%).多重ロジスティックモデルで 「総合診療医の理解度スケール」と「在宅医療研修を重視する」の間に有意な関連を認めた(調整オッズ1.06, 95%信頼区間:1.03 − 1.08, p< 0.0001).

    結論:「臓器・領域内科専門医」の「総合診療医」に対する理解度と「総合診療医」へのキャリア転向時における「在宅医療研修の必要性」の認識が関連していることが示唆された.

  • 島﨑 亮司
    2020 年 1 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    ジャーナル フリー

    【目的】小児・成人の在宅医療における入院回数と緊急入院時の判断過程を調査した.

    【方法】2018 年 1 月から 12 月までの 12 カ月間に在宅医療を行った小児 15 名,成人 77 名を後方的に調査した.

    【結果】小児では 13 名,合計 32 回(年間 2.13 回 / 人)の入院があった.成人では 13 名,合計 14 回(年間 0.16 回 / 人) の入院があった.緊急入院時の判断過程では,小児では家族の判断や訪問看護からの報告で緊急受診し入院となるケースが 50%認められ,成人より高率であった.

    【結論】成人に比べ小児では入院回数が多い傾向にある.緊急入院までの判断経過において成人に比べ小児では家族と訪問看護の判断が影響する傾向にある.

症例報告
  • 渡邉 淳子, 佐久間 詠理, 川内 潤也
    2020 年 1 巻 2 号 p. 35-39
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/29
    ジャーナル フリー

    大学病院入院中に,難治性がん疼痛に対しケタミンを使用し,疼痛管理を行った症例の在宅移行を 2 例経験した.2 例ともオピオイド抵抗性の疼痛があり在宅でケタミンを継続投与し中枢性の副作用もなく,疼痛コントロールは良好であった.2 例とも在宅医療開始時の予後は 1 ヶ月以内と厳しい状態の患者であった.ケタミンは NMDA 受容体拮抗薬であり,注射投与可能な数少ない鎮痛補助薬である.2007 年に麻薬指定を受け在宅では院外処方できないため,扱いが困難な注射薬である.ケタミン使用中の癌末期の患者の家に帰りたいという切なる願いを速やかにかなえるために,在宅緩和ケアに係わる医師は前もって麻薬免許を所持し,院内処方できる準備をしておくことが必要と考えられる.

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