米国において,学術分野としての高等教育,そして高等教育の専門学会としての米国高等教育学会(ASHE)はいかにして始まったのだろうか.学術分野としての高等教育が創始されたのは1893年に遡る.クラーク大学のG. Stanley Hall学長が最初の科目を教え,大学院学位プログラムを作ったのである.20世紀の米国高等教育の拡大により,今では4500もの大学が存在している.大学院学位を持った大学管理者や学生関係部門の専門職に対するニーズが,高等教育分野の成長を促し,約180もの高等教育学位プログラムを作り出した.2013年秋,この分野は120周年を迎えようとしている.
世界の大部分の国において,高等教育研究は比較的小さな領域である.多くの学者にとって高等教育研究を実施するのはまれなことであり,かつ彼らは自分自身を高等教育の専門家だとは思っていないため,高等教育研究のサイズと境界を明確に示すことは難しい.さらに,政策や実践と結びついているアナリストと学術研究者との間の境界線はあいまいであり,同様に,時折システム分析に関与するコンサルタントや実践家との境界線もあいまいである.分析の大部分は個々の国に焦点をあてておこなわれているが,たとえそうであるとしても,欧州の高等教育研究者の多くは比較分析に関心を持ち,インテンシブに共同研究をおこなっている.これは後に,1979年設立の欧州組織研究協会(the European Association for Institutional Research: EAIR)および1988年設立の高等教育研究者コンソーシアム(the Consortium of Higher Education Researchers: CHER)の基盤となり,さらにCHERには,欧州以外の大陸からも多くの学者たちが集っている.