高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
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特集 新たな大学像の模索
  • 日本の大学における教育的ICT活用の推進を巡る可能性と課題
    飯吉 透
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 11-31
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     過去20年以上にわたり,我が国の高等教育におけるICTの利活用が望ましい進展を遂げて来られなかった主たる要因は,「日本の大学やその他の教育機関が,高等教育においてICTを利用する必要性を見出せなかった」ことにある.本論文では,これまでの高等教育におけるICT活用の概観とコロナ禍下での実践経験を踏まえ,2050年に向けて展望しつつ,国内の少子化,国際化,リカレント教育,大学の連携・統合・合併等の喫緊の重要課題に対応するためのICT活用の可能性について考察する.さらに,多様な学生の主体的・個別的な学修を支援し,柔軟で拡張性のある教育プログラム・システムを構築・提供するために,国・地域・大学の各レベルで必要とされる方向性,実行可能な取組や戦略について提案をおこなう.

  • 学修成果の保証に関連して
    串本 剛
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 33-48
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,単位制度の実質化が学修成果を保証する手段になるとの立場から,関連の実証研究を踏まえた論点整理を行うことである.論点整理にあたっては,単位制度の実質化に関して3つの概念を区別する.①単位の実質化:授業科目レベルの論点として,授業外学修と学修成果の水準を取り上げる.②単位制の実質化:教育課程レベルの論点として,単位割当と履修登録上限に論及する.③単位制度の実質化:設置基準レベルの論点として,単位の定義と単位の授与について検討する.結論部では,オンライン授業拡大の影響に若干の考察を加えた上で,総括として,学修時間に基づく授業・課程設計の重要性を再度強調する.

  • コロナ禍で問われる大学の姿勢
    浜島 幸司
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 49-68
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     本稿は2000年代以降の大学生文化の蓄積(「生徒化」,「授業・出席・学内滞在時間」,「交友」,「部・サークル活動」,「アルバイト」,「読書」)を振り返り,学修成果よりも広範な「社会化」の側面から学生の成長を検討した.大学改革の影響で大学内の教育効果を優先する傾向となっているが,学生生活を全体的に見渡し,あらゆる事象を大学生文化として認識する必要がある.統計手法に基づいた定量情報だけでなく,参与観察(オートエスノグラフィー)を用いた質的情報も大学生文化を多角的に理解する材料になる.2020年のコロナ(COVID-19)禍において,各大学は大学生の意識と行動をつぶさに収集し,彼らのキャンパスライフに与える困難に対し,有効な支援を講じなければならない.大学生文化研究の蓄積および調査の果たす役割は大きい.

  • 堀 有喜衣
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 69-88
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     本稿はコロナ渦による新規大卒採用・就職への影響について展望した.新規大卒採用・就職の現状はコロナ特有というよりも雇用状況の変化を反映するものであり,未就職者が増加すれば大学教育のあり方に関する議論がいつものように再燃するだろう.他方で「ジョブ型」採用は途上にあり,従来の事務系/技術系の枠組みを曖昧に維持したまま,技術系のみを優遇するにとどまる.新規大卒男性を全員総合職として処遇する限り「ジョブ型」の普及・定着は難しいが,将来性はあっても職務も職場も無限定な「メンバーシップ型」ではないとされる「ジョブ型」への志向が労働社会の実態以上に生徒や学生において高まり,大学に対する期待にも影響を及ぼす可能性が指摘される.

  • 浦田 広朗
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 89-110
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症対策のためにキャンパスへの入構制限や授業のオンライン化がなされたことにより,授業料をはじめとする学生納付金の性格や水準が問い直されている.本稿では,大学学納金とその負担の推移を示しつつ,学納金が教育の対価として妥当な水準にあるかを大学財務データにより検討した.その結果,現状の大学学納金は教育費用に対応した水準にあるものの,家庭と学生本人に重い負担となっていることが明らかになった.入学者選抜における学力基準がなお強固であることもあって,家計は特に入学時には相当の無理をして学納金前払いに応じている.このような行動がみられるからこそ,公的負担の増額と大学の支出構成の見直しが求められる.

  • ポストコロナの国際教育交流を考える
    太田 浩
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 111-130
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     大学の国際化と国際教育は,学生の国際的な流動性を量的に拡大することで進展してきた.しかし,2020年初頭から始まった新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けて,越境を伴う学生の移動は休止している.本稿では,パンデミック以前の国際教育の状況と課題をレビューしたうえで,コロナ禍で急速に広がっているICTを活用した国際教育交流の手法や実践例を調べる.そして,ポストコロナにおける国際教育の可能性と方向性について考察する.渡航による環境への負荷も考慮すると,ニュー・ノーマルへの対応には,物理的な国際移動に頼らない新しい国際教育交流の様相が求められる.ポストコロナにおける大学の国際化についてどのような新機軸を打ち出せるかが,その国の高等教育の評価と魅力に大きな影響を与えるであろう.

  • 自主自律は守れるのか
    山本 眞一
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 131-151
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     本稿は大学という組織の未来を考えるに当たり,大学が引き続き自主自律の組織として存続するために,大学や大学教員が置かれた立ち位置の改善こそ最大の課題であると定め,現状に至る経緯の中に問題点を抽出し,その改善・改革のための方策を考察することを目的としている.1990年代以来の度重なる大学改革政策が大学に対して向けられ,その結果,認証評価の導入,国公立大学の法人化,教授会と学長に係るガバナンス改革など,これまでの大学運営とは異なる方向性が目立ち,意思決定もボトムアップからトップダウンへと変化してきている.また教員や職員の役割や数の現状にも問題がある.問題解決の展望を見出すには,政治から一方的に影響を受けるだけではなく,大学も政治・政策過程に向けて積極的な働きかけが必要と考えられる.

論稿
  • 性差に着目して
    久保 京子
    原稿種別: 論文
    専門分野: 論稿
    2021 年 24 巻 p. 155-174
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,Nature PhD Career Survey 2019を用いて大学院生における研究時間の長時間化の要因および長時間研究文化と教育/研究成果への満足度の関係の性差を明らかにすることである.本稿から得られた知見は以下の3点である.第一に,研究時間の長時間化は男女共通して長時間研究文化によって促進され,男性では若年者で促進され,女性では若年者や12歳未満の子どもを持つ学生で阻害される.第二に,長時間研究文化は女性の教育への満足度に負の影響を及ぼす.第三に,長時間研究文化は女性の研究成果への満足度に負の影響を及ぼし,長い研究時間そのものは男性の研究成果への満足度を高める.以上の知見から,自然科学系分野でみられる長時間研究文化は女子学生の教育/研究成果への満足度に不利に作用するといえる.

  • 薬学部の量的拡大がもたらした薬剤師就職の費用便益
    速水 幹也
    原稿種別: 論文
    2021 年 24 巻 p. 175-195
    発行日: 2021/08/10
    公開日: 2022/08/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,6年制課程薬学部に進学し薬剤師となることの私的収益率を,①性別・医療専門職別の比較,②女子のライフコース別の比較,③国家試験合格率と標準年限卒業率の反映,という3点を踏まえて算出した.
     その結果,薬剤師の収益率は男子では特に低いこと,女子については他の医療専門職より必ずしも高くないものの,ライフコース別の分析から相対的に有利な専門職であることが明らかとなった.また,国家試験合格率や標準年限卒業率を加味した分析では留年1回ごとに私立大学進学者では約1%ポイント収益率が低下することが明らかとなった.この背景として,入試難易度が影響し,収益率の低下は難易度が低い大学において顕著であり,薬学教育改革による修業年限の延長と量的拡大が要因として挙げられることを指摘した.

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