日本水文科学会誌
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40 巻 , 3 号
SPECIAL ISSUE "Sustainable groundwater management based on the regional hydrological cycle"
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
総説
  • 山田 中正
    2010 年 40 巻 3 号 p. 71-84
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
     国連総会の重要な任務の一つは,国際社会の正義と秩序のための法の支配を確立するために国際法の法典化を行うことである。国連国際法委員会は,その法典化のための基礎文書を作成する国連総会の下部機関である。同委員会は,越境地下水の法の条文草案を起案する作業を2002 年に開始した。筆者はこの事業の特別報告者に任命され,同委員会は2008 年にその最終報告を国連総会に提出することができた。国連総会は,2011 年にこの条文草案をどのようにして条約にするかを決定することとされている。ほとんどの国家が,隣国との間の越境地下水を持っている。地下水は,人類の生命維持に不可欠な資源であり,また他の代替物がないのに最もひどく掘削されている資源である。国際社会は越境地下水の適正な管理,環境保全,国際協力及び同一の地下水を共有する国家間の紛争解決のための法的規範の緊急な確立を必要としている。この論文は,問題の背景,条文草案がハイドロジオロジスト及び地下水行政官と協力して作成された経緯,条文草案の主な要素,各国の立場及び条文草案の将来の見通しを論じるものである。
  • 廣木 謙三
    2010 年 40 巻 3 号 p. 85-93
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
    地球上の有限な資源である地下水は,身近にある便利な水資源として活用されてきた。しかし,人口爆発や気候変動といった地球規模の変化が,既に有る地球上の地下水ストレスを拡大しつつある。統合水資源管理の概念を用いた地表水と地下水の統合は非効率な水利用を減らし,柔軟な水資源開発を行うことにより持続可能でより良い地下水管理を行うことが出来る。本稿では,地下水と地表水の統合管理のために必要な4 つのレベルにおける統合,すなわち法制度と政策面,計画と実施面,住民参加面,情報共有と公開面においてどのような具体的な統合を行い,どのような成果を期待できるかを概述する。また,こうした地下水の統合管理による国際貢献についても言及する。
  • 遠藤 崇浩
    2010 年 40 巻 3 号 p. 95-108
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
    地盤沈下は,東京,大阪,バンコクなどアジアの大都市で時間の遅れを伴って-経済成長の進展具合に応じて-繰り返し生じている。本論の目的は,タイのバンコクを事例に,地盤沈下対策における政府活動の必要性を明らかにし,その具体的役割を検討することである。そもそも,地盤沈下対策に政府が必要となる理由は,地盤沈下が集合行為問題の様相を呈し,民間部門における自発的な協働では解決が期待しにくいためである。特にバンコクにおいては,集団規模,沈下の速度,上水道建設の費用の高さといった要因が自発的協働による解決を困難ならしめた。バンコクでの地盤沈下の鎮静化にあたって政府が果たした役割とは,(1)地下水法を制定し地下水採取に許可制を導入したこと,(2)モニタリングに基づく地下水規制区域を策定したこと,(3)地下水採取に対して料金制度を導入したこと,(4)上水道網を整備したこと,に大別される。要約すれば,地下水の汲み上げを規制すると同時に,その代替物を提供することによって,地下水から地表水への水源転換を促したことといえる。
  • 長瀬 和雄
    2010 年 40 巻 3 号 p. 109-120
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
     今日,世界の多くの国々では,安全な水道水を利用できない時代である。年降水量の平均値が高い日本は,降水と地下水に恵まれた国であると言える。我々日本人は注意して地下水を飲用してきたが,日本は地下水管理の面で決して先進国とはいえない。本稿では,神奈川県秦野市を地下水管理の成功例として取り上げ,その地下水管理の方針を示す。秦野市ではこれまで長年にわたって神奈川県温泉地学研究所及び秦野市が研究活動と行政を通して地下水の管理の方法を開発してきた。地下水は土地と深く結びついていて,その管理にはそこに生活する人々の意志が十分反映されなくてはならない。もし我々が地域の水循環や環境をもっと詳しく調べれば,効果的に地下水を利用することができる。
  • 的場 弘行
    2010 年 40 巻 3 号 p. 121-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
     熊本市は73 万市民の水道をすべて地下水で賄う全国でも稀な都市である。11市町村にまたがる広域の地下水域の下流に位置する熊本市は,近隣自治体や関係機関と連携し,地下水の保全政策を立案し展開している。本稿では水量保全対策を中心にその内容を紹介し,さらに熊本のように複数の自治体に地下水域がまたがる場合の地下水管理のガバナンスモデルを提案する。
  • 小嶋 一誠
    2010 年 40 巻 3 号 p. 135-143
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
    熊本県は,九州の中央部に位置し豊富な水資源に恵まれており,県内に1,000か所を超える湧水源と408 の大小河川があり全国一の名水県とされている。豊かな地下水資源を県民共有の財産,貴重な戦略資源として位置づけ,将来に亘って水利用の持続性を確保するための取組みが注目を集めつつある。本県は,特に水俣病という悲惨な公害を経験し,この教訓を踏まえ,1990 年には熊本県環境基本条例を制定し,1991 年に条例に基づく基本指針並びに1996 年には環境基本計画が策定されている。こうした計画等に沿って取組みが進められた結果,公共用水域,特に河川では全体的に水質改善傾向が続いている。課題は,県をまたがる閉鎖性水域や市町村を越える河川や地下水への効果的,効率的な対策の推進にあたって,行政区域の壁がある。また,湧水源地域では,過疎高齢化が進行している。一方,都市圏の地下水涵養地域も涵養域の減少が続いている。明るい展望は,本県は,全国有数の地下水流動に関する調査研究の積み重ねがあり,2008 年には,県や流域市町村で第二次熊本地域地下水総合保全管理計画(行動計画)が策定された。さらに,2009 年には,戦略資源である地下水等の保全や多面的な活用のあり方等を検討する有識者による水の戦略会議が設置され将来に向けた議論が始まっている。
  • 谷口 真人
    2010 年 40 巻 3 号 p. 145-147
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/25
    ジャーナル フリー
     地下水流動を水循環系の一部として動的に捕らえ,地上と地下および陸と海の境界を越えたつながりを明示することが重要である。地下水を資源として捕らえるだけではなく,循環する地下水がつなぐ,人と生き物と社会を理解し,それらの循環をより良く保つことが必要となる。そのためには,規範と地域の誇りを制度や仕組としていく取り組みが不可欠である。
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