環境省が実施した平成20 年度地下水水質測定の結果によると,硝酸態及び亜硝酸態窒素の環境基準値の超過率は,千葉県が12.3%で全国平均より高い。千葉県内で野菜生産が盛んな下総台地では,硝酸態窒素濃度が10mg/L を超える湧水が顕在化し,集水域内の畑地の面積割合が高いほど,その濃度が高い傾向がある。このような状況から,農地,特に畑地から流出する硝酸態窒素の低減が求められている。そこで,下総台地上に位置する富里市に調査地域を設定して,野菜栽培後の土壌に残存する硝酸態窒素の実態を調査した。さらに,この調査結果を踏まえて,調査地域に関する窒素収支を試算し,土壌浸透水の硝酸態窒素濃度が10mg/L 以下となる窒素低減目標を求め,当地域の主要野菜であるニンジン栽培において農地から流出する窒素の低減対策を実施した。
その結果,野菜栽培後の深さ1m までに多くの硝酸態窒素が残存し,深さ4mの土壌水の硝酸態窒素濃度が地下水の環境基準値である10mg/L を超え,20mg/L 前後の農地が認められた。また,近隣の湧水の同濃度も20mg/L を超えており,この地域では積極的な窒素負荷低減対策が必要であることが示された。窒素収支から,対象地域で窒素投入量を23%低減することによって,土壌浸透水の硝酸態窒素濃度が約3割低くなり,10mg/L になると試算された。そこで,ニンジン栽培前に農地に残存する窒素を差し引いて,窒素施用量を低減する対策を実施した。この対策によって,窒素投入量を25%低減しつつ収量が確保できた。
野菜栽培地帯において,地下水あるいは湧水の硝酸態窒素濃度を低減していくためには,さらに多くの野菜に関して,このような肥料窒素の利用効率を高める技術開発を進め,普及していく必要がある。
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