日本水文科学会誌
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43 巻 , 4 号
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特集「地殻流体研究に果たす水文科学の役割」
巻頭言
論文
  • 吉田 明夫, 高山 博之, 細野 耕司
    2013 年 43 巻 4 号 p. 111-117
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2014/01/16
    ジャーナル フリー
    紀伊半島から四国にかけて東西に走る中央構造線の南側ゾーンの地震発生層は異常に浅い。ここで“異常に”と言ったのは,一般に地形高度と地殻内の地震発生層の深さとの間には,標高が高いほど浅くなるという相関関係が認められるが,このゾーンには和歌山平野や徳島平野等の低地が存在するにもかかわらず,火山フロント沿いの山地の地震発生層と同じくらいに浅いということを表わしている。地震発生層の下限の深さは,地殻物質が脆性から粘弾性に変わる温度によって規定されていると考えると,地震発生層が浅いということは地殻内の温度が相対的に高くなっていることを示す。なぜ,中央構造線の南側のゾーンは高温になっているのか。これについては,同ゾーン内の和歌山の群発活動域において熱水の上昇が推定されていることを参考にすると,そこには地下深部から高温の流体が上昇していることが考えられる。
総説
  • 西尾 嘉朗
    2013 年 43 巻 4 号 p. 119-135
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2014/01/16
    ジャーナル フリー
    地殻深部流体は,地震発生や火山噴火といった地殻活動において重要な役割を担う。しかし,多くの地球化学指標は表層水の影響を大きく受けやすいため,これまで深部流体の物質科学的研究は遅れていた。比較的新しい研究ツールであるリチウム(Li)の同位体指標は,この地殻深部流体に関する非常に強力な研究ツールであることが最近の研究から明らかになりつつある。近年,地下水のLi同位体データを基に,木曽御嶽火山の南東麓で現在も続く群発地震に関与する流体が非火山性の深部流体であることが明らかとなった。内陸大地震発生に大きく関わる間欠的な深部流体の上昇は,下部地殻の深部流体だまりを覆う難透水層(帽岩)の破れによるものかもしれない。リチウム同位体指標によって,この深部流体が上昇する『水漏れ現象』に関してより高度な知見を我々にもたらしてくれる事が期待される。
論文
  • 田中 和広, 東田 優記, 村上 裕晃
    2013 年 43 巻 4 号 p. 137-150
    発行日: 2013/11/30
    公開日: 2014/01/16
    ジャーナル フリー
    紀伊半島の中央構造線近傍に湧出する流体は水質,酸素水素同位体比,ヘリウム同位体比などにより,スラブ起源と考えられる有馬型熱水が混入していることが想定される。本研究では地下水や河川水の地化学特性の検討を行うとともに,露頭における地質学的観察結果にもとづき,流体の上昇経路の検討を行った。流体は幅15 km以内に分布するMTLおよびそれに平行な分岐断層に伴われる断層破砕帯に沿って上昇する。その結果,北部の分岐断層からは主に高塩濃度のNaCl型およびCa(HCO32型地下水が,南部のMTLからは一部にClの溶存量の高い地下水を含むCaSO4型とCa(HCO32型地下水が湧出する。流体は,被圧された局所地下水流動系による希釈を受け,河川と断層の交差する箇所で局地的に湧出している。断層破砕帯中のカタクレーサイトや微小割れ目は方解石脈に充填されており,流体は断層破砕帯を上昇する際に,これらにも浸透し,炭酸カルシウムを沈殿させたものと考えられ,その結果,上昇経路は閉塞され,流出箇所の移動を引き起こしたものと考えられる。
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