日本水文科学会誌
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44 巻 , 3 号
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特集 シンポジウム「水循環にかかわる窒素循環―科学的未知に迫る―」
巻頭言
総説
  • 井岡 聖一郎, 村岡 洋文
    2014 年 44 巻 3 号 p. 123-133
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    帯水層蓄熱と硝酸性窒素浄化の促進技術の一体化を目指す第一歩として,温度が10°C上昇した場合,ある化学反応の反応速度が何倍になるのかを表すQ10値を指標にした脱窒反応の温度依存性について,文献調査を行った。その結果,土壌における脱窒反応に係るQ10値は,1.6から50までと非常に大きい幅をとることが明らかになった。その原因としては,実験に用いた土壌の種類の違いが大きいと考えられた。また,脱窒反応の電子供与体としては,有機態炭素を取り上げたものが多く,他の電子供与体を考慮したQ10値の評価や,実験室で評価したQ10値の野外での適用可能性についての検証の必要性に言及した。さらに,帯水層を対象としたQ10値は殆ど認められず,今後の課題として,帯水層を対象にしてQ10値の評価の必要性を指摘した。
  • 大手 信人, 磯部 一夫, 徳地 直子
    2014 年 44 巻 3 号 p. 135-145
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    産業革命以降,人為起源のbioavailableな窒素の供給がかつてないレベルに増加した結果,森林では窒素飽和現象が1980年代から報告され始めた。これまで生物地球化学的な側面からこの現象のメカニズムの解明が進められてきたが,集水域レベルでの窒素の現存量や内部循環のフローは,集水域の地理的な特性ごとに極めて多様で,系全体のレスポンスは決して一様ではなかった。この課題に対して,今後展開すべきアプローチの一つとして,窒素の形態変化を左右する微生物群集の動態の記述から,今まで見てきた「生物地球化学的反応」を再解釈することを提案する。近年,急速に発展した軽元素の安定同位体比の測定技術と,機能遺伝子によって正確に目的とする微生物群を絞り込める遺伝子解析技術を組み合わせて利用することで,反応の時空間的な非均質性や環境変化に対する非線形な応答の仕組みを明らかにすることができるのではないだろうか。
  • 田瀬 則雄
    2014 年 44 巻 3 号 p. 147-154
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    反応性の高い窒素が土壌・大気・水などの環境中に大量に負荷され,大気汚染による源流域の窒素飽和現象,湖沼や内湾・内海での富栄養化現象,地下水汚染などが解決しなければならない大きな課題となっている。環境基準,排出基準などの法的規制が行われ,成果が上がっているが,改善できていない面もある。水質の統合的管理に向けて,環境基準と排出基準などの関係での問題点,排出源と媒体の関係,媒体内と媒体間での動態などについて検討した。
講演再録
  • 杉田 文
    2014 年 44 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    地下水中の硝酸性窒素濃度が平面的に大きくばらつく要因について,流域内が主に農業地域で構成されている場合を想定して整理した。主な要因として,①土地利用分布,農地における作物種や肥培管理の違い,降水と施肥のタイミングの違いなどによる溶脱量の平面的なばらつき,②地下水の流線ごとに異なる,帯水層中に散在する小さな脱窒スポット内における脱窒の影響,③広範囲の濃度のばらつきが狭い流出域に収束する流れ場構造と小さい分散,④地下水が地表や井戸内へ流出する際に通過する堆積物や井戸壁における局所的な脱窒,などが挙げられた。ほかの一般水質成分にくらべ,窒素は,地中における反応場の不均質性が大きく,また,小さい反応場によりその濃度が大きく変化するという特徴をもつ。このほか,小規模な点源や不連続な流路が存在する場合には,濃度分布のばらつきは,さらに大きくなると考えられる。地中における窒素の挙動を明らかにするためにも,今後,これらの要因の影響を定量的に評価する必要がある。
論文
  • 竹内 徹, 北岡 豪一, 山口 一裕, 小野寺 真一
    2014 年 44 巻 3 号 p. 161-177
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/11/08
    ジャーナル フリー
    閉鎖性海域沿岸である岡山平野における最終氷期から完新世に至る堆積環境を推定するため,6~19 mの4本のボーリングコアを採取し,粘土に含まれる有機物の放射性炭素年代測定,火山ガラスの同定,間隙水の電気伝導度の測定を行った。その結果,岡山平野に広く分布する完新世粘性土層は1万年前にはすでに堆積したものであることが明らかとなった。この時期は海水がこの地域に浸入するほど海面が上昇していないため,岡山平野に淡水性の湖が存在し,そこで堆積していたことが示唆された。また完新世粘性土層の下位に分布する粘性土層は,硬さが異なる点や姶良火山灰の存在が確認されたことから,更新世粘性土層と確認され,最終氷期当時から岡山平野には淡水の湖沼が分布していたものと推定された。以上のように,瀬戸内海の奥部に位置する岡山平野では,最終氷期頃から縄文海進直前の時期まで広く淡水湖が存在していたという沿岸水文環境が復元された。この結果から,岡山平野堆積物の間隙水中に貯留された塩分は少なく,地下水の塩水化の潜在リスクは比較的低いことが示唆された。
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