都市化が進む中国華北平原に位置する閉鎖性水域である白洋淀の水質には流域の人間活動の影響が反映されている。この様な水域を “環境湖”と定義し,その水質,特に栄養塩類に関する水質の時空間分布の特徴と,人間活動の指標としての土地利用との関係から,白洋淀の水質形成の人間要因と,水域の持つレジリエンスでもある生態系サービス機能を明らかにすることを試みた。
人間要因として白洋淀流域の土地利用変化を地図化し,拡大する都市域と農地からの排水による汚染について記述した。さらに,白洋淀流入河川のダムによる断流,地下水位低下による白洋淀からの水損失も水質悪化をもたらす要因と考えられた。
自然要因としては,降水量の経年的な減少傾向が水質の悪化の要因のひとつとなっている。一方,水域における生態系サービスとしての水質浄化機能の存在を,上流から下流に向かい減少する栄養塩類の流下に伴う変化と,葦の成長期後の9月に栄養塩類の濃度が低下する季節変化から明らかにした。白洋淀では,流域の人間活動による水質悪化と同時に,生態系サービスによる水質浄化機能が作用し,水質の時空間分布を形成しているといえる。
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