日本水文科学会誌
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47 巻 , 2 号
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論文
  • 山本 真也, 中村 高志, 内山 高
    2017 年 47 巻 2 号 p. 49-59
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    河口湖では従来,冬季の不凍箇所の分布から湖底湧水の存在が示唆されてきたが,その詳細な分布や起源についてはいずれも推定の域を出ないのが現状であった。本研究ではこうした河口湖の湖底湧水の実態を探るため,電気伝導度水温水深計(CTD計)による水文調査並びに水中カメラ及びソナーを使った湖底探査を行った。その結果,鵜の島の東約100 mの観測点で,周囲より水温が高く,電気伝導度の低い水塊が分布している様子が観測され,湖底からの水の湧出が推察された。また湖底探査の結果,上記観測点を含む半径約25 mの領域で,湖底に被泥が見られないなど,湖底湧水地によく見られる特徴を呈していた。更に,この場所で湖底直上水を採取し水の安定同位体比を測定したところ,その値は周辺の地下水に近く,この場所が湖周辺の山間部で涵養された地下水が湧出する湖底湧水であることが示唆された。

研究ノート
  • 小島 千鶴, 小寺 浩二, 濱 侃, 齋藤 圭
    2017 年 47 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では群馬県大間々扇状地における地下水の硝酸態窒素(NO3--N)汚染に着目し,9ヶ月の定期調査から,NO3--N濃度の空間分布及び,季節変動について考察を行った。分析の結果,27の調査地点のうち7割以上が人的汚染の影響を受けていることが示唆され,その中でも農用地が多い地域の地下水からは高濃度のNO3--Nが確認された。さらに,NO3--NとCl-・SO42-が強い相関を示したことから地下水のNO3--N汚染は施肥に起因していることが示唆された。また,地下水のNO3--N濃度及び水位の季節変動は降水量とほぼ対応しており,雨期は土壌からの溶脱によってNO3--N濃度が上昇したと考えられる。加えて,井戸の中には調査期間を通して環境基準値を超過した地点も複数確認され,地下水への汚染は一過性のものでは無く,ある程度長期的に生じていることが明らかとなった。

特集 シンポジウム「水に関わる環境変動と自然災害」
序文
論文
  • 知北 和久, 大八木 英夫, 山根 志織, 相山 忠男, 板谷 利久, 岡田 操, 坂元 秀行
    2017 年 47 巻 2 号 p. 73-86
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    今回の研究対象である北海道・倶多楽湖は,20世紀までは冬季に完全結氷し年によっては湖氷の圧縮・膨張によるお神渡りが観察された。しかし,21世紀に入り,冬季に完全結氷しない年がこれまで4回現れており,今後の温暖化の進行によって倶多楽湖は将来,永年不凍湖になる可能性がある。ここでは,倶多楽湖の貯熱量を2014年6月~2016年5月の2年間にわたり計算し,気象因子の変動に対する熱的応答を感度解析によって検討した。なお,同湖が結氷するのは例年2~3月であるが,2015年は暖冬で部分結氷,2016年は完全結氷し,貯熱量に違いが見られた。ここでは,貯熱量を湖の熱収支に基づく方法と水温の直接測定による方法の二通りで計算し,両者を比較した。その結果,両者の間に決定係数R2=0.903の高い相関があり,熱収支による方法の妥当性が裏付けられた。これを踏まえ,主要な気象因子(気温,日射,降水量,風速)の値を変えて貯熱量に対する感度解析を行った。結果として,倶多楽湖の貯熱量は気温と降水量の増加に対して顕著に増加し,現在の湖周辺での年平均気温の上昇率0.024°C/年を考慮すると,約20年後には永年不凍湖になる可能性がある。

  • 鈴木 啓助
    2017 年 47 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    中部山岳地域は,世界でも有数の豪雪地として知られている。本地域にもたらされる降雪は降雨にもまして極めて重要な水資源である。また,大量の積雪から春先に流出する融雪水は,水資源として有効である。流域内に堆積する雪は天然の白いダムとなっている。地球規模の温暖化に伴って降雪量は減少するとの報告がなされているが,これらの研究は低標高地域での観測データに基づいている。高標高地域でも同じことが言えるのか否かについては,高標高地域での降雪量の観測データが得られていないために検討することができない。本稿では,中部山岳地域の山岳渓流における融雪期の流出高変動から降積雪量の変動について議論する。

  • 諏訪 浩
    2017 年 47 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    これまで,山地の植生や火山噴火,森林火災が斜面水文特性をどのように規制するのか,またそれらが山地からの土砂流出にどのように影響するのかを検討してきた。これについて関連深い研究を概観することにより,次のような知見を得た。すなわち,禿げ山や草山など森林が乏しい状態は,斜面の降雨流出率が大きいことと樹木根系の表土緊縛効果が小さいため,表層崩壊や土砂流出が促されやすい。これに対し,森林飽和な状況では,斜面の降雨流出率は小さく,加えて樹木根系の緊縛効果が有効で,表層崩壊は抑制されることが少なくない。しかし付加体の流れ盤斜面では,森林飽和な状態は深層崩壊の素因になる。火山噴火があると,降灰に被われて土壌クラストが形成される。このため斜面の浸透能が激減する。加えて植生が失われることで降雨流出が激増する。この結果,土砂流出が活発化することが少なくない。森林火災も,同じような状況をもたらす。植生が損なわれることに加え,表土が撥水性を帯びることによって降雨表面流が激増し,これによって急に土石流が発生するようになり,災害が引き起こされることが少なくない。しかし,噴火後,また火災後の時間経過とともに降雨流出特性は元の状態へと戻ってゆく。噴火後と火災後を比べると後者のほうが回復はおおむね速い。このような水文地形学的斜面特性の認識は,土砂災害対策を考えるうえで欠かせない。

  • 藤井 智康
    2017 年 47 巻 2 号 p. 107-118
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    大気および表面海水中の二酸化炭素(CO2)の長期的な動態を明らかにするために,2012年および2014年の8月~11月に大阪湾において連続測定を行った。表面海水の水温,溶存酸素濃度(DO), pHおよび大気中のCO2濃度を大阪湾の各地点で連続測定した。海水の二酸化炭素分圧(pCO2)は,測定されたpHと全アルカリ度のデータからCDIACが提供するCO2SYSを使って計算した。大気–海水間のCO2フラックス(放出・吸収量)は,連続測定から得られたデータと神戸空港で測定された風速データを用いて計算した。

    結果として,夏季の成層期では,CO2吸収フラックスが高く,大気CO2濃度は低かった。CO2フラックスは,日中の光合成と夜間の分解によって大きく日変化していた。この期間のCO2吸収フラックスの平均値は,0.09 g-C m-2 d-1,大気CO2濃度は397.7 ppmであった。一方,成層が消滅する秋季においては,CO2吸収フラックスの平均値は,-0.04 g-C m-2 d-1,大気CO2濃度は429.9 ppmであった。夏季には大気CO2は海水に吸収され,秋季には表面海水のCO2が大気へ放出するため,大気CO2は秋季が高い値となった。したがって,大気CO2濃度は,大気–海水間のCO2フラックスによって大きく変化する。

総説
  • 石井 吉之, 平島 寛行, 山口 悟
    2017 年 47 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2017/08/28
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー

    積雪上にまとまった雨が降る現象はROS(rain-on-snow)イベントと呼ばれ,融雪洪水や全層雪崩,土砂崩れ,地すべりなどの要因となる。ROSイベントに関する研究は,2000年以降になって,世界各地の積雪地域でさかんに行われるようになった。ROSイベント時に雨が雪をとかす量は小さく,多くの場合,雪面への乱流熱輸送が主となって雪どけが進む。しかし,必ずしも乱流熱輸送だけが重要なのではなく,放射熱収支量や積雪底面への地中熱輸送が卓越する場合や,ROSイベントの規模に応じて主要な融雪熱収支成分が異なることもあり,降雨・気象・積雪条件さらには流域特性に応じて多様に異なる。さらに,降雨が積雪内をどのように浸透し積雪底面から流出するかについてもよく分かっていない。そのために模擬降雨散水実験がなされているが,平地か斜面か,積雪ブロックを切り出して散水するか自然のままで散水するかなど,実験方法に応じて様々な結果が得られている。北海道母子里で行われた120 mmの降雨を与えた実験では,積雪底面からevent waterが67%,pre-event waterが33%の割合で流出し,晴天日の融雪水の流出とは著しく異なることが分かった。

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