国際ビジネス研究
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7 巻 , 1 号
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統一論題
  • ルーチンと伝統の翻訳
    大東和 武司
    2015 年 7 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    本稿では、成長・発展につなげている「地域企業」がそれぞれに独自の発想を活かして経営活動を行い、どのようにして事業転換・事業拡大につなげていったのかについて検討する。とりわけ、そのベースとしての「ルーチン」、そしてその地域企業がもっている伝統、ないし伝統技術をいかに創造的に「翻訳」したのかについて着目し、新市場の獲得・普及への途を探ることとする。
    企業が存続していくためには、少なくとも何らかの変革(イノベーション)が求められる。つまり、変革への創造が求められる。伝統は、いわば新しく創りあげられたものの積み重ねである。逆説的に言えば、伝統のなかに革新、創造のシーズがある。
    ここでは、伝統的な中小企業、いわば地場企業である広島・熊野の化粧筆・白鳳堂を事例として取り上げて検討する。
招待論文
  • 米国のビジネススクールと比較して
    吉原 英樹, 金 雅美
    2015 年 7 巻 1 号 p. 15-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    1.研究の目的と方法
    ビジネススクールの日米差は大きい。学校数で約5倍、1校あたり学生数で5倍から 10 倍、学生総数で 25 倍から 50 倍ほどの差がある。また、企業の管理者のうち MBA 保持者の割合は米国企業 37.0%、日本企業 0.7%である。この日米差の理由は何か。日米差は縮小するか。日本のビジネススクールの特徴・問題点などを日本企業の経営に関連づけて明らかにする。研究は記述的・探索的であり、インタビュー調査がおもな方法である。インタビュー調査の対象は、日本のビジネススクール 17 校、教員 23 名、米国のビジネススクール3校、教員など 15 名である。
    2.ビジネススクールの特徴と問題点
    まず、平日夜間・週末授業がほとんどであり、2年制フルタイムは少数である。
    つぎに、定員割れがつづくビジネススクールが半数をこえている。これらのビジネススクールには、存在価値に疑義があり、機能不全に陥っていると思われるもの(限界ビジネススクール)が相当数ある。その理由には、専門職大学院の制度に便乗してスタート、明確な方針・戦略の欠如、リーダーシップ不足、教員のコミットメント不足、貧弱な教育施設・管理体制などがある。早期に再生策を打たないと、淘汰の対象になるだろう。
    第3に、日本語で授業するところがほとんどであり、外国人の学生は少数である。海外進出や外国のビジネススクールとの提携などの国際展開はほとんどない。
    3.逆境への適応
    上記のようなビジネススクールの特徴と問題点は、基本的に、新大卒一括定期採用、終身(長期)雇用、内部昇進、年功序列、平等主義、現場主義、ボトムアップ、普通人の経営(全員経営)などで特徴づけられる日本的経営のために生まれている。日本企業ではビジネススクールの必要性は弱く、評価は低い。
    ビジネススクールの日米差の理由として、日本では企業は大学学部から人材を獲得するが、米国ではビジネススクールから人材を獲得するというちがいをあげることができる。
    4.結論
    日本企業の国際経営の進展などを理由にビジネススクールが重要性を増すと予測できるが、日本のビジネススクールをめぐる環境条件の変化は漸進的だと思われるので、ビジネススクールの日米差は今後も基本的に残るだろう。
研究論文
  • 日本のライフサイエンスの事例にみる国際化を伴う多様化
    ファゼカシュ バラージュ
    2015 年 7 巻 1 号 p. 31-47
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    本論文では、日本国内のライフサイエンス産業における R&D 提携ネットワークを対象とし、日本企業が海外企業と提携することによって国内ネットワークにどのような影響を及ぼすかを検討する。主な目的は、二つの繋がりの浅いネットワークの相互作用に注目しながら、ネットワークの変化を明らかにすることである。上記について考察するために、ライフサイエンス産業に属する 893 組織を含む関西地方を中心とした8年間のネットワークデータセットと 2000 組織以上取り込む 20 年間の国際データセットという量的データを用いた。その中から両データセットに所属する 60 組織を特定し、ヘックマンの二段階回帰分析を行った。その結果、国際提携ネットワークで中心性の高い海外企業と提携した日本企業は、提携ネットワークの多様性が重要であると認識し、その後、国内提携相手もその日本企業を追従して、個々のエゴネットワークの多様性を徐々に増やしていることが明らかとなった。このようなマイクロダイナミック的変化がネットワーク全体のオープン化を進めている。
  • ブラジルのビューティ企業ナチュラの国際化
    金﨑 賢希
    2015 年 7 巻 1 号 p. 49-66
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    1970 年代以降、新興国を出自とする企業のグローバル化が進み、現在、世界市場におけるプレゼンスは無視できないほど高まっている。新興国企業はグローバル市場でどのような競争優位および能力を活用しているのか、そしてそれらはどのように形成されたのか。
    先進国多国籍企業の研究によって開発されたコンセプトや理論は、新興国企業にも当てはまるのだろうか。OLI 理論をベースに、新興国企業の存在を説明したものとして、投資発展経路説がある。しかし、同説は単なる分類に過ぎない、あたかも新興国企業は先進国多国籍企業をキャッチアップしているように見えるといった批判がある。段階を経るにしたがい、当該国の企業は能力を蓄積するというが、それは果たしてどのような企業特殊的優位・能力なのだろうか。そして、その能力をどのように蓄積しているのだろうか。本国の環境と企業の能力の関係はいかなるものか。
    本稿では、ブラジルの化粧品企業ナチュラを取り上げ、その置かれている状況の中で、技術力が乏しいと考えられてきた新興国企業がどのように現地資源を創造的に活用し、グローバルな市場機会を追求してきたかを明らかにした。
    ナチュラは、新しい価値を創造し、グローバルに広がりつつあった市場機会を追求するために、女性の販売員、ブラジルの熱帯雨林と伝統的なコミュニティなどの現地資源を活用した。しかし、それは必然でも、安価で安易な、誰もができる、あるいは資金さえあればできるような選択肢ではなかった。その置かれている環境のなかで、特異なフィロソフィーをもった起業家がステークホルダーと互酬関係を構築することで可能になった。
  • 日本分析計測機器メーカーの中国開発拠点の事例分析
    孫 徳峰, 椙山 泰生
    2015 年 7 巻 1 号 p. 67-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    本稿は、海外製品開発拠点の能力構築について、断続平衡の視点から、「探索」と「活用」がどのように経時的に連結されるのか、またそれによって海外製品開発拠点の能力がどのように構築されるのかを明らかにすることを目的とする。特に、本稿では、多国籍企業の既存研究から議論が少なかった「探索」から「活用」へのモードの切り替えという順序にフォーカスし、その能力構築プロセスを明らかにする。この目的から、日本分析計測機器メーカー(A 社)の中国開発センターを対象とし、「探索」と「活用」の順序という視点から当該拠点の設立過程について分析した。
    事例分析では、中国開発センター現地で「探索」的な活動を先に実施することで、価値基準や現地環境の理解などのより根本的な問題についての学習が進み、それに方向づけられた「活用」活動を進めることによって製品の現地適応が実現されていたことが明らかになった。この分析結果について、このような順序での能力構築が適合的だと考えられる状況や、その研究上の意義などについて議論した。
研究ノート
  • 江崎 康弘
    2015 年 7 巻 1 号 p. 81-96
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    新興国での人口増加や都市化の進展を背景にし、2025 年の世界の水需要は 2000 年に比べ約 30%の増加となる見込みである。特にアジアでは、急速に水需要が拡大し人口増加や都市問題等と重なり、2025 年にはアジアの水需要は世界の約 60%を占めることが予想されている。インフラ全般に共通するが、新興国の水事業者には水処理の知見が少なく、水処理用のハードの購入ではなく、インフラから事業運営・維持管理までを含んだ包括的な購入となる事例が増し、世界的な水市場の規模が 2025 年には 86.5 兆円に達すると見込まれている。
     このように水事業では世界的に大きな市場がある。しかし、日本企業にとってグローバル水事業への参入障壁は高い。日本では水道事業は長く地方自治体による専管事業とされてきたため、事業運営・維持管理に関する知見や実績が民間企業にはなく、新興国の要求に合致していないからである。
    海外では、水メジャーと称される欧州3社が、上流から下流まで一貫した水の事業運営を行い、グローバル水市場を主導してきた。また近年シンガポールや韓国企業が国家戦略の一環としてグローバル水市場に参入してきている。
    生産年齢人口の減少や工場の海外移転等に伴い日本の水市場が停滞する一方、新興国他グローバル水市場の急成長が予想されるが、日本の水企業の国際競争力に大いに懸念がある。
    これらを踏まえ、世界の企業が参画する競争環境で、経済産業省が主唱するオールジャパン構想に踊らされずグローバルな視点で水ビジネス市場を見直し、日本企業が活路を見出すための課題と施策を、日本企業のなかで一日の長がある日立製作所の事業戦略を分析することを通じて論じる。
  • A社の事例研究
    孫 豊葉
    2015 年 7 巻 1 号 p. 97-113
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    本研究は事例研究を通じて、日本型人的資源管理制度を海外に移転する際に、内部一貫性を持って移転することの重要性を示すものである。聞き取り調査により対象企業の日本本社とその海外子会社の人的資源管理制度を比較した結果からは、本社の制度は首尾一貫した合理性を持った制度であるのに対して、海外子会社に移転されている制度は全体としては合理性を持った制度ではないということが確認された。海外子会社では日本型人的資源管理の前提となる長期雇用制度が実施されていないだけではなく、報酬に関連する制度や昇進基準も日本型人的資源管理の方針と矛盾している。その結果、海外子会社で日本型人的資源管理制度が期待通りに機能しておらず、人的資源管理に問題が発生している。
  • A社の中国企業との製造委託販売契約交渉を中心に
    種崎 晃
    2015 年 7 巻 1 号 p. 115-130
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    日系メーカーの新興国市場への参入後のボリュームゾーン獲得について、90 年代後半から国際マーケティング論やものづくり論、BOP (Base of the Pyramid) の視角から多くの研究がなされてきた。日系メーカーの製品は高機能・高品質の技術優位にあるが販売に弱いと言われる中、国際ビジネスにおいて新興国市場での成功の可否が多国籍企業の成長を担う重要なビジネス機会とされてきた。
    これらの研究に於いて日系メーカーが新興国市場に参入して成功を得る為に、現地市場の要求に理解を深め、顧客ニーズに適応する製品開発と生産が重要であることが論じられてきた。
    しかし今でも多くの日系メーカーは製品の技術的な品質の適合以外の要因で、なかなか新興国市場への販売チャネルを太く出来ずにいる。多くの産学官関係者に捉えきれない大きな壁として認識されている。
    本論では日系メーカーの新興国市場へのボリュームゾーン拡大の困難に直面している事実を踏まえ、事例研究から販売戦略について考察を行う。事例研究は高機能・高品質帯の生産を主とする日系大手電子材料メーカー A 社が新興国市場の代表格である中国市場のボリュームゾーン獲得するための事業戦略を取り上げた。
    A 社は中国市場で大きな販売網を持つ、汎用品の生産を主とする中国国内大手電子材料メーカー B 社との業務提携通じて販売網の獲得を希望した。業務提携はA社の技術力とB社の販売網のトレードであり、A 社と B 社との業務提携交渉と締結後を事例研究として中国市場のボリュームゾーン獲得の成功の成否について検討する。
    しかし両社の業務提携交渉が 2009 年春から4年、業務提携契約締結後から2年を経た 2014 年現在において、A 社が期待する中国市場でのボリュームゾーンの獲得の成果はあがっていない。その理由を考察した結果、交渉の以前や最中に A 社と B 社の間に信頼関係構築に両社が最も力を注ぐべきだったと指摘できる。一方で A 社は業務提携から得た経験を踏まえ、中国国内の新規顧客の獲得と今後の売り上げ増を期待できる展望が持つ事が出来た。言い換えれば中国企業との業務提携単体では失敗の事例研究であったが、中長期的には中国市場のボリュームゾーン獲得の大きな引き金になったといえる。
    この指摘は新興国市場獲得に苦戦している多くの日系メーカー、とくに高機能・高価格品帯のメーカーの一助になる含意である。
  • 製品アーキテクチャの視点から
    楊 英賢
    2015 年 7 巻 1 号 p. 131-148
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    本研究では、台湾の自転車産業における A-Team と最大手メーカージャイアントを研究対象として、 製品アーキテクチャという新たな視点を導入することで、A-Team に関する成立背景と目的、そのパフォーマンス及び新たな能力創造、そして A-Team の特徴と従来型の組織間関係との差異などを明らかにしたい。以下、明らかになった点とインプリケーションについて述べる。
    第一に、モジュラー型アーキテクチャの典型で、コモディティ化が一方的に進むと考えられてきた自転車産業において、ジャイアントは革新的で高付加価値の製品開発を実現した。これは A-Team における組織間協調や交流を通じた技術開発と知識の共有化・融合化の促進によって可能となった。
    第二に、A-Team は、企業間に競争関係ではなくコーペティション(CO-OPETITION)関係を導入することで、有形資源の取引だけでなく、無形資源の共有化を実現し、さらにはコスト優位から差別化優位への能力転換などを実現させた。こうしたことが、革新的で高付加価値製品の開発生産性向上に結び付いた。これらは、従来型の中心・衛星工場システムといった取引関係では実現できなかったものである。このような、競争と提携が交錯したコーペティションという経営手法が、台湾の自転車産業独自の強みになっていると考えられる。
    最後に、台湾の自転車産業は A-Team による新たな能力創造と製品アーキテクチャの変化に依拠して、従来のコスト優位から、差別化優位の戦略や能力の構築をさらに推進していく必要がある。中国はモジュラー型・オープン型アーキテクチャの技術開発を得意とするため、価格競争で優位性を持つ。この分野では、どの企業も中国に勝つための優位性を持つことは難しい。したがって、台湾の自転車産業は、日本型のすり合わせを特徴とする非標準的な付加価値の高いアーキテクチャ分野の製品を開発する必要がある。
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