国際ビジネス研究
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最新号
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統一論題
  • 梅野 巨利
    2016 年 8 巻 2 号 p. 5-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    新市場の創造と開拓にあたって、本国親会社にとっては馴染みが薄く不案内な事業領域・地理的領域であっても、グループ子会社に当該市場の創造・開拓について潜在能力がある場合、親会社は当該子会社とのあいだでいかなる関係を築き保つべきなのか。本稿は、国際事業展開する日本企業がインド子会社のもつ立地優位性と、親会社には不足しているものの子会社には蓄積されている当該事業領域に関する知識と経験を活用しながら新市場を創造・開拓し、やがてはそれらの成果をグループ全体で活用していくことに成功している事例を取りあげる。具体的には、ハラルに対応したゼラチン(ハラルゼラチン)という新市場の創造・開拓のプロセスに関する事例である。このプロセスにおいて親会社はインド子会社に対してどのようにかかわり、両者間関係はどのように変化していったのか。本稿は、新市場の創造と開拓における親子会社関係の1つのあり方に関する知見を、詳細なプロセス分析から得ようとするものである。

  • 嶋 正
    2016 年 8 巻 2 号 p. 19-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    この論文は21世紀に入り、国際ビジネスにおいて注目を集めているボーン・グローバル企業(Born Global Company; 以下BGCと略す)とマーケティングの戦略を展開する。まず、過去400年以上を振り返る時に歴史学者トーマス・フリードマンのグローバリゼーションの3段階の区分を手掛かりとしてG1.0を1492年から1800年頃まで、G2.0を1800年頃から1994年のWTO(世界貿易機関)の設立まで、そしてそれ以降のG3.0を区別する。ここでは特にWTOの設立以降のG3.0に注目し、BGCが生まれた背景とその成長及びマーケティングを考察することにする。

    BGCはシュンペーターの言う「イノベーションを持つ中小起業のグローバル展開」と捉え、まずアメリカにおいて19世紀後半から20世紀初頭にかけてプラグマティズムが生まれ、その考え方がイノベーションやマーケティング思想につながった。それらの考え方はドラッカーにより今日では企業家活動(entrepreneurship)に統合されつつある。マッキンゼー社が1993年にBGCの基本的な考え方を社内報で取り上げ、それを嚆矢として世界的に論じられるようになった。その後21世紀に入りさまざまなタイプのBGCが学会で取り上げられてきている。

    日本では、最近になってようやく取り上げる研究者が増えてきているがアメリカ、ヨーロッパに比べて少ないと言える。その理由として考えられるのは、日本の中小企業を起こす方がアメリカやヨーロッパに比べて大企業の下請け構造と捉えられがちであること、もう1つは製造業に研究が偏っているのが挙げられる。

    BGCはグローバル企業への持続的発展の1タイプであることを示すことでBGCとグローバル企業の関係を統合モデルとして捉えようとするものである。BGCはグローバル志向が強い中小起業であり、グローバル企業へと持続的成長過程の中で成長している。つまりドラッカーが言うように存続と成長を続ける企業にとって、グローバル化をすることで目的が果たされる。

    最後にGoogleの成長モデルを説明する。そしてGoogleがかつての成長企業と異なって技術志向の企業成長を遂げている例を挙げている。

招待論文
研究論文
  • 森 哲男
    2016 年 8 巻 2 号 p. 51-67
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    近年、ビジネス・エコシステムが議論されるようになっている。ビジネス・エコシステムでは、生態系としてのネットワークやプラットフォームの重要性が強調される。だが、これまでの研究では、その生成段階や、製造業ではなくサービス産業、さらには国際的な市場展開を見据えた分析はあまり行なわれていない。そこで、本研究では、ディレギュレーションを背景に変化する金融市場において市場カテゴリーを確立した通販型保険、なかでも、その市場成長のリーダー的役割を果たしたアメリカン・ホーム・ダイレクトおよび後続の追随者の事例分析を通し、固定化した既存市場において新ビジネスモデルをいかに市場に浸透させていったのか、競合の活動がどのように市場確立に貢献していったのかについて、そのプロセスと競合の相互依存的関係を解明する。

    本研究は、理論的なインプリケーションとともに、実践的なインプリケーションとして、「表の競争力」の一つのあり方を捉えている。一つの市場カテゴリーの知見ではあるが、サービスが短期でコモディティ化する現在の市場において、競争優位を確立、維持するための一つの有効な方法でもあると考える。

  • 岩尾 俊兵
    2016 年 8 巻 2 号 p. 69-88
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    近年、David J. Teeceらの研究を嚆矢とするダイナミック・ケイパビリティ(Dynamic Capabilities, DC)論は、国際経営論の分野をその新たな研究対象として捉えつつあり、そこでは海外生産拠点を新規に構築・再統合する能力が(本国の本社が保持する)DCであると論じられている。しかしながら、Teeceに代表されるDC論者は、海外生産拠点を専ら業務能力(決められたことを決められた通りに遂行する能力)のみを移転される存在として捉えることが多く、DC(決められたことの範囲を超えて新たに資源を再構築する能力)は海外拠点を統括する本社に存在するものとみなす傾向がある。Teeceらの上述の見解に反して、日本の製造業は、海外生産拠点に(業務能力に加えて)ある種のDCまでも移転しようと試みているといえる可能性がある。たとえば、日本の自動車産業に属する企業が海外生産拠点に改善活動の活発化を期待し、それを支援している状況がその一例である。上記の可能性は、(近年のDC定義の変遷を念頭に置いた上での)Teeceが想起するより狭義のDC定義を用いる場合には一定の妥当性が担保されよう。

    それでは、海外生産拠点に業務能力に加えてDCをも移転する場合に、どのようなマネジメント上の課題が生じるであろうか。この疑問に答えるために、本稿は定量分析と定性分析を行い、結果として「①一般的には(狭義の)DCの移転は遅々として進まないこと」「②一部には(狭義の)DC移転に成功しているように見える海外生産拠点が存在すること」「③DCは資源の再構築が必要であるがゆえに組織内の調整問題に労力が割かれること」「④DC移転の成功事例では、前述した調整のための労力を節約するようなマネジメントの努力がなされていたこと」の4点が明らかになった。

    ただし、データの制約やDC定義の問題から、ここでの議論は一般化の段階には至っていないという限界もある。

研究ノート
  • 祁 岩
    2016 年 8 巻 2 号 p. 89-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    中小企業は経済を牽引する力であり、国の経済発展には必要不可欠である。中国において中小企業は全企業数の99%、全雇用者数の82%、GDPの60%を占める大きな存在となっており(中国統計年鑑2014)、国民経済、雇用、技術・経営の革新に不可欠である。しかし、中国では中小企業に関する研究は企業融資、市場、政府支援などに関するものが多く、中小企業が人材の採用・確保難、育成難など多くの人的資源管理面の課題を抱えているにもかかわらず、その人的資源管理に関する研究は大企業と比べるとなお少ない。特に、中国では、中小企業の人的資源管理に関する研究は理論研究に偏っており、人的資源管理理論を用いた実証研究は限られている。さらに、1990年代から各国で大企業を対象として人的資源管理と企業業績(Firm Performance)との関係(以下“HRM-FP”という)に関する実証研究が行われ始めたが、どの国でも中小企業を対象とした研究は少なく、特に中国の中小企業を対象とした研究は非常に少ない。

    そこで、本研究は、中小企業におけるHRM-FP関係に関する実証研究の先行研究をレビューし、先行研究で用いられたHRM指標、業績指標、研究方法などを把握することにより、中国中小企業の人的資源管理に関する研究のこれからの方向性を展望する。

    本研究では、まずHRM-FP関係の理論研究をレビューする。そして、その分野で中小企業を研究対象とし、海外(1)関連の実証の先行研究12本と中国関連の先行研究11本を分析する。次に、海外・中国関連研究についての考察を行う。最後に、中国中小企業の実証研究への示唆を述べる。

  • 秦 小紅, 成田 景堯, 臼井 哲也
    2016 年 8 巻 2 号 p. 107-121
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    なぜある本国資源は海外進出先国市場において活用でき、他の資源は活用できないのか。筆者らは本国資源の企業特殊優位化の論理として「リソース・リポジショニング・フレーム(以下、RRPフレーム)」を開発している。RRPは、本国資源が現地市場における顧客選好が高く、希少性が高い場合に、企業特殊優位となり競争優位の源泉として機能すると推論する。しかしRRPには、実証データが不足している。そこで本稿ではイトーヨーカ堂の中国・成都地区への市場参入初期段階のケースを用いてRRP仮説を検証する。分析の結果、本国資源は現地市場においてリポジショニングして活用されている。またリソース・リポジショニングは参入初期段階における企業業績に正の影響を与えている。加えてRRPは、移転と再構築に時間を要する資源と現地で新たに構築する資源の識別にも大いに貢献している。

  • 魏 聰哲
    2016 年 8 巻 2 号 p. 123-139
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    台湾の中小企業の多くはその成長と発展の過程で地域経済と結びつき、産業クラスターを形成してきたという経緯がある。その産業クラスターが生み出している部品取引の速さや生産効率の強さは、中小企業の輸出競争力の向上に助力していた。しかしながら、1990年代半ば以降、多くの台湾中小企業が労働力のコスト優位を求めるために、工場の中国への移転を進めてきた。これは、中小企業の町工場を中心に形成してきた産業クラスターの競争優位を弱めつつあった。それに加えて、中国地元企業が形成したローカル・サプライチェーンの台頭が進んでおり、台湾中小企業の輸出競争力の低下も起こしてしまった。その苦境を打破するために、2000年以降、台湾中小企業が様々な企業連携団体づくりを進め、市場ターゲットまたは生産品質の差別化によって新たな競争優位を確立しようとする動きが広がっている。

    本稿の目的は、中小企業の連携戦略が産業クラスターの維持と進化を促進するプロセスにアプローチし、それによって台湾の中小企業の輸出競争力低下という現状を打破できる解決の方向を示すことである。本研究はポーターのダイヤモンド・モデルを用いて中小企業連携団体の三つの事例研究を行った。事例分析で明らかにしたことは以下の四点に集約できる。

    第一は、企業連携団体の取り組みが地域中小企業の間の取引関係をさらに進化してより補完的な生産分業体制が構築できたことである。第二は、「製品の価値、品質、ブランドイメージの向上」、「共同学習の環境づくり」および「価格競争からの脱却」などの企業連携団体の運営成果が、団体会員間に共有されることに留まらず、周辺の中小企業、学術研究機関、地方行政機関にも拡散することである。このことによって産業クラスターの維持と進化という結果をもたらしているのである。第三は、企業連携団体の中核企業の経営者が自らキーパーソンであることに意識して、企業連携団体の企業メンバーの信頼基礎を固めようとすることである。それらの経営者は長期的視点に立って企業連携戦略の中身を見極め、中小企業の間の利害関係を調整することによって、信頼関係の深化と新たなビジネス・モデルの創造という効果が生まれてきたのである。第四は、企業連携団体が、企業が相互に学び知識を共有し合える連携活動を何回も催すことで、「目に見える学習と競争環境」を構築し、研究開発、生産、販売各方面での学習モチベーションを高めたことである。

  • 潘 卉
    2016 年 8 巻 2 号 p. 141-158
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/06
    ジャーナル フリー

    グローバルR&Dに関する既存研究の多くは、本社に集中したR&D能力をいかに海外拠点に移管して活用することかに注目している。一方、近年重要性が高まってきた新興国におけるR&Dの課題に対して、「現地適応」の側面が特に強調され、本国と切り離して現地R&Dを行うべきという論説が盛んである。そのため、新興国の文脈で、現地R&D拠点構築のプロセスにおいて、本国資源・能力の移転と製品R&Dの現地適応との関係のメカニズムをさらに探ることを、本稿の目的とする。

    事例分析の対象として、デンソーのタイにおけるテクニカルセンターの豪亜地域でのR&D活動を取り上げる。デンソー本社からDIAT T/Cに対する資源・能力の移転と現地開発機能の形成・強化を詳述した上、移転が現地適応を促進した事例に焦点を当て理論的分析を行った。結論として、新興国環境の「不利」を克服するために、本社の資源・能力を現地に移転することによって現地R&D拠点能力を高め、そのように能力を向上させたことで現地のR&Dに関する問題が解決され、現地に適応した製品開発が推進されたという、新興国におけるR&D拠点の製品現地適応に向けての一つのパターンを示した。

特集「日本の大学で学ぶ研究者が国際化するには」
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