国際ビジネス研究
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8 巻 , 1 号
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研究論文
  • 日本企業7社におけるグローバル人事制度導入の事例研究
    後藤 将史
    2016 年 8 巻 1 号 p. 5-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー

    組織論における制度理論では、「同じ制度的圧力を受けても、個別の組織でなぜ反応が異なるか」を主要論点の一つとするが、先行研究では組織外との関係性や組織の外形要因に関心が集中し、組織内のプロセス要因の検討が不足している。本稿の目的は、制度がもたらす同型化圧力に対する組織の反応の決定要因について、意思決定プロセスの観点で探索することである。特に、「そもそも組織内部の意思決定プロセスも同型化に何らかの影響を及ぼすのか」、そして「もしそうであれば何がどのように影響因子となるのか」を検討する。この目的から、近年普及が進むグローバル人事制度の導入検討を題材に、B2B 事業で海外展開する中堅規模日系上場企業 7 社の、2000 年以後の本社における過程につき、インタビューを中心とした比較事例分析を行った。

    事例分析の結果、検討着手の早さ遅さは、「外的正当性に対する感度」の高さ低さとも呼ぶべき、意思決定プロセスに内在する要因に大きく影響されたことが明らかとなった。着手が早い組織は、意思決定において、外部規範こそ目指すべき道を示すものとして高く評価し探し求め、合理的必要性と関係なく自ら進んで同型化を目指した。着手が遅い組織は、正当性を最初から最後まで自組織内の合理的判断に求め、合理的必要性を認めるまで同型化を拒んだ。本研究の貢献は、第一に制度の影響下での組織行動の説明要素として、外的正当性に対する感度をはじめとする組織内プロセス要因の影響を確認したこと、第二にそれに伴って Tolbert & Zucker (1983) が提示した制度採用のモチベーションに関するいわゆる 2-stage model の反例を提示したことである。さらに、本研究の観察は、変革への着手のされ方 (「外的正当性に対する感度」の結果) によるその後の組織変革への影響等の、研究課題の広がりの可能性を示す。

  • 台湾TSMCとUMCの比較を通して
    岸本 千佳司
    2016 年 8 巻 1 号 p. 27-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー

    台湾は、1990 年代以降、半導体産業における「設計と製造の分業」のトレンドに逸早く乗じ、専業ファウンドリ (ウェハプロセスの受託製造業) という新たなビジネスモデルを打ち出し台頭していった。他方、日本半導体産業の衰退は「分業を嫌い続けた」ことが大きな原因と指摘されている。これは、ファウンドリの IDM に対するビジネスモデル上の勝利と見做されている。ところで、ファウンドリ業界の近年の特徴として、最先端プロセス開発とそれを踏まえた生産ライン構築の資金的・技術的難易度が上昇し、それを背景に業績格差、とりわけ業界 Top の TSMC と 2 位以下のメーカーとの格差が広がっていることがある。既存研究では、ファウンドリ業界内でのこうした格差については十分検討されていない。そこで本研究は、TSMC および同社と同じく台湾企業であり業界 No.2 でもある UMC の比較分析を通して、その点に光を当てる。具体的には、両社の収益性と生産能力、プロセス技術開発に関する数値データと関連資料を分析し、格差の実態とこれら要素間の関連性を検討する。これは同業界での成功要因を明らかにすることにも繋がる。

    その結果、生産能力増強と先端プロセス開発での競争でライバルに先んじることで顧客の支持と市場シェアを獲得し、そこから収益確保 (と株価上昇) へ、そして次世代の研究開発・設備投資へと繋がる成長の「正の循環」の存在を見出す。これが格差拡大の基本的背景でもある。さらに、格差を一層加速する半導体製造業界特有の事情として、①ムーアの法則 (微細化によるチップの性能向上と製造コスト低減が長期間にわたって幾何級数的に続き、それによって半導体メーカーの利益を確保しながら半導体ユーザーのニーズに応えられる環境) を背景とする不断の先端プロセス開発競争と近年その微細化が物理的限界に近づいたことによる技術的・資金的難易度の一層の上昇、および② Top ファウンドリ (TSMC) のプロセス技術が業界標準化し、同社を中心に半導体設計・製造のエコシステムが発展しているという状況を指摘する。

  • 李 玲
    2016 年 8 巻 1 号 p. 45-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、中国消費市場におけるグローバル贅沢ブランド(GLB)消費と面子の関係を解明することである。そのために、中国福州市の消費者向けにアンケート調査を実施し、355 サンプルのデータを収集した。

    その結果、面子意識は面子知覚と GLB 評価に正の影響を与えるが、身分表示能力と購買意向に有意な影響を及ぼさない。また、面子知覚は身分表示能力、購買意向に正の影響を及ぼす。さらに、GLB 評価は面子知覚、身分表示能力および購買意向に有意な正の効果を与えながら身分表示能力に与える影響が最も強い。身分表示能力と購買意向とも有意な正の関係にある。

  • タイの日系販売子会社への質問票調査
    大木 清弘
    2016 年 8 巻 1 号 p. 59-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー

    本稿は、海外子会社のパフォーマンスと本社、駐在員、現地従業員の権限の関係を明らかにした研究である。既存研究では、本社と海外子会社のどちらに権限を持たせるべきか、及び駐在員と現地従業員のどちらに権限を持たせるべきかの議論は行われてきた。しかし三者を同時に扱い、パフォーマンスとの関係を見た研究はほとんどない。そこで本稿は、日系タイ販売子会社 50 社のデータを用いた重回帰分析を行った。結果、日系タイ販売子会社において、1)本社の権限を減らして駐在員に権限を与えるほど海外子会社のパフォーマンスは高くなること、2)駐在員の権限を減らしてタイ人従業員に権限を与えるほど海外子会社のパフォーマンスは低くなること、3)タイ人従業員の権限と海外子会社のパフォーマンスの間の負の相関関係は現地国籍企業との取引割合が増えると弱まること、が明らかになった。

  • 中国における日本アパレル企業AB社の事例分析
    孫 徳峰
    2016 年 8 巻 1 号 p. 73-87
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー

    本稿は、先進国企業の新興国市場開拓において、新興国市場戦略のジレンマをどのように解消し、新興国のボリュームゾーン市場をどのように開拓するかの方策を探ることを目的とする。この目的から、本稿では、中国における日本アパレル企業 AB 社を事例として取り上げ、現地での新しい能力の開発と本国資産の選択的利用の観点から、中国のボリュームゾーン市場開拓における低価格製品開発プロセスについて分析した。

    事例分析では、新興国市場開拓において現地で一からまったく新しい能力を開発していくプロセスの中で、本国資産を選択的に利用することによって現地市場に適応する低価格製品開発が実現されていたことが明らかになった。

研究ノート
  • 牧 美喜男, 関口 倫紀
    2016 年 8 巻 1 号 p. 89-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル フリー

    日本企業の国際人的資源管理 (International Human Resource management: IHRM) の先行研究では、本国籍人材(Parent Country Nationals: PCN)が海外子会社の運営を主導するという特徴が指摘されてきたが、その背景には、日本企業が輸出型から海外生産型へシフトした「オペレーションの国際化」があった。しかし、新興国の台頭が著しい近年においては、現地の市場に密着した機動的な運営を目的とする「マネジメントの国際化」が必要となってきている。そこで本研究では、9つの企業を対象にケーススタディを行い、(1)日本本社で行われている人的資源管理方法の現地への移植度合い、(2)海外拠点における現地国籍人材(Home Country Nationals: HCN)の活躍状況、および(3)本社の人事部門の問題認識の状況の3つのリサーチ・クエスチョンに答えることによって、日本企業の IHRM の今後の方向性についての新たな視点を提示することを主たる目的とする。

    調査の結果、1)については、製造部門でのジョブ・ローテーションや多能工化が海外子会社でも重視されており、それ以外の人的資源管理システムの多くは、現地で行われているものを採用していることが分かった。2)については、調査対象の企業経営方針の違いによって HCN の登用度合いに差が見られたため、調査対象企業を「急進的 HCN 活用グループ」と「漸進的 HCN 活用グループ」に分類した。HCN の登用のあり方は本社の国際化と連動していた。なお、HCN の活動を支えるコミュニケーションや意思決定への参加状況については、調査企業すべてにおいて改善されていた。3)については、人的資源管理の国際化の志向に応じて本社人事部門の問題意識も異なることが分かった。以上の結果から、「マネジメントの国際化」を志向する日本企業の IHRM は、日本的な人的資源管理システムの特徴をある程度維持しつつ HCN を急進的もしくは漸進的に登用し、かつ本社の国際化も同時に推進していくことで、本社-海外子会社間の双方向的連携を強化していくことが予想される。

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